奥入・付箋 高千穂大学教授 渋谷栄一著(C)
2006年7月14日開設(ver.1-1)
2006年7月14日更新(ver.1-1)
更新内容

藤原定家と「源氏物語」注釈とその生成過程の研究


2.抽出本「青表紙本源氏物語」の「奥入・付箋」研究と資料

2-1 付箋
2-2 奥入
2-3 行間注記
2-4 資料

《概要》
 藤原定家は、「源氏物語」の研究を続けた。

《研究ノート》

1.付箋について
2.奥入について
3.行間注記について

《翻刻資料》
凡例
1 底本には、定家筆本(尊経閣文庫蔵 2帖 複刻日本古典文学館 昭和46年10月)、明融臨模本(東海大学蔵 8帖 桃園文庫影印叢書 平成2年6月)、大島本(古代学研究所 53冊 影印版 平成8年5月)を使用した。
2 「青表紙本源氏物語」の巻末「奥入」と本文中「付箋」を翻刻し、「奥入」の翻刻には、池田亀鑑『源氏物語大成』巻七「研究資料篇」所収の「奥入(第一次)」を参照した。「付箋」にはその丁数と表裏を記した。
3 「自筆本奥入」に見られる注記には、その注記番号を付けた。

桐壺(底本=明融臨模本)

【付箋】
01 かすしらす君かよはひを
  のはへつゝなたゝるやとのつゆと
  ならなん(3ウ)
02 ある時はありのすさひにゝくかりき
  なくてそ人のこひしかりける(9ウ 自筆本奥入01)
03 むはたまのやみのうつゝはさたかなる
  夢にいくらもまさらさりけり(11オ 自筆本奥入02)
04 とふ人もなきやとなれとくる春は
  やへむくらにもさはらさりけり(11ウ 自筆本奥入04・11)
05 ひとのおやの心はやみにあらねとも
  こを思道に迷ぬる哉(14オ 自筆本奥入06)
06 在天願作比翼鳥
  在地願為連理枝(19ウ 自筆本奥入08)
07 夕殿蛍飛思悄然
  秋灯挑尽未能眠(20オ 自筆本奥入15)
08 たますたれあくるもしらすねし物を
  ゆめにも見しと思ひかけきや(20ウ 自筆本奥入09)
09 春霄苦短日高起
  従是君王不早朝(20ウ 自筆本奥入16)

【奥入】
01 対此如何 芙蓉似面柳如眉(自筆本奥入07)
02 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝(自筆本奥入08)
03 たますたれあくるもしらすねし物を
  ゆめにも見しと思ひかけきや(自筆本奥入09)

 書加之
04 寛平遺誡(自筆本奥入10)
  外蕃之人必所召見<シム>者<モノ>在簾中見之
  不可直<タゝチニ>対<ムカフ>耳李環<クワイニ>朕已失<セリ>之慎之」36オ
05 <古哥也可用此一両首>(細字)
  今更にとふへき人もおもほえす
  やへむくらしてかとさせりてへ
06 とふ人もなきやとなれとくる春は
  やへむくらにもさはらさりけり(自筆本奥入11)
07 ま(ま=マ)くらことに(自筆本奥入13)
  あけくれのことくさといふ心也
08 かたみのかむさし(自筆本奥入14)
  長恨哥伝
  指碧衣女取金釵鈿合各折其中
  授使者曰為我謝太上皇謹献是物尋」36ウ
09 ともし火をかゝけつくして(自筆本奥入15)
  同長恨哥
  夕殿蛍飛思悄然 秋灯挑尽未能眠
10 あさまつりことはをこたらせ給(自筆本奥入16)
  春夜苦<イト>短<ミシカクシテ>日高<タケテ>起<オク> 従是<コレヨリ>君王不早朝<アサマツリコトシタマ>
11 右近のつかさのとのゐ申(自筆本奥入17)
  亥一刻左近衛夜行官人初奏時<終子/四刻>
  丑一刻右近衛宿申事至卯一刻
  内竪亥一刻奏宿簡」37オ
12 延長七年二月十六日当代源氏二人元服垂(自筆本奥入18)
  母屋壁代撤昼御座其所立倚子御座孫庇第
  二間有引入左右大臣座其南第一間置円座二枚
  為冠者座<並西面円座前置円座又其/下置理髪具皆盛柳筥>先両大臣被召
  着円座引入訖還着本座次冠者二人退下
  於侍所改衣装此間両大臣給禄於庭前拝
  舞<不着/沓>出仙華門於射場着沓撤禄次冠者二人
  入仙華門於庭中拝舞退出参仁和寺帰参先是
  宸儀御侍所倚子親王左右大臣已下同候有盃酒御遊」37ウ
  両源氏候此座<候四位親王/之次依仰也>深更大臣已下給禄両源
  氏宅各調屯食廿具令分諸陣所々
13 天慶三年親王元服日屯食事(自筆本奥入19)
  内蔵寮十具穀倉院十具已上検校太政大臣仰調之衛府
  五具<督仰/調之>列立南殿版位東其東春興殿西立辛櫃
  十合件等物有宣旨自長楽門出入上卿仰弁官分所々
  史二人勾当其事仰検非違使令分給弁官三大政官二
  左右近三左右兵衛二左右衛門二蔵人所二内記所一薬殿一
  御書所一内竪所一校書殿一作物所一内侍所四
  采女一内教坊一糸所一匣殿一」38オ

帚木(底本=明融臨模本・対校=大島本)

【付箋】
01 ちりをたにすへしとそおもふ
  咲しより
  いもとわかぬるとこ夏の花(30ウ 大島本ナシ・自筆本奥入08)
02 恋しきをなにゝつけてかな
  くさまん
  夢た(た$)に(に+も)みえすぬるよなけれは
  レテモアル也(54オ 大島本ナシ・自筆本奥入11)

【奥入】 01 まとのうちなるほとは(自筆本奥入16)
  長恨哥
  楊家有女初長成 養在深宮人未識

 伊行注
02 かすかのゝわかむらさきのすり衣
  しのふのみたれかきりしられす(自筆本奥入01)
03 しかりとてとすれはかゝりかくすれは
  あないひしらすあふさきるさに(自筆本奥入02)」60オ
04 はちすはのにこりにしまぬ心もて
  なにかはつゆをたまとあさむく(自筆本奥入03)
05 観身岸額離根草 論命江頭不繋舟(自筆本奥入04)
06 ひきよせはたゝにはよらて春駒の
  つなひきするそなはたつときく(自筆本奥入05)
07 あすか井にやとりはすへしかけもよく
  みもひもさむしみまくさもよし(自筆本奥入06)
08 いつらにかやとりとならむあさひこの
  さすやをかへのたまさゝのうへ(自筆本奥入07)」60ウ
09 ちりをたにすへしとそ思さきしより
  いもとわかぬるとこなつの花(自筆本奥入08)
10 それをたに思ふことゝてわかやとを
  見きとなかけそ人のきかくに(自筆本奥入09)
11 あふさかの名をはたのみてこしかとも
  へたつるせきのつらくもあるかな(自筆本奥入10)
12 こひしきをなにゝつけてかなくさまむ
  夢たにみえすぬるよなけれは(自筆本奥入11)

