別本「源氏物語奥入」 高千穂大学教授 渋谷栄一著(C)
2006年9月10日開設(ver.1-1)
2006年9月10日更新(ver.1-1)
更新内容

藤原定家と「源氏物語」注釈とその生成過程の研究


4.流布本 高松松平文庫蔵「別本源氏物語奥入」研究と資料

4-1 増補部分について
4-2 資料

《概要》
 現在、「源氏物語奥入」の題名で最も数多く現存しているのがこの写本の系統である。よって、「流布本」の名称を付けて呼ぶことにする。
 本文系統としては、「青表紙本源氏物語」の「奥入・付箋」と近い関係を示す巻として、明融臨模本・大島本「帚木」、明融臨模本・大島本「花宴」などが挙げられる。

《研究ノート》

増補部分について
 「青表紙本源氏物語」(奥入・付箋)の内容及び配列と近い関係
 以下、その根拠となる資料を摘出し掲載する。

《翻刻資料》
凡例
1. 底本には、高松松平文庫本『源氏物語 奥入』(国文学研究資料館 紙焼資料)を使用し、同系統本の中央大学附属図書館蔵「別本 源氏物語奥入」(紙焼資料)と対校した。その際に同本を既に翻刻した、池田利夫・翻刻「別本『源氏物語奥入』翻印 中央大学付属図書館蔵本」(『鶴見大学紀要』昭和58年3月)を参照した(略号「中」)。ただし、漢字と仮名との表記上の相異は原則として省略した。
2.「自筆本奥入」と「青表紙本源氏物語」(付箋・奥入)」に見られる注記は、その番号を付けた。
3. 本文抄出や注記題目名は、注釈本文よりも一字分高く掲出し、また出典名や題、注釈本文についての注記文は一字分低く下げて掲出した。
4. 小字や割注は< >で括り、改行は/で記した。また、中央大学付属図書館本との異同(略号「中」)等、私による注記は( )で記した。

源氏物語奥入(内題)

きりつほ

 伊行
01 あるときはありのすさみにゝくかりき
  なくてそ人のこひしかりける(「ありのすさみに」-「ありのすさひに」中 自筆本奥入01・明融本付箋02)
02 むはたまのやみのうつゝはさたかなる
  夢にいくらもまさらさりけり(自筆本奥入02・明融本付箋03)
03 や重むくらしけれるやとのさひしきに
  人こそ見えね秋はきにけり(自筆本奥入03)
04 ひとのおやのこゝろはやみにあらねとも」1オ
  子をおもふみちにまよひぬるかな(「まよひぬるかな」-「まとひぬるかな」中 自筆本奥入06・明融本付箋05)
05  長恨歌
  帰来池苑皆依旧大液芙蓉未央柳対
  此如何不渡垂芙蓉如面柳如眉在天
  願作比翼鳥在地願為連理枝(「不渡垂」-「不涙垂」中 自筆本奥入07・08・明融本付箋06・奥入01・02)
06 たますたれあくるもしらてねしものを
  ゆめにもみしとおもひかけきや(「あくるもしらて」-「あくるをしらて」中 自筆本奥入09・明融本付箋08・奥入03)」1ウ

 書加之
07  寛平遺誡」1ウ
  外蓄之人所召見者在簾中見之不可直
  対耳李環朕已失之慎之(「慎之」-「[心+送]之」中 自筆本奥入10・明融本奥入04)
08 いまさらにとふへき人もおもほえす
  やへむくらしてかとさせりてへ
09 とふ人もなきやとほれとくるはるは
  やへむくらにもさはらさりけり(「ほれと」-「なれと」中 自筆本奥入11・明融本付箋04・奥入06)
10まくらことに あけくれのことくさを
  いふこゝろなり(明融本奥入07)
11  長恨歌伝 かたみのかむさし
  指碧衣女取金釵鈿各折其半授使」2オ
  者之為我謝太上皇謹献是物尋旧好(「かたみのかむさし」-ナシ中、「鈿各折」-「鈿合各折」中、「使者之為」-「使者曰為」中 「尋旧好」-「継旧好」中 自筆本奥入14・明融本奥入08)
12ともし火をかゝけつくして 同長恨哥
  夕殿蛍飛思悄然秋灯挑尽未能眠(「同長恨哥」-「同」中 「秋灯」-「孤灯」中 自筆本奥入15・明融本奥入09)
13あさまつりことをこたらせ給
  春霄苦短日高起徒此君王不早朝(「徒此」-「従此」中 自筆本奥入16・明融本付箋09・奥入10)
14右近のつかさのとのひ申
  戌一刻左近衛夜行官人初巻時<終子/四刻>
  丑一刻右近衛宿申事至卯一刻内竪宛
  一刻奏宿簡(「初巻時」-「初奏時」中 明融本奥入11)」2ウ
15 延喜七年二月十六日当代源氏二人元服垂母
  屋壁代撤昼御座其所主信子御座孫庇
  第二間有引入左右大臣座其南第一間置円座
  二枚為冠者座<置四面円座前置円座又/其下置理髪具皆盛柳筥>先両大臣
  被召着円座引入訖還着本座次冠者二人
  退出於侍所改衣裳此間両大臣給禄於庭
  前拝舞<不忘/留沓着>出仙花門於射場着沓披禄次
  冠者二人入仙華門於庭中拝舞退出
  参仁和寺帰参先是宸儀御侍所
  倚子親王左右太臣已下等同候有盃」3オ
  酒御遊両源氏候此座<候四位親王之/次依位也>
  深更太臣以下給禄両源氏宅各調屯
  食莫令分諸陣所々(「盛柳筥」-「感柳筥」中 「於庭」-「於座」中 「不忘/留沓着」-「不着/沓」中、「仙花門於射場」-「仙花門出射場」中、 「太臣已下」-「大臣已下」中 「同候」-「同位」中 「源氏候」-「源氏位」中 「候四位」-「位四位」中 「次依位也」-「次依仰之」中、「太臣以下」-「大臣以下」中 「源氏宅」-「源氏定」中 「屯食莫令」-「屯食著令」中 自筆本奥入18・明融本奥入12)
16 天慶三年
  親王元服日屯食事内蔵寮十具
  穀倉院十具以上検授太政大臣仰之
  調之衛府五具<督仰/調之>左馬寮五具<御監/仰之>
  列立南殿版位東其春興不面立重
  櫃十合件等物有宣旨自長楽門
  出入上卿仰弁官分所々史二人勾当
  其事仰検非違使令分給弁官」3ウ
  三 太政大臣二 左右近三 左右兵衛二 左
  衛門二 蔵人所二 内記所薬殿一 御書
  所一 内竪所一 校書所一
  作物所一 内侍所四 采女一
  内教坊一 先所御匣殿一(「検授」-「検校」中、「御監」-「将監」中 「不面立重櫃」-「不面立重」中 自筆本奥入19・明融本奥入13)」4ウ

   此巻一名壺前栽
    或本分奥渟有此名謬説也一巻二
    名也桐壺は正説也壺前栽は異説
    也(「奥渟」-「奥伝」中)」4オ

はゝ木々

01まとのうちなるほとは
   長恨歌
  楊家有女初長成 養在深窓人未識(自筆本奥入16・明融本奥入01・大島本奥入01)

 伊行注
02 かすかのゝわかむらさきのすりころも
  しのふのみたれかきりしられす(自筆本奥入01・明融本奥入02・大島本奥入02)
03 しかりとてとすれはかゝりかくすれは
  あないひしらすあふさきるさに(自筆本奥入02・明融本奥入03・大島本奥入03)
04 はちす葉のにこりしまぬこゝろもて」4ウ
  なにかは露をたまとあさむく(「にこりしまぬ」-「にこりにしまぬ」中 自筆本奥入03・明融本奥入04・大島本奥入04)
05 観身岸額離根草 論命江頭不繋舟(自筆本奥入04・明融本奥入05・大島本奥入05)
06 ひきよせはたゝにはあらてはることの
  つなひきするそなはたつときく(「あらて」-「あらす」中 「はることの」-「春駒の」中 自筆本奥入05・明融本奥入06・大島本奥入06)
07 あすかゐにやとりはすへしかけもよし
  みもひもさむしみまくさもよし(「かけもよし」-「かせもよし」中 自筆本奥入06・明融本奥入07・大島本奥入07)
08 いつこにかやとりとるらむあさひこの
  さすやをかへのたまさゝのうへ(「やとりとるらむ」-「やとりとまらむ」中 自筆本奥入07・明融本奥入08・大島本奥入08)
09 ちりをたにすへしとそおもふさきしより
  いもにわかぬるとこなつのはな(「いもにわかぬる」-「いもとりかぬる」中 自筆本奥入08・明融本付箋01・奥入09・大島本奥入09)」5オ
10 それをたにおもふことゝてわかやとを
  みきとなかけそ人のきなくに(自筆本奥入09・明融本奥入10・大島本奥入10)
11 あふさかのなをはたのみてこしかとも
  へたつるせきのつらくもあるかな(自筆本奥入10・明融本奥入11・大島本奥入11)
12 こひしきをなにゝつけてかなくさめむ
  夢たにこえすぬるよなけれは(自筆本奥入11・明融本付箋02・奥入12・大島本奥入12)
13 すゝかやま伊せをのあまのぬれころも
  しほなれたりと人やみるらん(「空蝉03」が竄入、但本文に異同あり)
14 とりかへすものにもかなや世の中を
  ありしなからのわか身とおもはむ(「空蝉04」が竄入、但本文に異同あり)」5ウ
15  風俗
  玉たれのかめをなかにうつてあるしは
  もやさかなもきに
  さかなもとめにこゆるきのいそにわかめ
  かりめけに(自筆本奥入12・明融本奥入13・大島本奥入13)
16  催馬楽
  わかいへはとはり帳をもたれたるをお
  ほきみきませむこにせむ
  みさかなにはなによけむあはひさたを
  かをよけんあはひさたをかをよけむ(「なによけむ」-「よけん」中 自筆本奥入13・明融本奥入14・大島本奥入14)」6オ
17二道 父家居住せは孝心可有男家
  居住せは嫂仕をせよといふなり(自筆本奥入14・明融本奥入15・大島本奥入15)
18三史 史記 漢書 後漢書
 五経 <毛詩/尚書> 礼記 左伝 周易
 三道 紀伝 明経 明法(「<毛詩/尚書> 礼記 左伝 周易」-「毛詩 礼記 左伝周易 尚書」中 自筆本奥入15・明融本奥入16・大島本奥入16)
   已上伊行所注也

19ふたつのみち 両途
   文集 秦中吟
  天下無正声 悦耳即為娯
  人間無正色 悦目即為妹」6ウ
  顔色非相遠 貧富則有殊
  貧為時所弃 富為時所趁
  紅楼留家女 金縷繍羅襦
  見人不斂手 矯癡二八初
  母兄未開口 已嫁不須臾
  線窓貧家女 寂寞二十余
  荊釼不直銭 衣上無真珠
  幾廻人欲娉 臨日又踟躊
  主人会良媒 置酒満玉壺
  四座且勿飲 聴我歌両途」7オ
  富家女易嫁 嫁早性其夫
  貧家女難嫁 嫁晩孝於姑
  聞君欲娶婦 娶婦意如何(「貧富」-「賀富」中 「線窓」-「緑窓」中 「性其夫」-「軽其夫」中 自筆本奥入17・明融本奥入17・大島本奥入17)

うつせみ

01 夕やみはみちたと/\し月まちて
  かへれわかせこそのまにもみむ(自筆本奥入01・大島本付箋01)
02 いなのゆのゆけたはいくついさしらす
  かそへすよますきみそしるらん(「いなのゆの」-「いよのゆの」中 自筆本奥入02)
03 すゝか河いせをのあまのすてころも」7ウ
  しほなれたりと人やみるらむ(自筆本奥入03・大島本付箋02・大島本奥入01)
04 とりとめすものにもかなやよの中を
  ありしなからのわか身と思はむ(「とりとめす」-「とりかへす」中 自筆本奥入04・大島本奥入02)

