201041日掲載

201041日更新

 

六条修理大夫集

底本:「六条修理大夫集」(冷泉家時雨亭叢書第18巻 平安私家集5所収 朝日新聞社 1997年8月)

太字が藤原定家加筆の部分

\合点 =傍記 $ミセケチ #抹消 &重ね書き □△判読不明 < >注記

 

六条修理大夫集」(表紙 中央打付書)

 

承暦四年殿上哥合

0001 たつねこぬさきにもちらて山さくら

 見るおりにしもゆきとふるらむ

頭中将の家の哥合

0002 山たかみおのへ「にさけるさくら花 

ちりなはくものはるゝとや見む

二位の白河のさうしあはせの哥

  金

0003 しくれつゝかつちる山のもみちはを 

いかにふくよのあらしなるらむ」(1オ)

 

(白紙)」(1ウ)

(白紙)」(2オ)

 

とをく郭公をきくといふ心を

0004 山ひこのこたへさりせは郭公

ほかになくねをいかてきかまし

郁芳門院根合哥

  続

0005 さりともとおもふはかりやわか

こひのいのち越かくるたのみ/なるらん

遐齢如松題

0006 ふたはなるまつをひきうへて

これもみなおなしちとせのかけ越こそ」(2ウ)

 

まて

毎朝臨菊

0007 きくのはなさきぬるときはめかれせす 

いくあさつゆのをきてみらん

鳥羽院前栽合に越前守家保

に給歌二首左方萩不入

0008 はきかはなちるもちらぬもをしなへて 

さ(さ+な)からをしき秋のゝへかな

すゝき

0009 秋風になひくすゝきとしりなから 

いくたひそこにたちとまるらん

おなしせんさいあはせにいなはの」(3オ)

 

(白紙)」(3ウ)

(白紙)」(4オ)

 

かみにかはりてみきかたにたて

まつるうた二首

おきいらす

0010 あきのよは人まつとしもなけれとも 

おきのはかせにおとろかれつゝ

きくいる

  金

0011 ちとせまてきみかつむへきゝくなれは 

露もあたにはをかしとそおもふ

てん上にてちとりといふ題をよ

ませ給しに」(4ウ)

 

0012 おきつ風ふきあをのうらやさむからん 

なみたちさはきちとりなくなり

こひをなこそのせきによせて

よみしに

0013 あつまちのなこそのせきはよとゝもに 

つれなき人の心なりけり

哥合に

0014 しきのふすかりたにたてるいなく

きのいなとは人のいはすもあらなん

人/\あめのうちの野花と」(5オ)

 

(白紙)」(5ウ)

(白紙)」(6オ)

 

いふたい越よみしに

0015 あめふれはおもひこそやれつゆをたに 

おもけにみえしまのゝむらはき

三条のたいりにわたらせ給てはしめ

てうたよませたまひしに花

おほくの春をちきるといふた

いを

0016 きみかよのちとせのはるにさくら花 

これやはしめのにほひなるらん

かよひはへりけるおとこのかれ/\に」(6ウ)

 

なりはへりけるを女いかゝいひやり

たりけむおとことかくいひて

いたうならみすなといひを

こせたりしにその女にかはりて

0017 なにしかは人もうらみむなつひきの 

いとかゝりける身こそつらけれ

ある六位の二位の御もとに

内のてん上をまうしけるか

としころになりにけれとゆる

されさりけるにろうさうを」(7オ)

 

(白紙)」(7ウ)

(白紙)」(8オ)

 

もとめたまうときゝてこの六位

ろうさうをたてまつると

0018 くものうへをよそにのみきくみにしあれは 

みとりのそてもなにゝかはせむ

をこなひするほとなりこの返事

せよとのたまひしかは

0019 よそにのみおもはさらなんくもの上を 

つひはみとりのそてそかさねん

すみよしのかむぬしくにもと内に

まさする事ありし越宣旨を

そくゝたるとてまたのとしの二」(8ウ)

 

月にいひをこせたりし

0020 くものうへは月こそさやにさえわたれ 

またとゝこほることやなになり

返し

0021 とゝこほることはなけれとすみよしの 

まつこゝろにやひさしかるらん

みかとおりゐさせたまひての

ち大井に御幸せさせ給て落

葉水にみてりといふたいをよ

ませたまひしに

  金

0022 大井河ゐせきのおとのなかりせはも

みちをしけるわたりとやみむ」(9オ)

 

(白紙)」(9オ)

(白紙)」(10オ)

 

はりまにくたりてはへりしに

すわうの内侍といふ人花の

さかりもすきなんとするに

のほらぬかといひて

0023 おほつかなみやこのさくらにほふにも 

うら風はやきわたりいかにそ

かへし

0024 みやこにもはなのにほひはかはらねといひ

あはせつゝ見る人そなき

院とはとのにおはしまいしにてん上

ひと/\つれ/\かりてひことにうた」(10ウ)

 

よまむとて野花露しけしと

いふたいを

0025 うつらなくあたのおほのゝまくすはらいく

よのつゆにむすほれぬらん

のゝ花衣にゝほふ

0026 見れとあかぬとほりのをのゝはきかはなそて

にうつれるかさへなつかし

田家秋興

0027 風はやみなひくいなはの(の+はの)うへにいかて

をくらん秋夜のつ△」(11オ)

 

(白紙)」(11ウ)

(白紙)」(12オ)

 

行路秋花

0028 きりはれぬ越のゝはきはらさきにけり 

ゆきかふ人のそてにをふまて

二月廿二日京こく殿にこかうあり

しにまたのひ花をもてあそふと

いふたいをよまれしに

0029 さくらはなにほふさかりのやとなれは 

なほをりてこそみまくほしけれ

六条院にて落花入簾といふたいを

よませたまひしに」(12ウ)

 

