201041日掲載

201041日更新

 

左京大夫集

底本:「左京大夫集」(冷泉家時雨亭叢書第18巻 平安私家集5所収 朝日新聞社 1997年8月)

太字が藤原定家加筆の部分

\合点 =傍記 $ミセケチ #抹消 &重ね書き □△判読不明 < >注記

 

左京大夫集」(表紙 中央打付書)

 

永久四年四月四日鳥羽殿哥合

卯花

0001 あさひ山ふもとのさとの卯花を

さらせるぬのと思ける哉

郭公

0002 おほつかなまつ人からか郭公

なとふたこゑときなかさるらん

昌蒲

0003 よろつ世をふへきよとのゝあやめ草

 なかきつまとやきみも見るらむ」(1オ)

 

早苗

0004 色ふかく門田のさなへなりにけり

 いそけしつのをふしもこそたて

     恋

0005 わかこひの心にかなふものならは

 人のつらさもうらみさらまし

六条宰相家哥合霞

  金

0006 年ことにかはらぬ物ははるかすみ

 たつたの山のけしきなりけり

     月」(1ウ)

 

0007 いか許てる月なれやまくすはふ 

もりのした草かす見ゆるまて

     祝

0008 かきりても君かよはひはいはし水 

なかれむ世にはたえしとそ思

権弁伊通のもとにて暁月聞

郭公といふ事を

0009 月かけにたつねきたれは郭公

なく山のはによこくもわたる

人のもとよりかへりてあしたに」(2オ)

  

0010 あつさゆみかへるあしたのおもひには 

ひきくらふへきものなかりけり

修理大夫長実哥合せられしに

紅葉

0011 あきことにたれかそむらんぬしゝらぬ 

からくれなゐのころものもり

雅定中将哥合に郭公

0012 さゝなみやふなきのやまのほとゝきす 

こゑほをあけてなきわたるなり」(2ウ)

 

     恋

0013 しるらめやいはかけに越ふるしらすけの 

ねふかくおもふ心ありとは

人のもとへ

  

0014 こひしてふもしのせきもりいくたひか 

われかきつらんこゝろつくしに

六条宰相のもとにて寄

社月といふ題を

  

0015 みかさ山もりくる月のきよけれは 

神のこゝろもすみやしぬらん」(3オ)

 

白河院にて関路月を

0016 あふさかのせきにしみつのなかりせは 

いかてか月のかけをとめまし

右兵衛督家哥合に夏恋

0017 なつころもひとへにつらき人こふる 

わかこゝろこそうらなかりけれ

返し

0018 よろこひをくはふるたひのうら衣

あやしくなとかたちうかるらん

越前守忠盛あきはきといふ半物」(3ウ)

 

にものいふをいといたうしの

ふときゝてつかはしける

0019 いつはらてしかとこたへよあきはき越

しからみふすときくはまことか

むつきの八日春立けるに

子日にあたりたるにうくひ

すのなくを

  

0020 けふやさはゆきうちとけてうくひすの 

みやこにいつるはつねなるらん

院位をりさせたまひての」(4オ)

 

ちはしめて人/\に和哥よま

せさせたまふに花遐年と

云題をつかふまつる

  

0021 よろつよにみるへきはなのいろなれと 

けふのにほひはいつかわすれん

     桜

0022 けふさきてあすはあ越はになるはな越

みすてゝかへる人もありけり

0023 越しむとていくかもあらし山さくら 

こゝろのまゝに越りてかへらむ」(4ウ)

 

0024 ちるはなをゝしむはかりやよのなかの 

人のこゝろのかはらさるらん

     藤

  

0025 むらさきのいろのゆかりにふちのはな 

かゝれるまつもむつましきかな

郭公

0026 かきりあれはなかてもやましほとゝきす 

人くるしめにまたれさらなん

  

0027 ほとゝきすこゝろもそらにあくかれて 

よかれかちなるみやまへのさと」(5オ)

 

女郎花

  

0028 しらつゆや心越くらむ越みなへし 

いろめくのへに人かよふと

  

0029 としふれと人もすさめぬわかこひや 

くちきのそまのたにのむもれき

  

0030 いまはさはあひみんまてはかたくとも 

いの(の+ち)とならんことのはもかな

  