   二のならひとあれとはゝ木ゝのつきな
   りならひといふ人くもみえす
   一説には
   巻第二<かゝやく日の宮/このまきもとよりなし>
   ならひの一はゝ木ゝ<うつせみはその/まきにかける>
       二ゆふかほ(「といふ人くも」-「といふへくも」中 「ならひの一」-「ならひの」中 「うつせみはその/まきにかける」-ナシ中)

 追注加」8オ
06なかゝみ 何神子 長は中は同安
  家答云なからみ天一神也
  世俗所称事旧可同中字歟
  金[木+貴]経云天一立中央同十二将定吉
  凶断事者也如此者中字無不重歟
  凡天一神巡方八万猶天子巡狩方岳
  云々毎其方名号雖異未有中神之
  号只和凡俗之調所伝承也件方忌
  事古今所違来也(「帚木」注記が鼠入、「なからみ」-「なかゝみ」中 「同中字歟」-「同中字也」中 「天一立中央」-「天一中央」中 自筆本奥入18・大島本奥入18)」8ウ

(夕顔)

(ナシ)

わかむらさき

01 あまのすむそこのみるめもはつかしく
  いそにおひたるわかめをそつむ(自筆本奥入01・大島本奥入01)
02 きみをいかておもはむ人にわすらせて
  とはぬはつらきものとしらせむ(自筆本奥入04)
03 すみそめのくらふの山にいる人は
  たとる/\そかへるへらなる(自筆本奥入06・大島本奥入04)
04 いりゑこくたななしおふねこきかへり
  おなし人をやこひわたるへき(自筆本奥入07・大島本奥入05)」9オ

すゑつむはな

01 琴詩酒伴皆抛我 雪月花時尤憶君(自筆本奥入01・大島本奥入01)
02 伊毛可々度世奈可々度由支須支可
  祢天也和可由可波比知可左乃比知可
  左のあめもやふらむなむしてたを
  左安まやとり可左やとりて末加羅む
  してたをさ(「世奈可々度」-「世奈可度」中 自筆本奥入02・大島本奥入02)
03 わかそてはなにたつすゑのまつ山か
  そらよりなみのこえぬ日そなき(自筆本奥入03)
04 おもはすはおもはすとやはいひはてぬ」9ウ
  なとよのなかのたまたすきなる(自筆本奥入10・大島本付箋01)
05 したにのみこふれはくるし山のはに
  またるゝ月のあらはれはいかに(「またるゝ月のあらはれはいかに」-ナシ中 自筆本奥入11)
06ふるき 貂といふけたものゝかはのきぬを云也(「貂といふけたもの」-「といふけもの」中 自筆本奥入12)
07 しら露はけふはなふりそしろたへの
  そてまきほさぬ人もなきみに(自筆本奥入04・大島本付箋02)
08 くれなひをいろこきはなとみしかとも
  人をあくたつうつろひにけり(自筆本奥入05・大島本付箋03)
09 あらたまのとしたちかへるあしたより
  またるゝものはうくひすのこゑ(自筆本奥入06)」10オ
10 もゝ千とりさえつる春はものことに
  あらたまれともわれそふり行(自筆本奥入07・大島本付箋04)
11 夢とこそおもふへけれとおほつかな
  ねぬにみしかはわきそかねつる(「わきそかねつる」-「めきそかねつる」中 自筆本奥入08・大島本付箋05)
12  文集秦中吟
  夜深煙火尽 霰雪白紛々
  幼者形不蔽 老者体無酒
  怨端与寒気 [水+奇]入鼻中事(「怨端」-「悲論」中 自筆本奥入13・大島本奥入03)
13 求子のうたをかすかにては三笠山と
  うたふ(自筆本奥入14・大島本奥入04)
14 平中妻哥云々」10ウ
  われにこそつらさは君かみすれとも
  人にすみつくかほのけしきよ(自筆本奥入15・大島本付箋06)
15 にほはねとほゝゑむ梅のはなをこそ
  われもおかしとをりてなかむれ(自筆本奥入16・大島本付箋07)

 追注
16みわかむとせり 玉結を云(「玉結」-「玉の緒」中 自筆本奥入17)
17  文集<六十二>
   比窓<三友>
  今日北窓下 自間何所為
  欣然得三友 無友者為誰
  琴罷輙挙酒 酒罷旅吟得」11オ
  三友適相引 酒環無已時
  一弾慥中心 一詠暢四友
  猶恐中有間 以酔諏縫之
   みつのともはこれなり(「比窓<三友>」-「北窓三友」中 「酒罷旅吟得」-「酒罷後吟得」中 「一詠暢四友」-「一詠場四友」中 自筆本奥入09・大島本奥入05)

もみちの賀

01 わかやとのまちしなてしこいつしかも
  はなはさかなんよそへてもみむ(「はなはさかなん」-「はなはかなむ」中 自筆本奥入02)
02 しほみてはいりぬるいその草なれや
  みらくすくなくこふらくのおほき(自筆本奥入03)」11ウ
03 い勢のあまのあさな夕なにかつくてふ
  みるめに人をあくよしもかな(自筆本奥入04)
04 保曽呂倶世利<楽名也柏留也左楽也>(「柏留也」-「拍留也」中 自筆本奥入05・大島本奥入05)
05 おほあらきのもりの下くさ老ぬれは
  こまもすさめすかる人もなし(自筆本奥入06)
06 ひまもなくしけりにけりな大あらきの
  もりこそ夏のかけはしりけれ(「かけはしりけれ」-「風はしりけれ」中 自筆本奥入07)
07 津のくにのなからのはしの橋はしら
  をひぬる身こそかなしかりけれ(自筆本奥入08)
08 にくからぬ人のきせけるぬれきぬは」12オ
  おもひにあへすいさかはきなむ(「ぬれきぬは」-「ぬれころも」中 自筆本奥入09)
09 こひしさのかきりたにある世なりせは
  つらきをしゐてなけかさらまし(自筆本奥入10)
10  山代呂
  や左伊之奈やい可耳せん/\波礼いかに
  せむなりやしなまし宇利多川
  末天仁や良い之奈佐い志那や宇利
  多川末宇利多つまてに(「山代呂」-「山代」中 「宇利多川」-「年利多利」中 「良い之奈」-「良いと奈」中 「宇利多川末」-「年利たつ末」中 「宇利多つまてに」-「年利たつまてに」中 自筆本奥入11・大島本奥入01)
11  文集巻第十 夜聞歌者<宿利州>
  夜宿鸚鵡洲 江秋月澄徹」12ウ
  隣船有歌者 発調堪愁絶
  歌罷継以位 江声道復首
  庭声見其人 有婦顔如雷
  楊縷帆情立 娉[女+亭]十七人
  夜渡似真珠 雙々堕明月
  借問誰家婦 歌注何[玉+婁]切
  一同一霑円 位眉竟不[言+宛](「庭声」-「期声」中 「如雷」-「如雪」中 「楊縷」-「掲縷」中 「堕明月」-「随明月」中 「一霑円」-「一霑切」中 自筆本奥入17・大島本奥入02)
12 あつまやのまやのあまりのあまそゝき
  われたちぬれぬこのとひらかせ
  かすかひもとさしもめらはそのとの」13オ
  とわれさしめおしひらきてきませわ
  れやひとつま(「とさしもめらは」-「はましもめらはこそ」中 「われさしめ」-「はれさゝめ」中 自筆本奥入12・大島本奥入03)
13 わかせこかくへきよひなりさゝかにの
  くものふるまひかねてしるしも(自筆本奥入13)
14 くれなゐのこそめの衣したにきて
  うへにとりきはしるからむかも(「くれなゐのこそめの衣したにきてうへにとりきはしるからむかも」-ナシ中 自筆本奥入14)
15 わかれての後そかなしきなみた川
  そこもあらはになりぬとおもへは(「わかれての」-「わかれては」中 「そこもあらはに」-「それともあらはに」中)
16 いぬかみのとこの山なるいさゝかは
  いさとこたへてわかなもらすな」13ウ
17  青海波詠 小野篁作之
  椿殿迎初歳 相檪媚早年
  前花梅樹八 [虫+糸]鴛玉契辺
   此楽嵯峨天皇御時皮平調同盤渉
   調(「椿殿」-「桂殿」中 「相檪」-「桐檪」中 「樹八」-「槙八」中 「[虫+糸]鴛」-「[虫+糸]鴛」中 「皮平調」-「波平調」中 自筆本奥入01・大島本奥入04)

(花宴)

01なをあらしに詞
  万葉第七
  点愁不有 なをあらしと事なし
  くさにいふことをきゝしならくはすく
  なかりけり(「事なしくさに」-「事なしくさす」中 「きゝしならくは」-「きゝしれらくは」中 明融本奥入01・大島本奥入01)」14オ
02 てりもせすくもりもはてぬ春のよの
  おほろ月よにゝるものそなき(明融本付箋02)
03  貫河<律>
  ぬ支可波乃世々の也波良高楽久
  良也波良加尓ゐ留与波名久天於
  也左久留川末於や左久留川末波
  末之天留波々々加左良波や波支乃
  伊知尓久川加比尓加年久川加波
  々千加伊乃保曽之支乎可戸左之波
  支天宇波尾々利支天美や知加与」14ウ
  波牟(「世々の也」-「せこまちなり」中 「加与波牟」-「加与波年」中 「尾々」-「瓦々」中 自筆本奥入03・明融本奥入02・大島本奥入02)
04 今こそめれわれもむかしはおとこ
  山さかゆくときもありこしものを(自筆本奥入04・明融本付箋03)
05 みる人もなき山さとのさくらはな
  ほかのちりなむ後そさかまし(自筆本奥入05・明融本付箋04)
06  石川<呂>
  伊之加波のこ末宇と尓於比乎と良
  礼天可良支久以須留己比須留
  伊可奈留以可奈留於暮波奈多の
  於比の奈可波亭伊礼太留加可也
  留可女也留加余可波太伊礼太留可(「可良支」-「可良よ」中 「伊可奈留」-「伊可尓留」中 「於暮波」-「於比暮波」中 自筆本奥入06・明融本奥入03・大島本奥入30)」15オ

あふひ

01 ときしもあれ秋やは人にわかるへき
  さるはよさむになれるころしも(自筆本奥入09)
02 神な月いつもしくれはふりしかと
  かくそてひつるをりはなかりき(自筆本奥入10)
03 しら雲のこゝのへにたつみねなれは
  大うちやまとむへもいひけり(自筆本奥入11)
04 いろならはうつるはかりもそめてまし
  おもふこゝろをしる人のなき(自筆本奥入12)
05 みなれきのみなれのなれてはなれなは」15ウ
06 すゑの露もとのしつくや世のなかの
07  有所嗟二首 劉夢得
  [广+臾]令僂中初見時武昌春柳似腰支
  相逢相失両如暮為雨為雲令不知
  鄭緒濛々煙雨微女郎魂遂暮雲
  帰只応長右漢陽渡任作鴛鴦一
  集飛<夢得は白楽天同時之人なり/おもふ人におくれてつくれる詩也>(「僂中」-「[糸+婁]中」中 「鄭緒」-「邦緒」中 「煙雨微」-「煙微」中 「遂暮雲」-「逐暮雲」中 「任作」-「住作」中 自筆本奥入19・大島本奥入02)
08 わかくさのにゐたまくらをまきそへて」16オ
  よをやつたえむにくからなくに(「わかくさの」-「わかくさを」中 自筆本奥入15)
09 みかりするかりはのをのゝならしはの
  なれはまさらてこひそまされる(自筆本奥入16)
10 あたらしくあくることしをもゝとせの
  はるやきぬるとうくひすそなく(自筆本奥入17)
11 鴛鴦尾冷霜華重 旧枕故衾誰
  与為(自筆本奥入18・大島本奥入03)

