《概要》
大島本は、青表紙本の最善本とはいうものの、現状では、後人の筆によるさまざまな本文校訂跡や本文書き入れ注記、句点、声点、濁点等をもつ。そうした現状の様態をそのままに、以下の諸点について分析していく。
1 大島本と大島本の親本復元との関係 鎌倉期書写青表紙本(池田本・伏見天皇本等)を補助的資料として
2 大島本の本文校訂に対校された本文系統
3 大島本の句点の関係
4 大島本の後人書き入れ注記
《書誌》
《翻刻資料》
凡例
1 本稿は、『大島本 源氏物語』(1996(平成8)年5月 角川書店)を翻刻した。よって、後人の筆が加わった現状の本文様態である。
2 行間注記は【 】- としてその頭に番号を記した。
2 小字及び割注等は< >で記した。/は改行を表す。また漢文の訓点等は< >で記した。
3 合(掛)点は、\<朱(墨)合点>と記した。
4 朱句点は「・」で記した。
5 本文の校訂記号は次の通りである。
$(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
( )の前の文字及び( )内の記号の前の文字は、訂正以前の文字、記号の後の文字が訂正以後の文字である。ただし、なぞり訂正だけは( )の前の文字は訂正後の文字である。訂正以前の本行本文の文字を尊重したことと、なぞり訂正だけは元の文字が判読しにくかったための処置である。
6 朱・墨等の筆跡の相違や右側・左側・頭注等の注の位置は< >と( )で記した。私に付けた注記は(* )と記した。
7 付箋は、「 」で括り、付箋番号を記した。
8 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。
9 本文校訂跡については、藤本孝一「本文様態注記表」(『大島本 源氏物語 別巻』と柳井滋・室伏信助「大島本『源氏物語』(飛鳥井雅康等筆)の本文の様態」(新日本古典文学大系本『源氏物語』付録)を参照した。
10 和歌の出典については、伊井春樹『源氏物語引歌索引』と『新編国歌大観』を参照し、和歌番号と、古注・旧注書名を掲載した。ただ小さな本文異同については略した。
「ほたる」(題箋)
いまはかく・おも/\しきほとに・よろつ・の
0001【いまはかく】-源
とやかにおほししつめたる御ありさまなれは・
たのみきこえさせ給へる人/\・さま/\に
つけてみな思ふさまにさたまり・たゝよ
はしからて・あらまほしくてすくし給ふ・た
0002【たいのひめ君】-玉
いのひめ君こそ・いとおしく思ひのほかなる
思ひそひて・いかにせむとおほしみたるめれ・
かのけむか・うかりしさまにはなすらふへき・
0003【かのけむか】-肥ー大夫ー
けはひならねと・かゝるすちにかてけも・人の
思ひよりきこゆへき事ならねは・心」1オ
ひとつにおほしつゝ・さまことに・うとましと
おもひきこえ給ふ・なに事をもおほし
しりにたる御よはひなれは・とさまかうさま
に・おほしあつめつゝ・はゝ君のおはせすな
0004【はゝ君】-夕かほ
りにけるくちをしさも・またとりかへし
おしくかなしくおほゆ・おとゝも・うちい
0005【おとゝ】-源
てそめ給ひては・なか/\くるしくおほせと・
人めをはゝかり給ひつゝ・はかなき事をも・
えきこえ給はす・くるしくもおほさるゝ
まゝに・しけくわたり給ひつゝ・おまへの人と」1ウ
をく・のとやかなるおりは・たゝならすけしき
はみきこえ給ふ・ことにむねつふれつゝ・け
さやかに・はしたなくきこゆへきにはあらね
は・たゝみしらぬさまに・もてなしきこえ
給ふ人さまの・わららかにけちかくものし
0006【わららかに】-にこやかなる心なり
たまへは・いたくまめたち心し給へと・猶を
かしくあいきやうつきたるけはひのみみえ
給へり・兵部卿宮なとは・まめやかにせめき
0007【兵部卿宮】-蛍
こえ給ふ・御らうの程はいくはくならぬに・
0008【御らう】-労なり
さみたれになりぬるうれへをし給ひて・す」2オ
0009【さみたれに】-\<朱合点> 信明集 神代よりいむと云なる五月雨の此方に人をみるよしもかな(信明集56、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚) わひつゝもたのむ月日はある物を五月雨にさへ成にける哉(出典未詳、花鳥余情・弄花抄・休聞抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
こしけちかきほとをたにゆるし給はゝ・思