  (「空蝉」の奥入2条が竄入)」61オ

13 風俗(自筆本奥入12)
  玉たれのかめをなかにすへてあるしはもや
  さかなもりにさかなもとめにこゆるきのいそにわかめかりあけに
14 催馬楽(自筆本奥入13)
  我家はとはり帳もたれたるをおほきみきませ
  むこにせむみさかなになによけむあはひさたをか
  かせよけんあはひさたをかかせよけむ
15 二道(自筆本奥入14)
  父家居住せは孝心可有男家居住せは
  嫂仕ヲせよといふ事也」61ウ
16 三史 史記 漢書 後漢書(自筆本奥入15)
  五経 毛詩 礼記 左伝 周易 尚書
  三道 紀伝 明経 明法
 已上伊行所注也

17 ふたつのみち 両途(自筆本奥入17)
  文集 秦中吟
  天下無正声 悦耳即為娯 人間無正色
  悦目即為妹<カホヨキ> 顔色非相遠<ヒカレル> 貧富則有殊<ナルコト>
  貧為時所<ラル>弃 富為時所<ラル>趁 紅楼富家女」62オ
  金縷繍羅襦 見人不斂手 矯癡二八(二八=十六)初
  母兄未開口 已<ニ>嫁<テハ>不須臾 緑窓貧家女
  寂寞二十余 荊釼不直銭 衣上無真珠
  幾廻人欲娉<ヨハムト> 臨日又踟躊 主人会良媒
  置酒満玉壺 四座且勿飲 聴我歌両途
  富家女易<ヤスシ>嫁 嫁早軽其夫 貧家女難嫁
  嫁晩孝於姑<シウトメ> 聞若欲<ナラハ>娶<トラムト>婦 娶<トラムコト>婦意女何」62ウ

 追注加之
18 なかゝみ 何神字 長歟中歟(大島本「空蝉」14オに鼠入、明融本ナシ・自筆本奥入18)
  問安家答云なかゝみ天一神也
  世俗所称事旧事(△&事)可為中字歟
  金[木+貴]経云天一立中央為十二将定吉凶
  断事者也如此文者中字無不審歟
  凡天一神巡方八方猶天子巡狩方
  岳云々毎其方名号注異未有中
  有中(有中$<朱>)神之号只和語凡俗之詞所
  伝承也件方忌事古今所違来也

空蝉(底本=大島本)

【付箋】
01 <朱>夕やみは道たと/\し月待て
  かへれわかせこそのまにもみん(2オ 自筆本奥入01)
02 <朱>すゝか川いせをのあまのすて衣
  しほなれたりと人やみるらん(13オ 自筆本奥入03)

【奥入】
  二のならひとあれとはゝ木ゝのつき
  なりならひといふへくも見えす
  一説には
  巻第二 かゝやく日の宮
      このまきもとよりなし
  ならひの一 はゝ木ゝ<うつせみは/このまきにこもる>
      二 ゆふかほ」(前遊紙2ウ)

  (「帚木」の奥入1条が鼠入)」14オ

01 すゝか山いせをのあまのぬれ衣
  しほなれたりと人や見るらん(自筆本奥入03 「帚木」から移動)
02 とりかへす物にもかなや世中を
  ありしなからのわか身とおもはん(自筆本奥入04 「帚木」から移動)

夕顔(底本=大島本)

【付箋】
ナシ

【奥入】
01 揚名介(自筆本奥入14)
  此事源第一之難儀也非可勘知事
02 長恨哥
  七月七日長生殿夜半無人私語時
  在天願作比翼鳥天長地久有時尽
  此恨綿々無絶期(自筆本奥入05)
03 いはぬまはちとせをすくす心ちして
  まつはまことに久しかりけり此哥近代
  哥歟
  不立此證哥(自筆本奥入08)」60オ
04 貞信公於南殿御後被取釼鞘給抜
  釼給之由在大鏡無他所見歟人口伝歟(自筆本奥入09)」60ウ

若紫(底本=大島本)

【付箋】
ナシ

【奥入】
 伊行
01 あまのすむそこのみるめもはつかしく
  いそにおいたるわかめをそかる(自筆本奥入01)
02 従冥入於冥 法華経(自筆本奥入02)
03 可川(川$川<朱>)良支乃天良乃末戸名留や止与良乃
  天良乃尓之な留や 江の波為尓(尓$尓<朱>)之良太万々(々$之<朱>)
  川(川$徒<朱>)かく(かく$く<朱>)や末之良たましつくや於之止と於之止々
  之可之天波久尓曽左可江无や和伊戸曽止々
  せむ也於々止々止之屯とおゝし屯止と屯と(自筆本奥入03)
04 すみそめのくらふのやまに入ひとはことる/\」60オ
  そかへるへらなる(自筆本奥入04)
  此哥くらまの山也想は此哥之心更不叶
  くらふの山の本哥尤有事故歟 未勘出(自筆本奥入06)
05 みなといりのあしわけを舟さい(い$ハ<朱>)りおほみ
  おなし人にやたる(たる$こひ<朱>)むと思し(自筆本奥入07)
06 人しれぬ身はいそけともとしをへて
  なとこえかたきあふさかのせき(自筆本奥入08)
07 風俗常陸哥
  ひたちには田を(を+こそ)つくれ田れをかねやまをこえ野
  をもこえ君かあまたきませる(自筆本奥入09)」60ウ

末摘花(底本=大島本)

【付箋】
01 <朱>おもはすはおもはすとやはいひい(い=はイ)てぬ
  なと(と=そイ)世中のたまたすきなる(16ウ 自筆本奥入10)
02 <朱>白露(露=雪イ<墨>)はけふはなふりそ白たえの
  そてまきほさむ人もなき身に(31ウ 自筆本奥入04)
03 <朱>くれなゐを(を=のイ)色こき花とみしかとも
  人をあくたに(たに=にはイ)うつろひにけり(ろひにけり=るてふなりイ)(32オ 自筆本奥入05)
04 <朱>百千鳥さえつる春ハ物ことに
  あらたまれとも我そふりゆく(36オ 自筆本奥入07)
05 <朱>夢とこそおもふへけれとおほつかな   ねぬに見しかハわきそかねぬる
(36オ 自筆本奥入08)
06 <朱>我にこそつらさハ君かみすれとも
  人にすみつくかほのけしきよ(37ウ 自筆本奥入15)
07 <朱>にほはねとほおゑむ梅の花をこそ
  われもおかしとおりてなかむれ(おりてなかむれ=折テハヲラマホシケレ イ)(38オ 自筆本奥入16)

