横笛(大島本) First updated 1/15/2002(ver.1-1)
Last updated 4/14/2007(ver.2-1)
渋谷栄一翻字(C)

  

横笛

《概要》
 大島本は、青表紙本の最善本とはいうものの、現状では、後人の筆によるさまざまな本文校訂跡や本文書き入れ注記、句点、声点、濁点等をもつ。そうした現状の様態をそのままに、以下の諸点について分析していく。
1 大島本と大島本の親本復元との関係 鎌倉期書写青表紙本(池田本・伏見天皇本等)を補助的資料として
2 大島本の本文校訂に対校された本文系統
3 大島本の句点の関係
4 大島本の後人書き入れ注記

《書誌》

《翻刻資料》

凡例
1 本稿は、『大島本 源氏物語』(1996(平成8)年5月 角川書店)を翻刻した。よって、後人の筆が加わった現状の本文様態である。
2 行間注記は【 】- としてその頭に番号を記した。
2 小字及び割注等は< >で記した。/は改行を表す。また漢文の訓点等は< >で記した。
3 合(掛)点は、\<朱(墨)合点>と記した。
4 朱句点は「・」で記した。
5 本文の校訂記号は次の通りである。
 $(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
 ( )の前の文字及び( )内の記号の前の文字は、訂正以前の文字、記号の後の文字が訂正以後の文字である。ただし、なぞり訂正だけは( )の前の文字は訂正後の文字である。訂正以前の本行本文の文字を尊重したことと、なぞり訂正だけは元の文字が判読しにくかったための処置である。
6 朱・墨等の筆跡の相違や右側・左側・頭注等の注の位置は< >と( )で記した。私に付けた注記は(* )と記した。
7 付箋は、「 」で括り、付箋番号を記した。
8 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。
9 本文校訂跡については、藤本孝一「本文様態注記表」(『大島本 源氏物語 別巻』と柳井滋・室伏信助「大島本『源氏物語』(飛鳥井雅康等筆)の本文の様態」(新日本古典文学大系本『源氏物語』付録)を参照した。
10 和歌の出典については、伊井春樹『源氏物語引歌索引』と『新編国歌大観』を参照し、和歌番号と、古注・旧注書名を掲載した。ただ小さな本文異同については略した。

「よこ笛」(題箋)

  こ権大納言のはかなくうせ給にしかなし
  さを・あかすくちおしき物にこひしのひ給
  ひとおほかり・六条の院にもおほかたにつけ
  てたに・よにめやすき人のなくなるをは
  おしみ給御心に・ましてこれはあさ夕
  にしたしくまいりなれつゝ・人よりも
  御心とゝめおほしたりしかは・いかにそや
  おほしいつることは有なから・あはれはおほく
  おり/\(/\+に<朱>)つけてしのひ給・御はてにもす経
0001【御はて】-こその月二月ニ衛門督卒去今年一周忌也
  なと・とりわきせさせ給ふ・よろつもしらす」1オ

  かほにいはけなき御有さまを見給ふにも・
  さすかにいみしくあはれなれは・御心のうち
  に又心さしたまふて・こかね百りやうを
  なむ・へちにせさせ給ひける・おとゝは心も
0002【おとゝ】-致ー
  しらてそ・かしこまりよろこひきこえ
  させ給ふ・大将の君もことゝもおほくし給・
0003【大将の君】-夕
  とりもちてねんころにいとたみ給ふ・かの
0004【かの一てうの宮】-落
  一てうの宮をもこの程の御心さしふかく
  とふらひきこえ給ふ・はらからの君たち
  よりもまさりたる御心のほとを・いと」1ウ

  かくは思きこえさりきと・おとゝうへも
0005【うへも】-柏母
  よろこひきこえ給・なきあとにもよの
  おほえ・をもくものし給けるほとの・見ゆ
  るにいみしう・あたらしうのみおほし
  こかるゝことつきせす・やまのみかとは
0006【やまのみかと】-朱
  二の宮もかく人わらはれなるやうにて
0007【二の宮】-落
  なかめ給也・入道の宮もこのよの人めかし
0008【入道の宮】-女三
  きかたは・かけはなれ給ひぬれは・さま/\に
  あかすおほさるれとすへてこのよをおほ
  しなやましとしのひ給御をこなひの」2オ

