Last updated 9/30/2006
渋谷栄一著(C)(ver.1-1-1)

藤原定家筆「自筆本奥入」掲載「源氏物語」本文 翻刻資料


凡例

1.本稿では、藤原定家筆「自筆本奥入」に掲載されている、巻尾本文と抄出本文を収録した。
2.底本には、藤原定家筆「自筆本奥入」(複製本)を使用し、日本古典文学会影印叢刊本を参照し、翻刻には、池田亀鑑『源氏物語大成』研究資料篇所収「奥入(第二次)定家自筆本」を参照した。
3.巻尾本文及び抄出本文には、冒頭に番号を付け、末尾に『源氏物語大成』校異篇の頁・行数を記した。
4.自筆本「奥入」所載の巻尾本文及び抄出本文が、「青表紙本」系統諸本との間に異同がある場合には、『源氏物語大成』校異篇によって、その異同を記した。

「桐壺」

【抄出本文】
01 まくらこと(一六・8)
02 なき人のすみかたつねいてたりけむかたみのかむさし(一七・5)
0201「かたみの」-「しるしの」池横肖三大明
03 ともし火をかゝけつくして(一八・5 *この行の左端、一部継紙にかかる)
04 あさまつりことはをこたらせ給(一八・8)
05 右近のつかさのとのゐ申のこゑきこゆるはうしになりぬるなるへし(一八・5)

 *自筆本「奥入」の「桐壺」抄出本文の0201「かたみの」は、独自異文。定家の思い込みによる錯誤か。

「帚木」

【抄出本文】
01 まとのうちなるほとは(三七・11)
02 ふたつのみちうたふをきけ(五九・5)
03 なかゝみ(六三・12)
04 なか河(六四・1)

「空蝉」
(ナシ)

「夕顔」

【巻尾本文】
01 くた/\しき事はあなかちにかくろ
  へしのひたまひしもいとおしくてみな
  もらしとゝめたるをなとみかとの
  御こならむからにみ(み&み)たら(たら$)む人さへ
  かたほ(ほ&ほ)ならすものほめかちなる
  とつくり事めきてとりなす人も
  のしたまひけれはなむ(△△&なむ)あまりも
  のいひさかなきつみさり所なく(一四六・2)
0101「み(み&み)たら(たら$)む」-「みん」大横榊池肖三
0102「なむ(△△&なむ)」-「なん」大横榊池肖三

【抄出本文】
(ナシ)

 *自筆本「奥入」の「夕顔」巻尾本文の0101「み(み&み)たら(たら$)む」の訂正以前本文「みたらむ」は、独自異文。

「若紫」

【巻尾本文】
01 くるをいとおかしきもてあそひなりむ
  すめなとはたかはかりになれは心やすく
  うちふるまひへたてなきさまに
  ふしお(△&お)きなとはえしもすましきを
  これはいとさまかはりたるかしつきくさ
  なりとおほいためり(一九五・9)
0101「すましきを」御横榊池肖三-「すさましきを」大
0102「おほいためり」横榊池三-「おもほいためり」大肖-「おほいたり」御

【抄出本文】
01 なそこひさらむ(一八一・14)
0101「こひ」御榊池三-「こえ」大肖-「こひ(ひ$え)」横
02 くらふの山(一七四・4)

 *自筆本「奥入」の「若紫」巻尾本文0101「すましきを」に対する大島本の「すさましきを」は独自異文。しかし、巻尾本文0102「おほいためり」に対する大島本の「おもほいためり」は、肖柏本と共通本文。また抄出本文0101「こひ」に対する大島本の「こえ」も肖柏本と共通本文。横山本は、「こひ」を「こえ」と訂正している。
 引歌は「人しれぬ身は急げども年を経てなど越えがたき逢坂の関」(後撰集 恋三 七三二 藤原伊尹)である。よって、本文は「こえ」でなければならない。
 定家は、初め、その和歌を指摘した(「源氏釈」では「たつぬへし」(冷泉家本、前田家本は空白)と、未勘)。しかし、なお不審と思ったか、本文を抄出して、後勘を期したものか。その理由は、本文が「こひ」とあったためであろう。
 ところで、「ひ」と「え」の変体仮名の字形「ひ(比)」と「え(江)」は、大変に近似している。「越え」はヤ行に活用する動詞で、その連用形「越え」は、古写本においては、「江」で表記される事例が多い。その「江」が「比」と誤認されて、「こひ」という異文が発生したのであろう。大島本の字母は「こえ(己衣)」である。
 定家の書写態度からすれば、本文に不審な箇所があっても、容易に改変はしない、というのが、彼の基本的姿勢である。河内本等を見ても、「こひ」とする。よって、この箇所の異文発生は、平安末期の早い段階において生じて、諸本ことごとく「こひ」となっていたものであろう。
 なお、大島本「若紫」について、藤本孝一は、最終面第59丁表4行の字体が、それまでの書風とは相違することに着目して、定家本「土左日記」において、定家が親本を臨模していたように、この大島本も親本が臨模されたのではないか、とすると、それは俊成本であったか、という説が提起されている。