【奥入】
 伊行
01 琴詩酒伴皆抛我雪月花時
  尤憶君(自筆本奥入01)
02 伊毛可々度世奈可々度申支酒支可祢天也
  和可由可波比知可左乃比知可左のあめも
  やふらなむしてたをさあまやとり可左や
  とりて末からむしてたをさ(自筆本奥入02)
03 文集秦中吟
  夜深煙火尽 霰雪白紛々 幼者形不蔽」39オ
  老者体無温 悲端与寒気 併入鼻中辛(自筆本奥入13)
04 求子の哥をかすかにてはみかさ山とうたふ(自筆本奥入14)
05 文集六十二
  北窓三友
  今日北窓下 自問何所為 欣然得三友
  三友者為誰 琴罷輙挙酒 々罷輙吟詩
  三友逓相引 脩隈無已時 一弾△<カナフ>中心
  一詠暢四支 猶恐中有問 以酔弥縫之
  みつ(つ+の)ともはこれ也(自筆本奥入09)」39ウ

紅葉賀(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 山代<呂>
  や左伊シ奈やい可せむ/\
  波礼いかにせんなりやしなまた
  宇利多川末天仁や良以シ奈佐いしなや
  宇利多川末宇利多つまてに(自筆本奥入11)
02 文集巻第十 夜聞歌者 宿鄂州
  夜泊鸚鵡州 江秋月澄徹 隣船有歌者
  発調堪愁絶 歌罷継以泣 々声通復咽
  尋声見其人 有婦顔如雪 独倚帆墻立
  娉[女+亭]十七八 夜涙似真珠 雙々堕明月」38オ
  借間誰家婦 歌泣何凄切 一間一霑中
  低眉竟不説(自筆本奥入17)
03 律哥
  あつまやの末(=ま<朱>)やのあま利の曽のあまそゝき
  われたちぬれぬとのとひらかせ
  かすかひもと左しもあらはこそそのとひらかせ
  のとわれさゝめおしひらいてきませわれやひとつま(自筆本奥入12)
04 <多久行説>
  青海波詠 小野篁作也
  桂殿迎初歳 桐楼媚早年 剪花梅樹下」38ウ
  蝶鴛画梁辺
  此楽嵯峨天皇御時改平調為盤渉調(自筆本奥入01)
05 保曽呂倶世利 楽名也狛笛右楽也(自筆本奥入05)」39オ

花宴(底本=明融臨模本・対校=大島本)

【付箋】
01 おもはしと思ふも物をおもふなり
  思はしとたにおもはしやなそ(3ウ)
02 てりもせすくもりもはてぬ春の夜に
  おほろ月よにゝるものそなき(5オ 自筆本奥入01)
03 今こそあれわれも昔はおとこ山
  さか行時もあり(り+こ)し物を(11ウ 自筆本奥入04)
04 みる人もなき山里の桜はな
  ほかのちりなむ後そさかまし(12ウ 自筆本奥入05)

【奥入】
01 なをあらしに詞 万葉集第七
  黙然不有 なをあらしと事なしくさにいふ事ウ
       きゝしれはすくなかりけり(大島本奥入01)
02 貫河律
  ぬ支可波乃世々乃や波良多末久良
  や波良加尓 ぬ留与波名久 天於也左
  久留川末於や左久留川末波末之天留
  波之 之加左良波せ波支乃伊知尓久川
  加比尓加牟 久川加波々 千加伊乃保曽之支乎」17オ
  可戸 左之波支天 宇波毛と利支天
  美や知加与波牟(大島本奥入02)
03 石川呂
  伊之加波の己末宇と尓於比乎と良礼天
  可良支久以須留 己比須留
  伊可奈留以可奈留於比曽波奈多の於比の
  奈可波多伊礼太留加可也留可あ也留加
  奈可波太伊礼太留可(大島本奥入03)」17ウ

葵(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 [敬+手]掌上珠摧心中丹<古願文歟>
   此事非さ本文歟追可勘
02 有所嗟 二首 劉夢得
  [广+臾]令楼中初見時 武昌春柳似胸支」60オ
  相逢相失両如夢 為雨為雲今不知
  鄂渚濛々烟雨微 女郎魂遂暮雲帰
  只応長在漢陽渡 化作鴛鴦一隻飛
   夢得ハ白楽天同時之人也
   思ふ人にをくれてつくれる詩也(自筆本奥入19)
03 鴛鴦(鴦$鴦<朱>)瓦冷霜華重旧枕故
  衾誰与為(自筆本奥入18)」60ウ

賢木(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 ちはやふる神のいかきもこえぬへし
  いまはわか身のおしけくもなし
   <又>大宮人の見まくほしさに(自筆本奥入01)
02 史記 呂后本紀
  呂后怨戚夫人其子趙王目戚夫人断
  手足去眼[火+軍]耳飲[疔-丁+昔]薬使居厠
  中命曰人[汀-丁+大](自筆本奥入04)
03 漢書
  昔荊軻慕燕丹之義白虹貫日而
  太子畏之(自筆本奥入08)」62オ
04 甕頭竹葉経春熟階底蓋微入夏開(自筆本奥入12)
05 高砂律 長生楽破
  たかさこの左伊左々古乃太加左乎乃(自筆本奥入13)」62ウ

花散里(底本=定家本・対校=大島本)

【付箋】
01 いにしへのことかたらへはほとゝきす
  いかにしりてかなくこゑのする(4オ 自筆本奥入02)
02 たち花のかほなつかしみほとゝきす
  かたらひしつゝなかぬ日そなき(4オ 自筆本奥入03)

【奥入】
(ナシ)