さかき

01 千はやふるかみのいかきもこえぬへし」16ウ
  いまはわか身のおしけくもなし
   又大みやひとのみまくほしさに(自筆本奥入01・大島本奥入01)
02 あまのはらふみとゝろかしなるかみも
  おもふなかをはさくるものかは(自筆本奥入02)
03 よにふれはうきこそまされよしのやま
  いはのかけみちふみならしてむ(「うきこそ」-「うさこそ」中 自筆本奥入03)
04  史記 呂后本記
  呂后怨戚夫人其子趙玉因戚夫
  人断手足去眼[火+軍]耳飲痛薬使
  居厠中命日人[王+比](「呂后本記」-「呂后本紀」中 「人断手足」-「人断乎是」中 「[火+軍]耳」-「[火+辛]耳」中 自筆本奥入04・大島本奥入02)」17オ
05 あまのとをおしあけかたの月みれは
  うき人しもそこひしかりける(自筆本奥入05)
06 いにしへのしつのをたまきくりかへし
  むかしをいまになすよしもかな(自筆本奥入06)
07  漢書
  昔荊軒慕燕舟之義 白虹貫日而
  太子畏之(「荊軒慕」-「荊斬暮」中 「燕舟」-「燕丹」中 自筆本奥入08・大島本奥入03)
08 やまさくらみにゆくみちをへたつれは
  かすみも人のこゝろなるへし(自筆本奥入09)
09 かすならぬ身のみものうくおもはへて」17ウ
  またるゝまてもなりにけるかな(自筆本奥入10)
10 音にきく松かうらしまけふそみる
  むへもこゝろあるあまもすみけり(「あまもすみけり」-「あまはすむなり」中 自筆本奥入11)
11 座丸頭竹葉経春熟 [人+比]底薔々故入
  夏篝(「座丸頭」-「甕頭」中 「[人+比]底薔々故入夏篝」-「階底薔微入夏開」中 自筆本奥入12・大島本奥入04)
12  高砂<律> 長生楽破
  たかさこの左伊左々右能立加左乎
  乃戸尓太天留了良大夫太万川波
  木多万や名支
  曽礼毛かと左乎末之毛可止末之」18オ
  毛可度祢利乎左美乎乃見曽加介
  尓世乎万多支名尓之加毛ちゝ呂
  毛万多伊介年由利波名乃介左々
  伊多留波川波名介あ波末之毛の
  多左田和波名の(「天留了」-「天留之」中 「之良大夫」-「之良太夫」中 「伊介年」-「伊介乎」中 自筆本奥入13・大島本奥入05)
13  魯世家 史記
  於是卒相成王而使其子伯禽代
  就封於魯戒伯禽曰我文王之子
  武王之弟成王之叔父也於天下亦
  不賤矣然我一沐三握髪飯三起以得」18ウ
  士猶恐(恐+失)天下之賢人子也魯慎無以
  国驕人(「成王」-「成玉」中 「武王之弟」-「武王之第」中 「一沐三握」-「一休三泛」中 「恐(恐+失)天下」-「猶恐天下」中 自筆本奥入14・15)

はなちる里

01 かこはねとよもきのまかき夏くれて
  うへしかきねもしけりあひにけり(「しけりあひにけり」-「しけりあひけり」中 自筆本奥入01)
02 いにしへのことかたらへはほとゝきす
  いかにしりてかなくこゑのする(自筆本奥入02・定家本付箋01)
03 たちはなのかをなつかしみほとゝきす
  かたらひしつゝなかぬ日そなき(自筆本奥入03・定家本付箋02)」19オ

すま

01 いへはえにふかくかなしき笛竹の
  よこゑやたれととふ人もかな(自筆本奥入01)
02<ことなしにして>
  きみゝすてほとのふるやのひさしには
  あふことなしのくさにおひける(「くさにおひける」-「草そおひける」中 自筆本奥入02)
03 あひにあひてものおもふ比の我袖に
  やとる月さへぬるゝかほなる(自筆本奥入03)
04ときしあらは(「とき」-「(+と)き」中 自筆本奥入04)
05 いとゝしくすき行かたのこひしきに」19ウ
  うらやましくもかへるなみかな(自筆本奥入05)
06三千里外(自筆本奥入06)
07 わくらはにとふ人あらはすまの浦に
  もしほたれつゝわふとこたへよ(自筆本奥入07)
08いけるよにとは(「よにとは」-「よにとよ」中 自筆本奥入08)
09 しらなみはたちさはくともこりすまの
  うらのみるめはからむとそおもふ(自筆本奥入09)
10せきふきこゆる<行平中納言哥可尋/能宣朝臣哥似之>(「哥似之」-「似之」中 自筆本奥入10・大島本奥入01)
11 三五夜中新月色 二千里外故人心(自筆本奥入11・大島本奥入02)」20オ
12 去年今夜侍清涼 秋憶(憶+詩)篇独断腸
  恩賜御衣今在此 捧持毎日拝余香(「憶(憶+詩)篇」-「憶詩篇」中 「恩賜」-「息賜」中 自筆本奥入12・大島本奥入03)
13 おもひきやひなのわかれにおとろへて
  あまのなはたきいさりせむとは(自筆本奥入13)
14 馬長無驚時変改一栄一落是春
  秋(「馬長」-「(+馬)長」中 自筆本奥入14・大島本奥入04)
15  史記
  趙高指鹿謂馬<秦二世時>(自筆本奥入15・大島本奥入05)
16  王昭君
  翠黛紅顔綿繍粧泣尋沙寒山々家」20ウ
  郷鳥風吹断愁緒瀧水流湊泊夜渡行
  胡角一声霜後夢漢宮万里月前腸
  昭君若贈黄金賂定是終身奉帝王(「綿繍」-「郷繍」中 「泣尋」-「泛尋」中 「山々家」-「出家」中 「湊泊夜」-「湊夜」中 自筆本奥入16・大島本奥入06)
17たゝこれ西にゆくなり 在勅(自筆本奥入18・大島本奥入07)
18  文集 香鑪峯下軒下山居草
  堂五架三間新草堂石階公松柱竹
  編[土+盧](「軒下」-「新下」中 「石階公」-「石階」中 自筆本奥入20・大島本奥入09)
19  十年三月卅日別微之於[水+台]上十
   四年三月十一日遇微之於峡中
   億舟夷陵三宿而別言不尽者」21オ
   以詩終之
   七言十七韻之中
  一別五年方見面語到去明竟不眠
  生涯去寄蒼波上郷国倶抛白日辺
  往時渺茫都似夢嚢遊寒落半帰泉
  酔悲灑渡春盃裏冷告支頤暁燭前(「於[水+台]」-「出[水+豊]」中 「上十四年」-「上下四年」中 「去寄」-「共寄」中 「嚢遊」-「旧遊」中 自筆本奥入21・大島本奥入10)
20 いもかゝと行すきかねてひさかたの
  あめもふらなむあまかくれせん(自筆本奥入22)

あかし」21ウ

01 なみにのみぬれつるものをふくかせの
  たよりうれしきあまのつりふね(自筆本奥入01)
02 あさりするよさのあま人ほこるらし
  うらかせぬるみかすみわたれり(「ほこるらし」-「ほとるらし」中 自筆本奥入02)
03 ほとふるもおほつかなくもおもほえす
  いひしにたかふとはかりはしも(「ほとふるも」-「ほとふるを」中 自筆本奥入03)
04 あはちにてあはとはるかにみし月の
  ちかきこよひはところからかも(自筆本奥入04)
05 またよひにうちきてたゝくくひな哉
  たかおとさしていれぬなるらん(「たかおとさして」-「たかかとさして」中 自筆本奥入06)」22オ
06 いせのうみのきよきなきににしほかひに
  なのりそやつまうかひやひろはむ(「いせのうみの」-「伊勢の海に」中 「なきににしほかひに」-「なきさのしほかひよ」中 自筆本奥入07・大島本奥入01)
07 おもふにはしのふることそまけにける
  いろには出しとおもひしものを(自筆本奥入09)
08 うれしさをむかしはそてにつゝみけり
  こよひは身にもあまりぬるかな(自筆本奥入10)
09 ありぬやとこゝろみかてらあひみねは
  たはふれにくきまてそこひしき(自筆本奥入11)
10 あたらよの月と花とをおなしくは
  あはれしれらん人にみせはや(自筆本奥入12・大島本付箋01)」22ウ
11 おもふとちいさみにゆかむたまつしま
  いりえのそこにしつむ月かけ(自筆本奥入14)
12 久かたのつきけのこまをうちはやめ
  きぬらんとのみ君をまつかな(自筆本奥入13)
13 まきのとをやすらひにこそさゝらめ
  いかにあけぬる秋のよならん(「さゝらめ」-「さゝさらめ」中 自筆本奥入15)
14 わすれしとちかひしことをあやまたす
  みかさのやまのかみもことはれ(自筆本奥入16・大島本付箋02)
15 わすらるゝ身をはおもはすちかひてし
  人の命のをしくもあるかな(自筆本奥入18)」23オ

身をつくし

01 みくまのゝうらよりをちにこく舟の
  われをはよそにへたてつるかな(自筆本奥入01)
02 わひぬれはいまはたおなし難波なる
  身をつくしてもあはんとそおもふ(自筆本奥入02)
03しまこきはなれ(自筆本奥入03)

よもきふ

01 いはそゝくたるひのうへのさわらひの
  もえいつる春になりにけるかな(自筆本奥入02)」23ウ
02 世のなかはむかしよりやはうかりけむ
  わか身ひとつのためになれるか(自筆本奥入03)
03 みよし野のやまのあなたにやともかな
  よのうきときのかくれかにせん(自筆本奥入04)
04五濁<見法華経>(自筆本奥入05・大島本奥入01)
05 蒋[言+羽]<字元卿> 舎中竹下開三途(自筆本奥入06・大島本奥入02)
06 みさふらひみかさと申せみやきのゝ
  このした露は雨にまされり(自筆本奥入07)
07 いとゝこそまさりにまされわすれしと
  いひしにたかふことのつらさも(自筆本奥入08)」24オ
08 ひきうへし人はむへこそおひにけれ
  松のこたかくなりにけるかな(自筆本奥入09)
09 顔叔子といふ人おとこ他行のほと
  そのおとこのうたかひのために塔の
  うへをこほちてよもすからともしあかし
  いたる事なり(「いたる事なり」-「いとふ事なり」中 自筆本奥入10・大島本奥入03)

せきや

01 本云
 つくはねの山をふきこすかせ」24ウ
  つくはねの嶺よりおつるみなの川
  こひそつもりてふちとなりける
   此哥不叶此事可勘尋云々(自筆本奥入01)

松かせ

01 みなれきのみなれそなれて(自筆本奥入01)
02 ありはてぬいのちまつまのほとはかり
  うきことしけくなけかすもかな(自筆本奥入02)」25オ
03夜光玉 [丶+下]和玉也(自筆本奥入03)
04  史記項羽本記
  富貴不帰故郷如衣錦夜行(自筆本奥入04・大島本奥入01)
05 おのゝえはくちなはまたもすけかへん
  うきよのなかにかへらすもかな(自筆本奥入05)
06 みさこゐるあらいそなみにそてぬれて
  たかためひろふいけるかひそも(自筆本奥入06)
07 千代へんといはひそめてしひめ松の」25ウ
  ねさしそめてしやとは忘れし(自筆本奥入07)
08 しら雲のたえすたなひく山にたに
  すめはすみぬるよにこそ有けれ(「山にたに」-「やとにたに」中 自筆本奥入08・大島本付箋01)
09 たれをかもしる人にせん高砂の
  まつもむかしの友ならなくに(自筆本奥入09・大島本付箋02)
10 久かたのなかにおひたるさとなれは
  ひかりをのみそたのむへらなり(自筆本奥入10)
11 あはちにてあはとはるかにみし月の(自筆本奥入11)
12 ふるさとはみしにもあらすおのゝえの」26オ
  くちしところそこひしかりける(自筆本奥入12)
13 斉威王二十四年与魏王会田於郊
  魏王問曰王亦有宝多威王曰無有梁
  王曰若寡人国小尚有住寸之珠照車
  前後各十二乗者十枚奈何以万乗
  之国而無宝字威王曰寡令所以為
  宝与王異
  吾臣有檀子者使中南城則楚人
  不敢為寝東故細十一十二諸健皆来
  朝吾臣有盻子者便守高唐則」26ウ
  趙人不敢漢於河吾吏有点夫者使
  守徐州則燕人祭比門趙人祭舟門
  徒而泣者七千余家臣有種首者使
  備盗賊則道不拾遺将以照千里
  豈持十二乗哉梁恵王慙不懌而
  去
   寡人は緒王のかたみになの御名也(「会田於郊」-「会由於郊」中 「威王曰無有」-「威王由無有」中 「東故細」-「東取紬」中 「諸健皆」-「諸皆」中 「朝吾臣有盻子者便守高唐則」-ナシ中 「祭舟門」-「祭与門」中 「泣者」-「従者」中 自筆本奥入13・大島本奥入02)

