201041日掲載

201041日更新

 

「発心和歌集」(冷泉家時雨亭文庫蔵本)

底本:「発心和歌集」(冷泉家時雨亭叢書第17巻 平安私家集4所収 朝日新聞社 199612月)

太字が藤原定家加筆の部分

\合点 =傍記 $ミセケチ #抹消 &重ね書き □△判読不明 < >注記

 

発心和哥集」(表紙 中央やや左寄り打付書)

 

    大斎院御哥」(扉ウ)

 

発心和歌集

妾久係念於仏陀常寄情法

宝為菩提也釈尊説法華一乗

歌詠諸如来之善爰知歌詠之

功高為仏事焉猶梵語者天

竺之詞流沙遥隔漢字者震

旦之迹風俗各殊弟子誕生」(1オ)

 

皇朝受身婦女不兼邯鄲之歩

偏染桑梓之情是故素戔之新

詠卅一字歌学而述其義飢人之

始献卅一字様習而以其詞始四

弘願海乎十大願惣五十五首勒

為一巻名曰発心和哥集是則所

以十方浄土之際遍発往生之」(1ウ)

 

心九品蓮台之上終殖化生之縁

也何必傾力営堂塔教主懇誓

願之誠何必剃髪入山林経生

新讃歎之徳耶不知出此和歌之

道□彼阿字之門矣唯願若有

見聞者生々世々与妾値遇

多宝如来之願定有誹謗者」(2オ)

 

在々所々与妾結縁同不軽菩

薩之行一心至実三宝捨諸

嗟乎秋風吹□之声是告老

也晩日衑山之景非偸命哉

泣恩照鑑乎執此時于時寛

九載南呂也 

衆生無辺誓願度」(2ウ)

 

0001 たれとなくひとつにのりのいかたにて

かなたのきしにつくよしも哉

煩悩無辺誓願断

0002 かそふへき方もなけれと身にちかき

まつはいつゝのさはりなりけり

法門無尽誓願知

0003 いかにしてつくしてしらむさとること

いることかたきかとゝきけとも

無上菩提誓願証」(3オ)

 

0004 こゝのしなさきひらくなるはちすはの

うへのうへなる身ともならはや

般若心経

色即是空空即是色 受想行識亦復如是

  勅

0005 世々をへてときくるのりはおほかれと

これそまことの心なりける

普賢十願

礼敬諸仏

普賢行願威神力 普現一切如来前

一身復現刹塵身 一々遍礼刹塵仏」(3ウ)

 

0006 きみたにもちりのなかにもあらはれは

たつとゐるとそゐやまはるへき

称讃如来

各以一切音声海 普出無量妙言詞

尽於未来一切劫 讃仏深心功徳海

0007 おもふにもいふにもあまるふかさにて

こともこゝろも越よはれぬかな

広修供養

我以広大勝解心 深信一切三世仏」(4オ)

 

悉以普賢行願力 普通供養諸如来

0008 さしなからみよのほとけにたてまつる

はるさくはなもあきのもみちも

懺除業障

我昔所造諸悪業 皆由無始貪恚痴

従身語意之所生 一切我今皆懺悔

0009 年ころそつきせさりけるわかみより

ひとのためまてなけきつゝくる

随喜功徳」(4ウ)

 

十方一切諸如来 二乗有学及無学

一切如来与菩薩 所有功徳皆随喜

0010 今こそあらはれにけれちかくてとほく

きえてもこのかたはなこりな

請転法輪

十方所有世間灯 最初成就菩提者

我今一切皆勧請 転於無上妙法輪

0011 のよまてもひろめてしかなかへるとて

のりのちきりをむすひ越きすへ

諸仏住世」(5オ)

 

諸仏若欲示涅槃 我志至誠而勧請

唯願久住刹塵劫 利益一切諸衆生

  勅

0012 みな人のひかり越あふくそらの月

のとかにてらせくもかくれせて

常随仏学

我随一切如来覚 修習普賢円満行

供養過去諸如来 及与現在十方仏

0013 いかにしてのりをたもたむよにふれは

ねふりもさめぬゆめのかなしさ」(5ウ)

 