須磨(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(「明石」巻に誤記されている)
01 せきふきこゆる<行平中納言哥可尋
         能宣朝臣哥似之>(自筆本奥入10)
02 三五夜中新月色 二千里外故人心(自筆本奥入11)
03 去年今夜侍清涼 秋憶詩篇独断腸
  恩賜御衣今在此 捧持毎日拝余香(自筆本奥入12)
04 馬長無驚時変改 一葉一落是春秋(自筆本奥入14)
05 史記
  趙高指鹿謂馬 秦二世時(自筆本奥入15)
06 王昭君
  翠黛紅顔錦繍粧 泣尋沙塞出家郷」52オ
  辺風吹断秋心緒 瀧水流添夜涙行
  胡角一声霜後夢 漢宮万里月前腸
  昭君若贈黄金賂 寔是終身奉帝王(自筆本奥入16)
07 たゝこれ西にゆくなり 未勘(自筆本奥入18)
08 うれしきもひとつなみたそこほれけり(自筆本奥入19)
09 文集 香鑪峯下新卜山居草堂
  五架之間新草堂 石階松柱竹編墻(自筆本奥入20)
10 十年三月卅日別徽之於(水+豊)上
  十四年三月十一日遇徽之於峡中
  停舟夷陵三宿之別言不然者以詩終寔」52ウ
  七言十七誼之中
  一別五年方見面 語到天明竟不眠
  生涯共寄蒼波上 郷国倶抛白日辺
  往時渺茫都似夢 旧遊零落半帰泉
  酔悲灑涙春盃裏 吟苦支顛暁燭前(自筆本奥入21)
   已上すまのまきの奥書也
            謬書之」53オ

明石(底本=大島本)

【付箋】
01 あたら夜の月と花とをゝなしくは
  あはれしれらん人に見せはや(32オ 自筆本奥入12)
02 忘れしとちかひしことを(の&を)あやまたす(たは&たす)
  みかさの山の神もことはれ(36ウ 自筆本奥入16)

【奥入】
(「須磨」巻に誤記されている)
01 伊勢海<律>(自筆本奥入07)
02 しなつ(つ$へ)うらふれひるのこの(自筆本奥入17)
  日本世紀 故略
  二男蛭児生而体如蛭及三年
  不起其父母之乗葦船而流
03 文集 琵琶引(自筆本奥入19)
  今年歓笑明年秋春風等閑度
  弟走従軍河夷死暮去朝朱顔色
  故門前寒落鞍馬稀老大嫁作商人婦」54オ
  商人重利軽離別前月浮梁買茶花<又>
  去来江口守空船遶船月明江水寒
  夜深忽夢少年事夢啼粧渡紅蘭<千>
  我聞琵琶已嘆息又聞此語重喞々
  同是天涯淪落人相悲何無曽相識
  我従去年辞帝京謫居病臥尋陽城
  尋陽小処無音楽終歳不聞糸竹声
  今夜聞君琵琶語如聴仙楽耳暫明
  莫辞更坐弾一曲為君翻作琵琶行
  咸我此言良久却坐従絃々転急」54ウ
  悽々不似向前声満座重聞皆淹泣
  就中泣下誰最多江別司馬青衫湿
04 まくなき(自筆本奥入20)
  可尋勘但凡俗之詞有之是
05 晋書(秋+山)康伝
  (秋+山)康嘗遊洛西暮宿美陽中
  引琴弾夜分忽有客詣々称是
  古人与康共談音律辞致清弁
  因索琴弾之而為庵陵散声調」55オ
  絶倫遂以桴康仍誓不伝人亦不言
  其姓字(自筆本奥入21)
   以上陬磨巻也誤而書此巻」55ウ

澪標(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

蓬生(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 五濁 見法華経(自筆本奥入05)
02 蒋(言+羽) 字元卿 舎中竹下開三逕(自筆本奥入06)
03 顔叔子といふ人おとこ他行のほと
 そのおとこのうたかる(る$日、日=ヒ)のために塔の
 かへをこほちてよもすからともし
 あかしてゐたる事也(自筆本奥入10)」32オ

関屋(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

絵合(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

松風(底本=大島本)

【付箋】
01 白雲のたえすたなひく山にたに
  すめはすみぬる世にこそ有けれ(22オ 自筆本奥入08)
02 誰をかもしる人にせん高砂の
  松もむかしの友ならなくに(22オ 自筆本奥入09)

【奥入】
01 史記項羽本記
  富貴不帰故郷如衣錦夜行(自筆本奥入04)
02 夜光玉卞和玉也
  斉威王二十四年与魏王会田於郊魏王問
  曰王亦有宝乎威王曰無有梁王曰若寡
  人国小尚有径寸之珠照車前後各十二
  乗者十枚奈何以万乗之国而無宝乎威
  王曰寡人之所以為宝与王異吾臣有檀
  子者使南城則楚人不敢為冦東方
  元泗上十二諸侯皆来朝吾臣有盻子」29オ
  者使守高唐則趙人不敢漁於河吾吏
  有黔夫者使守徐州則燕人祭北門
  趙人祭西門徒而従者七千余家臣有種
  首者使備盗賊則道不拾遺将以照千
  里豈特十二乗哉梁恵王慙不懌而去(自筆本奥入03・13)」29ウ

薄雲(底本=大島本)

【付箋】
01 いにしへの昔のことをいとゝしく
  かくれはそてのつゆけかkりける(34オ 自筆本奥入07)
02 むすほゝれもえしけふりもいかゝせん
  きみたにこめよなかき契を(35オ 自筆本奥入08)
03 むめかゝをさくらの花にゝほはせて
  やなきの(の=か)えたにさかせてし哉(38ウ 自筆本奥入11)

【奥入】
01 桜人<呂>(自筆本奥入04)
02 石季倫居金谷 春秋独林
  作五十里錦障(自筆本奥入10)
03 文集草堂
  春有錦繍谷花 夏有石門澗雲
  秋有虎溪月 冬有鑪峯雪(自筆本奥入11)」42オ

朝顔(底本=大島本)

【付箋】
01 すまのあまのしほやき衣はれゆけは
  うきたのみこそなりまさりけれ 此哥不審(12ウ 自筆本奥入03)
02 しなてるやかたをか山にいひにうへて
  ふせるたひ人あはれおやなし(15ウ 自筆本奥入04)
03 かけていへはなみたの川のせをはやみ
  心つからやまたもなかれん(18オ 自筆本奥入06)

【奥入】
01 世俗しはすの月夜といふ(自筆本奥入07)
02 たまさかにゆきあふみなるいさゝ(ゝ$ら<朱>)かは
  いさとこたへてわかなもらすな
   此哥強不可入歟(自筆本奥入08)」30オ