0031 こひわひてねぬよつもれはしきたへの 

まくらさへこそうとくなりけれ」(5ウ)

 

  

0032 あふとみてうつゝのかひはなけれとも 

はかなきゆめそうつゝなりける

0033 いはねともしたはいとなし越しとりの

うきたるこひとおもはさらなん

いろなりしとし三月尽の心を

  

0034 おもひやれめくりあふへきはるたにも 

たちわかるゝはかなしき物を

前木工頭俊頼撰集うけ給はり

てよめらむうたとたひ/\

いはれしかは」(6オ)

 

  

0035 いゑのかせふかぬものゆへはつかしの 

もりのことのはちらしはてつる

返し

0036 いかてかはもりのことのはしのふへき 

こたかきやとのかせのしけきに

たえにし人のもとよりついて

ありてせうそこしたるにちきり

しことをたのみけるはしかな

さなとゑしたれは

0037 かせふけはさこそはたゆれたゆれとも 

またかきつけつさゝかにのいと」(6ウ)

 

美作にて月越みて

0038 すきつらむみやこのこともとふへきに

くものよそにもわたる月かけ

しらぬ事を人のまうせるに

よりて白河院の御かしこま

りなるころ唐鏡の一尺許

なる越北野にたてまつるとて

かきつけし

0039 みをつみてゝらしをさめよますかゝみ 

たかいつはりもくもりあらすな」(7オ)

 

その事のあらはれにしこそ

よのすゑともなくあはれなり/しか

としころの人かくれにしかは

山さとにわたりてとかくのことは

するにすゑにもなりぬれはこと

さらに京にいてそめてあか月

かへるにとりなき侍りぬなと人の

いそかせは

  

0040 いつのまに身越やまかつになしはてゝ 

みやこ越たひとおもふなるらん」(7ウ)

 

わきのことゝもはてゝみな人は

京へいてぬれとわかみはな越

しはしとおもひてあるにし

くれのせしひ中将のうへの

もとへ

0041 たれもみなはなのみやこへちりはてゝ 

ひとりしくるゝあきの山さと

みのうれへあるころかもに

まいりて

0042 わかたのむかものかはなみたちかへり 

うれしきせゝにあふよしもかな」(8オ)

 

そのゝちうち人のゆめにこの哥を

御殿の(の$に)をせりけるをうたかきた

るかたを御前にむかへておほせと

おほせことありけれはしかなむ

越しな越すとみたまへしとか

たりしはまことにや

なき人のために西山なるところ

にて経供養するにきたる人/\

くれにけれはとまりて山家春深

と云事をよむに」(8ウ)

 

0043 うくひすのなくねはかりやはるならん 

はなちりにけるみ山へのさと

大弐の許にひんかしの国より

くろきむまのいてきたる名をは

牛のことなむいふ越たひ/\も

のすれとをしまるれは

0044 かゝりける心つくしのうしのこを

たれあつまちのむまといひけん

源伯西宮にて哥合し侍しに月

寄述懐」(9オ)

 

  

0045 なには江のあしまにやとる月みれは 

わか身ひとつはしつまさりけり

0046 いつとなくしのふもくるしゝのすゝき 

ほにいてゝ人にあふよしもかな

   

0047 わきもこかすそのにほふふちはかま 

おもひそめてし心たかふな

0048 きみかよはかきりもしらしなか月の」(9ウ)

 

 きくをいくたひつまむとすらん

こもりゐたりしころ月のあか

き夜平等院僧正の許にたて

まつりし

0049 身をつめはたなひくゝもゝなきそらに 

こゝろほそくもすめる月かな

冬の春日祭に奉幣すとて

みのしつみゐることをゝもひて

御幣にかきつけし

  

0050 かれはつるふちのすゑはのかなしきは 

たゝはるのひをたのむはかりそ」(20オ)

 

或所にあはちといふ女房にたひ/\

せうそこすれとかへり事もな

けれは

0051 いかにせむとふひもいまはたてわひぬ 

こゑもかよはぬあはちしま山

つれなくてすくる越んなの人に

かたらひつきてあつまのかたへな

むときけはこゝろほそくお

もひをるにあはつといふ所より

いひをこせたる」(10ウ)

 

