行幸(大島本親本復元) First updated 1/20/2007(ver.1-1)
Last updated 1/20/2007(ver.1-1)
渋谷栄一翻字(C)

  

行 幸

《概要》
 現状の大島本から後人の本文校訂や書き入れ注記等を除いて、その親本の本文様態に復元して、以下の諸点について分析する。
1 飛鳥井雅康の「行幸」巻の書写態度について
2 大島本親本の復元本文と他の青表紙本の本文との関係
3 大島本親本の復元本文と定家仮名遣い
4 大島本親本の復元本文の問題点 現行校訂本の本文との異同

《書誌》
 「帚木」巻以下「手習」巻までの書写者は、飛鳥井雅康である。

《復元資料》

凡例
1 本稿は、『大島本 源氏物語』(1996(平成8)年5月 角川書店)から、その親本を復元した。よって、本文中の書き入れ、注記等は、本文と一筆のみを採用し、書写者自身の誤写訂正と思われるものは、それに従って訂正した。しかし他の後人の筆と推測されるものは除いた。
2 付箋、行間注記は【 】- としてその頭に番号を記した。付箋は、( )で括り、付箋番号を記した。合(掛)点には、\<朱(墨)合点>と記した。
3 小字及び割注等は< >で記した。/は改行を表す。また漢文の訓点等は< >で記した。
4 本文の校訂記号は次の通りである。
 $(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
 ( )の前の文字及び( )内の記号の前の文字は、訂正以前の文字、記号の後の文字が訂正以後の文字である。ただし、なぞり訂正だけは( )の前の文字は訂正後の文字である。訂正以前の本行本文の文字を尊重したことと、なぞり訂正だけは元の文字が判読しにくかったための処置である。
5 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。

「みゆき」(題箋)

  かくおほしいたらぬことなくいかてよからむ
  ことはとおほしあつかひ給へとこのをとなし
  のたきこそうたていとおしくみなみのうへ
  の御をしはかりことにかなひてかる/\しかるへ
  き御なゝれかのおとゝなにことにつけてもき
  はきはしうすこしもかたはなるさまの
  ことをおほししのはすなとものしたまふ御
  心さまをさて思ひくまなくけさやかなる
  御もてなしなとのあらむにつけてはおこかまし
  うもやなとおほしかへさふそのしはすに大原」1オ

  野の行幸てよにのこる人なくみさは
  くを六条院よりも御かた/\ひきいてつゝ
  みたまふうの時にいてたまうて朱雀より
  五条のおほちをにしさまにおれたまふかつ
  らかはのもとまて物見くるまひまなし行
  幸といへとかならすかうしもあらぬをけふは
  みこたちかむたちめもみな心ことに御むま
  くらをとゝのへすいしんむまそひのかたち
  たけたちさうそくをかさりたまふつゝめつ
  らかにおかし左右大臣内大臣納言よりしも」1ウ

  はたましてのこらすつかうまつり給へりあ
  を色のうへのきぬゑひそめのしたかさねを
  殿上人五位六位まてきたり雪たゝいさゝ
  かつゝうちゝりてみちのそらさへえむなり
  みこたちかむたちめなともたかにかか
  つらひたまへるはめつらしきかりの御よそ
  ひともをまうけ給このゑのたかゝいとも
  はましてよにめなれぬすり衣をみたれき
  つゝけしきことなりめつらしうおかしき
  ことにきをひいてつゝその人ともなくかす」2オ

  かなるあしよはきくるまなとわをおしひ
  しかれあはれけなるもありうきはしのもと
  なとにもこのましうたちさまよふよきく
  るまおほかりにしのたひのひめきみもた
  ちいてたまへりそこはくいとみつくし給
  へる人の御かたちありさまをみ給にみかとの
  あか色の御そたてまつりてうるはしううこ
  きなき御かたはらめになすらひきこゆへ
  き人なしわかちゝおとゝを人しれすめをつ
  けたてまつり給へときら/\しう物きよけに」2ウ

  さかりにはものしたまへとかきりありかしいと
  人にすくれたるたゝ人とみえて御こしのうち
  よりほかにめうつるへくもあらすましてかた
  ちありやおかしやなとわかきこたちのき
  えかへり心うつす中少将なにくれの殿上人
  やうの人はなにゝもあらすきえわたれるは
  さらにたくひなうおはしますなりけり源氏の
  おとゝの御かほさまはこと物ともみえ給はぬをお
  おもひなしのいますこしいつかしうかたしけ
  なくめてたきなりさはかゝるたくひはおはし」3オ

  かたかりけりあてなる人はみな物きよけにけ
  はひことなへい物とのみおとゝ中将なとの御に
  ほひにめなれ給へるをいてきえとものか
  たはなるにやあらむおなしめはなともみえ
  すくちおしうそをされたるや兵部卿宮
  もおはす右大将のさはかりをもりかによし
  めくもけふのよそひいとなまめきてやなく
  ひなとおひてつかうまつり給へりいろくろ
  くひけかちにみえていと心月なしいかて
  かはつくろひたてたるかほの色あひにはにた」3ウ

