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「近代秀歌」翻字データベース

凡例
1 1字のオドリ字はゝを使用した。2字以上のオドリ字はゝゝと記した。
2 丁の変わり目に、」を付け丁数とその表裏を記した。
3 地の文は0000、和歌は0001から0068まで、4桁の数字で記し、頁数は3桁、行数は2桁、 字数は2桁で記した。
4 なお13頁(7オ)は白紙である。
5 冒頭の第1文字「以」は「KIND00000010101XI1」と表示される。

作品 歌番号 頁 行
KIND000000101 今はそのかみのことに侍るべし。
KIND000000102 ある人の「歌はいかやうによむべき
KIND000000103 ものぞ」と問はれて侍りしかば、愚か
KIND000000104 なる心に任せて、わづかに思ひ得
KIND000000105 たることを書きつけ侍りし。いささか
KIND000000106 のよしもなく、ただことばに書き
KIND000000107 続けて送くり侍りし。見苦しけ
KIND000000108 れど、ただ思ふままの僻事
KIND000000109 に侍るべし。」 (1オ)
KIND000000201 やまとうたの道、浅きに似て深く、易
KIND000000202 きに似て難し。弁へ知る人
KIND000000203 またいくばくならず。昔、貫之、
KIND000000204 歌の心巧みに、たけ及び難く、詞
KIND000000205 強く、姿おもしろきさまを
KIND000000206 好みて、余情妖艶の体を詠まず。
KIND000000207 それよりこのかた、その流を承くるとも
KIND000000208 がら、ひとへにこの姿に赴く。」 (1ウ)
KIND000000301 ただし、世下り人の心劣りて、たけも
KIND000000302 及ばず、詞も賤しくなりゆく。
KIND000000303 いはむや近き世の人は、ただ思ひ
KIND000000304 得たる風情を三十字に言ひ続け
KIND000000305 むことを先として、さらに姿詞
KIND000000306 の趣を知らず。これによりて、
KIND000000307 末の世の歌は、田夫の花の蔭
KIND000000308 を去り、商人の鮮衣を脱げるがごとし。」 (2オ)
KIND000000401 しかれども、大納言経信卿、俊頼朝臣、左
KIND000000402 京大夫顕輔卿、清輔朝臣、近くは亡父
KIND000000403 卿、すなはちこの道を習ひ侍りける基俊
KIND000000404 と申しける人、このともがら、末の世の賤
KIND000000405 しき姿を離れて、つねに古き
KIND000000406 歌を恋ひ願へり。この人々の思ひ
KIND000000407 入れて秀れたる歌は高き世に
KIND000000408 も及びてや侍らむ。今の世となりて、」 (2ウ)
KIND000000501 この賤しき姿をいささか変へて、古
KIND000000502 き詞を慕へる歌あまた出で来
KIND000000503 たりて、花山僧正、在原中将、素性、小町
KIND000000504 が後絶えたる歌のさま、わづかに見
KIND000000505 え聞こゆる時侍るを、物の心さとり知らぬ
KIND000000506 人は、新しき事出で来て歌の
KIND000000507 道変りにたりと申すも侍べし。
KIND000000508 ただし、このころの後学末生、まことに」 (3オ)
KIND000000601 歌とのみ思ひて、そのさま知らぬにや
KIND000000602 侍らむ。ただ聞きにくきをこととして、
KIND000000603 易かるべきことを違へ離れたることを
KIND000000604 続けて、似ぬ歌をまねぶと思へるとも
KIND000000605 がらあまねくなりにて侍にや。この道
KIND000000606 を詳しくさとるべしとばかりは思う
KIND000000607 給へながら、わづかに重代の名ばかり
KIND000000608 を伝へて、あるいは用ゐられあるい」 (3ウ)
KIND000000701 は誹られ侍れど、もとより道を好
KIND000000702 む心欠けて、わづかに人の許さぬ事
KIND000000703 を申し続くるよりほかに習ひ知る
KIND000000704 ことも侍らず。おろそかなる親の教
KIND000000705 へとては、「歌は広く見遠く聞く
KIND000000706 道にあらず。心より出でて自らさとる
KIND000000707 ものなり」とばかりぞ申し侍りしかど、それを
KIND000000708 まことなりけりとまでたどり知ることも侍らず。」 (4オ)
KIND000000801 いはむや老に臨みて後、病に
KIND000000802 重く憂へも深く沈み侍りにしかば、
KIND000000803 詞の花色を忘れ心の泉源