ふ事をもかたはしはるけてしかなと
きこえ給へるを・とのこらむしてなにかは・
0010【との】-源
0011【なにかは】-源氏の御詞
この君たちのすき給はむはみところあり
0012【すき】-数寄
なむかし・もてはなれてなきこえ給ひそ
御かへりとき/\きこえ給へとて・をしへて
0013【をしへて】-玉
かゝせたてまつりたまへと・いとゝうたておほ
え給へは・みたり心ちあしとてきこえ給は
0014【みたり心ち】-玉
す・人/\もことに・やむことなくよせおも
きなとも・おさ/\なし・たゝはゝ君の御」2ウ
0015【はゝ君】-夕
0016【御をち】-ゆふかほのおちなり 舅<ヲチ>
をちなりける・さい将はかりの人のむすめ
0017【さい将】-三位中将弟
0018【むすめ】-六条院ニテ玉ノ女房達
にて・心はせなとくちおしからぬか・よにお
とろへのこりたるを・たつねとり給へる・さい将
0019【さい将の君】-ゆふかほのうへにハいとこなるへし
の君とて・てなともよろしくかき・おほ
かたもおとなひたる人なれは・さるへき
おり/\の御かへりなとかゝせたまへは・めしい
てゝことはなとの給ひてかゝせ給ふ・もの
なとのた給ふさまをゆかしとおほすなる
へし・さうしみは・かくうたてあるものなけかし
さの後は・この宮なとはあはれけにきこえ」3オ
0020【この宮】-蛍
給ふときは・すこし見いれ給ふ時もありけ
り・なにかとおもふに(に+は)あらす・かく心うき御
けしきみぬわさもかなと・さすかにされ
たるところつきておほしけり・とのはあいな
0021【とのは】-源
くをのれ心けそうして・宮をまちきこえ
0022【宮を】-蛍
給ふもしり給はて・よろしき御かへりの
あるを・めつらしかりていとしのひやかにお
0023【おはしましたり】-蛍
はしましたり・つまとのまに御しとねまいら
0024【御しとね】-兵部卿宮の御座をいふなり
せて・みき丁はかりをへたてにてちかき
ほとなり・いといたう心してそらたきもの・心」3ウ
にくきほとに・にほはしてつくろひおはする
さま・おやにはあらて・むつかしきさかしら
0025【おやにはあらて】-源氏の君の御事なり
人のさすかにあはれに見えたまふ・さい将の
0026【さい将の君】-女房
君なとも人の御いらへきこえむ事もお
ほえす・はつかしくてゐたるを・むもれた
りと・ひきつみ給へは・いとわりなし・夕
0027【ひきつみ給へは】-宰相ヲ源ノ手ニテ
やみすきておほつかなき空のけしき
のくもらはしきに・うちしめりたる宮の御
0028【宮の御けはひ】-蛍
けはひもいとえむなり・うちよりほのめく
おひかせもいとゝしき御にほひのたちそひ」4オ
たれは・いとふかく・かほりみちて・かねておほ
し(し+し)よりもおかしき御けはひを・心とゝめた
まひけり・うちいてゝ思ふ心のほとをの給
ひつゝけたることのは・おとな/\しくひ
たふるに・すき/\しくはあらていとけはひ
ことなり・おとゝいとおかしとほのきゝおはす・
0029【おとゝ】-源
ひめ君はひんかしおもてにひきいりて・
0030【ひめ君】-玉
おほとのこもりにけるを・さい将の君の御
0031【御せうそこ】-源
せうそこつたへに・ゐさりいりたるにつけて
いとあまりあつかはしき御もてなしなり・」4ウ
0032【あつかはしき】-暑
よろつのことさまにしたかひてこそめやすけ
れ・ひたふるにわかひ給ふへきさまにもあらす・
0033【わかひ】-若
この宮たちをさへさしはなちたる人つて
0034【この宮たち】-蛍
にきこえ給ましきことなりかし・御こゑこそ
おしみ給ふとも・すこしけちかくたにこそ
なと・いさめきこえ給へと・ゐとわりな
くて・ことつけてもはいゝり給ぬへき御
心はへなれは・とさまかうさまにわひし
けれは・すへりいてゝ・もやのきはなるみき
丁のもとに・かたはらふし給へる・なにくれとこと」5オ
なかき御いらへきこえ給ふこともなく・おほ
しやすらふに・よりたまひて・みき丁のかた
ひらをひとへ・うちかけ給ふにあはせて・さと
ひかるものしそくをさしいてたるかと・あき
0035【しそく】-指炬
れたり・ほたるをうすきかたにこのゆふつ
0036【うすきかたに】-源 一ハ木丁帷一ハ直衣
かた・いとおほくつゝみをきてひかりをつゝ
みかくし給へりけるを・さりけなくとかく
ひきつくろふやうにて・にわかにかく
けちえむに・ひかれるにあさましくて・
0037【けちえむに】-掲焉 はれ/\しき心なり
あふきをさしかくし給へる・かたはらめ」5ウ