  らむいとわりなきことをわかき御心地には見を
  としたまうてけりおとゝの君のおほしより
  ての給ことをいかゝはあらむ宮つかへは心にもあ
  らてみくるしきありさまにやとおもひつゝ
  み給うをなれ/\しきすちなとをはもて
  はなれておほかたにつかうまつり御らむせら
  れんはおかしうもありなむかしとそ思より
  たまうけるかうてのにおはしましつきて御こ
  しとゝめかむたちめのひらはりに物まいり御さう
  そくともなをしかりのよそひなとにあらた」4オ

  め給ほとに六条院より御みき御くた物なと
  たてまつらせ給へりけふつかうまつり給へてか
  ねて御けしきありけれと御物いみのよしを
  そうせさせ給へりけるなりけりくら人の右
  衛門のせうを御つかひにてきしひとえたた
  てまつらせたまふおほせことにはなにとかや
  さやうのおりのことまねふにわつらはしく
  なむ
    雪深きをしほの山にたつきしの
  ふるき跡をもけふは尋よ太政大臣のかゝる野」4ウ

  の行幸につかうまつり給へるためしなとやあ
  りけむおとゝ御つかひをかしこまりもてなさせ
  給
    小塩山みゆきつもれる松原にけふはか
  りなるあとやなからむとそのころをひきゝ
  しことのそは/\思いてらるゝはひかことにやあ
  らむ又の日おとゝにしのたいにきのふうへは
  みたてまつりたまひきやかのことはおほしな
  ひきぬらんやときこえ給へりしろきしき
  しにいとうちとけたるふみこまかにけしき」5オ

  はみてもあらぬかおかしきをみたまうてあい
  なのことやとわらひたまふ物からよくもおし
  はからせ給物かなとおほす御返にきのふは
    うちきえしあさくもりせしみ雪には
  さやかに空の光やはみしおほつかなき御
  ことともになむとあるをうへもみたまふさゝ
  のことをそゝのかしかと中宮かくておはすこゝ
  なからのおほえにはひなかるへしかのおとゝに
  しられても女御かくて又さふらひ給へはなと思み
  たるめりしすちなりわか人のさもなれつ」5ウ

  かうまつらむにはゝかるおもひなからむはうへをほ
  のみたてまつりてえかけはなれて思ふはあ
  らしとの給へはあなうたてめてたしとみたて
  まつるとも心もて宮つかひ思たゝむこそいと
  さしすきたる心ならめとてわらひたまふいてそ
  こにしもそめてきこえたまはむなとのた
  まふて又御返
    あかねさす光は空にくもらぬをなとて
  み雪にめをきらしけむなをおほしたて
  なとたえすすゝめ給とてもかうてもまつ御」6オ

  もきのことをこそはとおほしてその御まう
  けの御てうとのこまかなるきよらともく
  はへさせたまひなにくれのきしきを御心
  にはいともおほさぬことをたにをのつからよた
  けくいかめしくなるをましてうちのおとゝ
  もやかてこのついてにやしらせたてまつりて
  ましとおほしよれはいとめてたう所せきまて
  なむとしかへりて二月にとおほすをむなはき
  こえたかくなかくしたまふへきほとならぬ
  も人の御むすめとてこもりおはするほとはかな」6ウ

  らすしもうちかみの御つとめなとあらはならぬ
  ほとなれはこそとし月はまきれすくし給へこの
  もしおほしよることもあらむにはかすかのかみ
  の御心たかひぬへきもつゐにはかくれてやむま
  しき物からあちきなくわさとかましきのち
  の名まてうたゝあるへしなを/\しき人
  のきはこそいまやうとてはうちあらたむる
  ことのたはやすきもあれなとおほしめくら
  すにおやこの御ちきりたゆへきやうなしお
  なしくは我心ゆるしてをしらせたてまつら」7オ

  むなとおほしさためてこの御こしゆひにはかの
  おとゝをなむ御せうそこきこえ給ふけれは
  大宮こそのふゆつかたよりなやみたまふこと
  さらにをこたりたまはねはかゝるにあはせて
  ひなかるへきよしきこえ給へり中将の君も
  よるひる三条にそさふらひ給て心のひまな
  くものしたまうておりあしきをいかにせま
  しとおほすよもいとさためなし宮もうせ
  させ給はゝ御ふくあるへきをしらすかほにて
  ものし給はむつみふかきことおほからむお」7ウ

  はする世にこのことあらはしてむとおほしとり
  て三条の宮に御とふらひかてらわたりたまふ
  いまはましてしのひやかにふるまいたまへと
  みゆきにおとらすよそほしくいよ/\ひかりを
  のみそへ給ふ御かたちなとのこの世にみえぬ
  心ちしてめつらしう見たてまつり給にはいとゝ
  御こゝちのなやましさもとりすてらるゝ心
  ちしておきい給へり御けうそくにかゝりてよは
  けなれと物なといとよくきこえ給けしうは
  おはしまささりけるをなにかしのあそむの」8オ