少女(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 孫康家貧無油常映雪読書車胤<字郎/子>
  南平人好読書無油夏月則絹嚢数十蛍火
  照書(自筆本奥入01)
02 文選豪士賦序云
  落葉俟微風以隕而風之力蓋寡孟甞遭
  雍門而泣而琴之感已未何者欲隕葉無所
  候烈風将墜之泣不足繁哀響也注曰
  草木遭霜者不可以風過又云雍門
  閣以琴見孟甞君々々々曰先未鼓琴亦
  能令文悲乎対曰臣竊為足下有所
  悲千秋萬歳後墳墓生荊棘游章牧」62オ
  竪躑躅其之歌其上孟甞君之尊貴亦
  猶若此乎於是孟甞君喟然太息涕
  承睫而未下雍門引琴而鼓之徐動宮
  微揮角羽終成曲孟甞君遂歔欷歔
  <悲怨/也>欷<泣余/声也>(自筆本奥入03・10)
03 更衣<律>(自筆本奥入04)
04 安名尊<呂>(自筆本奥入07)
05 五節にことつけてなおしなとさまかはれるいろゆるされて
  雖六位昇殿禁色雑袍之宣旨定有先例歟可尋勘(自筆本奥入08)
06 寮試」62ウ
  寮頭已下各一員博士以下各一員参着試
  庁出貢挙夾名等博士加署渡寮々頭見了
  下見以下以[竹+冊]匣三合置試衣座前又以読書
  等置頭博士秀才<謂之試/博士>并試衣等前次第
  召試衆々々把巻進(+出)幔門下允仰云仮<シルシ>に試
  衣捐立仮允又仰云敷居に試衣捐於敷
  居下脱沓着座置帙置頭仰云[竹+冊]衣唯之
  探[竹+冊]<三史之問今日/読[竹+冊]也>膝行置試博士前試博士
  対寮頭云史記乃本紀乃一乃巻三乃巻世
  家乃上帙乃五乃巻下帙乃一乃巻伝乃中乃帙乃」63オ
  七乃巻頭仰云令読与試衣各披帙把巻
  引音読之頭仰云古々末天試博士対頭云
  文得タリ頭云注せ寮甞捧簡称注由之
  試衣退出堂盤於幔外仰登料酒肴事(自筆本奥入09)
  (以下「初音」巻の注記鼠入)

玉鬘(底本=大島本)

【付箋】
01 <日本紀 ひるのこ>かそいろもいかにあはれとおもふらん
  三とせになりぬあしたゝすして(43ウ 自筆本奥入05)

【奥入】
01 世中にあらましかはと思ふ人
  なきかおほくもなりにけるかな
   非源氏以前哥歟不可為彼
   本哥如何(自筆本奥入02)
02 文集 楽府 伝戎人
  涼源ノ郷井<ヲハ>不<スナシヌ>得見<コト>胡地<ノ>妻子<ヲハ>
  虚<ムナシク>棄<ステ>捐<スツ>(自筆本奥入04)」53オ

初音(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(「未通女」から移動)
01 踏哥儀新儀式正月十四日打熨斗嚢持者
  位袍初音巻麹塵袍白下襲高巾子冠自所
  渡之当夜歌頭以下相率集中院暫也自月
  華門参入行列右近陣前庭時剋出御々座
  <孫庇南/四間平文御倚子>内蔵寮舁禄綿机立前庭
  <南第四/間>王卿依召参上<簀子南第三間菅/円座人多及南廊小板敷>賜」(未通女 63ウ)
  酒肴於王卿御厨子所供御酒踏哥人進
  南殿西頭始奏調子訖入仙華門列立庭上
  踏哥周旋三度後列立御前<内蔵寮当御前/立高机積綿百屯>言吹
  進出当綿案立奏祝詞懐嚢持二声嚢
  持称唯進而計綿数奏絹鴨曲次奏此殿曲訖
  着座<行立間掃部/寮当御階南辺>一許丈立床子為哥頭已下
  舞人以上座相対北為上仁寿殿西階南立床子
  為位管着座南廊壁下南西東上敷畳立
  机為打熨斗嚢持座着有諸司二分吹管者
  着之同壁下北面西上敷畳為殿上持臣座」(未通女 64オ)
  内蔵舁四尺台盤三基立舞人已上前八尺
  台盤一巻為管絃者<座并備/肴饌>次王卿已下々殿
  勧盃侍臣所雑色以下行酒三四巡後漸奏
  調子唱竹河曲即起床列立三四唱後舞人
  已上雙舞進半東階内侍二人相今被
  綿月舞且還<女蔵人二人持綿匣/候内侍後>但弾琴者
  已下男蔵人一人伝取御簾中於庭中被之
  奏我家曲退出自北此廊戸其後踏哥所々
  暁更帰参御座如初歌頭舞人賜座於庭中<相対/西上>
  管絃者在横切<北上/西面>打熨斗嚢持座在南<西上>」(未通女 64ウ)
  <北西折/薦座>出御之後歌頭已下依召参入<王卿先/候簀子>着
  座賜之酒饌此間奏管弦数巡之後賜禄
  有差事畢退出<哥頭支子染褂各一領哥掌踏掌/同色衾一条吹物弾物襖子一領>
  <打熨斗嚢持絹一疋>(自筆本奥入13)
02 踏哥曲 多久行
  万春楽踏哥之曲名也
  万春楽のことは
  はんすらく<二反>くれうえんそうおくせんねん<二反>
  くゑんせいくゑうくゑねんくわうれい<二反>
   これは催馬楽にて候多氏はかりつたへてゝすへて
   踏哥にはわかいへこのとのはんすらくなにそもそ」(未通女 65オ)
  このさいはら四をうたひ候 三反 呂に候(自筆本奥入05)
03 はちすの中のせかい 下品下生心歟(自筆本奥入07)
04 此殿(自筆本奥入06)」(未通女 65ウ)

胡蝶(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 かめのうへの山
  蓬莱の心也 楽府
  眼穿不見蓬莱島不見蓬莱不敢
  帰童男臥女舟中老徐福更成多
  誑誕(自筆本奥入01)
02 風生竹夜窓間臥月照松時台上
  行(自筆本奥入04)
03 和して又きよし
  文集第十九
  早夏朝帰閑斉独処
  四月天気和<ワシテ>且<マタ>清<キヨシ>」27オ
  緑槐陰<カケ>合<アフウテ>沙堤平ナリ(自筆本奥入06)」27ウ

蛍(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

常夏(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

篝火(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

野分(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

行幸(底本=大島本)

【付箋】
01 とにかくに人めつゝみを(+せ)きかねて
  したになかるゝをとなしの瀧(1オ 自筆本奥入01)

【奥入】
01 仁和二年十二月十四日<戊/午>寅四剋行幸芹河野
  用鷹鷂也式部卿本康親王常陸太守貞
  固親王太政大臣<藤原/朝臣>左大臣<源朝臣>右大臣<源朝臣>
  大納言藤原朝臣<良世>中納言源朝臣<能有>在原朝臣<行平>
  藤原朝臣<山蔭>已下参議皆扈従其狩猟之儀
  一依承和故事或考旧記付故老口語而行事
  乗輿出朱雀門留輿砌上勅召太政大臣云
  皇子源朝臣定ー宜賜佩釼太政大臣伝
  勅定ー拝舞輿前帯釼騎馬皇子源
  朝臣正五位下藤原時平着摺衣午三剋」34オ
  亘猟野於淀河辺供朝膳<行宮在泉川鴨川/宇治河之会>
  海人等献鯉鮒天子命飲右衛門督
  諸葛朝臣奏歌天子和之群臣以
  次歌謳大納言藤原朝臣起舞未二剋
  入猟野放鷂撃鶉如前放隼
  撃水鳥坂上宿祢ム献鹿一太政大臣
  馬上奏之乗輿幸於左衛門権佐高経別
  墅供夕膳高経献贄勅叙正五位下太政
  大臣率高経拝舞(自筆本奥入02)」34ウ