KIND000000804 枯れて、物をとかく思ひ続くることも
KIND000000805 侍らざりしかば、いよいよ跡形なく思ひ捨て
KIND000000806 侍りにき。ただ愚かなる心に今恋ひ
KIND000000807 願ひ侍る歌のさまばかりを、いささか申し
KIND000000808 侍るなり。詞は古きを慕ひ、心は
KIND000000809 新しきを求め、及ばぬ高き」 (4ウ)
KIND000000901 姿を願ひて、寛平以往の歌になら
KIND000000902 はば、おのづからよろしきこともなどか侍
KIND000000903 らざらむ。古きを恋ひ願ふにとりて、
KIND000000904 昔の歌の詞を改めず詠み
KIND000000905 据ゑたるを、すなはち本歌とすと申すなり。
KIND000000906 かの本歌を思ふに、たとへば、五七五の
KIND000000907 七五の字をさながら置き、七七の字を
KIND000000908 同じく続けつれば、新しき歌に
KIND000000909 聞きなされぬところぞ侍る。五七の句は、」 (5オ)
KIND000001001 やうによりてさるべきにや侍らむ。たとへば、
KIND000001002 「いその神ふるきみやこ」「郭公なくやさ月」
KIND000001003 「ひさかたのあまのかぐ山」「たまぼこの道
KIND000001004 行き人」など申すことは、いくたびもこ
KIND000001005 れを詠までは歌出で来べからず。「年の
KIND000001006 内に春は来にけり」「袖ひちて結び
KIND000001007 し水」「月やあらぬ春や昔の」
KIND000001008 「桜散る木の下風」などは、詠む」 (5ウ)
KIND000001101 べからずとぞ教へりし。次に、今の
KIND000001102 世に肩を並ぶるともがら、たとへば
KIND000001103 世になくとも、昨日今日といふばかり
KIND000001104 出で来たる歌は、一句もその人の
KIND000001105 詠みたりしと見えむことを必ず去
KIND000001106 らまほしく思う給へ侍るなり。ただ
KIND000001107 この趣をわづかに思ふばかりに
KIND000001108 て、おほかたの悪し良し、歌のたたず
KIND000001109 まひ、さらに習ひ知ることも侍らず。」 (6オ)
KIND000001201 いはむや難義など申す事は、家々に
KIND000001202 習ひ所々に立つるすぢおのおの
KIND000001203 侍るなれど、さらに伝へ聞くこと侍らざり
KIND000001204 き。わづかに弁へ申す事も、人々の書き
KIND000001205 集めたる物に変りたることなきのみ
KIND000001206 こそ侍れば、はじめて記し出だすに
KIND000001207 及ばず。他家の人の説、いささか変れる
KIND000001208 こと侍らじ。」 (6ウ)
KIND000101401 春立つといふばかりにやみ吉野の
KIND000101402 山も霞みて今朝は見ゆらむ [拾遺巻一1 壬生忠岑]
KIND000201403 山桜咲き初めしよりひさかたの
KIND000201404 雲井に見ゆる滝の白糸 [金葉巻一50 源俊頼]
KIND000301405 桜咲く遠山鳥のしだり尾の
KIND000301406 長々し日も飽かぬ色かな [新古今巻二99 後鳥羽院]
KIND000401407 いざ今日は春の山辺にまじりなむ
KIND000401408 暮れなばなげの花の蔭かは [古今巻二95 素性]」 (7ウ)
KIND000501501 桜狩り雨は降り来ぬ同じくは
KIND000501502 濡るとも花の蔭に隠れむ [拾遺巻一50 読人しらず]
KIND000601503 花の色はうつりにけりないたづらに
KIND000601504 わが身世にふるながめせしまに [古今巻二113 小野小町]」
KIND000701505 ひさかたの光のどけき春の日に
KIND000701506 しづ心なく花の散るらむ [古今巻二84 紀友則]」
KIND000801507 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを
KIND000801508 雲のいづらに月残るらむ [古今巻三166 清原深養父]」 (8オ)
KIND000901601 八重むぐら茂れる宿のさびしきに
KIND000901602 人こそ見えね秋は来にけり [拾遺巻三140 恵慶]
KIND001001603 あはれいかに草葉の露のこぼるらむ
KIND001001604 秋風立ちぬ宮城野の原 [新古今巻四300 西行]
KIND001101605 月見れば千々にものこそかなしけれ
KIND001101606 わが身ひとつの秋にはあらねど [古今巻四193 大江千里]