0038【あふきを】-玉
いとおかしけなり・おとろかしきひかりみえ
は・宮ものそき給なむ・わかむすめとお
0039【わかむすめと】-源
ほすはかりのおほえに・かくまてのたまふ
なめり・人さまかたちなといとかくしも・く
したらむとはえをしはかり給はし・いとよく
すき給ひぬへき・心まとはさむと・かまへあ
りき給ふなりけり・まことのわかひめ君
0040【まことのわかひめ君】-これハ作者の詞也明石の姫君ナリ
をは・かくしも・もてさはき給はし・うたて
ある御心なりけり・こと方よりやをらすへ
りいてゝ・わたり給ひぬ・宮は人のおはする」6オ
0041【人のおはする】-玉
ほと・さはかりとをしはかり給ふか・すこし
けちかきけはひするに・御心ときめき
せられ給ひて・えならぬうすものゝかたひ
らのひまより見いれ給へるに・ひとまはかり
へたてたる・みわたしに・かくおほえなき
ひかりのうちほのめくを・おかしと見た
まふ・程もなく・まきらはして・かくしつ
されと・ほのかなるひかり・えむなることの
つまにもしつへくみゆ・ほのかなれと・そひ
やかにふし給へりつるやうたいのおかしかり」6ウ
つるを・あかすおほして・けにこのこと・御心
にしみにけり
なくこゑもきこえぬむしの思ひたに
0042【なくこゑも】-蛍宮
人のけつにはきゆるものかはおも(おも&おも)ひしり給
ひぬやときこえ給ふ・かやうの御かへしを・思
まはさむも・ねちけたれは・ときはかりをそ
0043【ときはかり】-早
声はせて身をのみこかすほたるこそ
0044【声はせて】-玉かつら
いふよりまさるおもひなるらめなとはかな
くきこえなして・御みつからはひきいり
給ひにけれは・いとはるかに・もてなし給ふ・うれ」7オ
はしさを・いみしくうらみきこえ給ふ・す
きすきしきやうなれは・ゐたまひもあか
さて・のきのしつくもくるしさに・ぬれ/\
よふかくいて給ひぬ・ほとゝきすなとかなら
0045【よふかく】-\<朱合点> 古今 五月雨に物おもひおれハほとゝきす夜ふかく鳴ていつち行らん(古今153・新撰万葉47・古今六帖4441・友則集10・寛平后宮歌合54、紫明抄・河海抄・花鳥余情・細流抄・紹巴抄・孟津抄) 郭公模兵部卿
すうちなきけむかし・うるさけれはこそきゝ
0046【うるさけれは】-作者詞
もとめね・御けはひなとのなまめかしさは・い
0047【御けはひ】-蛍
とよくおとゝの君に・にたてまつり給へりと・
0048【おとゝの君ににたてまつり給へりと】-源兄弟
人/\もめてきこえけり・よへいと・めおやた
0049【めおやたちて】-如母ー
ちて・つくろひ給ひし御けはひを・うち/\
はしらて・あはれにかたしけなしとみない」7ウ
ふ・ひめ君はかくさすかなる御けしきを・
0050【ひめ君】-玉
わか身つからのうさそかし・おやなとにし
0051【わか身つからの】-古今 わかみからうき世中と嘆つゝ人のためさへかなしかるらん(古今960、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
られたてまつり・よのひとめきたるさまにて・
かやうなる御心はへならましかは・なとかはいと
にけなくもあらまし・人にゝぬありさま
こそ・つゐによかたりにやならむと・おき
ふしおほしなやむ・さるはまことにゆかしけ
なきさまには・もてなしはてしと・おと
0052【おととは】-源
とはおほしけり・なをさる御心くせなれは・
中宮なともいとうるはしくや思ひきこえ」8オ
0053【中宮】-秋ー
給へる・ことにふれつゝたゝならすき(き+こ)えう
こかしなとし給へと・やむことなき方のを
よひなく・わつらはしさに・おりたちあら
はしきこえより給はぬを・この君は人の御
さまもけちかく・いまめきたるに・をのつから
おもひしのひかたきにおり/\・人みたてま
つりつけは・うたかひおひぬへき御もてなし
0054【うたかひ】-源与玉
なとは・うちましるわさなれと・ありかたく
おほしかへしつゝ・さすかなる御なかなり
けり・五日にはむまはのおとゝにいて給けるつ」8ウ
0055【むまは】-六条院東向競馬有今日
0056【おとゝ】-殿
0057【いて給ける】-源
いてにわたり給へり・いかにそや宮は夜やふ
0058【わたり給へり】-玉方へ
0059【いかにそや】-源詞
0060【宮は】-蛍
0061【夜やふかし給ひし】-光夜事
かし給ひし・いたくもならしきこえし・わつ
0062【ならしきこえし】-なれたる也
らはしきけそひ給へる人そや・ひとの心