藤袴(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 三従
  女おさなき時父にしたかひさかり
  なる時おとこにしたかひ老後子に
  したかひ(自筆本奥入03)
02 よし野のたきをせかむよりも(自筆本奥入04)」19オ

真木柱(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 風俗 <上野哥>
  乎志多加戸加毛左戸支井留波良
  乃伊介乃也多末毛波万祢奈加利曽
  於比毛須加祢也万祢奈加利曽也(自筆本奥入05)」47オ

梅枝(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 梅之枝 呂」25オ

藤裏葉(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 宇陀法師
  新儀式<四月旬儀>
  若有奏絃哥事者近衛府音楽記
  内侍奉仰出御屏風南辺召大臣々々起
  座跪候御屏風南頭即勅可召堪管
  絃親王公卿等大臣奉仰退還召出居令
  置草塾於御帳東西一許丈大臣先進
  着草塾次人依召移着大臣召書司
  々々一人執和琴出車障子戸献之
  <謂宇陀法/師也>各奏絲竹或召加殿上侍臣能歌」30オ
  者預之王卿廻勧盃数曲之後奏見参
  長保二年十一月十五日<小野右府>新宮之後
  初出御南殿曰大臣以下管絃人着御前
  草塾次召書司々々
  女嬬凡宇陀法師出自御障子戸置
  草塾前又絲竹之器次々取出皆書
  司女官役之
  或記云
  延久四年宇治殿御命云於南殿御遊之
  時召宇陀法師<和/琴>其詞云<御タナ/ラシ>此詞有」30ウ
  故之宇陀法師以檜作之先一条院
  御時内裏焼已々時焼失之(自筆本奥入11)」31オ

若菜上(底本=明融臨模本・対校=大島本)

【付箋】
01 子城陰處猶残雪
  衙皷声前未有塵(42オ 自筆本奥入02)
02 おりつれは袖こそにほへ梅の花
  ありとやこゝに鴬のなく(43ウ 自筆本奥入03)
03 なき名そと人にはいひてありなまし
  心のとはゝいかゝこたへん(49オ 自筆本奥入04)
04 むらとりのたちにしわか名いまさらに
  ことなしふともしるしあらめや(49オ 自筆本奥入05)
05 いにしへのしつのをたまきくり返し
  むかしを今になすよしもかな(54ウ 自筆本奥入06)
06 見すもあらすみもせぬ人の恋しくは
  あやなくけふやなかめくらさむ(109オ 自筆本奥入09)

【奥入】
01 ちとせをかねてあそふつるのけ衣
  席田第二反度也(大島本奥入01 自筆本奥入07)
02 耶輸陀蘿かふくちのそのに
  たねまきてあはむかならす
  有為のみやこに
  雖有此院此哥之證拠不知誰説
  頗凡俗事歟(大島本奥入02)」111オ

若菜下(底本=明融臨模本・対校=大島本)

【付箋】
01 けふのみと春をおもはぬ時たにも
  立ことやすき花のかけかは(1ウ 自筆本奥入01)
02 ちはやふる神のいかきにはふくすも
  秋にはあへすもみちしにけり(16オ 自筆本奥入02)
03 もみちせぬときはの山は吹風の
  をとにや秋をきゝわたるらん(16オ 自筆本奥入03)
04 秋の夜のちよを一夜になせりとも
  こと葉のこりて鳥やなきなん(19オ 自筆本奥入05)
05 花のかを風のたよりにたくへてそ
  鴬さそふしるへにはやる(31オ 自筆本奥入06)
06 よるかたもありといふなり(り$る)ありそ海に
  たつ白なみのおなし所に(51オ 自筆本奥入09)
07 わか心なくさめかねつさらしなや
  をはすて山にてる月をみて(55ウ 自筆本奥入10)
08 恋しなはたか名はたゝし世中の
  つねなき物といひはなすとも(58オ 自筆本奥入11)
09 まてといふにちらてしとまる物ならは
  なにを桜に思まさまし(72ウ 自筆本奥入12)
10 のこりなくちるそめてたきさくら花
  有てよのなかはてのうけれは(73オ 自筆本奥入13)
11 夕くれはみちたと/\し月待て
  かへれわかせこそのまにもみむ(81オ 自筆本奥入14)
12 いかはかり恋の山路のしけゝれは
  いりといりぬる人まとふらん(87オ 自筆本奥入15)
13 夏のひのあさゆふすゝみある物を
  なとわか恋のひまなかるらん(89オ 自筆本奥入16)
14 冬なから春のとなりのちかけれは
  中かきよりそ花はちりくる(く$け)る(108オ 自筆本奥入17)

【奥入】
01 史記 周本紀
  <百七>(付箋)
  楚有養由基者善射者也去柳葉
  百歩而射百発而百中左右観者数十人
  皆曰善射ーーー(大島本奥入01 自筆本奥入20)
  <伊行>
02 毛詩云
  女ハ感陽気春思男々感陰気
  秋思(大島本奥入02 自筆本奥入08)」115オ
03 掛冠 懸車
  東観漢記曰王莽居構子宇諌
  莽而莽殺之逢萌謂其友人曰三綱
  絶矣不去禍将及人即解冠掛東門而去
  蒙求 逢萌掛冠
  後漢書逢萌字子康北海人掛冠避世
  牆東」115ウ
  懸車
  古文孝経曰
  七十老致仕懸其所仕之車置諸
  廟永使子孫監而則焉立身之給(給+終)
  其要然也(大島本奥入03 自筆本奥入21)」116オ

柏木(底本=定家本・対校=明融臨模本・大島本)

【付箋】
01 うくも世の思心にかなはぬか
  たれもちとせの松ならなくに(2オ 明融本付箋03 自筆本奥入01)
02 夏むしの身をいたつらになすことも
  ひとつおもひによりてなりけり(2ウ 明融本付箋04 自筆本奥入02) 03 人の世をおいをはてにしせましかは
  けふかあすかもいそかさらまし(4ウ 明融本付箋07 自筆本奥入03) 04 我こそや見ぬ人こふるくせつけれ
  あふよりほかのやむくすりなし(30ウ 明融本付箋23 自筆本奥入05) 05 春ことに花のさかりはありなめと
  あひ見むことはいのちなりけり(42ウ 明融本付箋38 自筆本奥入07)
06 よりあはせてなくなるこゑをいとにして
  わかなみたをはたまにぬかなむ(43オ 明融本付箋39 自筆本奥入08)