  心まとはしておとろ/\しうなけきゝこえ
  さすめれはいかやうに物せさせたまふにかとな
  むおほつかなかりきこえさせつるうちなとに
  もことなるついてなきかきりはまいらすおほ
  やけにつかふる人ともなくてこもりはへれは
  よろつうゐ/\しうよたけくなりにてはへ
  りよはひなとこれよりまさる人こしたへぬ
  まてかゝまりありくためしむかしもいまも
  はへめれとあやしくおれ/\しき本上にそふ
  ものうさになむはへるへきなときこえ給と」8ウ

  しのつもりのなやみとおもふ給へつゝ月ころに
  なりぬるをことしとなりてはたのみすくな
  きやうにおほえはへれはいまひとたひかく
  みたてまつりきこえさすることもなくてや
  と心ほそく思たまへつるをけふこそ又すこ
  しのひぬる心ちしはへれいまはおしみとむへ
  きほとにもはへらすさへき人/\にもたち
  をくれよのすゑにのこりとまれるたくひを人
  のうへにていと心月なしと見はへりしかは
  いてたちいそきをなむおもひもよをされ」9オ

  はへるにこの中将のいとあはれにあやしき
  まておもひあつかひ心をさはかいたまふ見
  はへるになむさま/\にかけとめられていまゝ
  てなかひきはへるとたゝなきになきて
  御こゑのわなゝくもおこかましけれとさるこ
  とゝもなれはいとあはれなり御物かたりとも
  むかしいまのとりあつめきこえたまふつい
  てにうちのおとゝは日へたてすまいりた
  まふことしけからむをかゝるついてにたいめむ
  のあらはいかにうれしからむいかてきこえしら」9ウ

  せんと思ふことの侍をさるへきついてなくて
  はたいめんもありかたけれはおほつかなくてな
  むときこえたまふおほやけことのしけき
  にやわたくしの心さしのふかゝらぬにやさしも
  とふらひものしはへらすのたまはすへからむ
  ことはなにさまのことにかは中将のうらめし
  けにおもはれたることもはへるをはしめの
  ことはしらねといまはけにきゝにくゝもてなす
  につけてたちそめにし名のとりかへさるゝ物に
  もあらすおこかましきやうにかへりてはよ人」10オ

  もいひもらすなるをなとものしはへれは
  たてたる所むかしよりいとゝけかたき人の本
  上にて心えすなんみ給ふるとこの中将の御こ
  とゝおほしてのまへはうちわらひ給ていふかひ
  なきにゆるしてすてたまふこともやときゝ
  はへりてこゝにさへなむかすめ申やうありしか
  といときひしういさめ給よしを見侍しの
  ちなにゝさまてことをもませはへりけむと人
  わるうくいおもふたまへてなむよろつのこと
  につけてきよめといふことはへれはいかゝは」10ウ

  さもとりかへしすゝいたまはさらむとは思たまへ
  なからかうくちおしきにこりのすゑにまち
  とりふかうすむへき水こそいてきかたかへい
  よなれなにことにつけてもすゑになれはお
  ちゆくけちめこそやすくはへめれいとほし
  うきゝたまふるなと申たまうてさるはかのし
  り給へき人をなむおもひまかふることはへり
  てふいにたつねとりて侍をそのおりはさる
  ひかわさともあかし侍らすありしかはあなか
  ちにことの心をたつねかえさふ事もはへら」11オ

  てたゝさるものゝくさのすくなきをかこと
  にてもなにかはとおもふたまへゆるしておさ/\
  むつひもみはへらすしてとし月はへりつる
  をいかてかきこしめしけむうちにおほせら
  るゝやうなむあるないしのかみみやつかへする
  人なくてはかの所のまつりことしとけなく
  女官なともおほやけことを△つかうまつるに
  たつきなくことみたるゝやうになむありけ
  るをたゝいまうへにさふらふこらうのすけ
  二人又さるへき人/\さま/\に申さするを」11ウ

  はか/\しうえらはせたまはむたつねにた
  くふへき人なむなき猶いへたかふ人のおほえ
  かろからていへのいとなみたてたらぬひとなむ
  いにしへよりなりきにけるしたゝかにかしこき
  かたのえらひにてはその人ならてもとし月の
  らうになりのほるたくひあれとしかたくふ
  へきもなしとならはおほかたのおほえをたに
  えらせたまはんとなむうち/\におほせられ
  たりしをにけなきことゝしもなにかはおもひた
  まはむ宮つかへはさるへきすちにて上も下」12オ