0030 さくらはなこすのまと越りちるからに 

ちりさへけふははらはてそみる

はなのいけのみつにうつるといふた

いをとは殿ゝしまにて人(人+/\)よみ/しに

0031 しらなみのたつかとそみるいけ水にし

つえをひてゝさけるさくらは

かへるかり

0032 ことつてむひとゝまつらむはるかすみ

たなひくそらにかへるかりかね

水によりて山花をしるといふ題

を人/\よみしに」(13オ)

 

(白紙)」(13ウ)

(白紙)」(14オ)

 

0033 ちりかゝるほそたにかはそやまさくら 

たつぬる人のしるへなりける

はりまへくたりしにひのあれしかは

かはしりよりむまにてかちより

まかりしにむまにのりしところ

にてむまのくちをとりてすみよし

の神主くにもと

0034 もろともにふちはあせねとしたはるゝ 

こゝろはきみにをくれさりけり

といひかけしかは返し」(14ウ)

 

0035 こゝろ越はおなしみちにはたくふとも 

なをすみよしのきしもせしかし

たちはなのなりもとかやりとひと

つへたてたるところにまうてき

て人とものかたりなとしてかくな

むとつけてかへりしかは

0036 すまのうらのうらみやせましたかさこの 

まつにをとせすをきつしらなみ

たひのやとりのゆきといふ心を

よみしに

  新

0037 まつかねにおはなかりしきよもすから」(15オ)

 

(白紙)」(15ウ)

(白紙)」(16オ)

 

 かたしくそてに雪はふりつゝ

     こひ

0038 いはしろののなかのまつにあらねとも 

こひもとしふる物にそありける

としころはへりし女房のあまに

なりてはへるにきぬとらすとて

0039 からころもたえすきてみよいまはとて 

のりの道にはいりにけれとも

かへし

0040 いまはとてそむく身なれとから衣き

てみるときはきみそうれしき」(16ウ)

 

人/\春の心花にありといふこゝろを

よみはへりしに

0041 心みにさてもやはるはうれしきとはなゝ

きとしにあふよしもかな

とはとのに御かたゝかへに正月十日

行かうありしつとめてゆきの

ふりたりしに内侍すわうさふら

ふときゝてつかはしたりし

0042 あらたまのはるのはしめにふるゆきは 

いつしかさけるはなかとそみる

かへし」(17オ)

 

(白紙)」(17ウ)

(白紙)」(18オ)

 

0043 すむ人もひさしきやとはちとせふるみゆ

きにゆきのつもるなりけり

依月夏涼

0044 なかむれ(れ&れ)はすゝしかりけりなつのよの 

月のかつらに風やふくらん

雨中閑居

0045 さみたれにとふ人もなしやまさとはの

きのしつくのおとはかりして

遠村早苗

0046 さとゝ越みやまたのさなへひきつれて 

いそきてみゆるたこのけしきか

逐日草滋」(18ウ)

 

0047 まくすはらしけれるのへのけしきかな 

としはかすへのみえすなりゆく

瞿麦満庭

0048 わかやとはにはもまかきもをしなへて 

いまさかりなりなてしこのはな

盧橘暮薫

0049 のきちかくたちはなのにほふかは 

たそかれときそおほめかれける

聞郭公忘帰

0050 ほとゝきすこゑあかなくにたつねきて 

いくたのもりにいくよへぬらん

照射及暁」(19オ)

 

(白紙)」(19ウ)

(白紙)」(20オ)

 

0051 ともせともこよひもあけぬいたつらに 

あふさかやまもかひなかりけり

初恋

0052 わかこひはふかきみやまのまつなれや 

人にしられてとしのへゆけは

遇不逢恋

0053 おもひきやまたあふ事のかたしきに 

すまのうらにてしほたるへしと

こひ

0054 おほそらはこひしき人のなにならん 

なかめてのみもすくすころ哉」(20ウ)

 

卯花処々

0055 かはのへにむら/\さける卯の花はせゝの

しらなみたつかとそみる

逐夜待郭公

0056 さてもなをねていくよにかなりぬらん 

やまほとゝきすいまやきなくと

待客聞郭公

0057 もろともにきかましもの越ほとゝきす 

たのめし人のはやきまさなむ

樹陰留客

0058 あふさかのせきならねともなつやまの

 このしたかけも人はとめけり」(21オ)

 

(白紙)」(21ウ)

(白紙)」(22オ)

 

正月十日ころよりわさとなけれと風

のたへかたさにおろしこめて春の

ゆくへもしらすしてありしに二月

廿日ころにかくすしせしにりう源あ

さりかこもりそうにてありしにこ

そうへたりしさくらの花さきた

りし越みてあさりにやりし

0059 はなみむとねこしにうへしわかさくら

さきにけらしもかせなふきこ△(△#そ)

あさりのこのむうたのすち(ち$かた)になん

返し」(22ウ)

 

0060 ことしよりきみかゝさしのはななれは 

ちとせ越へてもちらしとそ思

二月廿日ころほひすわうのないし

いふ事ありてせうそこいひた

りしかへりことに正月十日ころ

より風のわりなさにさしいつる

事もなくておろしこめて春の

ゆくゑもしらてなむあるなとか

とはぬとまうしたりしかはまたをし

かへして

0061 みにしみていとふかせとはしらすして 

はなによりともおもひけるかな」(23オ)

 

(白紙)」(23ウ)

(白紙)」(24オ)

 

返し

0062 あ越やきのいとふらみたるはる風も

いかにくるしきものとかはしる

別当のとのゐ所に人/\月前旅

情といふ題よみしに

  金

0063 まつかねにころもかたしきよもすから 

なかむる月をいもみるらんか

鳥羽殿此寝殿にはしめてわた

らせ給しに松契遐年題

0064 ことしよりえたさしそむるまつのきの」(24ウ) 

 