やふりものゝあやまちすましき人は・かた
くこそありけれなと・いけみころしみ・いまし
めおはする御さまつきせす・わかくきよけ
0063【御さま】-源
に見え給・つやも色もこほるはかりなる御
0064【つやも】-厳又光
そに・なをし・はかなく・かさなれるあはひ
も・いつこに・くはゝれるきよらにかあらむ・こ
のよの人のそめいたしたると見(見&見)えす・つね」9オ
の色もかへぬあやめも・けふはめつらかにおか
しくおほゆるかほりなとも・思ふ事なくは
おかしかりぬへき御ありさまかなと・ひめ君
0065【ひめ君】-玉
おほす・宮より御ふみあり・しろきうすやう
0066【宮より】-蛍
0067【しろきうすやう】-菖蒲根色
にて・御てはいとよしありてかきなし給へり・みる
ほとこそおかしけれ・まねひいつれは・ことなる
ことなしや
けふさへやひく人もなきみかくれに
0068【けふさへや】-蛍兵部卿
おふるあやめのねのみなかれんためしにも・
0069【なかれん】-泣
0070【ためしにも】-\<朱合点> 水かくれておふる五月のあやめ草なかきためしに人ハ引なん 貫之(続古今229、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
ひきいてつへき(き+ね)にむすひつけ給へれは・けふ」9ウ
0071【けふの御かへり】-源詞
の御かへりなと・そゝのかしをきていて給ひぬ・
0072【いて給ひぬ】-源
これかれも・なをときこゆれは・御心にもいかゝ
おほしけむ
あらはれていとゝあさくもみゆるかなあや
0073【あらはれて】-玉かつら返し
めもわかすなかれけるねのわか/\しくと
0074【なかれける】-泣
はかりほのかにそあめる・てをいますこしゆ
へつけたらはと・宮はこのましき御心に・いさゝか
0075【宮は】-蛍
あかぬことゝみたまひけむかし・くすたまな
0076【あかぬ】-不足
0077【くすたま】-続命縷
と・えならぬさまにて・所/\よりおほかりお
ほししつみつるとしころのなこりなき御」10オ
ありさまにて・こゝろゆるひ給ふ事もおほ
0078【ゆるひ】-ゆる/\しき也
かるに・おなしくは・人のきすつくはかりの
ことなくても・やみにしかなと・いかゝおほさゝ
らむ・とのはひむかしの御方にも・さしの
0079【とのは】-源
0080【ひむかしの御方】-花ー
そき給ひて・中将のけふのつかさのて
0081【中将のけふのつかさ】-夕霧の中将左近なるゆへにいへり
0082【てつかひ】-手給ハ左近衛手給也五月五日にあたれり
つかひのついてに・をのこともひきつれ
て・ものすへきさまにいひしを・さる心し
給へまたあかきほとにきなむものそ・あ
やしくこゝにはわさとならす・しのふること
をもこのみこたちのきゝつけて・とふらひも」10ウ
のし給へは・をのつからこと/\しくなむある
を・ようゐしたまへなときこえ給ふ・むまは
のおとゝは・こなたのらうよりみとおすほと
0083【おとゝは】-殿
とをからす・わかき人々・わたとのゝとあけ
てものみよや・左のつかさにいとよしある
官人おほかるころなり・せう/\の殿上人に
0084【官人】-将監将曹府生をいへり
おとるましとのたまへは・ものみむことを・
いとおかしとおもへり・たいの御方よりも・わら
0085【たいの御方】-玉
はへなともの見にわたりきて・らうのとくち
に・みすあをやかにかけわたしていまめきたる」11オ
すそこのみき丁ともたてわたし・わらは
0086【すそこ】-末濃
しもつかへなとさまよふ・さうふかさねのあこ
0087【さうふかさね】-玉 面青裏濃紅梅
め・ふたあひのうすものゝかさみきたるわら
はへそ・にしのたいのなめる・このましく
なれたるかきり四人・しもつかへは・あふちの
0088【あふちのすそこ】-面うす色裏青也末濃ハすそを紫に染也
すそこの裳・なてしこのわかはのいろし
0089【なてしこのわかは】-面蘇芳裏一説面紅梅裏青也
たるからきぬ・けふのよそひともなり・こな
0090【こなたの】-花
たの(の+は<朱>)こきひとかさねに・なてしこかさね
のかさみなと・おほとかにて・をの/\いとみ
かほなるもてなしみところあり・わかやか」11ウ
なる殿上人なとは・めをたてゝけしきはむ・
ひつしの時に・むまはのおとゝにいて給ひ
て・けにみこたちおはしつとひたり・てつか
0091【てつかひ】-手番
ひのおほやけことには・さまかはりて・す
0092【すけたち】-次将
けたちかきつれまいりて・さまことにいまめ