  も思ひをよひいてたつこそ心たかきことなれ
  おほやけさまにてさる所のことをつかさとり
  まつりことのおもふきをしたゝめしらむことは
  はか/\しからすあはつけきやうにおほえた
  れとなとか又さしもあらむたゝわか身のあり
  さまからこそよろつのことはへめれと思よわり
  侍しついてになむよはひのほとなとゝひ
  きゝはへれはかのおほむたつねあへいことに
  なむありけるをいかなへいことそとも申あ
  きらめまほしうはへるついてなくてはたい」12ウ

  め侍へきにも侍らすやかてかゝることなんとあ
  らはし申へきやうを思めくらしてせうそこ
  まうしゝを御なやみにことつけてものうけに
  すまひたまへりしけにおりしもひんなう
  おもひとまり侍によろしうものせさせ給けれ
  は猶かうおもひおこせるついてにとなむおもふ
  給ふるさやうにつたへものせさせたまへときこえ
  給ふ宮いかに/\侍けることにかかしこには
  さま/\にかゝるなのりする人をいとふことな
  くひろいあつめらるめるにいかなる心にてかく」13オ

  ひきたかへかこちきこえらるらむこのとし
  ころうけたまはりてなりぬるにやときこえ
  たまへはさるやうはへることなりくはしきさ
  まはかのおとゝもをのつからたつねきゝた
  まうてむくた/\しきなを人のなからひ
  にゝたることにはへれはあかさんにつけてもらう
  かはしう人いひつたへはへらむを中将のあ
  そんにたにまたわきまへしらせはへらす人
  にももらさせ給ましと御くちかためきこえ
  たまふうちのおほゐとのかく三条の宮に」13ウ

  大きおとゝわたりおはしまいたるよしきゝた
  まひていかにさひしけにていつくしき御さ
  まをまちうけきこえ給らむこせんともも
  てはやしおましひきつくろふ人もはか/\
  しうあらしかし中将は御ともにこそものせら
  れつらめなとおとろき給ふて御ことも
  の君たちむつましうさるへきまうち君
  たちたてまつれ給御くた物御みきなとさり
  ぬへくまいらせよ身つからもまいるへきを
  かへりて物さはかしきやうならむなとのた」14オ

  まふほとに大宮の御ふみあり六条のおとゝの
  とふらひにわたりたまへるを物さひしけに侍
  れは人めのいとおしうもかたしけなうもある
  をこと/\しうかうきこえたるやうにはあら
  てわたり給なんやたいめむにきこえまほし
  けなることもあなりときこえ給へりなにこ
  とにかはあらむこのひめ君の御こと中将の
  うれへにやとおほしまはすに宮もかう御世のこ
  りなけにてこのことゝせちにのたまいおとゝ
  もにくからぬさまにひとことうちいてうらみた」14ウ

  まはむにとかく申かへさふことえあらしかしつ
  れなくておもひいれぬをみるにはやすからすさる
  へきついてあらは人の御ことになひきかほにて
  ゆるしてむとおほす御心をさしあはせての
  たまはむことゝおもひよりたまふにいとゝいなひ
  所なからむか又なとかさしもあらむとやすら
  はるゝいとけしからぬ御あやにく心なりかし
  されと宮かくのたまひおとゝもたいめむす
  へくまちおはするにやかた/\にかたしけなし
  まいりてこそは御けしきにしたかはめなと」15オ

  おもほしなりて御さうそく心ことにひきつく
  ろひてこせんなともこと/\しきさまには
  あらてわたりたまふ君たちいとあまたひき
  つれていりたまふさまもの/\しうたのもし
  けなりたけたちそゝろかにものしたまふに
  ふとさもあひていとしうとくにおもゝちあゆ
  まひ大臣といはむにたらひたまへりゑひそめ
  の御さしぬきさくらの下かさねいとなかうはし
  りひきてゆる/\とことさらひたる御もてなし
  あなきら/\しとみえたまへるに六条とのはさ」15ウ

  くらのからのきの御なをしいまやういろの御そひ
  きかさねてしとけなきおほ君すかたいよ/\
  たとへん物なしひかりこそまさり給へかうしたゝ
  かにひきつくろひ給へる御ありさまになすら
  へてもみえたまはさりけりきみたちつき/\
  にいと物きよけなる御なからひにてつとひ給へ
  り藤大納言春宮大夫なといまはきこゆる
  こともゝみななりいてつゝものしたまふをのつから
  わさともなきにおほえたかくやむことなき殿
  上人くらひとのとう五位のくら人近衛の中」16オ

  少将弁官なと人からはなやかにあるへかしき
  十よ人つとひたまへれはいかめしうつき/\
  のたゝ人もおほくてかはらけあまたゝひな
  かれみなゑひになりてをの/\かうさいはひ
  人にすくれ給へる御ありさまを物かたりにしけ
  りおとゝもめつらしき御たいめんにむかしの
  ことおほしいてられてよそ/\にてこそはか
  なきことにつけていとましき御心もそふへか
  めれさしむかひきこえ給てはかたみにいと
  あはれなることのかす/\おほしいてつゝれいの」16ウ