はなのをり/\きみそみるへき

七条にて人/\あそひしついてに

よみしこひのうた

0065 としもへぬつくまの神にことよせて 

なへのかすにも人のいれなむ

おなしところにて人/\梅告春近題

并恋

0066 ゆきのうちにつほみにけりなむ

めのはなはるあけかたになりやしぬらん

0067 としまよりとわたるふねのともやかた 

やかたつれなきいもか心か」(25オ)

 

(白紙)」(25ウ)

(白紙)」(26オ)

 

正月ゆきのふりたりしかは新

大納言のもとにきこえし

  金

0068 あらたまのとしのはしめにふりしけはゝ

つゆきとこそいふへかりけれ

返し

0069 あさとあけてはるのこすゑの雪みれは 

はつ花ともやいふへかるらん

藤大納言のとはのとのゐところにて

人/\あめのうちのほとゝきすまた

恋のうたよみしに

0070 さみたれにいまきのをかのほとゝきす」(26ウ)

 

しのゝにぬれてなきわたるなりな

0071 まつのきのねにあらはれぬわか恋は 

ひとの心のかたきしなれは

右近のむまはに人/\ほとゝきす

たつぬとて

0072 ほとゝきすこゑあかなくにほとゝき(ほとゝき$やまひこの)す

こたふるさとそうれしかりける

そのついてに人/\こひ越よみしに

0073 うらもなくいまはひとつにわきもこか 

あひみそめけんくもとりのあや」(27オ)

 

(白紙)」(27ウ)

(白紙)」(28オ)

 

うるふ五月の(の$)ついたちのひ

新大納言のもとにきこえし

0074 なをきなけいまた五月そほとゝきす 

おもひたかへてやまへかへるな

返し大納言 

0075 またさらにはつねとそまつほとゝきす

おなしさつきも月しかはれは

おなしうたをさきの左衛門佐

もとゝしかもとにつかはしたりし

返うた

0076 つけさらはこそにならひてほとゝきす」(28ウ)

 

ほと/\やまにいりやしなまし

うちにみや/\にうたよむときこゆる

女房ともにけさうのこゝろのうたを

めしてそのきこえある殿上人か

むたちめにたひてかへしたて

まつれとおほせられしかは

一宮のきのきみ

0077 うらみかねさよの衣をひとしれすおも

ひかへせとなくさまぬかな

かへし

0078 ひたすらにさよのころもにことよせて 

うるなは人をうらみさらなむ」(29オ)

 

(白紙)」(29ウ)

(白紙)」(30オ)

 

十一月はつかころに平等院のあさり

かけのむま越ゝくりて

0079 またしきにあふさかやまをたちいつる 

この月かけのこまはあらし越

かへし

0080 もりこすはいかてかみましあふさかの(の=は)この

月かけのこまそうれしき

はるかに月をおもふといふ事(事$たい)を

0081 こゝろあらはこよひの月をからくにの 

人もなかめてあかさゝらめや

月はたひの中のともといふ題を」(30ウ)

 

0082 ふなてしてすまのうらわによもすから 

月のひかりのさす越こそみれ

松遐年友

0083 ちとせまてすむへきやとのためしにと 

いはねのこ松けふそうへつる

秋花催興

0084 よとゝもにのへに心やあくかれむもと

あらのはきのはなしちらすは

もみち

0085 くれなゐにふかくそみゆるふすまちの 

ひきてのやまのみねのもみちは」(31オ)

 

(白紙)」(31ウ)

(白紙)」(32オ)

 

     恋

0086 いはしろのゝなかの(の=に)たてるむすひまつい

つとくへしとみえぬきみかな

おとこせんさきのさいゐんにわた

りてさふらひ給しにくすたま

たてまつるとて

0087 けふことにたつねてひけるあやめ

くさねなかききみかよはひとも哉

かへしたれにかありけん

0088 あやめくさたまのうてなにひきかけて 

ねなかきためしきみそみるへき」(32ウ)

 

ゆきむねのさきのひやうゑ

のすけのもとよりあふきかみこ

ひにをこせたりしにれいならぬ

事ありときくはいかにとありしかは

かみやりしにかく

0089 なをさりの事のは越たにきかましや 

あふきの風のたよりならすは

かへし

0090 な越さりの風のたよりとおもふなよ 

このかみ/\もかけてちかはむ

0091 わきもこにいかてしらせんそなれきの」(33オ)

 

(白紙)」(33ウ)

(白紙)」(34オ)

 

えたにもいはてとしのへぬれ越

中宮のほりかはの院つくりて

わたりたまひて哥ありしに松契/遐年

0092 よろつよのまつのしけれるやとなれは

ちとせのみとはおもはさらなむ

院にて山家卯花題

0093 かよひこしゝはのかとたちみえぬまて 

うのはなさけるみやまへのさと

人のこゆみをせちにこひしかは

をしみかねて」(34ウ)

 

0094 ちりたかきゝのせきもりかたつかゆみ

心よわくもはられぬるかな

返し

0095 いまよりはをして越いはむたつかゆみ

かくおもはすにはられぬるかな

暮山落葉

0096 くれぬとてかつちるやまのもみちはに 

あらしふくよとみてやかへらむ

     恋

0097 しるらめやをとにのみきくもみちは(もみちは$)に

   かつらきの山のみねともこひしき物を」(35オ)

 

(白紙)」(35ウ)

(白紙)」(36オ)

 

月照菊花

0098 いかはかりくまなきそら(そら=よは)の月なれや 

やへさくはな(はな$きく)のかすみゆるまて

落葉埋橋并恋

  金

0099 をくらやまみねのあらしのふくからに 

たにのかけはしもみちしにけり

0100 こまに越くうつし心もなきまてに 

こひわたるとは人しるらめや

     月

0101 みかさやまさしいつる月のくまもなく

 ひかりのとけきよにもあるかな」(36ウ)