かしくあそひくらし給ふ・女はなにのあ
やめもしらぬことなれと・とねりともさへ
0093【とねり】-近衛随身
えむなるさうそくを・つくして・身をなけ
0094【えむなる】-艶也
0095【身をなけたる】-身捨勝負する也
たる・てまとはしなとを・みるそおかしかり
0096【てまとはし】-手
ける・みなみのまちもとをして・はる/\と」12オ
0097【みなみのまち】-紫
あれは・あなたにもかやうのわかき人ともはみ
0098【あなたにも】-紫
けり・打毬楽らくそむなとあそひて・かち
0099【らくそむ】-楽
まけのらさうとも・のゝしるも・よにいりは
0100【らさう】-乱声勝方大鼓等打
てゝ・なに事もみえすなりはてぬ・とねり
0101【とねり】-舎人
とものろくしな/\給はる・いたくふけて・ひと
ひとみなあかれ給ひぬ・おとゝはこなたに・
0102【あかれ】-別
0103【こなたに】-花ちる里
おほとのこもりぬ・物かたりなときこえ給
て・兵部卿宮の人よりはこよなくものし
0104【兵部卿宮】-蛍
給かな・かたちなとはすくれねと・ようゐけ
しきなとよしあり・あいきやうつきたる」12ウ
君なり・しのひてみたまひつや・よしとい
0105【しのひてみたまひつや】-花ー
へと・なをこそあれとのたまふ・御おとうとに
0106【御おとうとに】-花ー詞 弟源歳
こそものし給へと・ねひまさりてそみえ給
ひける・としころかくおりすくさす・わたり
むつひきこえ給ふときゝ侍れと・むかし
の内わたりにて・ほのみたてまつりし後・おほ
つかなしかし・いとよくこそかたちなと・ね
ひまさり給ひにけれ・そちのみこ・よく
0107【そちのみこ】-帥兄弟
ものしたまふめれと・けはひおとりておほ
0108【おほ君】-王
君けしきにそ・ものし給ひけるとのた」13オ
まへは・ふとみしりたまひにけりと・おほせと
0109【おほせと】-源
ほゝゑみてなをあるを・よしとも・あしとも
かけ給はす・人のうへを・なむつけおとしめ
さまの事いふ人をは・いとおしきものにした
まへは・右大将なとをたに・心にくき人にす
0110【右大将】-鬚
めるを・なにはかりかはある・ちかきよすかに
0111【ちかきよすか】-玉与鬚
てみむは・あかぬ事にやあらむとみたまへ
0112【みたまへと】-源
と・ことにあらはしてものたまはす・いまはた
0113【ことに】-言
たおほかたの御むつひにて・おましなとも・
0114【おまし】-座
こと/\にて・おほとのこもる・なとてかくはな」13ウ
0115【こと/\にて】-各別
0116【なとてかくは】-源独言
れそめしそと・殿はくるしかり給ふ・おほかた
0117【おほかたなにやかやとも】-花ー心
なにやかやとも・そはみきこえ給はて・と
しころかくおりふしにつけたる御あそひとも
を・人つてに見きゝ給ひけるに・けふめつ
らしかりつることはかりをそ・このまちのお
ほえきら/\しと・おほしたる
そのこまもすさめぬ草となにたてる
0118【そのこまも】-花ちる 催馬曲 拾 おふれとも駒もすさめぬあやめ草かりにも人のこぬかわひしき 躬恒(拾遺集768・拾遺抄275・躬恒集274、河海抄)
みきはのあやめけふやひきつるとおほと
0119【みきはのあやめ】-我事云
かにきこえ給・なにはかりの事にもあらね
と・あはれとおほしたり」14オ
にほとりにかけをならふるわかこまは
0120【にほとりに】-源氏 菖蒲似たれともこもハおとりたる心也
0121【わかこまは】-若薦也五音通する也駒くらへの日なる故也
いつかあやめにひきわかるへきあいたちなき
0122【あいたちなき】-無アイたちハ詞也ありのまゝ両方よみ給へハ思き也
御事ともなりや・あさゆふのへたてあるやうな
れと・かくてみたてまつるは・心やすくこそ
あれ・たはふれ事なれと・のとやかにおは
する人さまなれは・しつまりてきこえなし
給ふ・ゆかをはゆつりきこえ給ひて・みき
丁ひきへたてゝ・おほとのこもる・けちかくな
とあらむすちをは・いとにけなかるへきす
ちに思ひはなれはてきこえ給へれは・あ」14ウ
なかちにもきこえ給はす・なかあめれいの
としよりも・いたくして・はるゝかたなく・
つれ/\なれは・御方/\ゑものかたりなとの
すさひにて・あかしくらし給ふ・あかしの御
かたはさやうのことをもよしありてしなし
給て・ひめ君の御方にたてまつり給ふ・にし
0123【ひめ君の御方】-明ー中
0124【にしのたいには】-玉
のたいには・ましてめつらしくおほえ給ことの
すちなれは・あけくれかきよみいとなみ