  程にも・おなし道をこそはつとめ給らめ
  なと・おほしやりて・かゝるさまになりた
  まて後ははかなきことにつけても
  たえすきこえ給・御てらのかたはら
0009【御てらのかたはらちかきはやしに】-冷泉院ノ御集云花山院へたかんなまいらせ給ふとて よの中にふるかひもなき竹の子ハわかへんとしをたてまつる也(詞花331、原中最秘抄・異本紫明抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 返し としへぬるたけのよハひをとりかへしこのよをなかくなさんとそ思ふ(詞花332、原中最秘抄・異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄・紹巴抄・岷江入楚)
  ちかきはやしにぬきいてたるた
  かうな・そのわたりのやまにほれる所なと
0010【やまにほれる所なと】-拾遺第十六春のゝにところもとむといふなるハふたりぬハカリみてたりやキミ 賀朝法師(拾遺集1032・拾遺抄390、異本紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 返し 春のゝにほる/\みれとなかりけりよに所せき人のためにハ(拾遺1033・拾遺抄391、異本紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  の・山さとにつけてはあはれなれは・たて
  まつれ給とて御ふみこまやかなるはし
  に・はるの野山かすみもたと/\しけれと・
  心さしふかくほりいてさせて侍るしるし」2ウ

  はかりになむ
    よをわかれいりなむみちはをくるとも
0011【よをわかれ】-朱雀院
  おなしところを君もたつねよいとかたき
  わさになむあるときこえ給へるを・涙くみて
  み給ほとに・おとゝの君わたり給へり・例ならす
0012【おとゝの君】-源
  御まへちかきらいしともをなそあやしと
0013【らいし】-畳子 如高坏
  御覧するに・院の御ふみ成けり見給へはいと
  あはれなり・けふかあすかの心ちするを・た
0014【けふかあすかの心ち】-\<朱合点> けふかとも明日共しらぬ白菊のしらすいく世をふへき我身そ(拾遺集1257、河海抄・孟津抄)
  いめんの心にかなはぬことなとこまやかに
  かゝせ給へり・このおなし所の御ともなひを」3オ
0015【このおなし所の】-源

  ことにおかしきふしもなき・ひしりこと
  はなれとけにさそおほすらむかし・われ
  さへをろかなるさまに見えたてまつりて・
  いとゝうしろめたき御おもひのそふへかめる
  を・いと/\おしとおほす・御かへりつゝまし
  けにかき給て・御つかひにはあをにひの
  あや(や+一)かさねたまふ・かきかへ給へりける
0016【かきかへ給へりける】-入道の宮の返事かき損し給へるかあるを院の御覧せタル也
  かみのみ木ちやうのそはより・ほのみゆるを
  とりて見給へは・御てはいとはかなけにて
    うき世にはあらぬところのゆかしくて」3ウ
0017【うき世には】-女二宮
0018【あらぬところの】-拾 世の中にあらぬ所もえてしかなとしふりにたるかたちかくさん(拾遺集506、異本紫明抄・河海抄・細流抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)

  そむく山ちに思ひこそいれうしろめたけ
0019【うしろめたけなる】-源氏
  なる御けしきなるに・このあらぬところ・
  もとめ給へる・いとうたて心うしときこえ
  給・今はまほにも見えたてまつり給はす・
  いとうつくしう・らうたけなる御ひたひかみ・
  つらつきのおかしさ・たゝちこのやうに
  見え給て・いみしうらうたきを見たてま
  つりたまふにつけては・なとかうはなりに
  しことそとつみえぬへくおほさるれは・御
  木ちやうはかりへたてゝ・又いとこよなう・け」4オ

  とをく・うと/\しうはあらぬ程に・もて
  なしきこえてそおはしける・わか君はめ
0020【わか君】-薫
  のとのもとにね給へりける・おきて・はひいて
  給て・御袖をひきまつはれたてまつり
  給さま・いとうつくししろきうすものに
  からのこもんのこうはいの御そのすそ・いと
  なかくしとけなけにひきやられて・御身
  はいとあらはにて・うしろのかきりにきなし
  給へるさまは例のことなれと・いとらうた
  けにしろく・そひやかにやなきをけつりて」4ウ
0021【やなき】-柳

  つくりたらむやうなり・かしらは・つゆくさして
  ことさらに色とりたらむ心ちして・くちつ
  きうつくしう・にほひまみ・のひらかにはつかし
  う・かほりたるなとはなを・いとよく思ひいてら
0022【思ひいてらるれと】-柏
  るれと・かれはいとかやうに・きはは(△&は)なれたるき
  よらはなかりし物を・いかてかゝらん・宮にもに
  たてまつらす今よりけたかくもの/\しう
  さまことに見え給へるけしきなとは・わか御
  かゝみのかけにも・にけなからす見なされ
  給ふ・わつかにあゆみなとし給ほとなり・」5オ