 

山家待花

0102 あしひきのかたやまきしにいゑゐして 

みねのさくらの花まつわれは

中院にて初和哥見花延齢

0103 なかむれはおのゝえさへそくちぬへき 

花こそちよのためしなりけれ

江中納言のもとに申へき

ことありてまかりたりしに

さくらのめてたかりし越みて

0104 きみのみそたつねてみけるさくら花」(37オ)

 

(白紙)」(37ウ)

(白紙)」(38オ)

 

   をらまほしくもおもほゆるかな

又日かへし

0105 はる事にきつゝみよかしさくら花 

はなさかりあるやとゝいはせん

二月はかり於円融院翫花こゝろ

人/\よみしに

0106 ぬしなくてあれのみまさるやまさとに 

さかりとみゆるはなさくらかな

堀川院に内わたらせおはしまし

て和哥ありしに竹不改色題」(38ウ)

 

0107 すめらきのなかれもたえすかはたけの 

みとりのいろもいろつくまてに

閏二月ありし時三月廿日あま

りのころほひに待郭公和哥

一首とかきて平等院のあさり

のもとより

0108 きさらきのそはさらませはほとゝきす

これはうつきとさとなれなまし

かへし

0109 ひかすにてほとをしりくるほとゝき

すはる(る$る)くるゝ日といかてきゝけむ」(39オ)

 

(白紙)」(39ウ)

(白紙)」(40オ)

  

長治二年三月四日行幸して三日

おはしましゝたひ池上花題

0110 きしちかくにほふさくらのはなみ

れはしつえやいけのかさしなるらん

春日にまうてたりしに荘厳

院法眼の房に宿たりしに又の日

かへらむとせしにさけなとたう

へなとしてある僧のよめり

し」(40ウ)

 

0111 みかさやまこたかき松のなかれとそきみ

をはたのむちよのためしに

かへし

0112 みかさやま松のなたての身なれとも 

ちよのためしにひかれぬるかな

正月に人のうつえをつかはしたり

しにかきつけたりしうた

0113 みかさやまさしもはなれぬきみにけ

ふいのりのしつえをたてまつる哉

かへし」(41オ)

 

(白紙)」(41ウ)

(白紙)」(42オ)

 

0114 いのりけるつえのたよりにみかさ

やまちとせのさかもさしこえぬへし

中納言のひめきみの御もとに

さきのさい宮より正月七日ねの

ひにあたりたりしにおほせら

れたりし

0115 とにかくにこゝろもとなき子日かなまつや

わかなをつみにゆかまし

かはりてかへし

0116 しらすやは子日のまつにひきつれて 

ちとせつむへきわかなゝりとは」(42ウ)

 

(白紙)」(43オ)

 

0117)ナシ

0118)ナシ

 

0119 いろもかもむつましきかなきくの

花ちとせの秋のかさしと思へは

月照紅葉

0120 うすくこく(く&き)もみちのいろのみゆるまて 

くまなくてらすよはの月かな

     こひ

0121 おもひあまりおつるなみたをしのふれと 

をさふるそてのいろにいてぬる

0122 いはしろのゝなかにたてるむすひ

まつとくへくもなききみか心か」(43ウ)

 

0123 なみかくるきしのひたひのそな

れきのそなれていもとぬるよしも哉

依花忘家

0124 よとゝもにのへにてとしやすくさまし 

ときはにさけるさくらなりせは

つくしへくたらむとせしに永禄

僧都鹿毛なるむまをゝこせて

0125 たちわかれはるかにいきのまつなれは 

こひしかるへきちよのかけかな

かへし

0126 なみまわけはるかにいきのまつのみも」(44オ) 

 

(白紙)」(44ウ)

(白紙)」(45オ)

 

こゝろつくしにこひしかへき

和哥合桜

0127 ふきちらす風なかりせはさくら花

にほふひかすのほとは見てまし

花無択処

0128 いつこともわかぬさくらのはなゝれは 

たつねいたらぬくまのなき哉

十月十日ころになるまてきく

さかさりしに真尊阿闍梨の

もとよりいとおほきなるく

き越ゝこせてえたにゆひ」(45ウ)

 

つけたりし

0129 ふたはよりゆくすゑまてにさかへつゝ 

これもやへさくしらきくのはな

かへし

0130 よろつよのかさしとおもへはしことに 

とへとそ思しらきくのはな

くら人のしゝうのゑちこのかみ

のもとにわたりしふみに

0131 もろとんにちよへむほと越人しれす 

くれゆくそらをまつにてそゆく(ゆく$)しる

かへし

0132 ちとせへむほとはまことにしりぬへし」(46オ) 

 

(白紙)」(46ウ)

(白紙)」(47オ)

 

くれゆくそらをまつとしきけは

たいこの座主のもとよりこのほと

なん花のさかりなるとありしかは

人/\さそひてまかりたりしに

0133 さくらはな花の心もこゝろみむこの

はるかせはふかすもあらなむ

東山観音寺といふところにて

藤花いとめてたかりしに人/\

ふちならひに恋哥よみしに

0134 ひたすらにいまもむかしもわすれて 

心にかゝるふちのはなかな」(47ウ)

 

0135 しるらめやをとにのみきくかつらきの 

やまのみねともこひわたるとは

このうたをきゝてさきのひやう

ゑのすけゆきむねのきみのもと

より

0136 ふちのはなみぬまて人の心にもきくに

つけてそまつかゝりける

かへし

0137 ふちのはなこゝろにかゝるものならは 

たつねてまつもなとかみさらん

前木工頭俊頼朝臣△山花みに」(48オ)

 

(白紙)」(48ウ)

(白紙)」(49オ)

 