  へたてなくむかしいまのことゝもとしころの
  御物かたりに日くれゆく御かはらけなとすゝめ
  まいりたまふさふらはてはあしかりぬへかりける
  をめしなきにはゝかりてうけたまはりすく
  してましかは御かうしやそはましと申たまふ
  にかむたうはこなたさまになむかうしとおも
  ふことおほくはへるなとけしきはみたま
  ふにこのことにやとおほせはわつらはしうてかし
  こまりたるさまにてものしたまふむかしより
  おほやけわたくしのことにつけて心のへたて」17オ

  なく大小のこときこえうけたまはりは
  ねをならふるやうにておほやけの御うし
  ろみをもつかうまつるとなむおもふたまへし
  をすゑのよとなりてそのかみ思たまへしほ
  いなきやうなることうちましりはへれとう
  ちうちのわたくしことにこそはおほかたの心さ
  しはさらにうつろふことなくなむなにともな
  くてつもりはへるとしよはひにそへていにし
  へのことなんこひしかりけるをたいめん給はる
  こともいとまれにのみはへれはことかきりありて」17ウ

  よたけき御ふるまひとは思たまへなからしたし
  きほとにはその御いきをひをもひきしゝめ
  たまひてこそはとふらひものしたまはめとな
  むうらめしきおり/\はへるときこえた
  まへはいにしへはけにおもなれてあやしくたい
  たいしきまてなれさふらひ心にへたつること
  なく御らむせられしをおほやけにつかうま
  つりしきはゝはねならへたるかすにも思ひ
  はへらてうれしき御かへりみをこそはか/\
  しからぬ身にてかゝるくらゐにをよひ侍て」18オ

  大やけにつかうまつりはへることにそへてもお
  もふたまへしらぬにははへらぬをよはひのつ
  もりにはけにをのつからうちゆるふことのみな
  むおほく侍けるなとかしこまりまうしたまふ
  そのついてにほのめかしいて給てけりおとゝ
  いとあはれにめつらかなることにも侍かなとまつ
  うちなき給てそのかみよりいかになりに
  けむとたつねおもふたまへしさまはなにの
  ついてにか侍けむうれへにたへすもらしきこし
  めさせし心ちなむし侍るいまかくすこし人」18ウ

  かすにもなりはへるにつけてはか/\しからぬ
  ものとものかた/\につけてさまよひ侍をかた
  くなしくみくるしと見侍につけても又さる
  さまにてかす/\につらねてはあはれにおもふた
  まへらるゝおりにそへてもまつなむ思たまへ
  いてらるゝとのたまふついてにかのいにしへの
  あまよの物かたりにいろ/\なりし御むつこと
  のさためをおほしいてゝなきみわらひみみなうち
  みたれたまひぬ夜いたうふけてをの/\あかれ
  たまふかくまいりきあひてはさらにひさしく」19オ

  なりぬるよのふることおもふたまへいてられ
  こひしきことのしのひかたきにたちいてむ心
  ちもしはへらすとておさ/\心よはくおはし
  まさぬ六条とのもゑいなきにやうちしほれ
  たまふ宮はたまいてひめ君の御ことをおほし
  いつるにありしにまさる御ありさまいきをひ
  を見たてまつりたまふにあかすかなしくて
  とゝめかたくしほしほとなきたまふあまころも
  はけに心ことなりけりかゝるついてなれと中将の
  御ことをはうちいてたまはすなりぬひとふしよう」19ウ

  いなしとおほしをきてけれはくちいれむことも
  人わるくおほしとゝめかのおとゝはた人の御
  けしきなきにさしすくしかたくてさすかに
  むすほゝれたる心ちしたまうけりこよひも
  御ともにさふらふへきをうちつけにさはかしく
  もやとてなむけふのかしこまりはことさらに
  なむまいるへくはへるとまうしたまへはさらは
  この御なやみもよろしうみえたまふをかなら
  すきこえし日たかへさせ給はすわたり給へき
  よしきこえちきりたまふ御けしきとも」20オ

  ようてをの/\いてたまふひゝきいといかめし
  きみたちの御ともの人/\なにことありつる
  ならむめつらしき御たいめにいと御けしきよけ
  なりつるは又いかなる御ゆつりあるへきにかなと
  ひか心をえつゝかゝるすちとおもひよらさり
  けりおとゝうちつけにいといふかしう心もとなう
  おほえたまへとふとしかうけとりおやからむ
  もひなからむたつねえたまへらむはしめを
  おもふにさためて心きようみはなち給はし
  やむことなきかた/\をはゝかりてうけはりて」20ウ

  そのきはにはもてなさすさすかにわつら
  はしう物のきこえを思てかくあかしたまふ
  なめりとおほすはくちおしけれとそれをき
  すとすへきことかはことさらにもかの御あた
  りにふれははせむになとかおほえのおとら
  む宮つかへさまにおもむきたまへらは女御
  なとのおほさむこともあちきなしとおほせ
  とゝもかくもおもひよりの給はむをきてを
  たかふへきことかはとよろつにおほしけりかくの
  たまふは二月ついたちころなりけり十六日ひ」21オ