おはす・つきなからぬわか人あまたあり・
さま/\にめつらかなる人のうへなとを・ま」15オ
ことにや・いつはりにや・いひあつめたる中に
も・わかありさまのやうなるはなかりけり
0125【わかありさま】-玉
とみたまふ・すみよしのひめ君のさしあた
0126【みたまふ】-給事
0127【さしあたりけむおりは】-当時
りけむおりはさるものにて・いまのよのおほえ
もなを心ことなめるに・かそへのかみか・ほと/\
0128【かそへのかみ】-頭
0129【ほと/\】-\<合点> 驚/\ 拾 宮つくるひたのたくみのてをのをとほと/\しかるめをも見しかな(拾遺集1226、河海抄・紹巴抄・孟津抄・孟津抄・岷江入楚)
しかりけむなとそ・かのけむかゆゝしさをおほ
しなすらへ給ふ・とのもこなたかなたに・
かゝるものとものちりつゝ御めにはなれね
0130【かゝるものとも】-絵双紙
は・あなむつかし・女こそものうるさからす・人
0131【女こそ】-源詞
にあさむかれむとむまれたるものなれ・」15ウ
こゝらのなかにまことは・いとすくなからむを・
かつしる/\・かゝるすゝろ事に・心をうつし
0132【心をうつしはかられ給ひて】-タハカル
はかられ給ひて・あつかはしき・さみたれの
0133【さみたれのかみのみたるゝ】-\<朱合点> 拾 時鳥をちかへりなけうなゐこかさみたれかみの五月雨の比 躬恒(拾遺集116・寛平中宮歌合・躬恒集164、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
かみのみたるゝもしらてかき給ふよとて・
0134【かき給ふよ】-玉双紙
わらひ給ものから・またかゝるよのふる事
ならては・けになにをかまきるゝことなきつ
れつれをなくさめまし・さてもこのいつ
0135【このいつはりとも】-絵
はりとものなかに・けにさもあらむとあは
れをみせ・つき/\しく・つゝけたるはた・は
かなしことゝしりなから・いたつらに心うこき・ら」16オ
うたけなるひめ君のものおもへるみるにかた
0136【ひめ君】-住吉
心つくかし・またいとあるましき事かなと・
見る/\おとろ/\しく・とりなしけるか
めおとろきて・しつかにまたきくたひそ
にくけれと・ふとおかしきふし・あらはなる
なともあるへし・このころおさなき人の
0137【このころ】-源
女はうなとに・時/\よまするをたちきけ
は・ものよくいふものゝよにあるへきかな・そ
らことをよくしなれたるくちつきよりそ・
いひいたすらむとおほゆれと・さしもあら」16ウ
しやとのたまへは・けにいつはりなれたる人
や・さま/\にさもくみ侍らむ・たゝ(ゝ+いと)まことのこ
0138【くみ侍らむ】-心を汲知
とゝこそ・思ふ給へられけれとて・すゝりをゝし
やり給へは・こちなくもきこえおとしてける
かな・神よゝり世にあることをしるしをきける
なゝり・日本記なとはたゝかたそはそかし・こ
れらにこそみち/\しくくはしき事
はあらめとてわらひ給ふ・その人のうへとて・
ありのまゝにいひいつる事こそなけれ・よき
もあしきも・世にふる人のありさまのみる」17オ
にもあかす・きくにもあまることを・後の世に
も・いひつたへさせまほしきふし/\を・心に
こめかたくて・いひをきはしめたるなり・よき
さまにいふとては・よき事のかきりえりい
てゝ人にしたかはむとては・又あしきさま
のめつらしき事を・とりあつめたる・みなか
たかたにつけたる・このよのほかのことならす
かし・人のみかとのさ(さ&さ)えつくりやうかはる・
0139【人のみかと】-唐朝書籍皆才人作也
0140【さえ】-才
0141【つくりやう】-作ナリ
おなしやまとのくにのことなれは・むかしいま
のにかはるへし・ふかきこと・あさき事の」17ウ
けちめこそあらめ・ひたふるにそら事と・
いひはてむも・ことの心たかひてなむあり
ける・ほとけのいとうるはしき心にて・ときを
き給へる御法も・はうへむといふ事あり
て・さとりなきものは・こゝかしこ・たかふ・うた
かひを・ゝきつへくなん・はうとう経の中
におほかれと・いひもてゆけは・ひとつむねに
0142【ひとつむねに】-五時諸経是帰法帰一実道理
ありて・ほたいとほむなうとのへたゝりな
む・この人のよきあしきはかりの事は
かはりける・よくいへは・すへてなに事もむ」18オ
なしからすなりぬやと・ものかたりをいと
わさとのことに・のたまひなしつ・さてかゝるふ
る事の中にまろかやうに・しほうなる・
0143【まろかやうに】-丸男女乃通称也