人/\さそひてまかり△りけり

ときゝて

0138 はる風にあらぬ身なれとさくら花たつ

ぬる人にいとはれにけり

返し

0139 きみか身ははなふくへしとみる物を 

かせならすともおもひけるかな

人/\つれ/\かりて恋のうたよ

みしに

0140 あしひきのやまかへりなるはしたかの 

さもみえかたきこひもするかな」(49ウ)

 

俊忠宰相家にて人/\十首恋

哥よみしに

うらなふ恋

0141 恋/\につけのをくしのうらをして 

つれなく人をなをたのむかな

きくの(の$)とまらぬ恋

0142 たまつしまきしうつなみのたち

かへりせないてましぬなこりこひしき

ちか事の恋

0143 うれしくはのちのこゝろを神もきけ」(50オ)

 

(白紙)」(50ウ)

(白紙)」(51オ)

 

   ひくしめなはのたえしとそ思

ふしなからまことなき恋

0144 ことならはふす名もたちぬひたすらに 

うちもとけなんいもかしたひも

いのれとあはぬ恋

0145 はふりこかいのりを神やうけさらむ 

我にしきゝをとる人もなき

ついせうのこひ

0146 心をはいかにもきみにつくせともくも

のよそにてとしをふるかな」(51ウ)

 

いつはりにてあはぬこひ

0147 こひしさをなにゝつけてかなくさめん 

たのめし月ひすきぬ(ぬ+と)おもへは

たちきゝの恋

  金

0148 わきもこかこ△(△&ゑ)たちきゝしからころも

そのよのつゆにそてはぬれにき

いやしきをいとふこひ

0149 くもとりのあやしかりける身なれとも 

おもひそめてし心はやまし

かたけれとゝくるこひ」(52オ)

 

(白紙)」(52ウ)

(白紙)」(53オ)

 

0150 いかはかりみとのまくはひちきりありて 

おやのいさめにさはらさるらん

お七条亭人/\桜哥十首

よみしに

0151 いまはゝやさきにほはなんさくら花(花&花)

もすのくさくきかくろへにけり

0152 つねよりものとけくにほへさくらはな

春くはゝれるとしのしるしに

  金

0153 さくらはなさきぬるときはよしのやま

たちものほらぬみねのしらくも」(53ウ)

 

0154 さくらはなにほはぬ春はなけれとも 

みるたひことにめつらしきかな

0155 しらくもとみゆるさくらのにほひかな 

たかすむやとのこすゑなるらん

0156 かすみたつくらまのやまのうすさくら

てふりをしてなをりそわつらふ

0157 めかれせすなかめてをらむさくら

   はなやました風にちりもこそすれ

0158 ちりつもるかゝみのやまのさくら花 

△もかけにこそよるもみえけれ」(54オ)

 

(白紙)」(54ウ)

(白紙)」(55オ)

 

0159 うくひすのはなふみしくやまさとは 

ころもてさえぬゆきそふりける

0160 はる風のふくにつけてや山さくら

となりのまつに花はかすらん

於大井河葉落水紅并恋

0161 をくらやまみねのあらしのふくからに 

となせのたきそもみちしにける

0162 としひさにゆわたのきぬをとりし

てゝ神にそまつるいもにあはむため

雲居寺聖人百種物供養に花」(55ウ)

 

錦可相具和哥由いひたりしに

0163 はるかせのふきくるからにしきたえの 

まくらのうへにはなのちるらん

春惜在花題

0164 さくらはなにほはさりせはなにしかは春

くる事のうれしからまし

桂山庄にて暮山郭公并恋

0165 ゆふつくひいるさのやまにときし

△(△&ま)れをりはへてなくほとゝきす哉

0166 おもひかね恋わすれかひひろへとも 

そてぬれまさるおきつしまもり」(56オ)

 

(白紙)」(56ウ)

(白紙)」(57オ)

 

水辺芦葉題

0167 みわたせはあしはをしなみしけりあ

ひてみちたつ/\しほりえこくふね

内府於東三条夏夜月并悪

人恋

  続

0168 くるゝかとみるほともな△△△△(△△△△&くあけに)

△(△&け)りをし△△(△△&みも)あはぬなつのよの月

0169 ことのはをたのまさりせはとしふ

とも人をつらしと思さらまし

長実朝臣於八条亭帰路紅葉

并恋」(57ウ)

 

0170 いつらいもはくものふるまひたのむらん

   みちさまたけにちるもみちかな

0171 わきもこか(か$)はきそのほきちにすまは

ねとなにあふ事のかたきしならん

同亭霞并恋

0172 ゆき△△△(△△△&ゝえぬ)ひらのたかねもはるくれは 

そこともしらすかすみたなひく

0173 いかにせんのさ△△(△△&はに)おふるまろすけの 

まろすけもなきこひにけぬへし

暁尋花」(58オ)

 

(白紙)」(58ウ)

(白紙)」(59オ)

 

0174 ゆめさめていそきてきつるやまさくら

あさふく風のたゝぬさきにと

同日晩景恋

0175 ときしまれこひまさりけりいりひさす

 やまのはひともなかめするゆめ

承久四年四月四日於鳥羽殿北面

和哥合ありしに卯花郭公

昌蒲 早苗 恋

0176 うのはなのさ△(△&くに)つけてや山さとは夏

のころもを△(△&お)もひたつらん」(59ウ)

 

0177 みやまいてゝまたさとなれぬほ

とゝきすたひのそらなるねをやなくらん

0178 けふことにたもとにかゝるあやめくさ

 ちよのさ月はきみかまに/\

0179 たねまきしわさたのいねやおいぬらん 

しつ心なくみゆるさをとめ

0180 恋しなん事越そいまはなけかるゝ 

つひにあふ身となりもこそすれ

「有堀河院/百首/不書写」(頭注)

0181~0280)ナシ

人/\款冬并船中恋云題よ

みしに」(60オ)

 

(白紙)」(60ウ)

(白紙)」(61オ)