うすくも

01 やとかへてまつにもみえす成ぬれと」27オ
  つらきところのおほくも有かな(「成ぬれと」-「なりぬれは」中 自筆本奥入01)
02 うらみての後さへひとのつらからは
  いかにいひてかねをはなくへき(自筆本奥入02)
03 つらからんものとそかねておもひにき
  心のうらそまさしかりける(「ものとそかねて」-「ものとはかねて」中 自筆本奥入03)
04  桜人<呂>
  左久良比止曽乃不祢止々女之川
  末多乎上知川久礼留見天可安
  戸利己乎也曽与也
  安春可戸利己牟曽於与於己上於」27ウ
  己書安春上毛以波女乎千可太乎
  川万左留世那波安春毛左祢己之
  也暮於与左安春毛左祢己之也暮
  也(「利己乎也」-「利王乎也」中 「上於己書」-「上於己暮」中 自筆本奥入04・大島本奥入01)
05 世のなかは夢のわたりのうきはしか
  うちわたりつゝものをこそおもへ(自筆本奥入05)
06 ふかくさの野辺のさくらしこゝろあらは
  ことしはかりはすみそめにさけ(自筆本奥入06)
07 いにしへのむかしのことをいとゝしく
  かくれはそてのつゆけかりける(自筆本奥入07・大島本付箋01)」28オ
08 むすほゝれもえしけふりもいかゝせむ
  きみたにこめよなかき契りを(自筆本奥入08・大島本付箋02)
09 石季倫居金谷春林満林作五十
  里錦障(自筆本奥入09・大島本奥入02)
10 春有錦繍谷花夏有石門澗雲秋
  有虎溪月冬有鑪峯雪(「錦繍谷」-「錦谷」中 自筆本奥入10・大島本奥入03)
11 むめかゝをさくらの花ににほはせて
  やなきか枝にさかせてしかな(自筆本奥入11・大島本付箋03)
12 うちかへしおもへはかなしよのなかを
  たれうきものとしらせそめけむ(自筆本奥入12)」28ウ

あさかほ

01 なかとはらへにしなとのかせのあめの
  やへくもをふきはらふかことくにつ
  みといふつみはあらしものそと云こと
  なり
02 こひせしのみそきはかみもうけすとか
  人をわするゝつみふかしとて(自筆本奥入01)
03 君か門いまそすきゆくいてゝみよ
  こひする人のなれるすかたを(自筆本奥入02)」29オ
04 すまのあまのしほやきころもなれゆけは
  うきてのみこそなりまさりけれ(自筆本奥入03・大島本付箋01)
05 なれゆけはうき世なれはやすまのあまの
  しほやきころもまとをなるらん
06 しなてるやかたをかやまにいひにうへて
  ふせる旅人あはれをやなし(自筆本奥入04・大島本付箋02)
07 身をうしといひこしほとにいまはまた
  人のうへともなけくへきかな(自筆本奥入05)
08 かけていへはなみたのかはのせきをはやみ
  こゝろつからやまたもなかれん(「せきをはやみ」-「瀬をはやみ」中 自筆本奥入06・大島本付箋03)」29ウ
09 いぬかみやとこのやまなるいさゝかは
  いさとこたへてわかなもらすな(自筆本奥入08・大島本奥入02)
10すさましきものにいひをきけむ人の
 こゝろあさくよとある所
  世俗しはすのつきよといふ(大島本奥入01)

をとめ

01 孫康家貧無油常収雪読書
  車胤<字武字>南平人好読書無
  油夏月則絹嚢盛数十蛍火照書(自筆本奥入01・大島本奥入01)」30オ
02 秋はなを夕まくれこそたゝならね
  おきのうはかせはきのした露
03  文選豪士賦序云
  落葉俟微風以隕而風之力蓋寡
  孟甞遭雍門而泣而琴云感已未
  何者欲隕葉無所仮烈風将墜之
  泣不足繁哀響也
   注曰草木遭霜者不可以風過又云
   雍門周以琴見孟甞君孟甞君
   曰先未鼓琴亦能令文悲乎対曰」30ウ
   臣竊為足下有所悲千秋万歳後
   墳墓生荊棘游童牧竪躑躅其
   足歌其上孟甞君之暮貴亦猶若
   此乎於是孟甞喟然太息涕承睫
   而未下雍門引琴而鼓之徐動宮
   徽揮角羽終成曲孟甞君遂歔欷
    歔欷<悲怨也位余/声歟>(「文選」-「文撰」中 「以隕」-「以須」中 「孟甞」-「孟常」中 「欲隕」-「欲須」中 「臣竊為」-「竊為」中 「有所」-「者所」中 「暮貴」-「墓貴」中 「承睫」-「承[目+盧]」中 「徽揮」-「微揮」中 「歔欷<悲怨也位余/声歟>」-「悲怨也注欽声也」中 自筆本奥入03・10・大島本奥入02)
04  更衣呂
  己呂毛加戸世乎也左支牟多知和加」31オ
  支奴波乃波良之乃波良波支乃波
  奈須利也左支牟多知也(自筆本奥入04・大島本奥入03)
05 きりふかき雲井のかりもわかことや
  はれせすものゝかなしかるらん(自筆本奥入05)
06 をとめこか袖ふるやまのみつかきの
  久しきよゝりおもひそめてき(「をとめこか」-「おとめにか」中 「みつかきの」-「みつかきまち」中 自筆本奥入06)
07 安名多不止介不之多不止左也伊
  仁之戸毛波礼伊仁之戸毛加久也
  安利介牟也介不之多不止左也安
  波礼曽己与之也介不之多不止左」31ウ
  也(「多不止左也安波礼」-「多不上左也安波礼」中 「曽己与之也」-「曽己与之」中  自筆本奥入07・大島本奥入04)
08五節にことつけてなをしなとさまか
 はれるいろゆるされて 改六位昇
  殿禁色雑袍之宣旨歟(「ことつけて」-「ことつけ」中 「禁色」-「禁也」中 自筆本奥入08・大島本奥入05)
09寮試
  寮頭已下各一員博士以下各一員
  参着試庁山々貢挙夾名等博
  士加暑渡寮々頭見了下允以
  下[竹+冊]匣三合置議衆座前又
  以読云等置頭博士秀等(等=才歟)<謂之/試博士>」32オ
  并試衆等前次第召試衆々々
  把巻進出幔門下允仰云版に
  試衆猶立版允又仰云敷居に
  試衆猶於敷居下脱沓着座置
  帙置頭仰云[竹+冊]衆唯之[手+余][竹+冊]
  <三史之間今/日読[竹+冊]也>膝行置試博士前試
  博士対寮頭云史記乃本紀
  乃一乃巻三乃巻世家乃上帙乃
  五乃巻下帙乃一濃巻伝乃中濃
  帙乃七乃巻頭仰云令読与試」32ウ
  衆各披帙把巻引音読之
  頭仰云古々末天試博士対頭云
  文詩タリ頭云注せ寮掌捧簡称
  注由了試衆退出堂監山々幔外
  仰登料酒肴事(「各一員」-「名一員」中 「博士」-「転士」中 「参着」-「参者」中 「山々」-「出」中 「貢挙」-「真挙」中 「秀等(等=才歟)」-「秀才」中 「猶於」-「揖於」中 「帙置」-「訣置」中 「博士」-「転士」中 「博士」-「転士」中 「注せ」-「注己」中 「寮掌」-「寮甞」中 「山々」-「於」中 自筆本奥入09・大島本奥入06)

玉かつら

01われはわすれす(自筆本奥入01)
02 世のなかにあらましかはとおもふ人
  なきかおほくもなりにけるかな(自筆本奥入02・大島本奥入01)」33オ
   非源氏以前哥歟不可為彼本哥如何
03 いつとてもこひしからすはあらね(あらね=なけれ)とも
  あやしかりけりあきの夕くれ(「哥歟」-「哥歌にて」中 「あらね(あらね=なけれ)とも」-「なけれとも」中 自筆本奥入03)
04  文集楽府伝戎人
  涼源郷井不得見胡地妻子虚棄捐(「伝戎人」-「博戎」中 自筆本奥入04・大島本奥入02)
05 かそいろもいかにあはれとおもふむ
  みとせになりぬあしたゝすして(ナシ-「日本紀ひるのこ」中 「おもふむ」-「おもふらん」中 自筆本奥入05)

