「文学」とは何か。「日本文学」は世界の文学の中でどのような固有性と普遍性といった特徴をもつか。およそ千数百年の歴史を有する日本列島の上に展開されてきた言語生活史の上に立って、日常の言語生活の中で見られるちょっと気の利いた言い回し、慣用句のレベルからいわゆる詩文、小説といった高度な言語藝術までをその対象として、言語とその作品形態、創作者と享受者、それらを切り結ぶさまざまな環境や条件等を考慮に入れて、中国文学と比較しながら日本文学の主題と形態上の特質を考えていきたい。
1 日本語の表現構造について考える。
2 日本文学史の概観を学ぶ。
3 日本文学と中国文学の相違について考える。
成績評価の方法
授業中の小テストと課題レポート及び出席点によって総合的に評価する。
教科書
特になし プリント配布
参考書
小西甚一著『日本文藝史』1~5 講談社
加藤周一著『日本文学史序説』上下 筑摩書房
川本皓嗣 小林康夫編『文学の方法』岩波書店
講義計画
(前期)
1 序説 「文学」とはなにか
日本文学の主題と形態上の特徴について
「文学」の発生
「文学」以前
「文学」の周辺
2 古代 「日本文学」の成立 「美」的感動を主題とした文学
日本語の構造と言語芸術化 その可能性と限界性
作品論『万葉集』とその時代
仮名文字の発明と散文文芸 日本的美の様式と伝統の定立
作品論『源氏物語』 虚構物語の達成とその精神的高さ
(後期)
3 中世 転換期の「文学」
自己の「アイデンテティ」の主題とその展開
作家論 定家 世阿弥 芭蕉その芸術と人生 求道と言語芸術の極致
「文学」の周縁
非「文学」と反「文学」
4 近代 新「日本文学」の誕生へ
「真」的事実への迫真性
商業主義とマスコミ時代の中の「文学」
主題論 近代ジャーナリズムと評論学芸の系譜
5 現代 国際化 情報化時代と価値観の多様化の中での日本文学
川端康成と大江健三郎の文学
情報のデジタル化と東アジア漢字文化圏諸国の文化の行方
むすび 人類の普遍的文化遺産としての日本文学の課題
E-mail eshibuya@takachiho.ac.jp