KIND001201607 秋の露やたもとにいたく結ぶらむ
KIND001201608 長き夜飽かずやどる月かな [新古今巻四433 後鳥羽院]」 (8ウ)
KIND001301701 秋の月高嶺の雲のあなたにて
KIND001301702 晴れゆく空の暮るる待ちけり [千載巻四274 藤原忠通]
KIND001401703 鳴き渡る雁の涙や落ちつらむ
KIND001401704 物思ふやどの萩の上の露 [古今巻四221 読人しらず]
KIND001501705 秋の田の刈り穂の庵の苫をあらみ
KIND001501706 わが衣手は露に濡れつつ [後撰巻六302 天智天皇]
KIND001601707 白露に風の吹きしく秋の野は
KIND001601708 つらぬき止めぬ玉ぞ散りける [後撰巻六308 文屋朝康]」 (9オ)
KIND001701801 秋風に誘はれ渡る雁がねは
KIND001701802 物思ふ人のやどをよかなむ [後撰巻七360 読人しらず]
KIND001801803 夕されば門田の稲葉おとづれて
KIND001801804 葦のまろ屋に秋風ぞ吹く [金葉巻三183 源経信]
KIND001901805 さを鹿の妻どふ山の岡辺なる
KIND001901806 わさ田は刈らじ霜は置くとも [新古今巻五459 柿本人麿]
KIND002001807 奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の
KIND002001808 声聞く時ぞ秋は悲しき [古今巻四215 読人しらず]」 (9ウ)
KIND002101901 白露も時雨もいたくもる山は
KIND002101902 下葉残らず色づきにけり [古今巻五260 紀貫之]
KIND002201903 ほのぼのと有明の月の月かげに
KIND002201904 紅葉吹きおろす山おろしの風 [新古今巻六591 源信明]
KIND002301905 秋篠や外山の里やしぐるらむ
KIND002301906 生駒のたけに雲のかかれる [新古今巻六585 西行]
KIND002401907 君来ずは一人や寝なむ笹の葉の
KIND002401908 深山もそよにさやぐ霜夜を [新古今巻六616 藤原清輔]」 (10オ)
KIND002502001 天の原空さへさえやわたるらむ
KIND002502002 氷と見ゆる冬の夜の月 [拾遺巻四242 恵慶]
KIND002602003 ふるさとは吉野の山の近ければ
KIND002602004 ひと日もみ雪降らぬ日はなし [古今巻六321 読人しらず]
KIND002702005 あさぼらけ有明の月と見るまでに
KIND002702006 吉野の里に降れる白雪 [古今巻六321 読人しらず]
KIND002802007 いその神ふる野のをざさ霜を経て
KIND002802008 ひと夜ばかりに残る年かな [新古今巻六698 藤原良経]」 (10ウ)
KIND002902101 君が世はつきじとぞ思ふ神風や
KIND002902102 みもすそ河の澄まむかぎりは [後拾遺巻七450 源経信]
KIND003002103 末の露本のしづくや世の中の
KIND003002104 おくれさきだつためしなるらむ [新古今巻八757 遍昭]
KIND003102105 みな人は花の衣になりぬなり
KIND003102106 苔のたもとよかはきだにせよ [古今巻十六847 遍昭]
KIND003202107 もろともに苔の下には朽ちずして
KIND003202108 埋もれぬ名を見るぞ悲しき [金葉巻十660 和泉式部]」 (11オ)
KIND003302201 かぎりあれば今日脱ぎすてつ藤衣
KIND003302202 はてなき物は涙なりけり [拾遺巻二十1293 藤原道信]
KIND003402203 亡き人の形見の雲やしぐるらむ
KIND003402204 ゆふべの雨に色は見えねど [新古今巻八803 後鳥羽院]
KIND003502205 この世にてまた逢ふまじき悲しさに
KIND003502206 すすめし人ぞ心乱れし [千載巻九604 西行]
KIND003602207 たち別れいなばの山の峯に生ふる
KIND003602208 松とし聞かば今帰りこむ [古今巻八365 在原行平]」 (11ウ)
KIND003702301 わくらばに訪ふ人あらば須磨の浦に
KIND003702302 藻塩たれつつわぶと答へよ [古今巻十八962 在原行平]
KIND003802303 難波人葦火たく屋にやどかりて
KIND003802304 すずろに袖のしほたるるかな [新古今巻十973 藤原俊成]
KIND003902305 たち返りまたも来て見む松島や
KIND003902306 雄島の苫屋波にあらすな [新古今巻十933 藤原俊成]
KIND004002307 明けばまた越ゆべき山の峯なれや
KIND004002308 空行く月の末の白雲 [新古今巻十939 藤原家隆]」 (12オ)