はつね

01 あふみのやかゝみやまをたてたれは」33ウ
  かねてそみゆる君か千とせは(「かゝみやまを」-「かゝみのやまを」中 自筆本奥入01)
02 けふたにもはつねきかせよ鴬の
  をとせぬさとはすむかひもなし(自筆本奥入02)
03 梅のはなさけるをかへに家しあれは
  ともしくもあらす鴬のこゑ(自筆本奥入04)
04  此殿呂
  己の上の波牟戸も/\とみけり左支久左の
  あはれさきくさのつれさきくさの
  みつはよつはのなかにとのつくり
  せりや/\(「つれ」-「はな」中 「せりや」-「けりや」中 自筆本奥入06・大島本奥入04)」34オ
05 はちすのなかのとかひに早に生心歟(「歟」-「にて」中 自筆本奥入07・大島本奥入03)
06 よのうきめみえぬ山路へいらんには
  おもふ人こそほたしなりけれ(自筆本奥入08)
07 をとにきく松かうらしま(自筆本奥入10)
08  竹川<呂>
  多介加波のはしのつめなるやはしのつめ
  なるやはなそのにわれをははなてや
  われをははなてや女左したゝはて(自筆本奥入11)
09みつむまやには 水駅と云ことは也(自筆本奥入12)
10万春楽 踏哥之曲名也(「万春楽 踏哥之曲名也」-ナシ中 自筆本奥入05・大島本奥入02)」34ウ
11踏哥儀<新儀式> 正月十四日
  麹塵袍白下襲 高巾子冠白所給之<打熨斗嚢/持着位袍>
  当夜歌頭以下相率集中院[斬+足]也
  自月花門参入行別右近陣前庭時
  刻出御御座<孫庇四間/平文御倚子>内蔵寮舁禄
  綿札立前庭<南第/四間>王卿依召参上<簀/子>
  <南第三間菅円座/人多及南廊小板敷>賜酒肴於王卿御厨子
  所供御酒踏哥人進南殿西頭始奏
  調子訖入仙花門別立庭上踏哥周
  旋<三度>没別立御前<内蔵寮当御前立/高机積綿百屯>」35オ
  言吹進出当綿案立奏祝詞喚嚢
  持二声嚢持称唯進而計綿(綿+数)奏絹鴨
  曲次奏此殿曲記着座<行立間掃部寮当/御階南辺一許皮>
  <立床/子>
   為哥頭已下舞人以上座相対為
   上仁寿殿西階南立床子為絃管
   者座南廊壁下南面東上敷畳
   立札為打熨斗嚢持座若有諸
   司二分吹管者着之同壁下北面
   西上敷畳為殿上侍臣座内蔵」35ウ
   舁四尺台盤三基立舞人以
   上前八尺台盤一基為管絃者
   座弁備肴饌
  次王卿已下取勧盃侍臣所誰色以
  下行酒三四巡後衝奏調子唱竹河
  曲即起座別立三四唱後舞人已上
  雙舞進半上東階内侍二人相分被
  綿且舞且還<女蔵人二人持綿/匣候内侍後>但弾琴
  者以下男蔵人二人伝取御簾中於
  庭中被之奏我家曲退出自北廊戸」36オ
  其後踏哥所々暁更帰参御座如初
  歌頭舞人賜座座中<相対/西上>管絃者在
  横切<此上/西面>打熨計嚢持座在南<西上/此面>
  <折蓆/座>出御之後歌頭已下依召参
  入<王卿先/候>着座賜之酒饌此間奏管
  絃数巡之後賜禄有着事畢退出
   哥頭支子染褂各一領哥掌踏
   掌同色衾一条吹物弾物襖子一
   領打熨斗嚢持絹一疋(「歌頭」-「歌[音+欠]」中 「前庭時」-「前庭禄」中 「出御御」-「山々後御」中 「賜酒肴」-「賜哥酒肴」中 「王卿」-「玉卿」中 「没別」-「後別」中 「百屯」-「百也」中 「言吹」-「言次」中 「綿(綿+数)奏」-「綿数奏」中 「一許皮」-「許皮」中 「絃管」-「官絃」中 「立札」-「立机」中 「北面」-「比面」中 「畳為」-「盈為」中 「侍臣」-「持臣」中 「取勧盃」-「殿勧盃」中 「誰色」-「雑色」中 「後衝」-「後漸」中 「女蔵人」-「如蔵人」中 「此上/西面」-「北上/西面」中 「西上/此面」-「西上/北面」中 「王卿先/候」-「王卿先/候簀子」中 「賜禄有着」-「賜禄有差」中 「哥掌踏掌」-「哥甞踏甞」中 自筆本奥入13・自筆本奥入01)
12踏哥曲多久行」36ウ
   万春楽のことは
  はむすらく<二返>
  くわうみむそう<二返>おくせんねん<二返>
  くゑんせいくゑうくゑ
  ねんくわうれい<二返>
   これは催馬楽にて候多氏はかり
   つたへてゝすへて踏哥にはわかいへこ
   のとのはんすらくなにそもにこのさ
   いはら四をうたひゝみなおもひ/\
   に候(「くわうみむそう」-「くわうえむそう」中 「うたひゝみな」-「うたひに」中 自筆本奥入05・大島本奥入02)」37オ

こてふ

01かめのうへの山
  蓬莱の心也楽府
  眼穿不見蓬莱嶋不見蓬莱不敢
  帰童男丱女舟中老徐福文成多
  誑誕(「蓬莱嶋」-「蓬束嶋」中 「丱女」-「臥女」中 「誑誕」-「誰誕」中 自筆本奥入01・大島本奥入01)
02 わかそのゝ梅のをつえにうくひすの
  ねになきぬへきこひもするかな(「をつえに」-「ほすへに」中 自筆本奥入02)
03 さゝれいしのなかのおもひは有なから
  うへいつることのさもかたきかな(「うへいつる」-「うちいつる」中 自筆本奥入03)」37ウ
04 風生竹夜窓間臥月照松時台上行(自筆本奥入04・大島本奥入02)
05 こひわひぬおほたのまつのおほかたは
  いろにいてゝやあはんといはまし(自筆本奥入05)
06 和して又きよし
   文集第十九
   早夏朝満 閑斎独処
  四月天気和早清
  緑槐陰合沙堤平(「緑槐」-「緑枕」中 「沙堤」-「湊堤」中 自筆本奥入06・大島本奥入03)」38オ

ほたる

01 わか身からうきよの中をなけきつゝ
  人のためさへかなしかるらむ
02 ほとゝきすおちかへりなけうなひこか
  うちたれかみの五月雨のそら

とこなつ

01 わかやとゝたのむよしのに君しいらは
  おなしかさしをさしこそはせめ(自筆本奥入02)
02 たらちねのおやのかうこのまゆこもり」38ウ
  いふせくもあるかいもにあはすて(自筆本奥入04)
03 つくはやまはやましけやましけゝれと
  おもひ入にはさはらさりけり(自筆本奥入06)
04 たらちねのおやのいさめしうたゝねは
  ものおもふときのしわさ成けり(自筆本奥入05)
05 人しれぬおもひやなそとあしかきの
  まちかけれともあふよしもなし(自筆本奥入07)
06 たちよらはかけふむはかりちかけれと
  あひみぬせきをたれかすへけむ(自筆本奥入08)
07 あひみてはおもてふせにや思へし」39オ
  なこそのせきにおいよはゝきゝ(自筆本奥入09)
08 しらねともむさしのといへはかこなれぬ
  よしや草はのむらさきのゆへ(「かこなれぬ」-「かこたれぬ」中 自筆本奥入10)
09 あしきゝをなをよきさまにみなせ河
  そこのみくすのかすならすとも(自筆本奥入12)
10 みよしのゝおほかは野辺のふちなみの
  なみにおもはゝわかこひめやは

野わき

01 大そらにおほふはかりの袖もかな」39ウ
  はるさくはなもかせにまかせし(自筆本奥入01)
02 みやきのゝもとあらの小萩露をもみ
  かせをまつこと君をこそまて(「露をもみ」-「露をおもみ」中 自筆本奥入02)
03 人の親のこゝろはやみにあらねとも(自筆本奥入03)
  04いつくの野辺のほとりのはな(「野辺の」-「野辺の<本ノ>」中 自筆本奥入04)

みゆき

01 とにかくにひとめつゝみをせきかねて
  したになかるゝ音なしのたき(自筆本奥入01・大島本付箋01)
02 仁和二年十二月十四日<戊/午>寅日刻行」40オ
  幸芹川野為用鷹鷂也
  式部本康親王常陸太守貞因親
  王太政大臣<藤原朝臣>左太臣<源朝臣>
  右太臣<源朝臣>大納言藤原朝臣<良世>
  中納言源朝臣<能有>在原朝臣<行平>
  藤原朝臣<山蔭>已下参議皆扈従
  其校之儀一依承和故事或考
  旧記付故老口語而行事乗輿於
  朱雀門留輿砌上勅召太政大臣云
  皇子原朝臣定宜賜佩釼太政大」40ウ
  臣伝勅之定拝舞輿前帯釼騎馬
  皇子源朝臣正五位下藤原時平持
  着摺衣午三剋亘猟野於淀河辺
  供朝膳<行去在泉川/宇治川之会>漁人等献鯉鮒
  天子命歓右衛門督諸葛朝臣巻哥
  天子和之群臣以次歌謳大納言藤原
  朝臣起舞未二刻入猟野放鷂撃
  鶉如前放隼撃水鳥坂上宿祢云
  献鹿一太政太臣馬上奏之処輿
  幸於左衛門権佐高住別野供夕」41オ
  膳高住献贄勅釼正五位下太政
  大臣率高住拝舞(「芹川野」-「行川野」中 「貞因親王」-「貞固親王」中 「左太臣」-「左大臣」中 「右太臣」-「右大臣」中 「源朝臣」-「源朝」中 「山蔭」-「山陸蔭也」中 「儀」-「儀也」中 「原朝臣定」-「源朝臣定」中 「佩釼」-「佩殺」中 「勅之定」-「勅定」中 「亘」-「一旦」中 「巻哥」-「奉巻歌」中 「歌謳」-「歌」中 「鷂撃」-ナシ中 「撃水鳥」-「繋水鳥」中 「太政大臣率」-「太政大臣」中 「高住拝舞」-「高位拝舞」中自筆本奥入02・大島本奥入01)」64オ

ふちはかま

01 あつまちのみちのはてなるひたちをひの
  かことはかりもあはんとそおもふ(「ひたちをひの」-「ひたち帯」中 自筆本奥入01)
02 こひわひぬいまはたおなし(自筆本奥入02)
03三従
  女をさなき時父にしたかひさかり
  なるときおとこにしたかひ老」41ウ
  後子にしたかふ(「おとこ」-「おつと」中 「老後」-「老後に」中 自筆本奥入03・大島本奥入01)
04よしのゝたきをせかんよりも(自筆本奥入04・大島本奥入02)

まきはしら

01 おもひつゝねなくにあくる冬のよは
  そての氷のとけすもあるかな(自筆本奥入01)
02 きみかへむやとのこすゑをゆく/\に
  かくるゝまてもかへりみしかな(「ゆく/\に」-「行/\も」中 「かくるゝまても」-「かくるゝまてに」中 自筆本奥入02)
03 もゝ千とりさえつるはるはものことに
  あらたまれともわれそふりゆく(自筆本奥入03)」42オ
04 はるの野にすみれつみにとこしわれに
  のをなつかしみ一夜ねにけり(「こしわれに」-「こしわれそ」中 「一夜ねにけり」-「ひとよねにける」中)
05 すまのあまのしほやく煙風をいたみ
  おもはぬかたにたなひきにけり(自筆本奥入04)
06 なかれゆくすゑをきとむる玉水の
  こほれもあへすおつるなみたか(「をきとむる」-「せきとむる」中 「玉水の」-「玉川の」中)
07 おしたかへもまへきぬる波良の
  池のや多末もは万祢奈加利曽
  於比毛つかね也万葉奈加利
  うや風俗(「まへきぬる」-「まへきゐる」中 「於比毛」-「於々比毛」中 自筆本奥入05・大島本奥入01)」42ウ
08 たちておもひ出てそおもふくれなゐの
  あかもたれひきいにしすかたを(自筆本奥入06)
09 かたみなるいろにころもは成ぬれと
  はなのかはすにつねならなくに(自筆本奥入07)
10 いはぬまをつゝみしほとにくちなしの
  いろにやみえし山ふきのはな(自筆本奥入08)
11 ほりえこくたなゝしおふねこきかへり
  おなし人をやこひわたるへき(自筆本奥入09)

梅かえ」43オ

01 きみならてたれにかみせん梅のはな(自筆本奥入01)
02 无女加江尓支為留う久ひすや
  波留加介亭波礼左留加計天名け
  止毛任万太や田支波不利川ゝあ波
  由己なゝや田支波不利徒ゝ(「任万太」-「伊万太」中 「田支波」-「由支波」中 「田支波」-「由支波」中 自筆本奥入02・大島本奥入01)
03 いつまてか野辺に心のあくかれむ
  はなしちらすはちよもへぬへし(自筆本奥入03)
04 ありぬやとこゝろみかてらあひみねは
  たはふれにくきまてそこひしき(自筆本奥入04)」43ウ
05 いつはりとおもふものからいまさらに
  たかまことをかわれはたのまん(自筆本奥入05)

