古典籍古筆切複製本研究資料
                                              平成24年6月5日開設
                                              平成24年6月19日更新
                                                             渋谷栄一

《公開の辞》

 日本の平安時代の文学は、貴族の文学の時代といわれるように、美しい和紙の上に毛筆でさまざまな書体の漢字や仮名文字で書かれ、それが巻子本あるいは冊子本等の形態でみごとに作り上げられている。例えば、元永本「古今和歌集」、御物本「和漢朗詠集」、西本願寺本「三十六人家集」等々。それを紐解くときまた丁をめくるときの、和紙の手触り、たちのぼる防虫香の気、目に入る濃淡肥痩の水茎等々、その古典籍が悠久の時間を経て伝えられてきた気品というものが凛として伝わってくる。

しかし、一般の読者が貴重な古典籍類を直に手にとって読むことはできない。せいぜい博物館や美術館等の展覧会でガラス越しに眺めるくらいである。わずかに古典文学の研究者が、調査研究を目的にして、マスクをして息を吹きかけないように、また手には手袋をして、慎重かつ丁寧におそるおそる丁をめくりながら目を凝らして見ていくような具合である。

ところが一方で、日本では大正・昭和期以降、印刷技術の発達によって、その貴重な古典籍類の影印本や複製本が多数作製されているので、それらによって、間接的にではあるが、私たちはそうした古典籍類をかなり思う存分に繰り返し何度も、あちこちめくりながら、その雰囲気に浸りながら読むことができるようになった。活字本で読む以上に至福の読書法である。

そうした中で、かつては完本として伝えられていた貴重な古典籍類が戦前・戦後期において売りに出されて、中には古筆切れとなって今ではばらばらになっていってしまったものがある。ところが、幸いなことにそうした複製本が作られていたために元の形がその中に残っているものがある。

古典籍古筆切複製本研究資料では、現在では、古筆切となってしまっている貴重な古典籍を複製本の姿で古典文学研究のために資したいと考えて公開しようとするものである。

第1輯「複製本 藤原俊成筆「昭和切『古今和歌集』上」(一帖 昭和3年分割)」

第2輯「複製本 伝藤原佐理(藤原定実)筆「筋切『古今和歌集』上」(一帖 昭和27年分割)」

第3輯「複製本 伝藤原行成筆「関戸本『古今和歌集』零本」(一帖 戦後分割)

第4輯「藤原定信伊行筆・戊辰切本「和漢朗詠集 上下」(二巻 昭和3年分割)」

第5輯「伝源兼行筆・関戸本「和漢朗詠集 上下」(一冊 戦後分割)」

第6輯「伝藤原定頼筆・山城切本「和漢朗詠集 上下」(二冊 昭和14年分割)」

第7輯「伝後京極藤原良経筆・嵯峨切本「和漢朗詠集 上」(一巻 昭和年分割)」

番外「架蔵本「三体和歌・自讃歌」断簡」(14枚)」

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