 

 

0281 わかやとになをほり△△む山ふきの 

花のをりにそ人もとひける

0282 つく/\とおもひあかしにふねとめて 

みやこのかたそなかめられける

希聞郭公并恋

0283 ほとゝきすやそ山まてにたつねきて 

たゝひとこえはきくへき物を

0284 いもかゝとわれすきゆかんいてゝみよ 

こひにやつれてなれるすかたを

新中将渡中院初祝哥

鶴契遐年」(61ウ)

 

0285 むれてゐるたつのけしきにみゆるかな 

ちとせすむへきやとのいけ水

新中将家和哥合郭公五月雨

0286 さつきやみくらふのやまのほとゝきす 

こえはさやけき物にそありける

0287 さみたれにあさかのぬまの花かつみ 

そこのたまもとなりやしぬらん

  新

0288 よとゝもにゆくかたもなき心かな恋

はみちなきものにそありける」(62オ)

 

(白紙)」(62ウ)

(白紙)」(63オ)

 

未聞郭公并共有憚恋

0289 なつころもたちきるひよりけふまてに 

まつにきなかぬほとゝきすかな

0290 かたいとのおもひみたるゝころなれや

 ことつけすともあはまし物や(や&か)

暁天水鶏并寄月恋

0291 またしいまはやこゑのとりの(の&も)なき

ぬなりなにおとろかすくひなゝるらん

0292 ふきいたのわれてもりくる月か

けの(の&を)こひしき人と思はましかは」(63ウ)

 

海路郭公并寄山恋

0293 けふもなをふねてものうしほとゝきす 

こゑたかさこにたえすなきけり

0294 わきもこにいまはあふ身と思へとも 

人めもるやまくるしかりけり

さみたれのはれまもなくつれ/\に侍

りしにつねにましかよはす人/\

のをとなはさりしかはさきの

もくのかみとしよりさきの兵ゑ

のすけあきなかのきみのもとに

おなし事をかくいひつかはし」(64オ)

 

(白紙)」(64ウ)

(白紙)」(65オ)

 

たりし

なにことかものせさせ給らんきこえ

させてみつかきのいとひさしく

なりはへりにけるかな

あけゆけはふたみのうらのうらめ

しくゝれゆけはさみたれの

そらのいとゝおほつかなき事を

おほ井かはにおとすいかたのいか

なる事きゝ給へるにか△△

かくもとりのあと(と$)やめられはへ

りてそらゆくとりのはへるかな」(65ウ)

 

0295 さみたれのそら越なかめてすこ

せともたえておとせぬほとゝきすかな

さきのひやうゑのすけ

かうはしき御をとつれはての

まゐあしのふまむところなく

おほえすなんそも/\さゝか

にのいとむつかしく心のうちもさ

みたれの月なきほとはま

ことにみつかきのひさしくおと

はのかはの△△△△(△△△△&おとつれ)まいらせぬ」(66オ)

 

(白紙)」(66ウ)

(白紙)」(67オ)

 

事をなむかしこまり申

0296 ほとゝきすのきのしつくにおとなはゝ

をとせぬうらみたれもせましや

さきのもくのかみ

さみたれのはれまなきにつけて

もおもひかけすおほしいてける

ことをうれしきなみた衣の

そてにかゝりける身のほとのおも

たゝしきをしらつゆのしらさり

けるもをきところなき心ちして

もとのしつくとなりはてん事を」(67ウ)

 

さへをしまかいそのはまちとりひ

さしくもなからへはやとおほけ

なきことはしきしまの山と

みことのあそひむしろには猶

ちりゐちのかすまへさせ給へと

こゝろのうちにおもひ△(△&た)たまへ(へ&ふ)る事

をおほそらにあらはれてか

きつらねさせ給へるかりのた

まつさをひらくにつけても

たもとのせはきうき身

さへかすそふみのありさまを」(68オ)

 

(白紙)」(68ウ)

(白紙)」(69オ)

 

をしはからせ給へきにや

0297 ほとゝきすなけきのもとにあかす

してきみかまつをはすきにける哉

水風晩来

0298 ゆふつくよ(よ+む)すふ△△(△△&いつ)みの(の&も)なけれとも 

しかのうら△△(△△&かせ)すゝしかりけり

庭樹礙日并恋

0299 みな月のてるひといへとわかやとの 

ならのはかけはすゝしかりけり

0300 はこねなるころのにこくさにこよかに」(69ウ)

 

つれなき人をみるよしもかな

ひやうゑのかみのいゑのうた

あはせになつのかせ

  金

0301 なつころもすそのゝくさはふく風に 

をもひもあえすしかやなくらむ

よかは

0302 ぬはたまのよかはにともすかゝり火は 

さはしるあゆのしるへなりけり

なつのこひ

0303 つらきをもうきをもいまは思

あまりたゝうつせみの△をのみそなく」(70オ)

 

いつみによするこひ

0304 つれもなき人もろともにてもたゆく 

むすふいつみと思

はましかは

たなはた人/\よみしに

  詞

0305 あまのかはたまはしいそきわたさなむ

あさせたとるもよのふけゆくに

月為秋友

0306 いつるよりいるやまのはのふもとまて心を

そやる秋のよの月

九月十三夜詠月和哥并恋」(71ウ)

 

各一首

0307 秋はいまはなかはもいまはすきぬるに 

さかりとみゆるよはの月かな

寄処恋

0308 いかにせんわかたちぬれぬわきもこに 

あはてのもりのきのしらつゆ

月照旅宿并恋

0309 いさゝめにさそはぬ月ともろともに 

たひのいをりによ越あかすかな

0310 たまもかるかしかのしまのからき哉

いもにあふへきかたのなけれは」(72オ)

 

(白紙)」(72ウ)

(白紙)」(73オ)

 