  かむのはしめにていとよき日なりけりちかう又
  よきひなしとかうかへ申けるうちによろしう
  おはしませはいそきたちたまうてれいの
  わたりたまうてもおとゝに申あらはしゝさまなと
  いとこまかにあへきことともをしへきこえ
  たまへはあはれなる御心はおやときこえなか
  らもありかたからむをとおほす物からいと
  なむうれしかりけるかくてのちは中将の君
  にもしのひてかゝることの心のたまひしらせけ
  りあやしのことゝもやむへなりけりとおもひあ」21ウ

  はすることゝもあるにかのつれなき人の
  御ありさまよりも猶もあらす思ひいてられ
  ておもひよらさりけることよとしれ/\しき
  心ちすされとあるましうねちきたるへきほ
  となりけりとおもひかへすことこそはありか
  たきまめ/\しさなめれかくてその日に
  なりて三条の宮よりしのひやかに御つか
  ひあり御くしのはこなとにはかなれとこと
  ともいときよらにしたまうて御ふみにはき
  こえむにもいま/\しきありさまをけふはし」22オ

  のひこめ侍れとさるかたにてもなかきためし
  はかりをおほしゆるすへうやとてなむあは
  れにうけたまはりあきらめたるすちを
  かけきこえむもいかゝ御けしきにしたかひて
  なむ
    ふた方にいひもてゆけは玉くしけ
  わか身はなれぬかけこなりけりといとふるめ
  かしうわなゝきたまへるをとのもこなたに
  おはしましてことしも御らむしさたむる
  程なれはみたまうてこたいなる御ふみかき」22ウ

  なれといたしやこの御てよむかしは上すに
  ものしたまけるをとしにそへてあやしく
  おいゆく物にこそありけれいとからく御てふる
  ひにけりなとうちかへしみたまうてよくもた
  まくしけにまつはれたるかな三十一字のなかに
  こともしはすくなくそへたることのかたきなり
  としのひてわらひたまふ中宮よりしろき
  御もからきぬ御さうそく御くしあけのくなと
  いとになくてれいのつほともにからのたき物
  心ことにかほりふかくてたてまつり給へり御かた」23オ

  かたみな心/\に御さうそく人/\のれうにく
  しあふきまてとり/\にしいて給へるありさま
  おとりまさらすさま/\につけてかはかりの御
  心はせともにいとみつくしたまつれはおかし
  うみゆるをひむかしの院の人/\もかゝる御いそ
  きはきゝたまうけれともとふらひきこえ給
  へきかすならねはたゝきゝすくしたるに
  ひたちの宮の御方あやしうものうるはしう
  さるへきことのおりすくさぬこたいの御心にて
  いかてかこの御いそきをよそのことゝはきゝす」23ウ

  くさむとおほしてかたのことなむしいてたま
  うけるあはれなる御心さしなりかしあをにひ
  のほそなかひとかさねおちくりとかやなにと
  かやむかしの人のめてたうしけるあはせのは
  かま一くむらさきのし△きりみゆるあられち
  の御こうちきとよきころもはこにいれ
  てつゝみいとうるはしうてたてまつれたま
  へり御ふみにはしらせたまふへきかすにも侍ら
  ねはつゝましけれとかゝるおりはおもたまへ
  しのひかたくなむこれいとあやしけれと人にも」24オ

  たまはせよとおひらかなりとの御らむしつけ
  ていとあさましうれいのとおほすに御かほあ
  かみぬあやしきふる人にこそあれかく物つゝ
  みしたる人はひきいりしつみ入たるこそよけ
  れさすかにはちかましやとて返ことはつかは
  せはしたなくおもひなむちゝみこのいとかな
  しうしたまひけるおもひいつれは人におとさむ
  はいと心くるしき人也ときこえたまふ御こう
  ちきのたもとにれいのおなしすちのうたあ
  りけり」24ウ

    我身こそ恨られけれから衣君かたもとに
  なれすとおもへはおほむてはむかしたにあり
  しをいとわりなうしゝかみゑりふかうつよう
  かたうかきたまへりおとゝにくき物のおかし
  さをはえねんし給はてこのうたよみつらむほ
  とこそましていまはちからなくてところせかり
  けむといとおしかりたまふいてこの返ことさは
  かしうともわれせんとの給てあやしう人
  のおもひよるましき御心はへこそあらてもあ
  りぬへけれとにくさかきたまうて」25オ

    唐衣又から衣からころもかへす/\も
  から衣なるとていとまめやかにかの人のたてゝ
  このむすちなれはものしてはへるなりとて
  みせたてまつりたまへはきみいとにほひやかに
  わらひたまひてあないとおしろうしたるやう
  にもはへるかなとくるしかり給ようなしこと
  いとおほかりやうちのおとゝはさしもいそかれ
  たまふましき御心なれとめつらかにきゝたまふ
  しのちはいつしかと御心にかゝりたれはとくま
  いり給へりきしきなとあへいかきりに又すき」25ウ