恒順衆生

我常随順諸衆生 尽於未来一切劫

恒修普賢広大門 円満無上大菩提

0014 うれしきもつらきもことにわかれぬは

人にしたかふこゝろなりけり

普皆廻向

我此普賢殊勝行 無辺勝福皆廻向

普願沈溺諸衆生 即往無量光仏刹

0015 かくはかりそこゐもしらぬわかやみに

しつまむ人をうかへてしかな」(6オ)

 

転女成仏経

消滅先罪業当得大菩薩果転女身

成無上道

0016 とりわきてとかれしのりにあひぬれは

みもかへつへくきくそうれしき

如意輪経

阿弥陀仏自現其身 見極楽界種々荘厳

0017 ここなからかしこのかさりあらはるゝとき

そこゝろことくなりける

阿弥陀経」(6ウ)

 

池中蓮華大如車輪 青色青光黄色黄

光 赤色赤光白色 白光微妙香潔

0018 いろ/\のはちすかゝやくいけみつに

かなふこゝろやすみてみゆらん

理趣分

於諸仏土随願往生 乃至菩提不堕悪趣

0019 いつるひのあしたことには人しれす

にしにこゝろはいるとしらなん

仁王経上巻」(7オ)

 

世諦幻化起譬如虚空花

0020 おほそらにさきたるはなのふくかせに

ちる越わか身によそへてそみる

同経下巻

有本自無因縁成諸盛者必衰

実者必虚

0021 はかなくもたのみけるかなはしめより

あるにもあらぬよにこそありけれ

本願薬師経」(7ウ)

 

一聞我名悪病除愈乃至速証

無上菩提

0022 ひとたひもきくにはみなそたもたるゝ

おもひわつらふわかなゝれとん

寿命経

若人毎日為一切衆生 転読此経終无

夭死短命之怖

0023 よそ人のためにたもてるのりゆへに

かすならぬ身にほとはへぬらん」(8オ)

 

無量義経

戒定恵解知見生 三昧六通道品発

慈悲十力無畏起 衆生善業因縁出

0024 かくはかり人のこゝろにまかせける

ほとけのたね越もとめけるかな

法華経序品

又見仏子未嘗睡眠 経行林中勤求仏道

0025 ぬる夜なくのり越もとめし人もあるを

ゆめのなかにてすくすみそうき」(8ウ)

 

方便品

若人散乱心乃至 以一花供養於画像

漸見無数仏

0026 ひとたひのはなのかをり越しるへにて

むすのほとけにあひみさらめや

譬喩品

羊車鹿車大牛之車 今在門外汝等出来

0027 あまたありとかとをはきゝていてしかと

ひとつのゝりのくるまなりけり

信解品」(9オ)

 

示其金銀真珠頗梨 諸物出入皆使令知

猶処門外止宿草菴

0028 草のいほにとしへしほとのこゝろには

つゆかゝらむとおもひかけきや

薬草喩品

譬如大雲以一味雨 潤於人花各得成実

0029 ひとついろにわかみうつれとはなのいろも

にしにさす江やにほひますらん

授記品

若知我深心見為授記者如以甘露灑」(9ウ)

 

除熱得清涼

0030 のりおもふこゝろしふかくなりぬれは

つゆのそらにもすゝしかりけり

化城喩品

長夜増悪趣減損諸天衆従冥入於冥

永不聞仏名

0031 くらきよりくらきになかくいりぬとん

たつねてたれにとはんとすらん

五百弟子授記品」(10オ)

 

以無価宝殊繋着内衣裏(裏+哩)与而捨去

時臥不覚知

0032 ゑひのうちにかけし衣のたま/\も

むかしのともにあひてこそしれ

授学無学人記品

世尊慧灯明 我聞授記音

心歓喜充満 如甘露見灌

0033 あきらけきのりのともし火なかりせは

こゝろのやみのいかてはれまし」(10ウ)

 

法師品

寂寞無人声 読誦此経典

我爾時為現 清浄光明身

0034 そらすみてこゝろのとけきさよ中に

ありあけの月のひかり越そます

見宝塔品

釈迦牟尼仏以右指 開七宝塔戸出

大音声

0035 たまのと越ひらきしときにあはすして

あけぬよにしもまとふへしやは」(11オ)

 