詣住吉社

0311 そのかみにかさしにしめしすみよ

しのまつのしつえはなみそをりくる

残菊留秋題并恋

0312 ふゆにいまはなりぬときけとたのまれす 

とき(き+と)そみゆるしらきくのはな

0313 くれたけのよことにいも越いさなへと 

ふしみることのありかたきかな

十二月二十日ころにゆきのいといたく

ふりたりしつとめて前木工頭

俊頼のきみ前兵衛佐顕仲」(73ウ)

 

かもとにおなしうたをやりし

0314 ゆきふれはふまゝくをしきにはのお

もをたつねぬ人そうれしかりける

としよりのきみかへしり

0315 わかこゝろゆきけのそらにかよへとも 

しらさりけりなあとしなけれは

あきなかのきみ

0316 人はいさふまゝくをしきゆきなれと 

たつねてとふはうれしき物を

山寒花遅并恋

0317 よしのやまはるはなかはになりぬれと」(74オ)

 

(白紙)」(74ウ)

(白紙)」(75オ) 

 

雪きえやらて花さかぬかも

0318 まとりすむうなてのもりのうなた

れてねをのみそなく人のつらさに

於桂山庄庭花纔残并恋催

旧意題

0319 さくらはなはるはのなかに(に+ちり)のこる

 こすえやはるのとまりなるらん

0320 おもひいてよあまのかこやまよそにのみ 

きゝわたらんといつかちきりし

同山庄にて花并恋人/\よみ

しに」(75ウ)

 

0321 このもとにころもかたしたひねせん 

はなちるさとゝミてやかへらん

0322 もしほやくあまをとめこかあさころ

   もあさましきまて人のつれなき

土左守渡播磨守給日哥とこひ

たりしかは

0323 よろつよをちきりはしむるけふなれは 

くるゝさへこそひさしかりけれ

人/\款冬蔵橋并恋題をよ

みし

0324 かよひこしゐてのいはしたとるまて」(76オ)

 

(白紙)」(76ウ)

(白紙)」(77オ)

 

 ところもさらすさけるやまふき

0325 わかせこかきまさぬときはうちな

けきひとりありあけの月をこそ見れ

平等院僧正講結願日人/\

止宿草庵題を

0326 かとのとのくさのいをりにやとり△(△&し)て 

わか身のほと越ついにしるかな

雨中郭公并恋

0327 さみたれにしつくのやまのほとゝきす

しのゝにぬれてさよなかになく」(77ウ)

 

0328 せきもりかゆみにきるてふつきの

きのつきせぬこひにわれおとろへぬ

詠盧橘薫風和哥

0329 ゆふつくに花たちにふく風をたか

そてふるとをもひけるかな

たのめてこぬ恋

0330 ちきりをきしほとはすきぬと思とも 

まつとはいはしとしもこそふれ

待聞郭公題并恋

0331 なつころもたちきしひよりほとゝきす

ぬるよもなしにいまそなくなる」(78オ)

 

(白紙)」(78ウ)

(白紙)」(79オ)

 

0332 よとゝもになみこすいそのそなきの 

しつえやこひのころもなるらん

草花告秋題院人/\

0333 つゆふすふ秋にはゝやくなりにけりあ

さちか花のうつろふみれは

暁知涼并恋

0334 秋風やゝやたちぬらんゆめさめて 

たもとすゝしくなりもゆくかな

0335 こひをしてとしのへぬるにおみなへし

うらやましくもむすふつゆかな」(79ウ)

 

月不撰処并契今夜恋

0336 しはのいをもたまのうてなもそらはれて 

おなし心にすめる月かな

0337 いつとなく思しよりもなか/\にくれ

ゆくそら越まつにけぬへし

さきのもくのかみとしよりのき

みいせにくたりてのちひさ

しくをともせさりしにかく

なむいひをこせたりし

ひなのわかれによろつおとろへはてゝ

おほつかなきおほよとのつねにんせ」(80オ)

 

(白紙)」(80ウ)

(白紙)」(81オ)

 

させ給ちふねのよるひるはなみの心

にかけなから月日のすきにける事も

なけきのもりのときはなるうへに

たきゝ越つめるうれへは身にそへる

かけのことくにしてすゝかのせきにも

ふりすてられすしふく山をも

すへらかにこえにけれはたけのみや

こにたひねしてよゝのふるしと越さへ

△(△&お)もひつゝくれはさもあはれなり

ける身のありさま△(△&を)もてあつか

ひてしう(う&ら)ぬさかひにもまとひ」(81ウ)

 

けるかなとそてのしからみとこゝろ

せきまゝにはたゝはま越きのおり

ふしことにはなをよきさまのつゝ

きかすまへさせたまへかしと人し

れすあふかれて思いてもなきみや

この(の$)なれとさゝかにのいとひさしくか

きたえぬるはこゝろほそかりけること

なれはくすのうらはの風になひくも

めにとゝまりてさりとてやはとてい

そきたつをきゝてのにたつしか

のとまうさする人もなきにはあら」(82オ)

 

(白紙)」(82ウ)

(白紙)」(83オ)

 

ねはいてやいつこに(に$)もつひのすみか

ならねはつりするあまのとさためかねて(て#)

てやすらはるゝほとにのこりすくなき 

みのありさまはたひのそらよはの

けふりともたちのほりなはあまのい

さりひかとおほめかれん事もをの

つからあはれとはかりやつたへきかせた

まはむとみつくきのあとかきなかさ

れぬまゝにはこれにもつきぬ心ちする

いふせさもたゝをしはからせ給へし」(83ウ)

 

0338   とへかしなたまくしのはにみかく

れてもすのくさくきめちなら/すとも

とありしかはかくなむつかひのたゝい

まくたれはとてとく/\とせむれ(れ$)るに

なに事もをもひもあへぬほとにて

すなはち

ちはやふる神な月のついたちの日

(+なん)いろ/\のことのはみたまへはりぬるまこ

とに△△△△(△△△△#)みつかきのいとひさしく

きこえさせてはへりけるかな花

のみやこをふりすてゝすゝかやまこ」(84オ)