  このたかうなのらいしに・なにともしらす
  たちよりて・いとあはたゝしうとりちらして・
  くひかなくりなとし給へは・あならうかはしや・
  いとふむ(む$<朱>)ひんなり・かれとりかくせ・くひ物に・
  めとゝめ給ふと・ものいひさかなき女はう
  もこそいひなせとてわらひ給・かきいたき
  給て・此君のまみのいとけしき有かな・
  ちいさきほとのちこをあまたみねはにや
  あらむ・かはかりのほとはたゝいはけなきも
  のとのみ見しを・今よりいとけはひことなる」5ウ

  こそ・わつらはしけれ・女宮ものし給めるあた
  りに・かゝるひとおひいてゝ心くるしきことたる(る$か<朱>)
  ためにもありなむかし・あはれそのをの/\の
  おい行すゑまては・見はてんとすらむやは・
  花のさかりはありなめと・うちまもりきこえ
0023【花のさかりは】-\<朱合点> 春ことに花のさかりハありなめとあひみんことハ命成けり(古今97・古今六帖4050、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  たまふ・うたてゆゝしき御ことにもと人々はき
  こゆ・御はのおいいつるにくひあてむとて・た
  かうなを・つとにきりもちて・しつくも・よゝと
0024【よゝとくひぬらし給へは】-\<朱合点> 敦忠集 五月雨のよゝとなきつゝ時鳥袖ノひるまもなきそかなしき(敦忠集4、花鳥余情・孟津抄・休聞抄・紹巴抄)
  くひぬらし給へは・いとねちけたる色このみ
  かなとて」6オ

    うきふしもわすれすなからくれ竹の
0025【うきふしも】-源氏柏木の事也
0026【くれ竹の】-古今 いまさらになにおいいてん竹の子の(古今957・古今六帖4120、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  こはすてかたき物にそありけるとゐてはな
0027【こはすてかたき】-わか君の事也
  ちて・の給かくれと・うちわらひて・なにとも
  おもひたらす・いとそゝかしう・はひおり・さは
  き給・月日にそへて此君のうつくしう・ゆゝし
  きまておいまさり給に・まことにこのう
  きふし・みなおほしわすれぬへし・此人の
  いてものし給へき契にて・さるおもひの外の
  こともあるにこそはありけめ・のかれかたかなる
  わさそかしと・すこしはおほしなをさる・」6ウ

  身つからの御すくせも・なをあかぬことおほ
  かり・あまたつとへ給へるなかにも・此宮こそは・
  かたほなるおもひましらす人の御有さまも・
  おもふにあかぬところなくて物し給ふ
  へきを・かくおもはさりしさまにて・見たて
  まつることゝ・おほすにつけてなむ・すきに
  しつみゆるしかたく・猶くちおしかり
  ける・大将の君は・かのいまはのとちめに・
  とゝめし一ことを・心ひとつにおもひいて
  つゝ・いかなりしことそとは・いときこえま」7オ

  ほしう御けしきもゆかしきを・ほの心えて
  おもひよらるゝこともあれは・なか/\うち
  いてゝきこえんも・かたはらいたくて・いかな
  らむつゐてに・このこと(と+の<朱>)くはしき有さま
  もあきらめ・又かの人の思ひいりたりし
  さまをも・きこしめさせむとおもひわ
  たり給・秋の夕のものあはれなるに・一条
0028【ものあはれなるに】-\<朱合点> 春ハたゝ花の一重にさくハかり物の哀ハ秋そまされる(拾遺集511、河海抄・孟津抄)
  の宮をおもひやりきこえ給て・わたり
  給へり・うちとけしめやかに御ことゝも・
0029【御ことゝも】-琴
  なとひき給ふほとなるへし・ふかくもえ」7ウ

  とりやらて・やかてその南のひさしに・いれ
  たてまつり給へり・はしつかたなりける・
  人のいさりいりつるけはひともしるく・きぬ
  のをとなひも・おほかたのにほひかうはしく・
  心にくき程なり・例のみやす所たいめん
  し給て・むかしの物かたりともきこえ
  かはし給・わか御殿のあけくれ・人しけくて
0030【わか御殿】-夕方のわか御殿ニ雲井ノ雁ノ御殿ニ御子共多く侍るをの給ふ也<右> トノ<左>
  物さはかしくをさなき君たちなと・す
0031【すたき】-多集ヲ万ニすたくとよむ あしかものすたくいけ水まさるともゐせきのかたニわれ恋めやハ 貫之(万葉2844・古今六帖1679、河海抄・孟津抄)
  たき・あわて給ふに・ならひ給て・いとしつ
  かに物あはれ也・うちあれたる心ちすれと」8オ