提婆達多品

皆遥見彼龍女成仏 普為時会人天

説法心大歓喜

0036 さはりにもさはらぬためしありけれは

へたつるくもゝあらしとそおもふ

勧持品

為説是経故 忍此諸難事

我不愛身命 但惜無上道

0037 うきことのしのひかたき越しのひても

なをこのみちをゝしみとゝめん」(11ウ)

 

安楽行品

在於閑処 修摂其心 安住不動

如須弥山

0038 さためなきよもなにならすのり越おもふ

心のうちしうこきなけれは

従地湧出品

善学菩薩道 不染世間法

如蓮華在水 従地而湧出

0039 いさきよきひとのみちにもいりぬれは

むつのちりにもけかれさりけり」(12オ)

 

如来寿量品

為度衆生故 方便現涅槃 而実不滅度

常住此説法 我常住於此 以諸神通力

令顛倒衆生 雖近而不見

0040 そのかみのこゝろまとひのなこりにて

ちかき越みぬそわひしかりける

分別功徳品

雨天曼陀羅 摩訶曼陀羅 釈梵如恒沙

無数仏土来 雨栴檀沈水 繽紛而乱墜」(12ウ)

 

如鳥飛空下 供散於諸仏

0041 いろ/\のはなちりくれはくもゐより

とひかふとりとみえまかひけん

随喜功徳品

世皆不牢固 如水沫泡焔 汝等咸応当

疾生厭離心

0042 かけろふのあるかなきかのよの中に

われあるものとたれたのみけん

法師功徳品」(13オ)

 

又如浄明鏡 悉見諸色像 菩薩於浄身

皆見世所有

0043 くもりなきかゝみのうちそはつかしき

かゝみのかけのくもりなけれは

常不軽菩薩品

億々万劫 至不可議 時乃得聞

是法花経

0044 いかにしておほくのこふをつくしけん

かつきてたにもあかぬみのりを

如来神力品」(13ウ)

 

如日月光明 能除諸幽冥 斯人行世間

能滅衆生闇

0045 さやかなる月のひかりのてらさすは

くらきみちをやひとりゆかまし

嘱累品

如是三摩諸菩薩頂而作是言

0046 いたゝきをなてゝ越しへしのりなれは

これよりかみはあらぬなりけり

薬王菩薩品」(14オ)

 

若有女人聞是薬王菩薩本事品

能受持者尽是女身後不復受

0047 まれらなるのりをきゝつるみちしあれは

うき越かきりとおもひぬるかな

妙音菩薩品

及衆難処皆能救済 乃至於王後宮

変為女身而説是経

0048 かくはかりいとふうきみをきみのみそ

のりのためにとなりかはりける」(14ウ)

 

観世音菩薩品

具足神通力 広修知方便 十方諸国土

無刹不現身 種種諸悪趣 地獄鬼畜生

生老病死苦 以漸悉令滅

  新

0049 あふ事をいつくにてとかちきるへき

うきみのゆかんかた越しらねは

陀羅尼品

若童男形若童女形 乃至夢中亦

復莫悩」(15オ)

 

0050 なにといへとゆめのなかにもあやまたし

のりをたもてる人となりなは

妙荘厳王品

又如一眼之亀値浮木孔 而我等宿

福深厚生値仏法

0051 ひとめにてたのみかけつるうきゝには

のりはつるへきこゝちやはする

普賢菩薩品

宝威徳上王仏国 遥聞此娑婆世界」(15ウ)

 

説法華経与无量 无辺百千万億

菩薩衆共来聴受

0052 たつねきてのりをきゝけんそのときに

あはていつしかありしわかみそ

普賢経

衆罪如霜露 慧日能消除

是故応至心 懺悔六情恨

0053 つくりおけるつみをはいかてつゆしもの

あさひにあたることくけしてん」(16オ)

 

涅槃

譬如耕田秋暇為勝此経如是諸経中

0054 あきのたのかへす/\もかなしきは

かきりのたひのみのりなりける

願以此功徳 普及於一切 我等与衆生

皆共成仏道

0055 いかにしてしるもしらぬもよのひと越

はちすのうへのともとなしてん」(16ウ)

 

ほとけのみちこさそひいれ/てん」(17オ)

 

(白紙)」(17ウ)

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