「末摘花」

【抄出本文】
01 ふるき(二二一・6、二二三・14)
02 わかむとほり(二〇二・1)
03 夢かとそ見るとうちすして(二二九・5)

「紅葉賀」

【抄出本文】
(ナシ)

「花宴」

【抄出本文】
(ナシ)

「葵」

【抄出本文】
01 ひとたまひ(二八七・5)

「賢木」

【抄出本文】
01 <朱>\<ちかきよに>(三五八・6)

「花散里」

【抄出本文】
(ナシ)

「須磨」

【抄出本文】
01 <朱>\ことなしにて(四〇五・3)
02 <朱>\時しあらは(四一一・4)
03 <朱>\三千里外(四一三・10)
04 <朱>\いける世にとは(四二一・6)
05 <朱>\せきふきこゆる(四二一・13)
06 たゝこれ西にゆくなり(四二九・1)
07 △涙△△れける(四三二・4 *切断による不明箇所有り)

「明石」

【抄出本文】
01 あき人の中にてたにふることきゝはやす(四五五・8)
02 まくなき(四七七・11)

「澪標」

【抄出本文】
01 しまこきはなれ(五〇四・2)

「蓬生」

【巻尾本文】
01 しとはすかたりもせまほしけれ
  といとかしらいたうゝるさくもの
  うけれはなむいまゝたついてあら/ん
  おりにおもひいてゝ△(△&な)ん
  きこゆへきと/そ

【抄出本文】
01 あけまき(五二二・7)
02 五濁(五二八・2)

「関屋」

【抄出本文】
01 つくはねの山をふきこす
  風もうきたつ心ちして(五四七・4)

「絵合」

【抄出本文】
(ナシ)

「松風」

【巻尾本文】
01 ら(△&ら)うたきものにしたまふ御心なれは
  えていたきかしつかはやとおほすいかに
  せましむかへやせましとおほしみたる
  わたりたまふこといとかたしさかのゝみ
  たうのね仏なとまちいてゝ月にふた
  たひはかりの御ちきりなめりとしのわ
  たりにはたちまさりぬへかめるをゝよ
  ひなきことゝおもへともなをいかゝもの
  おもはしからぬ

【抄出本文】
01 夜光玉(五八三・13)
02 夜光玉(五八三・13)

「薄雲」

【抄出本文】
(ナシ)

「朝顔」

【抄出本文】
(ナシ)

「少女」

【抄出本文】
01 五節にことつけてなおしなとさまかはれる色
  ゆるされて(六九七・5)
02 寮試(六七三・5)

「玉鬘」

【巻尾本文】
01 ことはりなりやとそあ(△&あ)める

【抄出本文】
01 われはわすれす(七二一・5)

「初音」

【巻尾本文】
01 た(た+ま)ひて御ことゝものうるわしきふくろ
  とも(ん&も)してひめをかせ給へるみなひき
  いてゝをしのこひて(て#)ゆるへ(へ&へ)るをとゝのへ(へ&へ)
  させ給なとす御方/\心つかひいたくしつゝ
  心(心+けさう)をつくし給らむかし(ん&むかし)

【抄出本文】
01 <朱>こゑまちいてたる
02 はちすのなかのさかひ(七七〇・2)
03 <朱>いたはりなきしろたへの衣
04 みつむまや(七七四・13)

「胡蝶」

【抄出本文】
01 かめのうへの山(七八二・14)

「蛍」

【抄出本文】
(ナシ)

「常夏」

【抄出本文】
01 そのおちはをたにひろへや(八三一・1)
02 ぬきかは(八三五・6)

「篝火」

【抄出本文】
(ナシ)

「野分」

【抄出本文】
01 いつこのゝへのほとりの花(八七七・14)

「行幸」

【巻尾本文】
01 あかみてわりなうみくるしとおほし
  たりとのもゝのむつかしきおりはあふみ
  のきみゝるこそよろつまきるれとてたゝ
  わらひくさにつくり給へとよ人ははち
  かてらはしたなめたまふなとさま/\い(△△△に&ま/\い)
  ひけり

「藤袴」

【抄出本文】
01 三従(九二三・11)
02 よしのゝたきをせかむよりも(九二四・13)

「真木柱」

【巻尾本文】
01 めき(△&き)さはくこゑいとしるし人/\
  いとくるしと思にこゑいとさはやか
  にて
   おき(△△&おき)つなみよるへなみちに
  たゝよはゝさほ(△△&さほ)さしよらむとまり
  をしへに(△&に)たなゝしをふねこきかへり
  おなし人をやあなわるやい(/\&い)といふを
  いとあやしうこの御かたにはかうよ
  ういなき(△&き)こときこえぬ物をと思
  まはすにこのきく人なりけりと/お(△&お)かしうて
   よるへなみかせのさはかす
  ふな人も思はぬかたにいそつたひ
  せすとてはしたなかめりとや