  あてにけたかくすみなし給て・せむさいの
  花とも・むしのねしけきのへとみたれたる
0032【むしのねしけき】-\<朱合点> 古今 君かうへし一むらすゝきむしのねの(古今853・古今六帖3704、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  夕はへを見わたし給・わこんをひきよせ給
  へれは・りちにしらへられて・いとよくひきな
  らしたる・ひとかにしみて・なつかしうおほ
0033【ひとか】-香
  ゆ・かやうなるあたりにおもひのまゝなる
  すき心ある人は・しつむることなくて・さま
  あしきけはひをもあらはし・さるましき
  なをもたつるそかしなと・おもひつゝけつゝ・
  かきならし給ふ・こきみのつねにひき給ひし」8ウ
0034【こきみ】-柏

  ことなりけり・おかしきてひとつなとすこし
  ひき給て・あはれいとめつらかなるねにかき
0035【いとめつらかなるねに】-かしハ木の引給ひし琴ノ音の事也
  ならし給しはや・この御ことにもこもりて
  侍らんかし・うけたまはりあらはして
  しかなとの給へは・ことのをたえにしのちより・
0036【ことのをたえにしのちより】-\<朱合点> 一条の御息所のいらへなり女二宮の事也 後拾遺 なき人ハをとつれもせて琴のをゝたちし月日そあへりきにける(後拾遺894、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  むかしの御わらはあそひのなこりをたに
0037【御わらはあそひ】-柏<右> 思ふとハつみしらせてきみゝなくさわらハあそひのてたハふれより<左>(出典未詳、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄)
  おもひいてたまはすなんなりにて侍へめる・院
  のおまへにて女宮たちの・とり/\の御ことゝ
0038【おまへ】-朱雀院御事也
  も・心見・きこえ給しにも・かやうのかたはお
  ほめかし(△△△&めかし)からすものし給となむ・さため」9オ

  きこえ給ふめりしを・あらぬさまに・ほれ/\
0039【あらぬさまに】-落
  しうなりて・なかめすくし給めれは・世のうき
0040【世のうきつまに】-\<朱合点>
  つまにといふやうになむ・見給るときこえ
  給へは・いとことはりの御おもひなりや・かきりたに
0041【いとことはり】-夕キリノ返答也
0042【かきりたに】-\<朱合点> 恋しさのかきりたにある世なりせはつらきをしいてなけかさらまし<朱>(古今六帖2571・是則集36、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄・一葉抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
  あると・うちなかめてことはおしやり給へ
  れは・かれなをさらはこゑにつたはることもや
0043【かれなを】-御息所の詞也
  と・きゝわくはかり・ならさせ給へ・ものむつ
0044【きゝわくはかり】-琴のねをききわく人のあるなへに今そ立いてゝしをゝもすくへき(古今六帖3392、紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄)
  かしうおもふたまへしつめる・みゝをたに・
  あきらめ侍らんときこえ給を・しかつたはる
0045【しかつたはる】-夕キリノ詞也
  中のをは・ことにこそは侍らめ・それをこそ」9ウ
0046【中のをは】-第二絃

  うけたまはらむとはきこえつれとて・みすの
  もとちかくおしよせ給へと・とみにしもうけ
  ひき給ふましきことなれは・しいてもきこえ
  給はす・月さしいてゝくもりなき空に・はね
0047【はねうちかはす】-\<朱合点> しら雲にはねうちかはしとふ雁の数さへ見ゆる秋のよの月<朱>(古今191・古今六帖300・新撰和歌44・和漢朗詠259、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  うちかはすかりかねも・つらをはなれぬうら
0048【つらをはなれぬ】-女二宮ハ今ハひとりねのおりふしなれハかくいへる也
  やましくきゝ給ふらんかし・風はたさむく
0049【風はたさむく】-\<朱合点> 秋風につらをはなれぬ雁かねハ春ハくるともかへらさらなん(後撰435、異本紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚) はたさむく風ハ夜ことにふきまさる我思ふいもハをとつれもせす(好忠集233、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄)
  ものあはれなるに・さそはれてさうのことを・
0050【さうのことを】-御息所の引給ふ也
  いとほのかにかきならし給へるも・おくふかき
  こゑなるに・いとゝ心とまりはてゝ・中/\に
  おもほゆれは・ひわをとりよせて・いとなつ」10オ
0051【ひわを】-夕

  かしきねに・さうふれんをひき給・おもひ
0052【さうふれん】-想夫恋<朱> 平調<墨>
  をよひかほなるは・かたはらいたけれと・これはこと
  とはせ給へくやとて・せちにすのうちをそゝの
  かしきこえ給へと・ましてつゝましき・さし
  いらへなれは・宮はたゝ物をのみあはれと・おほし
0053【宮は】-落
  つゝけたるに
    ことにいてゝいはぬもいふにまさるとは人
0054【ことにいてゝ】-夕霧 心にはした行水のわきかへりいはぬおもひそいふにまされる(古今六帖2648、異本紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  にはちたるけしきをそ見るときこえ給に・
  たゝすゑつかたを・いさゝかひき給ふ
    ふかきよのあはれはかりはきゝわけとこと」10ウ
0055【ふかきよの】-落葉宮