 

(白紙)」(84ウ)

(白紙)」(85オ)

 

えさせたまひしにさりともとし

ふく山の名ヲたのみおもひ(ひ&た)まへしかと

かひなくなのみしてすき給にけり

とうけたまはりてくち越しくて

すきはへりしかとつひにはいせの

うみのなみたちかへりたまはさらめや

そのときにこそはほしあひのはまの

まさこのかすをつくしておほつか

なかりしほとの事をもきこえさせ

めひなかのはまのほとはかりたにも

たいめむせてやはとむらまつの

はまをたのみてすき侍ほとに」(85ウ)

 

あはせてもたれそのもりのた

れもいくりのゝ人をきくこともふ

ちかたのかたくてなに事もいはて

のことにてのみなむうきはしの

をろかなるさまにおもはれたて

まつりぬるかな

0339   しらすやはいせのはま越き

風ふけはをりふしことにこひ

わたるとは

ゐんのきたおもてにてほとゝ

きすはしめてきくといふたい又」(86オ)

 

(白紙)」(86ウ)

(白紙)」(87オ)

 

     こひ

0340 うのはなのかきねならすはほとゝきす

いつしかけさのこえ(え&ゑ)きかましや

0341 むさしのゝうけらかはなのいつと

なくさきみたれたる恋もするかな

院北面にて橋上藤花といふたい

0342 うすくこくのとかにゝほへしつえ

まてときはのはしにかゝるうのはな(うのはな&ふちなみ)

郭公并恋人/\よみしに」(87ウ)

 

0343 いろならて身にしむものはほとゝきす

しのたのもりのしのひねのこえ

0344 なつひきのいとしも人はしらしかし

 こゝろにかけてとしふるわれを

旅宿郭公并恋人/\よみしに

0345 をりしまれしつ心なしほとゝきす 

たひねのそらになくこえきけは

0346 かうちめかてそめのいとのみたれあひて 

よりあふへくもみえぬきみかな

 

(白紙)」(88ウ)

(白紙)」(89オ)

 

かすみ

0347 ひはりあかるときにしなれはよし

の山そこともみえすかすみたなひく

歌合三首

0348 ほとゝきすなけるわたりはせき

なれやゆきかふ人のすきかてにする

0349 たねまきしわかなてしこの花

さかりいくあさつゆのをきて見つらん」(89ウ)

 

0350 いたつらにはなのみさきてた

まかつらみならぬこひもわれはするかな

前木工頭俊頼きみの七月廿三日

なんいせへむすめをゐて

くたり侍人のこになさんとて

ひとへにまれはかまにまれことさ

らにとてこひたりしかはひとへ

はかまなとしてつかはしゝに

たもとにかきつけはへりしに」(90オ)

 

(白紙)」(90ウ)

(白紙)」(91オ)

 

0351 ことしよりかさしにしむるをみな

へしちよの秋をはきみかまに/\

返し

0352 をみなへしうれしきなみた越きそへ

てつゆけかるへきたひのはらかな

皇后宮にて庚申夜晩風

如秋并恋よみし

0353 ゆふされの風のけしきのすゝしさに 

しかなきぬへき心ちこそすれ」(91ウ)

 

0354 いかにせんにゐしまもりかあさころも 

あさましきとてあはぬきみかな

同夜又待草花并恋

0355 おもふとちつゆうちはらひみにゆかん花

のゝはきのはやもさかなム

0356 ますらをのゆみにきるてふつき

のキのつきせぬ恋もわれはするかな

山影写水并恋

0357 かめやまのかけをヒタして大井かはいく」(92オ)

 

(白紙)」(92ウ)

(白紙)」(93オ)

 

よまてにかとしのへぬらん

0358 いかにせんしヲれころもにあらねとも 

よことに人をかへすきみかな

     祝

0359 ふたはなるまつ越ひきうゑてた

のむかなよろつヨまてのかさしと思へは

橘萱砌

0360 たちはなのをすのまと越しにをふかを 

たかふるそてとをもひけるかな

     こひ」(93ウ)

 

0361 きみをこそをもひそめしかわかそ

てのくれなゐふかくなりもゆくかな

兵衛のかみのくら人のふね

のみまさかのかみもとへわたり

しによ△(△&み)てとありしかは

0362 けふよりそいひそめかはの水きよみ 

ちよまてすまむなかれとおもへは

かへしみまさかのかみのも

とよりこひたりしかは

0363 よろつよをいひそめかはの水なれは」(94オ) 

 

(白紙)」(94ウ)

(白紙)」(95オ)

 

おなし心にすまさらめやは

たなはたによせたるこひ

0364 ひこほしのおなし心にこひ/\てうら

やましきはこよひなりけり

かすみ山の花をへたつといふ

題しんゐんよませ給しに

0365 やまさくらやへたつかすみみせすとも

かせもへたつとおもはましかは

あか月にうくひすをきくと

いふ題にておなしき院にて」(95ウ)

 

よませられしに

0366 ゆめさめてこゑたてゝなくうく

ひすはよのまの風に花やちるらん

永縁法印のたち花をゝこす

とて

0367 きみかためはなたちはなをたをる

とてやまほとゝきすひとこゑそなく

返し

0368 いまよりもはなたち花をたをら

なむやまほとゝきすたえすきくへく」(96オ)

 

(白紙)」(96ウ)

(白紙)」(97オ)

 

     一品経供養冬奥歌妙荘厳

     王品

   すゝめすはおやはやみにやまとは

   ましおもへはこゝそあれはれなりける

     此哥不被書入随思出追所

     書入也」(97ウ)

 

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