  てめつらしきさまにしなさせたまへりけにわさ
  と御こゝろとゝめたまふけることゝみたまふも
  かたしけなき物からやうかはりておほさるゐ
  のときにていれたてまつりたまふれいの御
  まうけをはさる物にてうちのおましいとに
  なくしつらはせたまうて御さかなまいらせた
  まふ御となふられいのかゝる所よりはすこし
  ひかりみせておかしきほとにもてなしきこ
  えたまへりいみしうゆかしう思きこえ給へと
  こよひはいとゆくりかなへけれはひきむすひ」26オ

  たまふほとえしのひたまはぬけしきなり
  あるしのおとゝこよひはいにしへさまのことはか
  けはへらねはなにのあやめもわかせたまふ
  ましくなむ心しらぬ人めをかさりて猶よの
  つねのさほうにときこえ給けにさらにき
  こえさせやるへき方はへらすなむ御かはらけま
  いるほとかきりなきかしこまりをはよにためし
  なきことゝきこえさせなからいまゝてかくしの
  ひこめさせ給けるうらみもいかゝそへはへらさら
  むときこえたまふ」26ウ

    うらめしや興津玉もをかつくまて磯
  かくれけるあまの心よとて猶つゝみもあへすし
  ほたれたまふひめ君はいとはつかしき御さま
  とものさしつとひつゝましさにえきこえ
  たまはねは殿
       よるへなみかゝるなきさにうちよせて
  あまもたつねぬもくつとそみしいとわりなき
  御うちつけことになんときこえたまへはいと
  ことはりになんときこえやる方なくていて
  たまひぬみこたちつき/\人/\のこるなく」27オ

  つとひたまへり御けさう人もあまたましり
  たまへれはこのおとゝかくいりおはしてほと
  ふるをいかなることにかとうたかひたまへり
  かのとのゝきむたち中将弁のきみはかりそほ
  のしり給へりける人しれすおもひしことをから
  うもうれしうもおもひなりたまふ弁はよくそ
  うちいてさりけるとさゝめきてさまことなる
  おとゝの御このみともなめり中宮の御たくひ
  にしたてたまはむとやおほすらむなとをの
  をのいふよしをきゝたまへと猶しはしは御心つ」27ウ

  かひしたまうてよにそしりなきさまにもて
  なさせたまへなにことも心やすきほとの人こそ
  みたりかはしうともかくもはへへかめれこなたを
  もそなたをもさま/\の人のきこえなやま
  さむたゝならむよりはあちきなきをなたら
  かにやう/\人めをもならすなむよきことに
  ははへるへきと申たまへはたゝ御もてなしに
  なんしたかひ侍へきかうまてこらむせられ
  ありかたき御はくゝみにかくろへ侍けるもさき
  の世のちきりをろかならしと申たまふ御」28オ

  をくり物なとさらにもいはすゝへてひきいて
  物ろくともしな/\につけてれいあることかき
  りあれと又ことくはへになくせさせたまへり
  おほ宮の御なやみにことつけたまうしなこりも
  あれはこと/\しき御あそひなとはなし兵部卿
  の宮いまはことつけやり給へきとゝこほりもな
  きをとをりたちきこえ給へとうちより御
  けしきあることかへさひそうし又またおほせ
  ことにしたかひてなむことさまのことはともかく
  も思さたむへきとそきこえさせ給けるちゝ」28ウ

  おとゝはほのかなりしさまをいかてさやかに又みむ
  なまかたほなることみえたまはゝかうまてこと/\
  しうもてなしおほさしなと中/\心もとなうこひ
  しう思きこえたまふいまそかの御ゆめもま
  ことにおほしあはせける女御はかりにはさたかなる
  ことのさまをきこえ給ふけり世の人きゝに
  しはしこのこといたさしとせちにこめたまへとく
  ちさかなきものはよの人なりけりしねんにいひ
  もらしつゝやう/\やうきこえいてくるをかのさか
  な物のきみきゝて女御のおまへに中将少将さふ」29オ

  らひたまふにいてきて殿は御むすめまうけた
  まふへかなりあなめてたやいかなる人二かたに
  もてなさるらむきけはかれもをとりはらな
  りとあふなけにのたまへは女御かたはらいたし
  とおほしてものものたまはす中将しかかしつ
  かるへきゆへこそ物したまふらめさてもたかい
  ひしことをかくゆくりなくうちいて給ふそ物い
  ひたゝならぬ女房なともこそみゝとゝむれと
  のたまへはあなかまみなきゝてはへりないしの
  かみになるへかなり宮つかへにといそきいてたち」29ウ