KIND004102401 難波江の藻に埋もるる玉柏
KIND004102402 あらはれてだに人を恋ひばや [千載巻十一640 源俊頼]
KIND004202403 もらすなよ雲ゐる峰の初時雨
KIND004202404 木の葉は下に色変はるとも [新古今巻十二1087 藤原良経]
KIND004302405 東路の佐野の舟橋かけてのみ
KIND004302406 思ひわたるを知る人のなさ [後撰巻十620 源等]
KIND004402407 浅茅生の小野の篠原しのぶれど
KIND004402408 あまりてなどか人の恋ひしき [後撰巻九578 源等]」 (12ウ)
KIND004502501 いかにせむ室の八島にやどもがな
KIND004502502 恋の煙を空にまがへむ [千載巻十一702 藤原俊成]
KIND004602503 夕月夜さすや岡辺の松の葉の
KIND004602504 いつともわかぬ恋もするかな [古今巻十一490 読人しらず]
KIND004702505 難波潟短き葦のふしの間も
KIND004702506 逢はでこの世を過ぐしてよとや [新古今巻十一1049 伊勢]
KIND004802507 憂かりける人を初瀬の山おろしよ
KIND004802508 はげしかれとは祈らぬものを [新古今巻十一1049 伊勢]」 (13オ)
KIND004902601 思ひ河絶えず流るる水の泡の
KIND004902602 うたかた人に逢はで消えめや [後撰巻十620 源等]
KIND005002603 なき名のみたつの市とはさわげども
KIND005002604 いさまた人をうるよしもなし [拾遺巻十二700 柿本人麿]
KIND005102605 ゆらの門を渡る舟人かぢを絶え
KIND005102606 行方も知らぬ恋の道かな [新古今巻十一1071 曾禰好忠]
KIND005202607 唐衣袖に人目はつつめども
KIND005202608 漏りいづる物は涙なりけり [新古今巻十一1003 藤原伊尹]」 (13ウ)
KIND005302701 高砂の尾上の松を吹く風の
KIND005302702 音にのみやは聞きわたるかな [千載巻十一651 藤原顕輔]
KIND005402703 音に聞く高師の浜のあだ波は
KIND005402704 かけじや袖の濡れもこそすれ [金葉巻八501 紀伊]
KIND005502705 つつめどもかくれぬものは夏虫の
KIND005502706 身よりあまれる思ひなりけり [後撰巻四209 読人しらず]
KIND005602707 かた糸をこなたかなたによりかけて
KIND005602708 あはずは何を玉の緒にせむ [古今巻十一483 読人しらず]」 (14オ)
KIND005702801 思ひ草葉末に結ぶ白露の
KIND005702802 たまたま来ては手にもたまらず [金葉巻七444 源俊頼]
KIND005802803 思ひきやしぢのはしがき書きつめて
KIND005802804 百夜も同じまろねせむとは [千載巻十二778 藤原俊成]
KIND005902805 有明のつれなく見えし別れより
KIND005902806 暁ばかり憂きものはなし [古今巻十三625 壬生忠岑]
KIND006002807 さむしろに衣かたしき今宵もや
KIND006002808 我を待つらむ宇治の橋姫 [古今巻十四689 読人しらず]」 (14ウ)
KIND006102901 み熊野の浦より遠方に漕ぐ舟の
KIND006102902 我をばよそに隔てつるかな [新古今巻十一1048 伊勢]
KIND006202903 三輪の山いかに待ち見む年経とも
KIND006202904 たづぬる人もあらじと思へば [古今巻十五780 伊勢]
KIND006302905 袖の露もあらぬ色にぞ消えかへる
KIND006302906 うつれば変はる嘆きせしまに [新古今巻十四1323 後鳥羽院]
KIND006402907 思ひ出でよ誰がかねごとの末ならむ
KIND006402908 昨日の雲のあとの山風 [新古今巻十四1294 藤原家隆]」 (15オ)
KIND006503001 嘆けとて月やは物を思はする
KIND006503002 かこち顔なるわが涙かな [千載巻十五926 西行]
KIND006603003 くまもなき折しも人を思ひ出でて
KIND006603004 心と月をやつしつるかな [新古今巻十四1268 西行]
KIND006703005 嵯峨の山みゆき絶えにし芹河の
KIND006703006 千代の古道跡はありけり [後撰巻十五1076 在原行平]
KIND006803007 沖つ風吹にけらしな住吉の
KIND006803008 松のしづえを洗ふ白波 [後拾遺巻十八1064 源経信]」 (15ウ)
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