「梅枝」

【巻尾本文】
01 あ△△△ぬつれ
  さよと思つゝけ給うけれと
   かきりとてわすれかたきを
    わするゝもこやよになひ
      く心なるらん/と
   あるをあやしとうちをかれ/す
    かたふきつゝみ/ゐ給へり

「藤裏葉」

【巻尾本文】
01 にほはしきところはそひてさへ
  みゆふえつかうまつり給いとおも
  しろしさうかの殿上人みはしに
  さふらふなかに弁少将のこゑすく
  れたり猶さるへきにこそとみえ
  たる御なからひなめり

【抄出本文】
01 文籍にも家礼(一〇〇二・3)
02 かつらをおりし(一〇〇九・6)
03 うたのほうし(一〇一八・6)
04 宇陀法師(一〇一八・6)

「若菜(上)」

【抄出本文】
(ナシ)

「若菜(下)」

【抄出本文】
01 <ふしまちの月>(一一五五・4 *この行、切断により末尾一字切れる)
02 <朱>うきにまきれぬこひしさの

「柏木」

【巻尾本文】
01 かたをは
  なさ(さ&さ)けをたてたる人にそもの
  し給けれ(れ$れ)はさしもあるましき
  おほや(や&や)け人女房なとのとしふる(ふる&ふる)
  めきたるともさへこひかなしひき
  こゆるましてうへには御あそ(御あそ&御あそ)ひなとの
  おりことにもまつおほしいてゝなむ(む&む)
  しのはせ給けるあはれ衛もんのかみと
  いふことくさなにことにつけても
  いはぬ人なし六条の院にはまし
  てあはれとお(お&お)ほしいつる事月日にそ/へて
  おほかりこのわかきみを御心ひとつ
  にはかたみとみなし給へと人の
  思よらぬことなれはいとかひなし
  秋つかたになれはこの君はゐさ
  りなと

「横笛」

【抄出本文】
(ナシ)

「鈴虫」

【抄出本文】
(ナシ)

「夕霧」

【抄出本文】
01 無言太子とか(一三五二・5)

「御法」

【抄出本文】
(ナシ)

「幻」

【抄出本文】
01 うなひまつ(一四〇七・5)

「匂兵部卿」

【抄出本文】
01 太子のわか名をとひえけむさとり
  もえてしかなと(一四三三・9)

「紅梅」

【抄出本文】
01 かわふえ(一四五二・14)

「竹河」

【巻尾本文】
01 なるをうれはしとおもへりしゝ
  うときこゆめりしそこのころと
  うの中将ときこゆめるとしよは
  ひのほとはかたはならねと人に
  をくるとなけきたまへりさい
  さうはとかく
  つき/\しく

「橋姫」

【抄出本文】
(ナシ)

「椎本」

【抄出本文】
(ナシ)

「総角」

【抄出本文】
(ナシ)

「早蕨」

【巻尾本文】
01 人もお(お&お)もひのたまふめるやうにいにし
  への御かはりとなすらへ(らへ&らへ)きこえてかう
  お(お&お)もひしりけりとみえたてまつるふ
  しもあらはやとはおほせとさすかに
  とかくやとかた/\にやすからすきこえ
  なしたまへはくるしうおほされ/けり
  やとをはかれし

【抄出本文】
01 <やとをはかれし>

「宿木」

【抄出本文】
01 <朱>\なにゝかゝれるといとしのひて事もつゝかす(一七一六・8)
02 <朱>\あくるまさきてと(一七一三・4)
03 <朱>\あさまたきまたき(き+ゝ)にけり(一七一三・4)
04 <朱>\こりすまに又もたのまれぬへけれ(一七二七・1)
05 <朱>\さしくみは
06 <朱>\李夫人(一七五四・4)
07 <朱>\こかねもとむ(一七五四・7)
08 <朱>\仏の方便にてなむかはねのふくろ(一七五九・13)
09 花ふらせたるたくみ(一七五四・4)
10 <朱>\なにかしのみこのこの花めてたるゆふ
  へそかし(一七六六・13)

「東屋」

【抄出本文】
01 <朱><いかたうめ>
02 <あはれわかつま>(一八五一・13)

「浮舟」

【抄出本文】
01 <朱>\けさうする人のありさまのいつれとなき(一九一七・1)

「蜻蛉」

【巻尾本文】
01 えしかけろふ あるかなき(き&き)
  か(か+の)とれいのひとりこちたまふ

【抄出本文】
01 <朱>ねたましかほに
02 <朱>ことよりほかを(一九八二・12)
  <朱>\ことよりほか(一九八二・12)

「手習」

【巻尾本文】
(ナシ)

「夢浮橋」

【巻尾本文】
(ナシ)

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