【奥入】
01 文集
  五十八自嘲詩
  五十八翁方有後静<シツカニ>思堪<タヘタリ>喜亦堪嗟<ナケク>
  持盃祝<イノリ>願<ネカフコト>無他語慎<ツゝシテ>勿<ナカレ<頑<カタクナニ>愚<ヲロカナルコト>似汝耶<チニ>
  白楽天は子なくして老にのそむ人也
  五十八にてはしめて男子むまれたりむまるゝ
  事をそきによりて生遅と名つくその子に
  むかひてつくりける詩也(明融本奥入01・大島本奥入01 自筆本奥入10)」51オ
02 妹与我<呂>(「横笛」鼠入 明融本奥入02・大島本奥入02)」51ウ

横笛(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
  柏木の後年也(自筆本奥入)
  <イ本>
  源四十九歳の事以名(名$哥)為巻名 薫二歳」24オ

鈴虫(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 目蓮初得道眼見母生所而堕地獄
  砕骨焼膚仍乗神通自行地獄
  逢卒相代と乞請母獄卒答云善
  悪業造者自受其果大小利注也
  更不可免則閇鉄城之戸成不見
  目蓮悲空帰但女往文者塗餓鬼中
  仍七月十五日設盂蘭盆様之是
  明事也(自筆本奥入04)
  横笛同年夏秋也」19オ

夕霧(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 波羅奈王之太子其名休魂容端正生而
  十三年不言人不聞声諸臣波羅門道
  士等誹謗地下作城欲埋之時大臣伏其車
  前重悲此事太子我将不言而欲埋
  将言怖入地獄自全身不容不救魂脱苦
  謗我不言者皆欲生声已酉于時国王
  夫人行迎太子々々向我昔先身為国王以
  正道雖治国有所過堕地獄六万余歳苦難
  忍我怖地獄故巻舌不言遂請出家父母
  聞之許之入深山求道命終生兜卒天」87オ
  太子者釈迦如来也(自筆本奥入14)
  今案此巻猶横笛鈴虫之同秋事歟(自筆本奥入)」87ウ

御法(底本=大島本)

【付箋】
01 うつせみはからをみつゝもなくさめつ
  ふかくさの山けふりたにたて(自筆本奥入05)

【奥入】
01 採菓汲水 法華経 提婆品
  <又>
  法華経をはかえし事はたきゝこり
  なつみ水くみつかへてそえし
  たきゝつくとは 仏涅槃の事也(自筆本奥入02)
  此巻 夕霧之後年歟(自筆本奥入)
  六条院五十 紫上四十三
  中宮者今年之間 立房歟無所見
  三宮四歟
  二品宮若君三歟」25オ

幻(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

匂兵部卿(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
  伊行
01 太子のわか名をとひえけむさとりも
  えてしかなと
  <此文之心/更不叶>七陀太子是釈迦仏也
  此本又未勘注(自筆本奥入04)
02 法華経
  有女人身猶有五障(自筆本奥入05)
03 賭射還饗<北山>
  大将先着座<垣下座上儲菅円座/親王来着次将上>次将着
  奥座<賭弓不儲土敷円座依蒼卒也相撲時敷/土敷円座或筵上敷之>」19オ
  次垣下公卿着座<相対/次将>次立机<或次将/机先立>三献訖
  有絃哥之興絃禄有差或命東遊時
  監以下舞<天禄例也>
  相撲之時三献之後示次将云々召相撲
  人少将就檻召相撲所将監仰之数巡之後
  相撲布引等事大将同仰手番(自筆本奥入06)
04 神のます
  多久行説
  方の大将かへりあるしの日
  神のますと云は風俗にて候」19ウ
  八乙女と申候哥にて候也
  此うたは二段のうた也
  やをとめはわかやをとめそたつやをとめ
  二段
  かみのますこのみやしろにたつやをとめ
  かみのやすともうたひ候云々
  このことはにはみつのせち候
  かさねたるおほせにしたかふへく候
  かくのこときこともいまの世に
  下らうのしりて候は候はす」20オ
  かく申上候へともひか事にもや
  候らむ
  非習其道不及重而為其篇
  自注之(自筆本奥入07)
  このまき一の名 かほる中将(自筆本奥入)」20ウ

紅梅(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 釈迦如来涅槃之後阿難昇高座
  結集諸経之時其形如仏仍泉会
  疑仏再出給(自筆本奥入02)
02 かわふえ
  或人云猶星をいふへき歟
  又云非楽笙之声音嘯歟(自筆本奥入03)」17オ

竹河(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 楽府上陽人
  未容君王得見面已被楊妃遥側目妬令
  潜配上陽宮(自筆本奥入01)
02 催馬楽
  このとのは(自筆本奥入05)
03  史記呉世家
  季札之勅使北過徐君々々好季札
  釼弗敢言季札心知之為使上国未
  献還至徐々君已死於是乃解其
  宝釼投糸之徐君冢樹而去従者」47オ
  四徐君已死尚誰吊字季札四不然
  始吾心已許之堂以死倍吾心哉(自筆本奥入11)」47ウ

橋姫(底本=明融臨模本・対校=大島本)

【付箋】
01 雁のくる峯の朝霧はれすのみ
  思つきせぬ世中のうさ(11ウ 自筆本奥入04)
02 をちこちのたつきもしらぬ山中に
  おほつかなくもよふことり哉(29ウ)
03 さす棹の雫にぬるゝ袖ゆへに
  身さへうきてもおもほゆる哉(35ウ 自筆本奥入05)
04 ことの音に嶺の松風かよふらし   いつれのおよりしらへそめけん(44オ 自筆本奥入06)

【奥入】
01 還城楽陵王をあやふめむとす
  日のくるゝにはちして日をむまにかき
  かへすといふ事也
  くはしくしらす
  <此等事可否難弁>
  史記
  魯陽以戈廻落日事歟(自筆本奥入03)
02 <同時哥歟不可為証哥歟>
  宇治河の浪の枕に夢さめて
  よるはゝしひめいやねさるらむ(自筆本奥入01)」54ウ

椎本(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 経云
  香山大樹竪那羅於仏前調瑠璃琴
  陣八万四千里音楽于時迦葉尊者
  威儀忘舞終(自筆本奥入02)」47オ