  よりかほにえやはひきけるあかすおかしき程に
  さるおほとかなるものゝねからに・ふるき人の
  心しめてひきつたへける・おなししらへのものと
  いへと・あはれに心すこきものゝかたはしを・かき
  ならしてやみ給ぬれは・うらめしきまてお
  ほゆれと・すき/\しさを・さま/\にひきいてゝも
  御らむせられぬるかな・秋のよふかし侍らんも
  むかしのとかめやと・はゝかりてなむ・まかて
  侍ぬへかめる・又ことさらに心してなむ・さふ
  らふへきを・この御ことゝものしらへかへす・また」11オ

  せたまはんや・ひきたかふることも侍ぬへきよ
  なれは・うしろめたく・こそなとまおにはあらねと・
  うちにほはしをきていて給・こよひの御
  すきには・人ゆるしきこえつへくなむあり
  ける・そこはかとなきいにしへかたる(る$り)にのみ・ま
  きらはさせ給て・たまのをにせむ心ちも
0056【たまのをにせむ】-\<朱合点> かた糸をこなたかなたによりかけてあハすハ何を玉のをにせん<朱>(古今483・古今六帖3210・是則集34、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  し侍らぬのこりおほくなんとて・御をくり物に
  ふえ(え=エ)をそへてたてまつり給ふ・これになむ
  まことにふるきことも・つたはるへくきゝをき
0057【ふるきことも】-向秀隣ニ笛吹聞テ作思旧賦
  侍しを・かゝるよもきふにうつもるゝもあは」11ウ

  れに見給ふるを・御さきにきをはんこゑなむ
  よそなからも・いふかしう侍るときこえ給へは・
  につかはしからぬすいしんにこそは侍へけれとて
0058【つかはしからぬすいしんに】-夕霧の詞笛を随身してまかて給ふ心也
  見給ふに・これもけによとゝもに・身にそへて
  もてあそひつゝ・身つからもさらにこれか・ねの
  かきりは・えふきとおさすおもはん人に・いかて
0059【おもはん人】-玄宗事
  つたへてしかなと・おり/\きこえこち給しを・
  思ひいて給ふに・今すこしあはれおほくそひ
  て・心見にふきならす・はんしきてうの
  なからはかりふきさして・むかしをしのふ」12オ

  ひとりことは・さてもつみゆるされ侍りけり・これ
0060【こと】-琴
  はまはゆくなむとて・いて給ふに
    露しけきむくらのやとにいにしへの秋
0061【露しけき】-御息所
  にかはらぬむしのこゑかなときこえいたし
0062【むしのこゑ】-横笛
0063【きこえいたし】-文選笛賦ニ如蜂蟻集
  たまへり
    よこふえのしらへはことにかはらぬをむなしく
0064【よこふえの】-夕霧 横笛二字出処也
  なりしねこそつきせねいてかてにやすらひ
  給ふに・夜もいたくふけにけり・殿にかへり給
  へれは・かうしなとおろさせて・みなね給に
  けり・この宮に心かけきこえ給て・かくねん」12ウ

  ころかりきこえ給そなと・人のきこえしらせ
  けれは・かやうによふかし給ふもなまにくゝて・
  いり給ふをも・きく/\ねたるやうにてものし
  給なるへし・いもとわれといるさの山(山+の)とこゑは
0065【いもとわれと】-\<朱合点> いもと我と<朱>いるさの山の山あらき手なとりふれそかほまさるかにやとくまさるにや催馬楽<墨>
  いとおかしうて・ひとりこちうたひて・こは・なと
  かく・さしかためたる・あなむもれや・こよひ
  の月を見ぬさとも有けりとうめき給ふ・
  かうしあけさせ給て・みすまきあけな
  とし給て・はしちかくふし給へり・かゝる
0066【かゝる夜の月に】-\<朱合点> 古今 かくはかりおしと思ふ夜をいたつらに(古今190・躬恒集379、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・弄花抄・一葉抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  夜の月に心やすくゆめ見る人はあるもの」13オ

  か・すこしいて給へ・あな心うなときこえ給へ
  と・心やましう・うちおもひてきゝ忍ひ給・
  君たちのいはけなく・ねをひれたるけはひ
  なと・こゝかしこにうちして・女はうもさし
  こみて・ふしたる人け・にきはゝしきに・有つる
  ところのありさま・おもひあはするにおほく
  かはりたり・このふえをうちふき給ひつゝ・
  いかになこりもなかめ給ふらん・御ことゝもは・しら
  へかはらす・あそひたまふらむかし・宮す
  所も・わこんの上すそかしなと・おもひやりて」13ウ