ふちのうらは

01 なつにこそさきかゝりけれふちなみの
  まつにとのみもおもひけるかな(「まつにとのみも」-「まつにのみとも」中 自筆本奥入01)
02文籍にも家礼
  漢高祖幸父太公之家以家礼敬之
  高祖雖子実也太公改父臣也(「実也」-「君也」中 自筆本奥入02)
03 はる日さすふちのうらはのうらとけて」44オ
  きみしおもはゝわれしおもはむ(「われしおもはむ」-「われもおもむ」中 自筆本奥入03)
04 安之可支万可者加支和介天不己
  春止於比己多礼可太礼可己乃己
  止字於やに末年与己之末年之止
  々止々呂介留己乃以戸己乃伊戸乃
  於与女於やに万年与己之介良々毛
  安女川知乃可見毛可美毛曽牟之
  多戸和礼波万年与己之万牟左
  春須加乃祢乃春可奈須可奈支己
  止字和礼支久和礼波支久牟之可」44ウ
  名(「万可者」-「万可支」中 「春止」-「春正」中 「可太礼」-「可左礼」中 「於与女於」-「於与女」中 「和礼支久」-「和礼支」中 自筆本奥入04)
05 加波久知乃安良可支や也支のあ
  らかきや末もれともはれまはれとも
  伊てゝわれねぬやいてゝいれぬやせき
  のあらかき(「安良可支や也」-「安良可支也」中 自筆本奥入05)
06かつらをおなし
  晋書々郡説字広碁挙賢良対策
  為天下第一為雍州刺史武帝於
  東宮会送帝同説曰御子白何如
  説対曰臣対策為天下第一於桂
  林一枝崑山行玉 今ハヽ課試及」45オ
  第之事候来也(「広碁」-「広基」中 「送帝」-「道帝」中 「御子白」-「卿才自」中 「行玉」-「行王」中 自筆本奥入06)
07 かすしらすきみかよはひをのはへつゝ
  なたるやとの露とならなむ(「なたるやとの」-「なたゝるやとの」中 自筆本奥入07)
08 君かうへし一むらすゝき虫の音の
  しけき野辺ともなりにけるかな(自筆本奥入08)
09うたのほうし 和琴名也
  宇陀ノ法師(自筆本奥入11)

わかな(上)

01 はるのよのやみはあやなしむめの花(自筆本奥入01)」45ウ
02 子城陰處於残雪 衙皷声前未有塵(「衙皷声」-「皷声」中 自筆本奥入02・明融本付箋01)
03 折つれは袖こそにほへむめのはな
  ありとやこゝにうくひすのなく(自筆本奥入03・明融本付箋02)
04 なきなそと人にはいひて有ぬへし
  こゝろのとはゝいかゝこたへむ(自筆本奥入04・明融本付箋03)
05 むらとりのたちにしわかないまさらに
  ことなしふともしるしあらめや(自筆本奥入05・明融本付箋04)
06 いにしへのしつのをたまきくりかへし
  むかしをいまになすよしもかな(自筆本奥入06・明融本付箋05)
07千とせをかねてあそふつるの毛衣」46オ
  席田第二反度也(自筆本奥入07・明融本奥入01・大島本奥入01)
08 ふくかせもこゝろしあらはこのはるは
  さくらをよきてちらさゝ(ゝ+ら)なむ(「さゝ(ゝ+ら)なむ」-「さゝらなん」中 自筆本奥入08)
09 みすもあらすみもせぬ人の恋しきに
  あやなくけふやなかめくらさむ(自筆本奥入09・明融本付箋06)
10 那[心+念]注蘿のふくちのそのにたねま
  きてあらむかならす有居のみやこに
   雖有此説此哥證拠不知誰説頗
   凡俗事歟(「那[心+念]」-「那拾」中 明融本奥入02・大島本奥入02)」46ウ

わかな(下)

01 けふのみとはるをおもはぬ時たにも
  たつことやすき花のかけかは(自筆本奥入01・明融本付箋01)
02  史記周本記
  楚有養由基者善射者也去柳
  葉百歩而射百発而百中之左右
  観者数千人皆曰善射云々(自筆本奥入20・明融本奥入01・大島本奥入01)」60オ
03 千はやふるかみのいかきにはふくすも
  あにゝはあへすもみちしにけり(「あにゝはあへす」-「あやにくはあへす」中 自筆本奥入02・明融本付箋02)
04 もみちせぬときはのやまはふくかせの」47オ
  をとにや秋をきゝわたるらん(自筆本奥入03・明融本付箋03)
05 秋のよの千よをひと夜になせりとも
  ことはのこりてとりやなくらん(自筆本奥入05・明融本付箋04)
06 花のかをかせのたよりにたくへても
  うくひすさそふしるへにはやる(「たくへても」-「たくへてそ」中 自筆本奥入06・明融本付箋05)
07  毛詩
  女咸陽気春思男咸陰気秋思(「女咸」-「女ハ咸」中 「秋思」-「秋迫」中 自筆本奥入08・明融本奥入02・大島本奥入02)
08 よるかたもありといふなる有そ海に
  たつしらなみのおなしところに(自筆本奥入09・明融本付箋06)
09 わかこゝろなくさめかねつさらしなや」47ウ
  ほはすてやまにてる月をみて(「ほはすてやまに」-「おはすて山に」中 自筆本奥入10・明融本付箋07)
10 恋しなはたかなはたゝし世中の
  つねなきものといひはなすとも(自筆本奥入11・明融本付箋08)
11 まてといふにちらてしとまる物ならは
  なにをさくらにおもひまさまし(自筆本奥入12・明融本付箋09)
12 のこりなく散そめてたき桜花
  ありてこのよのはてのうけれは(ナシ-「一本なにゝこのよのひさしかるへき」中 自筆本奥入13・明融本付箋10)
13 夕くれはみちたと/\し月まちて
  かへれわかせこそのまにもみん(「かへれ」-「かへる」中 自筆本奥入14・明融本付箋11)
14 いかはかり恋の山路にしけゝれは」48オ
  いりといりぬる人まとふらむ(「恋の山路に」-「こひの山ちの」中 自筆本奥入15・明融本付箋12)
15 夏の日のあさ夕すゝみあるものを
  なとわか恋のひまなかるらむ(自筆本奥入16・明融本付箋13)
16 冬なからはるのとなりのちかけれは
  なかゝきよりそはなは散ける(自筆本奥入18・明融本付箋14)
17掛冠懸車
  東観経説云王莽居摂子宇諌莽
  而莽殺之逢萌謂其友人曰三綱
  清矣不去禍将及人即解冠掛東
  門而去」48ウ
   蒙求 逢萌掛冠
  後漢書逢萌字子康北海人掛冠
  避世牆東
   懸車
  古文教経曰
  七十老敷任懸其所而車置諸廟
  永使子孫監而則焉立身之終
  其悪然也(「経説」-「経記」中 「清矣」-「絶矣」中 「七十」-「七千」中 「敷任」-「致任」中 「悪然也」-「要然也」中 自筆本奥入21・明融本奥入03・大島本奥入03)

かしはき」49オ

01 うくもよのおもふこゝろにかなはぬか
  たれもちとせのまつならなくに(自筆本奥入01・定家本付箋01・明融本付箋03)
02 夏むしの身をいたつらになすことも
  ひとつおもひによりてなりけり(自筆本奥入02・定家本付箋02・明融本付箋04)
03 人のよを老をはてにしせましかは
  けふかあすかもいそかさらまし(自筆本奥入03・定家本付箋03・明融本付箋07)
04 なけきわひいてにしたまのあるならん
  よふかくみえはたまむすひせよ(自筆本奥入04)
05 我こそやみぬ人こふるくせつけれ
  あふよりほかのやむくすりなし(自筆本奥入05・定家本付箋04・明融本付箋23)」49ウ
06 とりかへすものにもかなやよのなかを
  ありしなからのわか身とおもはむ(自筆本奥入06)
07 はることにはなのさかりはありなめと
  あひみんことは命なりけり(自筆本奥入07・定家本付箋05・明融本付箋38)
08 よりなくなるこゑをいとゝしく
  わかなみたをはたまにぬかなん(「いとゝしく」-「いとにして」中 自筆本奥入08・定家本付箋06・明融本付箋39)
09 天与善人吾不(不+信)右将軍墓草初
  青(「不(不+信)」-「不信」中 自筆本奥入09・明融本付箋44)
10  文集
   五十八自嘲詩」50オ
  五十八翁方有後静思堪喜亦堪
  嗟持盃税願無他語慎勿頑愚似
  汝耶
   白楽は子なくして老にのそ
   む人なり五十八にしてはしめて
   男子むまれたるむまるゝ事をそ
   くして生遅となつく其子に
   むかひてつくりたる詩なり(「税願」-「祝願」中 「白楽は」-「白楽天は」中 自筆本奥入10・定家本奥入01・明融本奥入01・大島本奥入01)

よこふえ」50ウ

01 はることに花のさかりはありなめと(自筆本奥入01)
02 きみかうへにし一むらすゝき(自筆本奥入02)
03 あさちふのをさゝか原にをく露の
  よのうきつよとおもひみたるゝ(自筆本奥入03)
04 恋しさのかきりたにあるよなりせは
  としへてものはおもはさらまし(自筆本奥入04)
05 しら雲にはねうちかはしとふかりの
  かすさへみゆる秋のよの月(自筆本奥入05)
06 かたいとをこなたかなたによりかけて
  あはすはなにをたまのをにせん(自筆本奥入06)」51オ
07 いもとあれといるさのやまの山あらきて
  なとりかふれてそやかほまさるかにや
  とてまさるかにや(自筆本奥入07)

   今年
  六条院四十九歟 去年春四十八云々
   大将二十九
  紫上 院十七之歳 十許云々
   四十二歟 <若菜丗七云々付之者丗九>
  入道
   女三宮 廿三歟(「去年」-「去年柏木」中 「廿三歟」-「廿歟」中)」51ウ

すゝ虫

01 十方仏土之中以西方為望九品蓮台
  之間雖下品可足(自筆本奥入01)
02 蒼茫霧雨之霽初寒汀鷺立重
  畳煙嵐之断我晩寺僧帰<閑/賦>(「重畳」-「重盈」中 「断我」-「断処」中 自筆本奥入02)
03 三五夜中新月色(自筆本奥入03)
04 目連初得道眼見母生所而堕地獄
  砕骨焼膚仍乗神通自行地獄逢
  卒相代尤請母獄卒答云善悪業造
  者自受其果大小利法也更不可免」52オ
  則閇鉄城之戸成不見自連悲立帰
   又如経文者堕餓鬼中仍七月七日
   設盂蘭盆移之足明事也(「堕地獄」-「随地獄」中 「焼膚」-「焼肩」中 「答云」-「呑云」中 「自連」-「目連」中 「堕餓鬼」-「随餓鬼」中 「移之」-「抄之」中 自筆本奥入04・大島本奥入01)

夕きり

01 かへるさのみちやはかはるかはらねと
  とくるにまとふけさのあは雪(自筆本奥入01)
02 夕きりに衣はぬれてくさまくら
  たひねするゆへあはぬ君ゆへ(「衣は」-「ころは」中 自筆本奥入02)
03 なきなそと人にはいひてありぬへし」52ウ
  こゝろのとはゝいかゝこたへむ(自筆本奥入03)
04 身をすてゝいにやしにけむおもふより
  ほかなるものはなみたなりけり(「いにやしにけむ」-「いにやしにせん」中 自筆本奥入04)
05 こゝろにはちへにおもへと人にいはぬ
  わかこひつまをみるよしもかな(自筆本奥入05)
06 かねてよりつらさをわれにならはさて
  にはかにものをおもはすもかな(「おもはすもかな」-「おもはするかな」中 自筆本奥入06)
07 あまのかるもにすむゝしのわれからと(自筆本奥入07)
08 われなれは山とかむまてなくしかに
  われたとらめやひとりぬるよは(「山とかむまて」-「山とりむまて」中 自筆本奥入08)」53オ
09 秋のよの月のひかりのきよけれは
  をくらの山もこえぬへらなり(自筆本奥入09)
10 いかにしていかによからむたの山の
  こゑよりおつるをとなしのたき(自筆本奥入10)
11 かひすくもいもせはなへてあるものを
  うつし人にてわかひとりぬる(「かひすくも」-「かひすらも」中 自筆本奥入11)
12 なつのよはうらしまか子かはこなれや
  はかなくあけてくるしかるらむ(自筆本奥入12)
13 いひたてはたか名かおしきしなのなる
  きそちのはしのふちしたへなは(「たか名か」-「たか名は」中 自筆本奥入13)」53ウ
14 波羅奈王之太子其名休魄客端正
  生而十三年不言人不聞声諸臣婆
  羅門道士等誹謗地下作城欲理
  之時大臣伏其車前重悲此事
  太子云我将不言生而理[心+而]入地
  獄自金身不言害欲救魂脱苦詩
  我不言者皆欲生聾盲千時国王夫人
  行迎太子太子我昔先身志国王心
  王道雖治国有所過堕地獄六万余
  威苦難忍我怖地獄故巻舌不言」54オ
  遂請出家父母聞之許之入深山求
  道命終生率天太子者釈迦如来也(「客端正」-「容端正」中 「苦詩」-「苦謗」中 「千時」-「于時」中 「過堕地獄」-「辺随地獄」中 「六万余」-「六万」中 「率天」-「卒天」中 自筆本奥入14・大島本奥入01)