総角(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 角総<呂>(自筆本奥入08)
02 楽府 李夫人
  漢武帝初喪李夫人々々病時不肯別死
  後留得生前息君恩未尽念未已甘泉殿裏
  令写其丹青画出竟何答不言不笑愁殺君
  又令方士含霊薬玉釜煎錬金炉焚九華帳
  深夜悄々反魂香反夫人之魂在何許香焼引
  到焚香処既来何苦不須臾縹眇悠揚還
  滅去去何速兮来何遅是邪非邪両不知翠
  娥髣髴平生貌不似昭陽寝疾時魂之不」111オ
  来君心苦魂之来兮君思悲肖灯陽帳不
  得語安用暫来遥見傷心不掲武皇帝自
  古及今多若斯君不見穆王三日哭重璧
  台前傷盛姫又不見秦陵一椈涙馬嵬路
  上念楊妃縦令妍姿艶骨化為土此恨長在
  無銷期生思惑死思惑尤物盛人忘不得人非
  木石皆有情不如不遇傾城色(自筆本奥入02)
03 涅槃経
  雪山童子半偈投身
  諸行無常是生滅法生滅々已寂滅為楽(自筆本奥入31)」111ウ
04 伊勢集
  つねにやましくせさせ給けるをつゐに六月
  にかくれたまひにけるあさましくいみしくかな
  しくてつかうまつりし人さなからあつまりて
  よるひるなきかなしひこひたてまつるにのち
  の御わさのおりにやう/\なりぬあめのふるに
  心うしといひし人しもになんこもりゐたり
  けるうへの人あつまりて御わさのくみをなむ
  しけるにしもなる人いとはよりはてたまう
  つなりたゝいまなにわさをかしたまふこゝに」112オ
  はあめをなん見いたしてなかめ侍といひあけ
  たりけれはうへのおもとたちのかへしには
  いとはよりはてゝいまはねをなむよりあは
  せてなき侍るといひをこせたれはしも
  なる人よりあはせてなくなるこゑをいとに
  してわかなみたをはたまにぬかなん(自筆本奥入33)」112ウ

早蕨(底本=大島本)

【付箋】
01 日の光やふしわかねはいそのかみ
  ふりにしさとに花もさきけり(1オ 定家本付箋01・自筆本奥入01)
02 春かすみたつをみすてゝ行かりは
  花なきさとにすみやならへる(7ウ 自筆本奥入03)
03 月やあらぬ春や昔のはるならぬ
  我身ひとつはもとの身にして(11ウ 自筆本奥入06)
04 <おくにもある五文し不審まちかくこへし歟>   おほかたのわか身ひとつのうきからに   なへての世をもうらみつる哉(13ウ 自筆本奥入08)

【奥入】
(ナシ)

宿木(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 銷日不如碁(自筆本奥入01)
02 文選歎逝賦
  譬日及之在條恒雖尽心不悟(自筆本奥入02)
03 なにゝかゝれるといとしのひても事もつゝかす(自筆本奥入03)
04 あくるまさきてと(自筆本奥入04)
  松蘿契夫妻事也
  古詩与君結新婚 兎総附如首段(この注記は奥入03に当るもの 自筆本奥入05)
05 さしくみは(自筆本奥入11)
06 いなせともいひはなたれすうき物ハ 伊勢(自筆本奥入12)」117オ
07 李夫人(自筆本奥入18)
08 こかねもとむ
  王昭君事也 たくみは木工也(自筆本奥入19)
09 仏の方便にてなむかはねのふくろ経の文也
  むかし観音勢至の子にておはしましけるまゝ
  はゝのためにころされてけれはそのおやかはねを
  くひにかけてたまひてつゐに仏道えたまへる事也(自筆本奥入20)
10 長恨哥伝
  方士乃謁其術以索之不至又能遊神馭気
  出天界没地府求之又不見旁求四虚上下」117ウ
  東極地天海跨蓬壺見最高仙山上多
  楼閣西廟下有澗戸東々其門暑曰玉妃太真院
  方士抽簪町扉有雙鬟音如出応門于時雲海阮
  洞天日脱瓊戸重 悄然無声(自筆本奥入23)
11 於御前奏人々名事
  親王 其官の御子 無官ハ無名御子
  大臣<おほきおほいまうちきみ ひたりのおほいまうち君/みきのおほいまうちきみ>
  大納言以下三位以上 其官姓朝臣
  有兼官人其兼姓朝臣四位参議名朝臣
  四位朝臣 五位ハ名」118オ
  殿上六位ハ同五位地下六位加姓
  太上天皇 東宮同之
  親王以下三位以上ニ申詞親王<其官のみこ/無官ヲハ郎のみこ>
  大臣ヲハ其大殿 大納以下 其官或加姓
  四位ヲハ其官朝臣<不云/姓> 五位ヲハ名朝臣 六位ヲハ名<有官/加申>
  左右大将ヲハひたりみきとは申さす
  さ大将う大将と申(自筆本奥入31)」118ウ

東屋(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

浮舟(底本=明融臨模本)

【付箋】
01 あかさりし袖の中にや入にけん
  わか玉しゐのなに心ちする(自筆本奥入03)
02 春のよのやみはあやなし梅のはな
  色こそみえね香やはかくるゝ
03 さむしろに衣かたしき今夜もや
  われを待らんうちの橋姫(自筆本奥入06)
04 山しろのこわたの里に馬はあれと
  君をおもへはかちよりそゆく(自筆本奥入08)
05 たらちめのをやのかふこのまゆこもり
  いふせくもあるかいもにあはすて(自筆本奥入10)
06 恋せしとみたらし河にせしみそき
  神はうけすもなりにけらしも(自筆本奥入14)
07 君にあはむその日をいつと松の木の
  こけのみたれて物をこそおもへ(自筆本奥入16)
08 わか恋はむなしき空にみちぬらし
  おもひやれとも行かたもなし(自筆本奥入17)

【奥入】
01 道口律(自筆本奥入15)
02 大国には羊為食物如馬牛飼置矣
  臨食物相具屠所歩行也随歩死期近
  以之世間人如相待無常喩之
  経云歩々近死地人命亦如是
  けふも又午のかひをそふきつなる
  ひつしのあゆみちかつきぬらむ(自筆本奥入18)」81オ
03けさうする人のありさまのいへれうなき
  やまとものかたり在万葉集
  をとめつかの事也(自筆本奥入19)」81ウ

蜻蛉(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

手習(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
01 楽府 陵園妾
  陵園妾々々顔色如花命如葉命如葉
  薄将奈何(自筆本奥入09)
02 松門引暁月徘徊栢城昌一日風蕭瑟(自筆本奥入07)」82オ

夢浮橋(底本=大島本)

【付箋】
(ナシ)

【奥入】
(ナシ)

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