  ふし給へり・いかなれはこきみたゝおほかたの心
0067【こきみ】-柏
  はへはやむことなく・もてなしきこえなから・
  いとふかきけしきなかりけむと・それに
  つけても・いといふかしう・おほゆ見をとり
  せむこそ・いと/\おしかるへけれ・大かたのよに
  つけても・かきりなく・きくことは・かならす・
  さそあるは(は$か<朱>)しなとおもふに・わか御なかのうち
  けしきはみたるおもひやりもなくて・むつ
  ひそめたるとし月の程をかそふるに・
  あはれにいとかうおしたちて・をこりならひ」14オ

  給へるも・ことはりにおほえ給けり・すこしね
  いり給へる夢に・彼ゑもんのかみたゝありし
  さまのうちきすかたにて・かたはらにゐて
  此ふえをとりて見る・ゆめのうちにもなき人
  のわつらはしう・このこゑをたつねて・きた(た+る)と
  おもふに
    笛たけにふきよる風のことならはすゑ
0068【笛たけに】-夕霧ノ夢ニ見えける哥
  のよなかきねにつたへなむおもふかたことに
0069【おもふかたことに】-女二宮をもうしろみ給へとの心にや
  侍りきといふを・とはんとおもふほとに・わか
0070【わか君の】-夕子後源宰相
  君のねをひれて・なき給ふ御こゑに・覚」14ウ

  給ぬ・此君いたくなき給て・つたみなとし給へは
0071【つたみなとし給へは】-△和名[口+見]吐<ツタミ>小児ノ乳をあます事也
  めのともおきさはき・うへも御となふらちかく
  とりよせさせたまて・みゝはさみして・そゝ
  くりつくろひて・いたきて・ゐ給へり・いとよく
  こえて・つふ/\とおかしけなる・むねをあけて
0072【むねをあけて】-雲
  ちなとくゝめ給・ちこもいとうつくしうおはする・
  君なれは・しろくおかしけなるに・御ちはいと
  かはらかなるを・心をやりてなくさめ給ふ・おと
0073【おとこ君】-夕
  こ君もよりおはして・いかなるそなとの給ふ・
  うちまきしちらしなとして・みたりかは」15オ
0074【うちまき】-米

  しきに・夢のあはれもまきれぬへし・なや
  ましけにこそ見ゆれ・いまめかしき御
  有さまの程に・あくかれたまうて・よふかき
  御月めてにかうしも・あけられたれは・例の
0075【御月めてに】-\<朱合点> 大方ハ月をもめ(古今879・古今六帖339・業平集55、河海抄・孟津抄)
  ものゝけのいりきたるなめりなと・いとわか
  くおかしきかほして・かこち給へは・うちわらひ
0076【うちわらひて】-夕
  て・あやしのものゝけのしるへや・まろかうし
  あけすは・みちなくて・けにえいりこさら
  まし・あまたの人のおやになり給ふまゝ
  に・思いたり・ふかく物をこそ・の給なりにたれ」15ウ

  とて・うち見やり給へる・まみのいとはつかしけ
  なれは・さすかに物もの給はて・いてたまひね・
  見くるしとて・あきらかなるほかけを・さす
  かにはち給へるさまも・にくからす・まことに
  此君・なつみて・なきむつかりあかし給つ・
0077【なつみて】-煩万
  大将のきみも・ゆめおほしいつるに・此ふえの
  わつらはしくもあるかな・人の心とゝめて・
  おもへりしものゝゆくへきかたにもあらす・
  女の御つたへはかひなきをや・いかゝおもひつらん・
  この世にてかすにおもひいれぬことも・かの」16オ

  いまはのとちめに・一ねむのうらめしきも・
0078【とちめ】-閇眼
  もしはあはれとも思にまつはれてこそは・
  なかきよのやみにもまとふわさなゝれ・かゝれは
  こそはなにことにも・しふはとゝめしとおもふよ
  なれなと・おほしつゝけて・をたきにす経
0079【をたき】-貫之集ニアリ
  せさせ給ふ・又かの心よせのてらにもせさせ給
  て・此ふえをは・わさと人のさるゆへふかき物
  にてひきいて給へりしを・たちまちにほと
  けの道におもむけんも・たうときことゝは
  いひなから・あへなかるへしと思て・六条の」16ウ