しれものゝ物語はありや・いみしくけとをき
ものゝひめ君も・御心のやうにつれなく・そ(そ+ら)
0144【御心のやう】-玉ー
おほめきしたるは・よにあらしな・いさたくひ
なきものかたりにして・世につたへさせんと
さしよりてきこえ給へは・かほゝひきいれ
て・さらすとも・かくめつらかなる事は・よかた
0145【さらすとも】-玉かつら
りにこそは・なり侍ぬへかめれとのたまへは・め」18ウ
0146【めつらかに】-源氏
つらかにやおほえ給・けにこそまたなき心ち
すれとて・よりゐたまへるさま・いとあされたり
思ひあまりむかしのあとをたつぬれと
0147【思ひあまり】-源氏
おやにそむけるこそたくひなきふけう
0148【ふけう】-不孝
なるは・ほとけのみちにもいみしくこそい
ひたれとのたまへと・かほもゝたけ給はねは・
御くしをかきやりつゝ・いみしくうらみ給へ
は・からうして
ふるきあとをたつぬれとけになかなりけり
0149【ふるきあとを】-玉かつら返し
このよにかゝるおやの心はときこえ給も・」19オ
0150【このよにかゝるおや】-子によそへたり
心はつかしけれは・いといたくもみたれ給はす・
0151【心はつかしけれは】-源
かくしていかなるへき御あれさまならむ・むら
さきのうへもひめ君の御あつらへにことつ
0152【ひめ君】-明ー中
けて・物かたりはすてかたくおほしたり・
くまのゝものかたりのゑにてあるを・いと
よくかきたるゑかなとてこらむす・ちゐ
0153【こらむす】-紫
さき女君のなに心もなくて・ひるねした
まへる所を・むかしのありさま・おほしいてゝ・
女君はみたまふ・かゝるわらはとちたに・いかに
0154【かゝるわらはとち】-絵
されたりけり・まろこそなをためしにしつ」19ウ
へく・心のとけさは・人にゝさりけれと・きこえ
いて給へり・けにたくひおほからぬ事とも
0155【けにたくひ】-源詞
0156【たくひ】-コマ物ー
は・このみあつめ給へりけりかし・ひめ君の御
0157【ひめ君】-明ー中
まへにて・このよなれたるものかたりなとな・
よみきかせ給ひそ・みそか心(心&心)つきたるも
0158【みそか心】-密
のゝむすめなとは・おかしとにはあらねと・かゝる
事・よにはありけりと・みなれ給はむそ・ゆゝ
0159【みなれ】-耳
しきやとのたまふもこよなしと・たい
の御方きゝ給はゝ・心をき給ひつへくなむ・
うへ(うへ&うへ)・心あさけなる人まねともは・みるにも」20オ
かたはらいたくこそ・うつほのふちはら君の
0160【うつほの】-空
むすめこそ・いとおもりかにはか/\しき人
にて・あやまちなかめれと・すくよかにいひいて
0161【いひいてたる】-あて宮哥
たる(る+事も<朱>)しわさも・女しき所なかめるそ・ひとやうな
0162【ひとやう】-一様
めるとのたまへは・うつゝの人もさそあるへかめ
0163【うつゝの人も】-源詞
る・ひと/\しく・たてたるおもむき・ことに
てよきほとに・かまへぬや・よしなからぬお
やの心とゝめて・おほしたてたる人のこめかし
0164【こめかしき】-おさなかまし
きをいけるしるしにて・をくれたる事おほ
かるは・なにわさして・かしつきしそと・おや」20ウ
のしわさゝへ・おもひやらるゝこそ・いとをしけ
れ・けにさいへと・その人のけはひよとみえ
たるはかひあり・おもたゝしかし・ことはの
かきり・まはゆく・ほめをきたるにしいてたる
わさいひいてたることのなかに・けにとみえ
きこゆる・事なき・いと見をとりするわさ
なり・すへてよからぬ人に・いかてひとほめ
させしなと・たゝこのひめ君の・てむつか
0165【このひめ君】-明ー中
れ給ふましくと・よろつにおほしのた
まふ・まゝはゝのはらきたなき・むかしもの」21オ
0166【まゝはゝの】-紫
かたりもおほかるを(を+此比<朱>)心みえに・心つきなし
とおほせは・いみしくえりつゝなむ・かきとゝ
のへさせ・ゑなとにもかゝせ給ひける・中将の
0167【中将の君】-夕
君をこなたには・けとをく・もてなしきこ
0168【こなたには】-紫
え給へれと・ひめ君の御方には・さしも・さし
0169【ひめ君の御方】-明ー
はなちきこえ給はす・ならはし給ふ・わか
0170【わかよ】-源
よの程は・とてもかくても・おなしことなれと・
なからむよを思ひやるに・なをみつきおも
ひしみぬる事ともこそ・とりわきては・お
ほゆへけれとて・みなみおもての・みすのうち」21ウ
はゆるし給へり・たいはむ所女はうのなか