  侍しことはさやうの御返みもやとてこそなへて
  の女房たちたにつかふまつらぬことまており
  たちつかうまつれおまへのつらくおはします
  也と恨みかくれはみなおほゑみてないしのかみ
  あるはなにかしこそのそまんとおもふをひた
  うにもおほしかけけるかななとのたまふにはら
  たちてめてたき御中にかすならぬ人はましる
  ましかりけり中将の君そつらくおはする
  さかしらにむかへたまひてかろめあさけり給
  ふせうせうの人はえたてるましきとのゝう」30オ

  ちかなあなかしこ/\としりゑさまにゐさりし
  そきて見おこせたまふにくけもなけれといと
  はらあしけにましりひきあけたり中将はかく
  いふにつけてもけにしあやまちたることゝおもへ
  はまめやかにてものしたまふ少将はかゝるかた
  にてもたくひなき御ありさまををろかには
  よもおほさし御心しつめたまふてこそかたきいは
  ほもあはゆきになしたまふつへきおほむけ
  しきなれはいとようおもひかなひたまふときも
  ありなむとほほゑみていひゐ給へり中将もあ」30ウ

  まのいはとさしこもりたまひなんやめやすく
  とてたちぬれはほろ/\となきてこのきみ
  たちさへみなすけなくしたまふにたゝ御前の
  御心のあはれにおはしませはさふらふなりとていと
  かやすくいそしく下らうわらはへなとのつかうま
  つりたらぬさうやくをもたちはしりやすく
  まとひありきつゝ心さしをつくしてみやつかへ
  しありきてないしのかみにをれを申なした
  まへとせめきこゆれはあさましういかにおもひ
  ていふことならむとおほすに物もいはれ給はす」31オ

  おとゝこのゝそみをきゝたまひていとはなやか
  にうちわらひたまひて女御の御かたにまいり
  たまへるつゐてにいつらこのあふみの君こな
  たにとめせはをといとけさやかにきこえていて
  きたりいとつかへたる御けわひおほやけ人
  にてけにいかにあひたらむないしのかみのことは
  なとかをのれにとくはものせさりしといとまめ
  やかにてのたまへはいとうれしとおもひてさも御
  けしきたまはらまほしう侍しかとこの女
  御とのなとをのつからつたへきこえさせ給て」31ウ

  なむとなとたのみふくれてなむさふらひ
  つるをなるへき人ものしたまふやうにきた
  まふれはゆめにとみしたる心ちしはへりて
  なむむねにてをゝきたるやうに侍と申たまふ
  したふりいと物さはやかなりえみ給ぬへきをね
  むしていとあやしうおほつかなき御くせなり
  やさもおほしのたまはましかはまつ人のさき
  にそうしてましおほきおとゝの御むすめ
  やむことなくともこゝにせちに申さむことは
  きこしめさぬやうあらさらましいまにても」32オ

  申ふみをとりつくりてひゝしうかきいたされよ
  なかうたなとの心はへあらむをこらんせむには
  すてさせ給はしうへはそのうちになさけす
  てすおはしませはなといとようすかしたま
  ふ人のおやけなくかたはなりや山とうたはあし
  しもつゝけ侍なむむね/\しき方のこと
  はたとのより申させたまはゝつまこえのやう
  にて御とくをもかうふりはへらむとててをゝし
  すりてきこえゐたりみき丁のうしろなとに
  てきく女房しぬへくおほゆ物わらひにたへ」32ウ

  ぬはすへりいてゝなむなくさめける女御も御お
  もてあかみてわりなうみくるしとおほしたり
  とのもものむつかしきおりはあふみの君みる
  こそよろつまきるれとてたゝわらひくさに
  つくり給へとよ人ははちかてらはしたなめた
  まふなとさま/\いひけり」33オ

(白紙)」33ウ

【奥入01】仁和二年十二月十四日<戊/午>寅四剋行幸芹河野
    用鷹鷂也式部卿本康親王常陸太守貞
    固親王太政大臣<藤原/朝臣>左大臣<源朝臣>右大臣<源朝臣>
    大納言藤原朝臣<良世>中納言源朝臣<能有>在原朝臣<行平>
    藤原朝臣<山蔭>已下参議皆扈従其狩猟之儀
    一依承和故事或考旧記付故老口語而行事
    乗輿出朱雀門留輿砌上勅召太政大臣云
    皇子源朝臣定ー宜賜佩釼太政大臣伝
    勅定ー拝舞輿前帯釼騎馬皇子源
    朝臣正五位下藤原時平着摺衣午三剋」34オ

    亘猟野於淀河辺供朝膳<行宮在泉川鴨川/宇治河之会>
    海人等献鯉鮒天子命飲右衛門督
    諸葛朝臣奏歌天子和之群臣以
    次歌謳大納言藤原朝臣起舞未二剋
    入猟野放鷂撃鶉如前放隼
    撃水鳥坂上宿祢ム献鹿一太政大臣
    馬上奏之乗輿幸於左衛門権佐高経別
    墅供夕膳高経献贄勅叙正五位下太政
    大臣率高経拝舞(戻)」34ウ

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