  院にまいり給ぬ・女御の御方におはします
0080【女御の御方】-明中
  ほと成けり・三宮・みつはかりにて・なかにうつ
0081【三宮】-匂宮御事也
  くしくをはするを・こなたにそ又とりわきて
0082【こなたにそ】-紫養
  おはしまさせ給ける・はしりいて給て・大将
0083【大将】-夕
  こそ・宮いたき奉りて・あなたへゐておはせと・
0084【宮】-匂
  身つからかしこまりて・いとしとけなけに
  の給へは・うちわらひておはしませ・いかてかみ
0085【おはしませ】-夕
  すのまへをは・わたり侍らん・いときやう/\
0086【きやう/\】-軽々
  ならむ・とて・いたきたてまつりて・ゐ給へれ
  は・人も見す・まろ・かほはかくさむ・なを/\とて・」17オ
0087【人も見す】-匂詞

  御袖してさしかくし給へは・いとうつくしうて・
  いてたてまつり給ふ・こなたにも・二宮の
0088【こなた】-明中
0089【二宮】-女三
  わか君と・ひとつにましりてあそひ給ふ・
0090【わか君】-薫
  うつくしみて・おはします成けり・すみのまの
  ほとにおろし奉り給を・二宮見つけ給て・
0091【二宮】-蜻蛉式部卿
  まろも大将にいたかれんとの給を・三宮・
0092【三宮】-匂
  あか大将をやとて・ひかへ給へり・院も御覧して・
0093【院】-源
  いとみたりかはしき御有さまともかな・おほ
  やけの御ちかきまもりを・わたくしのすい
0094【御ちかきまもり】-近衛
  しんに・りやうせむとあらそひ給よ・三宮」17ウ
0095【三宮】-匂

  こそ・いとさかなくおはすれ・つねに・このかみにき
0096【このかみに】-二宮
  ほひまうし給ふと・いさめきこえあつかひ
  給ふ・大将もわらひて・二宮はこよなく・このかみ
  心に・ところさりきこえ給ふ・御心ふかく
  なむ・おはしますめる・御としのほとより
  は・おそろしきまて・見えさせ給ふなときこ
  え給ふ・うちゑみて・いつれも・いとうつくし
  とおもひきこえさせ給へり・見くるしくかる
  かるしき公卿の・みさなり・あなたにこそとて・
0097【あなたに】-明中
  わたり給はむとするに・宮たちまつはれて・」18オ
0098【わたり給はむ】-夕

  さらにはなれ給はす・宮のわか君は・宮たちの
0099【宮のわか君】-薫
  御つらには有ましきそかしと・御心(心+のうちにおほせと中/\その御心<朱>)はへ
  を・はゝ宮の御心のおにゝや・おもひよせ給らん
0100【はゝ宮】-女三
  と・これも心のくせに・いとおしうおほさるれは・
  いとらうたきものにおもひかしつききこ
  え給・大将は此君を・またえよくも見ぬ
0101【此君】-薫
  かなとおほして・みすのひまよりさしいて給へる
  に・はなのえたのかれておちたるをとりて・
  見せたてまつりて・まねき給へは・はしり
  おはしたり・ふたあゐのなをしのかきりを」18ウ
0102【なをしのかきりをきて】-おさなき人のきる御直衣といふ但昔裁やうかはる

  きて・いみしう・しろう・ひかりうつくしきこと・
  みこたちよりも・こまかにおかしけにて・
  つふ/\ときよらなり・なまめとまると
  ころもそひて見れはにや・まなこゐなと
0103【まなこゐ】-眼
  これは今すこしつよう・かとあるさまま
  さりたれと・ましりのとちめ・おかしう・
  かをれるけしきなと・いとよくおほえ給へり・
  くちつきのことさらにはなやかなるさま
  して・うちゑみたるなと・わかめのうちつけ
0104【わかめの】-夕
  なるにやあらむ・おとゝはかならすおほし」19オ
0105【おとゝは】-源
0106【おほしよすらん】-柏

  よすらんと・いよ/\御けしきゆかし・宮
  たちは・おもひなしこそけたかけれ・よのつ
  ねのうつくしきちこともと見え給ふに・この
0107【この君】-薫
  君はいとあてなるものから・さまことにおかし
  けなるを・見くらへたてまつりつゝ・いてあ
  はれもしうたかふゆへも・まことならは・ちゝ
0108【ちゝおとゝ】-致仕
  おとゝのさはかりよにいみしくおもひほれ
  たまて・ことなのりいてくる人たになき
  こと・かたみに見るはかりのなこりをたに・
  とゝめよかしと・なきこかれ給ふに・きかせ」19ウ