   今案此巻猶横笛鈴虫之同秋
   事歟

まほろし

01 おほそらにおほふはかりのそてもかな(自筆本奥入01)
02 ひかりなき谷にははるもよそなれは
  さきてとくちるものおもひもなし(自筆本奥入02)
03 ふかくさの野へのさくらし心あらは(自筆本奥入03)」54ウ
04 いろかへぬはなたちはなにほとゝきす
  千代をなしけるこゑきこゆなり(「こゑきこゆ」-「末きこゆ」中 自筆本奥入04)
05 秋夜長々々無眠天不明耿々残
  灯背壁影蕭々暗雨打窓声(ナシ-「上陽人」中 「蕭々暗雨」-「荊々晴雨」中 自筆本奥入05)
06 いにしへのことかたらへはほとゝきす
  いかにしりてかなく声のする(自筆本奥入06)
07 かなしさそまさりにまさる人の身に
  いかにおほかるなみたなるらむ(自筆本奥入07)
08 人の身もならはしものをいまゝてに
  かくてもへけるものにそ有ける(「いまゝてに」-「いまゝにて」中 「かくてもへける」-「かくてもへぬる」中 自筆本奥入08)」55オ
09  長恨哥
  夕殿蛍飛思消然秋灯挑尽未
  能眠(自筆本奥入09)
10 かみな月いつもしくれはふりしかと
  かくそてひつる折はなかりき(「しくれは」-「しくれか」中 自筆本奥入10)
11 なにしきゝいろそめかへしにほふらむ
  はなもてはやす君もこなくに(「なにしきゝ」-「なにしきく」中 自筆本奥入11)
12 あくるまておきゐるきくのしら露は
  かりのよをおもふなみたなるへし(自筆本奥入12)」55ウ

にほふ兵部卿

 伊行
01太子のわかなをとひえけむさとりも
 えてしかなと
  悉絶太子是釈迦仏也
  此父之志
  更不叶
  未勘湯(「とひえけむ」-「とひけん」中 「悉絶」-「悉陀」中 「此父」-「此文」中 「未勘湯」-「未勘得」中 自筆本奥入04・大島本奥入01)
02  法華経
  有女人身猶有五障(自筆本奥入05・大島本奥入02)」56オ
03 ぬししらぬかとそにほへれ秋のゝに
  たかぬきかけしふちはかまそも(「かとそにほへれ」-「かこそにほへる」中 自筆本奥入01)
04 はるのよのやみはあやなし(自筆本奥入02)
05 ふるゆきに色はまかひぬむめの花
  かにこそにたるものなかりけり(「なかりけり」-「なかりけれ」中 自筆本奥入03)
06神のます(自筆本奥入07・大島本奥入04)
07賭射還饗<北山>
  大将先着座<垣下座上儲菅円座/親王来着次将上>次将着
  奥座<賭弓不儲土或同座依倉卒也相撲時/敷土敷同座或筵上敷之>
  次垣下公卿着座<相対次将>次立机<或次/将机>」56ウ
  先立>三献訖有絃哥之興給禄有差
  或命東遊将監以下舞<天禄例也>
  相撲之時三献之後不次将令相
  撲人少将臨檻召相撲可将監仰之
  数巡之後有相撲布引等事大将同依
  手番(「同座」-「円座」中 「同座」-「円座」中 「公卿着座」-「公着座」中 「相撲可」-「相撲所」中 「有相撲」-「相撲」中 「大将同依」-「大将内同依」中 自筆本奥入06・大島本奥入03)

   このまき一の名かほる中将

   多久行説
  一方の大将かへりあるしの日神のます
  と云は風俗にて候八乙女と申候哥」57オ
  にて候なり此哥は二段のうたなり
  やおとめはわかやとをとめそたつや
  やおとめたつやゝおとめ
   二段
  かみのますこのみやしろにたつやゝ
  おとめたつやゝおとめ
  かみのやすともうたひ候
  このことはにはみつのをち候
  かさねたるおほせにしたかふへく候
  かくのこときのことゝもいまたよに下らう」57ウ
  のしりてかは候はす(す+かく)申上候へと
  もひることにもや候らむ
   非習其道不及重問為其篇自
   注之(「やおとめ」-「やをめ」中 「ゝおとめ」-「こをとめ」中 「二段」-「二」中 「おほせに」-「おふせに」中 「いまたよに」-「今の世に」中 「かは候す(す+かく)」-「候は候すかく」中 「ひることにもや」-「ひかことゝもや」中 「自注之」-「目注之」中 自筆本奥入07・大島本奥入04)

こうはい

01 君ならてたれにかみせむ(自筆本奥入01)
02 釈迦如来涅槃之後阿難昇高座
  結集諸経之時其形如仏仍衆
  会疑仏再出結(「形如仏」-「形如件」中 「再出結」-「并出給」中 自筆本奥入02・大島本奥入01)」58オ
03 あたらよの月とはなとをおなしくは(自筆本奥入03)
04かわふえ
  或人云猶笙を云へき歟(自筆本奥入04・大島本奥入02)

たけかは

01 楽府上陽
  未容君王得見面已被楊妃遥
  側目妬令潜配上陽宮(「面已」-「而已」中 自筆本奥入01・大島本奥入01)
02 いろよりもかこそあはれとおもほゆれ
  たかそてふれしやとの梅そも(自筆本奥入02)」58ウ
03 はなのかをかせのたよりにたくへてそ(自筆本奥入04)
04  催馬楽
  このとのは(自筆本奥入05・大島本奥入02)
05 おもふにはしのふる事そまけにける(自筆本奥入06)
06  史記呉世家
  季札之初便北方過徐君徐君好季
  札釼口弗敢言季札心知之為便上
  国未献還到徐々君已死於是乃解
  其宝釼繋之徐君家樹而去従者曰
  徐君已死尚誰与乎」59オ
  季札曰不然好吾心已許之豈以死
  信吾心哉(「初便」-「初使」中 「為便」-「為使」中 「還到」-「還至」中 「誰与乎」-「誰弔乎」中 自筆本奥入11・大島本奥入03)
07 さくらさくさくらのやまの桜はな
  さくさくらあれはちるさくら有(自筆本奥入07)
08 桜はな散かひくもれをひらくの
  こんといふなるみちまかふかに(自筆本奥入08)
09 さくらいろに衣やふかくそめてきむ
  はなのちりなんのちのかたみに(自筆本奥入09)
10 こひしなはたか名はたゝしよの中の
  つねなきものといひはなすとも(自筆本奥入10)」59ウ
11 はるの夜のやみはあやなしむめの花(自筆本奥入12)
12 あつまちのみちのはてなき(「はてなき」-「はてなる」中 自筆本奥入13)

はしひめ

01 かりのくるみねのあさきりはれすのみ
  おもひつきせぬよのなかのうさ(自筆本奥入04・明融本付箋01)
02  同時哥歟不可為証哥歟
  うち川の波のまくらに夢さめて
  よるははしひめいやねさるらん(「同時」-「日時」中 「不可」-「不哥」中 自筆本奥入01・明融本奥入02・大島本奥入02)
03 還城楽陵王をあやふめむとす日の」60オ
  くるゝにはちして日をむまにかき
  かへつと云事なりくはしくはしらす
   此等事可否難弁
   史記
  魯陽以戈廻落日事歟(「以戈」-「以万」中 「落日事歟」-「落<同事歟>」中 自筆本奥入03・明融本奥入01・大島本奥入01)
04 をちこちのたつきもしらぬ山中に
  おほつかなくもよふことりかな(明融本付箋02)
05 さすさほのしつくにぬるゝそてゆへに
  身さへうきてもおもほゆるかな(「そてゆへに」-「袖のうへに」中 自筆本奥入05・明融本付箋03)
06 ことのねに嶺のまつかせかよふらし」60ウ
  いつれのをよりしらへそめけむ(自筆本奥入06・明融本付箋04)

   このまき
   一の名うはそく

しゐかもと

01 わかやとゝたのむよしのに君しいらは
  おなしかさしをさしこそはせめ<伊勢>(「伊勢」-ナシ中)
02 はるの野にすみれつみにとこしわれを
  野をなつかしみ一よねにけり<赤人>(「こしわれを」-「こしわれそ」中 「赤人」-ナシ中)
03 わきてしもなにゝほふらん秋のゝに」61オ
  いつれともなくなひくおはなに(自筆本奥入01)
04  経云
  香山大樹竪那羅於仏前調瑠璃
  琴弾八万四千里音楽于時迦葉
  尊者威儀忘舞給(「八万四千里」-「八万四千之」中 自筆本奥入02・大島本奥入01)
05 つゐにゆくみちとはかねてきゝしかと
  きのふけふとはおもはさりしを(自筆本奥入03)
06 さゝのくまひのくまかはにこまとめて(自筆本奥入04)
07 ふちころもはつるゝいとはわひゝとの
  なみたのたまのおとそなりぬる(自筆本奥入05)」61ウ
08 すゑの露もとのしつくや(自筆本奥入06)
09 あまのすむさとのしるへにあらなくに
  うらみむとのみひとのいふらん(自筆本奥入07)
10 神なひのみむろのきしやくつるらん
  たつたのかはの水のにこれる(「神なひの」-「神なみの」中 自筆本奥入08)
11 あさかやまかけさへみゆる(自筆本奥入09)