はゆるし給はす・あまたおはせぬ御なから
ひにて・いとやむことなく・かしつききこ
え給へり・おほかたの心もちゐなとも・いと
もの/\しく・まめやかにものし給ふき
みなれは・うしろやすくおほしゆつれり・
またいはけたる・御ひゝなあそひなとの・け
0171【御ひゝなあそひなとの】-明ー
はひの見ゆれは・かの人のもろともに
0172【見ゆれは】-夕ー心
あそひて・すくしゝ・とし月のまつ思ひいてら(△&ら)
るれは・ひゐなのとのゝみやつかへ・いとよくし」22オ
給ひて・おり/\にうちしほたれ給けり・さも
ありぬへきあたりには・はかなしことも・のた
まひふるゝは・あまたあれと・たのみかくへく
もしなさす・さるかたになとかは・みさらむと・
心とまりぬへきをも・しゐて・なをさり事
にしなして・なをかのみとりのそてを・みえ
0173【みえなをして】-雲ー
なをしてしかなと・思ふ心のみそやむこと
なきふしにはとまりける・あなかちに・なと
かゝつらひまとはゝたふるゝ方に・ゆるし
0174【ゆるし給ひも】-致ーノ
給ひもしつへかめれと・つらしとおもひし」22ウ
おり/\・いかて人にも・ことはらせたてまつら
むと・おもひをきしわすれかたくて・さうし
0175【さうしみ】-雲ー
みはかりには・をろかならぬあはれをつくし
みせて・おほかたには・いられおもへらす・せうと
0176【いられ】-いら/\しく
0177【せうとの君たち】-雲兄弟
の君たちなとも・なまねたしなとのみ
おもふことおほかり・たいのひめ君の御あり
0178【たいのひめ君】-玉
さまを・右中将は・いとふかく思ひしみて・い
0179【右中将】-柏
ひよるたよりも・いとはかなけれは・この君
をそ・かこちよりけれと・ひとのうへにては・
もとかしきわさなりけりと・つれなくいら」23オ
へてそ・ものし給ひける・むかしのちゝおとゝ
0180【むかしの】-詞
0181【ちゝおとゝたちの御なからひ】-源 致ー
たちの・御なからひににたり・内のおとゝは・御
0182【内のおとゝ】-致ー
こともはら/\いとおほかるに・そのおひいてたる
おほえ・人からにしたかひつゝ・心にまかせたる
やうなるおほえ・(え+御)いきほひにて・みななしたて
0183【なしたて給ふ】-成人
給ふ・女は・あまたもおはせぬを・女御もかくおほ
0184【女御】-絵合セシ人
0185【かくおほしゝこと】-后立事絵ー
しゝことの・とゝこほり給ひ・ひめ君も・かくこと
0186【ひめ君】-雲ー
0187【ことたかふ】-夕ーノ事
たかふさまにて・ものしたまへは・いとくちおしと
おほす・かのなてしこをわすれ給はす・ものゝ
0188【かのなてしこを】-致ー心 玉
おりにも・かたりいて給ひしことなれは・いかにな」23ウ
りにけむ・ものはかなかりける・おやの心にひかれ
0189【おやの心に】-夕顔
て・らうたけなりしひとを・行ゑしらすな
り(り+に)たること・すへて女こといはむものなん・いか
にもいかにも・めはなつましかりける・さかしら
に・わかこといひて・あやしきさまにて・はふれ
やすらむ・とてもかくても・きこえいてこは
と・あはれにおほしわたる・君たちにももし・
0190【君たちにも】-致ー子達詞
さやうなるなのりする人あらは・みゝとゝめ
よ・心のすさひにまかせて・さるましき事
も・おほかりし中に・これはいとしかをし」24オ
なへてのきはにも・おもはさりし人のはか
なきものうむしをして・かくすくなかり
0191【ものうむしをして】-夕顔 慍<イカル>うらみたる心也
0192【すくなかりける】-便
けるものゝくさはひひとつを・うしなひ
たることのくちおしき事と・つねにのたま
ひいつ・なかころなとはさしもあらす・うちわ
すれ給ひけるを・人のさま/\につけて・おんな
0193【人の】-源
こかしつきたまへる・たくひともに・わかおもほ
0194【たくひともに】-玉明ー中等
すにしも・かなはぬかいと心うく・ほいなく
おほすなりけり・夢みたまひて・いとよくあ
0195【夢みたまひて】-致
はするものめ(△&め)してあはせ給ひけるに・もし」24ウ
としころ御心にしられ給はぬ・御こを人のものに
なして・きこしめしいつることやと・きこえ
たりけれは・女この・人のこになる事は・おさ
おさなしかし・いかなる事にかあらむなと・こ
のころそおほしのたまふへかめる」25オ
イ本
胡蝶同年事也竪並也以哥并詞為巻名
六条院卅六歳五月事在之
任大殿御意加首筆者也 良鎮」(後遊紙1ウ)
二校<朱>」(表表紙蓋紙)