  たてまつらさらむ・つみえかましさなと
  おもふも・いていかてさはあるへきことそと・猶
  心えすおもひよるかたなし・心はへさへな
  つかしうあはれにて・むつれあそひたまへは・
  いとらうたくおほゆ・たいへわたり給ぬれ
0109【たいへ】-紫
  は・のとやかに御ものかたりなときこえて
  おはするほとに・日くれかゝりぬ・よへかの
  一条の宮に・まうてたりしに・おはせし
0110【一条の宮】-落
  有さまなときこえいて給へるを・ほゝゑみ
  てきゝおはす・あはれなるむかしのこと・かゝり」20オ
0111【あはれなるむかしのこと】-源ノ

  たる・ふし/\はあへしらひなとし給ふに・
  かのさうふれんの心はへは・けにいにしへの
  ためしにも・ひきいてつへかりけるおりなから・
  女はなを人の心うつるはかりのゆへよしをも・
  おほろけにては・もらすましうこそありけ
  れと・おもひしらるゝことゝもこそ・おほかれ・
  すきにしかたのこゝろさしを・わすれす・
  かく・なかきよういを・人にしられぬとならは・
  おなしうは・心きよくて・とかくかゝつらひ・
  ゆかしけなき・みたれなからむや・たか」20ウ

  ためも・心にくゝめやすかるへきことならむとなん
  おもふとの給へは・さかし人のうへの御をしへはかり
0112【さかし人】-夕
  は・心つよけにて・かゝるすきは・いてやと見
  たてまつり給ふ・なにのみたれか侍らむ
  猶つねならぬよのあはれを・かけそめ侍り・
  にし・あたりに心みしかく侍らんこそ・なか/\
  よのつねの・けんきありかほにはへらめとて
0113【けんき】-嫌疑
  こそ・さうふれんはこゝろとさしすきて・
  こといて給はんや・にくきことに侍らまし・
0114【こと】-言
  ものゝついてにほのかなりしは・おりからの・」21オ

  よしつきて・おかしうなむ侍し・なにことも
  人により・ことにしたかふわさにこそ侍るへかめれ・
  よはひなともやう/\いたう・わかひ給ふへき
  ほとにも・ものし給はす・又あされかましう・す
  き/\しきけしきなとに・物なれ(れ+な)ともし侍ら
  ぬに・うちとけ給にや・おほかたなつかしう・
  めやすき人の御有さまになむものし給
  けるなときこえ給ふに・いとよきついてつ
  くりいてゝ・すこしちかくまいりより給
  て・かの夢かたりをきこえ給へは・とみに・も」21ウ

  のもの給はて・きこしめして・おほしあはする
  こともあり・そのふえはこゝに見るへきゆへある
0115【そのふえは】-源
  物なり・かれは・やうせい院の御ふえなり・それ
  を・こしきふ卿の宮のいみしきものにし
0116【こしきふ卿の宮】-貞保親王陽成の御弟也清和御子染殿の后ノ子式部卿を模紫父有故也
  給けるを・かのゑもんのかみは・わらはよりいと
  ことなるねをふきいてしにかんして・かの
  宮のはきのえんせられける日・をくり物に・
  とらせ給へるなり・女の心は・ふかくもたとり
  しらす・しか・ものしたるなゝりなとの給て・
  すゑのよのつたへ・またいつかたにとかは思ひ」22オ

  まかへん・さやうにおもふなりけんかしなとおほ
  して・このきみも・いといたりふかき人なれは・
  思ひよることあらむかしと・おほす・その御け
0117【その御けしきを】-夕の心
  しきを見るに・いとゝはゝかりて・とみにも
  うちいてきこえ給はねと・せめてきかせた
  てまつらんのこゝろあれは・いましもことの
  ついてに・思ひいてたるやうにおほめかしう・
  もてなして(△&て)いまはとせしほとにも・とふらひ
  にまかりて侍しに・なからむのちのことゝも・
  いひをき侍し中に・しか/\なんふかくかし」22ウ

  こまり申よしを・返/\ものし侍しかは・いかなる
  ことにか侍りけむ・いまにそのゆへをなんえお
  もひ給へより侍らねは・おほつかなく侍ると・
  いとたと/\しけにきこえ給に・されはよと
0118【されはよと】-源心
  おほせと・なにかはそのほとの事あらはしの
  給へきならねは・しはしおほめかしくて・しか
  人のうらみとまるはかりのけしきは・なにの
  ついてにかは・もりいてけんと・身つからもえ
  おもひいてすなむさて・いましつかにかの
  夢はおもひあはせてなむきこゆへき・」23オ

  よるかたらすと(と+か<朱>)・女はうのつたへにいふなりと
  の給て・おさ/\御いらへもなけれは・うちいて
  きこえてけるを・いかにおほすにかと・つゝ
  ましくおほしけりとそ」23ウ

柏木の後年也
イ本
源四十九歳の事以名(名$哥)為巻名 薫二歳」24オ

よこふえ<墨> △校了<朱>」(表表紙蓋紙)

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