あけまき

01 身をうしとおもふにきえぬものなれは
  かくてもへぬるものにそ有ける(自筆本奥入01)」62オ
02 よりあはせてなくこゑをいとにして
  わかなみたをはたまにぬかなむ<是伊勢/哥也>(「よりあはせて」-「よりあはて」中 「なくこゑを」-「なくなるこゑを」中 自筆本奥入01・33・大島本奥入04)
03 いとによるものとはなしにわかれちの
  こゝろほそくもおもほゆるかな(ナシ中 自筆本奥入03)
04 かた糸をこなたかなたによりかけて
  あはすはなにをたまのおにせむ(自筆本奥入04)
05 おくやまのはれぬしくれそわひ人の
  そての色をはいとゝましける(自筆本奥入05)
06 辺風吹断秋心結瀧水流添夜渡
  行(「結瀧」-「緒瀧」中 自筆本奥入05)
07 農鶏再鳴残月没馬連嘶行」62ウ
  人出 文集(「農鶏」-「晨鶏」中 自筆本奥入07)
08 安介万支やと年々々比弁波可利
  やと年々々かよ利あひけりと云々
  々 角結古(「年々々」-「年々之」中 「あひけりと云々」-「あひけり云々」中 「角結」-「角緒」中 自筆本奥入08・大島本奥入01)
09 いなせともいひはなたれすうきものは <後撰伊勢哥>
  身をこゝろともせぬよなりけり(自筆本奥入09)
10 よのなかをうしといひてもいつくにか
  身をはかくさん山なしのはな(自筆本奥入10)
11 なかしともおもひそはてぬ昔より
  あふ人からの秋のよなれは<古今/みつね>(自筆本奥入11)」63オ
12 たつねくる身をしとはすはよさの海に
  みもなけつへき心ちこそすれ(自筆本奥入12)
13 入江こくたなゝしを舟こきかへり
  おなし人にやこひわたるらん(自筆本奥入13)
14 かへるさのみちやはかはるかはらねと
  かへるにまとふけさのあはゆき
15 わかくさのにゐたまくらをまきそめて
  よをやへたてむにくからなくに(自筆本奥入14)
16 山しろこはたのさとに馬はあれは
  きみをおもへはかちよりそゆく(「山しろ」-「山しろの」中 「馬はあれは」-「馬はあれと」中 自筆本奥入15)」63ウ
17 よのなかをなにゝたとへんあさほらけ
  こき行ふねのあとのしらなみ(「なにゝたとへん」-「なにゝへたてん」中 自筆本奥入16)
18 いそのかみふるのやまさといかならん
  おちのさと人かすみへたてゝ(自筆本奥入17)
19 夢にたにみゆとはみえしあさな/\
  わかおもかけにはつる身なれは(自筆本奥入18)
20 あふことはとを山鳥のめもあはす
  ありとしきかはこひつゝもをらむ(自筆本奥入19)
21 いかなれはあふみのうみそかゝりてふ
  人をみるめのたえてをひねは(自筆本奥入20)」64オ
22 みな人はことのみそよき月くさの
  うつしこゝろは色ことにして 古今(「みな人は」-「皆人の」中 「古今」-ナシ中 自筆本奥入21)
23 とりかへすものにもかなや世中を
  ありしなからのわか身と思はむ(自筆本奥入22)
24 うらわか身ねよけにみゆるわかくさを
  人のむすはんことをしそおもふ(自筆本奥入23)
25 はつくさのなとめつらしきことのはそ
  うらなくものをおもひけるかな(自筆本奥入24)
26 反魂香反失人魂夫人之魂有何
  許香煙引到焚香処(自筆本奥入25・大島本奥入02)」64ウ
27 まつ山につらきなからもなみこさむ
  ことはさすかにかなしきものを
28 あすしらぬわか身とおもへと暮ぬまに
  けふは人こそかなしかりけれ(「暮ぬまに」-「くれぬまの」中 自筆本奥入26)
29 いはそゝく山ゐの水をむすひあけて
  たかためおしきいのちとかしる(自筆本奥入27)
30 いにしへもいまもむかしもゆくすゑも
  かくそてひつるをりはあらしを(「かくそてひつる」-「からてそいつる」中 「をりは」-「をりも」中 自筆本奥入28)
31 みなといりのあしわけをふねまつ(まつ$さは)りおほみ
  こひしき人にあはすもあるかな(「まつ(まつ$さは)り」-「さはり」中 自筆本奥入29)」65オ
32 遺愛寺鐘歌枕聴香炉峯雪撥
  簾看
  山てらのいりあひのかねの音ことに
  けふもくれぬときくそかなしき
  身のうさをなけく涙もつきはてゝ
  けふもくれぬる入あひのかね(「鐘歌枕」-「鏡[奇+攴]枕」中 自筆本奥入30)
33 いかてなをつれなき人に身をかへて
  くるしきものとおもひしらせむ(自筆本奥入32)

さわらひ」65ウ

01 日の光やふしわかねはいそのかみ
  ふりにし里にはなも咲けり(自筆本奥入01・定家本付箋01・大島本付箋01)
02 わか身からうき世のなかをなけきつゝ
  人のこゑさへかなしかるらん
03 こひしくはきてもみよかし人つてに
  いはせのもりのよふことりかな(自筆本奥入02)
04 いさこゝにわか世はへなむすかはらや
  ふしみのさとのあれまくもおし(「あれまくもおし」-「あれさくもをし」中)
05 月やあらぬはるやむかしのはるならぬ
  わか身ひとつはもとの身にして(自筆本奥入06・大島本付箋03)」66オ
06 さ月まつはなたちはなのかをかけは
  むかしの人のそてのかそする(自筆本奥入05)
07 みくさのみますたの池のねぬなはゝ
  いとふにはゆるものにそ有ける(自筆本奥入07)
08 大かたのわか身ひとつのうきからに
  なへてのよをもうらみつるかな(「なへてのよをも」-「なへての世とも」中 自筆本奥入08・大島本付箋04)
09 このとのはむへもとみけりさきくさの
  みつはよつはにとのつくりせり
10 とりかへすものにもかなや世中を
  ありしなからのわか身ともかな(自筆本奥入09)」66ウ
11 うへてみしぬしなきやとのさくら花
  いろはかりこそむかしなりけれ(自筆本奥入10)

やとり木

01 銷白 不如碁 文集(「不如碁」-「不如基」中 自筆本奥入01・大島本奥入01)
03 婚兎孫附如無作(「婚兎」-「媚兎」中 「無作」-「世作」中 大島本奥入05)
02 [言+争]日及之在條垣雖尽而不情文選
  歎遊
  賦(「[言+争]日及之」-「[言+争]田及元」中 「不情」-「不悟」中 自筆本奥入02・大島本奥入02)
03 松蘿契今者妻事也古御与君結」67オ
  新(「契今者」-「契者」中 自筆本奥入05・大島本奥入04・05)
04 さとはあれて人はふりにし宿なれは
  にはもまかきも秋のゝらなる(「秋のゝらなる」-「秋のゝらなり」中 自筆本奥入06)
05 やま里はものゝわひしき事こそあれ
  よのうきよりはすみよかりけり(自筆本奥入07)
06 わかこゝろなくさめかねつさらしなや
  をはすてやまにてる月をみて(自筆本奥入08)
07 なかゝらぬ命まつまのほとはかり
  うきことしけくおもはすもかな(自筆本奥入09)
08 こひをしてねをのみなけはしきたへの」67ウ
  まくらのしたにあまかへりする(「なけは」-「なけく」中自筆本奥入13)
09 おしからてかなしきものは身なりけり
  うきをそむかんかたのなけれは
10 みをしれはうらみぬものをなそもかく
  ことはりしらぬなみたなりけり(「うらみぬものを」-「うらみむものを」中)
11 うきなからきえせぬものは身也けり
  うらやましきは水のあはかな(自筆本奥入14)
12 こひしさはかきりたにあるよなりせは
  つらきをしゐてなけかさらまし(自筆本奥入16)
13 こひわひぬねをたになかんこゑたてゝ」68オ
  いつこなるらむ音なしのさと(「こひわひぬ」-「こひわひて」中 自筆本奥入17)
14 王昭君かことなり たゝ身は画士也王昭
  君と形令画工(「画士也」-「画工也」中 自筆本奥入19・大島本奥入08)
15 仏の方便にてな
  むかはねの代ち経の文也昔観音勢
  至の子にておはしましけるに
  さら母のためにころされにけれは
  そのをやのかはねをくひにかけて
  終に仏道え給にけり(「仏の」-「仏まち」中 「代ち」-「代々」中 「さら母」-「まゝ母」中 自筆本奥入20・大島本奥入09)
16 世のなかはむかしよりやはうかりけむ
  わか身ひとつのためになれるか(自筆本奥入25)」68ウ
17 不是偏花中愛菊此花開
  後更無花(自筆本奥入26)
18とんしきとは <長食は自内蔵寮諸司/にたふ物也あらとんし>
  きもりとんしきふたやうにある也
  人のしなにしたかひてたふなり(「長食」-「屯食」中 「あら」-「あらむ」中 「したかひて」-「よりて」中)
19こてのせにとは <碁手銭とは公事に/をんさになりてたら>
  つかけ物なりいまは紙をする
  なり(「たらつかけ」-「たりつかふ」中」69オ
20ふんしゆくとは <粉熟とはこれも公事/に飯よりさきにさへ>
  あるものなり節会にもあり

あつまや

01 つくはやまはやましけやましけゝれと
  おもひいるにはさはらさりけり(「しけゝれと」-「しけゝれは」中)
02 わか身からうきよのなかをなけきつゝ
  人のためさへかなしかるらむ(自筆本奥入01)
03 こひせしはみたらしかはにせしみそき」69ウ
  神はうけすもなりにけるかな(「こひせしは」-「こひせしと」中)
04 おほぬさのひく手あまたに成ぬれは
  おもへとえこそたのまさりけれ(自筆本奥入02)
05 おほぬさとなにこそたてれなかれても
  つゐによるせはありてはものを(「ありてはものを」-「ありてふものを」中 自筆本奥入03)
06かうはしさをやむことなきものに心に
 のたまへることはりなりや薬王品に
 なとにとりわきての給める牛頭栴
 檀とかや
  とある所」70オ
  理世口中常出青蓮花香身毛吼中
  常出牛頭栴檀之香所徳功徳如上
  所説(「心に」-「心も」中 「薬王品になとに」-「薬王品なとに」中 「牛頭栴檀」-「牛頭梅檀」中 「理世」-「現世」中 「吼中」-「孔中」中 「常出」-「常書」中 「牛頭栴檀」-「牛頭梅檀」中 「所徳」-「所得」中)
07 おもはぬとたのめしこともあるものを
  なき名をたてゝたにわすれぬ(「たに」-「たゝに」中 自筆本奥入04)
08 ふすほともなくてあけぬる夏のよは
  あひてもあはぬこゝちこそすれ(自筆本奥入05)
09 うつろはぬことたにおしき秋萩を
  おれるはかりもをける露かな(「うつろはぬ」-「うつろはむ」中 「ことたに」-「ことをに」中 自筆本奥入06)
10 くるしくもふりくる雨かみわのすき」70ウ
  さのゝわたりに家もあらなくに(「みわのすき」-「みわかさき」中 「家も」-「われも」中 自筆本奥入08)
11 あさくらやきのまろとのにわかをれは
  なのりをしつゝゆくはたかなそ(「たかなそ」-「たか子そ」中)
12 わかこひはむなしきそらにみちぬらし
  おもひやれともゆくかたもなし(自筆本奥入09)
13 あはれわかつまともさみをおもはゝや
  あかすてのみそかへりみかちに(「さみを」-「きみを」中 自筆本奥入10)
14 班女閨中秋扇色楚王台上夜琴
  声(「秋扇色」-「秋扇」中 自筆本奥入11)

うきふね」71オ

01神のいさむるよりも(自筆本奥入01)
02袖のなかにそと
  あかさりしそてのなかにやいりにけむ
  わかたましゐのなきこゝちする(自筆本奥入03・明融本付箋01)
03衣かたしき
  さむしろにころもかたしきこよひもや
  われをまつらむうちのはしひめ(自筆本奥入06・明融本付箋03)
04木幡のさとにむまはあれと
  やましろのこはたのさとに馬はあれと
  かちよりそゆく君をおもへは(自筆本奥入08・明融本付箋04)」71ウ
05おやのかうこは
  たらちねのおやのかうこのまゆこもり
  いふせくもあるかいもに(「かうこは」-「こうとは」中 「かうこの」-「こうこの」中 「いもに」-「いもにあはすして」中 自筆本奥入10・明融本付箋05)
06さそふみつあらはと
  わひぬれはみをうきくさのねをたえて
  さそふ水あらはいなんとそ思(自筆本奥入12)
07やへたつやまにこもるとも(自筆本奥入13)
08みたらしかはに
  こひせしとみたらしかはにせしみそき
  神はうけすもなりにけるかな(自筆本奥入14・明融本付箋06)」72オ
09たけふのこうに(自筆本奥入15・明融本奥入01)
10けさうする人のありさま(自筆本奥入19・明融本奥入03)
11わすれくさつみてむとあり
  わすれくさつみてかへらんすみよしの
  きしかたの世おもひ出もなし(「きしかたの世」-「きしかたのよに」中)
12むなしきそらにみちぬる
  わかこひはむなしき空にみちぬらし
  おもひやれとも行かたもなし(明融本付箋08)
13ひつしのあゆみよりも(自筆本奥入18・明融本奥入02)
14いふにはまさらむと(自筆本奥入05)」72ウ

かけろふ

手ならひ

夢のうきはし

01 あふことはくもゐはるかになる神の
  音にきゝつゝこひわたるへき(自筆本奥入01)」73オ

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