0052 わするなよあはつのはらのあはすとも 

いまかへりこむくすのすゑはに

かへし

0053 あはつのゝくすのすゑはのかへるまて 

ありやはすへきつゆのいのちは

国なともさりにしのち後さて

のみやはとて公文かむかふるに

左大弁宰相為隆勘解由使長官

なれはさたする文なとあるほとに

消息ありみれは

立春の後今日のつかさの奏に」(11オ)

 

あはせんとていそかせたまへはとく

るよしかむかふるつかさの越さ

なかめ(め+侍)て御使につけて

0054 よ越かさねあかたのみつのこほれるを 

越いのはるかせけふそときつる

返し 

0055 はるかせにあかたのこほりとけぬれは 

しつむみくつもあらはれにけり

哥合し侍りしに月

  

0056 よもすからふしのたかねに雲き江て 

きよみかせきにすめる月かけ」(11ウ)

 

紅葉

0057 山ひめにち江のにしきをたむけても 

ちるもみちは越いかてとゝめん

0058 つらからんことのはもかなわひつゝは 

うらみてたにもなくさめにせん

この後判者の前左衛門佐

基俊の許へ又哥合すへし

このたひも判したまへとき

こ江たる返事に」(12オ)

 

0059 もろこしのたまつむふねのもとろけは 

おもひさためんかたもおほえす

これは人/\のなにかといひあは

れたれは(れは$る)ことにやとて

0060 風をいたみたまつむふねのもとろ

きはきみはかりこそまほにさためゝ

播磨守家成朝臣歌合せしに

0061 いかはかりくまなくてらす月なれは 

心のやみもはるゝなるらん」(12ウ)

 

     鹿

0062 山ひこのこたふる山になくしかは 

越のかこゑをやともときくらん

     恋

0063 あつまやのゝきのかやまのしのふ草 

こひをは人のしのふ物かは

琳賢かもとよりさけ越ゝくる

とて萩花さかりはよきさけ

よのなかになしこのころよ

きさけとりいてたるかめに」(13オ)

 

はかならす物越いれてなむか

へすといはせたれは近江守な

りしをりにて坂田郡の検田の

庁宣をいれてやるとて

0064 のへにいてゝつゆけきはなをみるよりは 

あきはさかたのかすをかそへよ

返し 

0065 かそふへきやまたのつほのうちにいれ

はゝきのさけにしくはなそなき

八月十五夜中宮御方にう」(13ウ)

 

へわたらせたまひて月の哥

人/\よませさせたまひしに

0066 なにたかきこよひの月をみるほとや

 こゝろのうちのはれまなるらん

播磨守家成朝臣哥合せ

しに落葉

0067 くれなゐにたきのしらいとそめてけり

みねのもみちやまなくちるらん

     祝」(14オ)

 

0068 いくらとかいふへかるらむよろつよも 

きみかためにはかすならぬかな

ひきりとて近江より貢御にま

いらするもちゐは国司

のれうはことに越ひたゝしく

おほきにて人/\のけうする

を前左衛門佐基俊君のも

とへやるとて

0069 よしあしもきよきかゝみそてらす

なるこゝろのほとはこれにてもみよ」(14ウ)

 

返し

0070 はしたかのゝもりのかゝみならふとも 

よそなる人のこゝろをそみる

みのゝそみかなはてよのなか

すさましくおほゆるこ

ろ人のもとにつかはしける

0071 うきみにはみやこのてふりあきはてぬ 

ひなへさそはぬあつまつもかな

大宮中納言家哥合に

桜」(15オ)

 

0072 白雲のたなひくみねのさくらはな

 かほらさりせはいかゝしらまし

     鶯

0073 うくひすのはなのねくらにとまらすは 

よふかきこゑをいかてきかまし

     霞

0074 すみかまのけふりにむせふをの山は 

みねのかすみもをもなれにけり

     月

0075 やまのはにせきもりすへよたつたひめ 

をしむもしらぬ月やとまると」(15ウ)

 

紅葉

0076 こけのむすいはかけまゆみいろふかく 

これをあらしにしらせすもかな

     恋

0077 なさけなきことのはさへそなつかしき 

こひしきなかにかよふとおもへは

内にて遠聞擣衣のこゝろを

人/\によませたまふに

0078 たかためといふなるらむよもすから 

まきのしま人ころもうつなり」(16オ)

 

雨後草深といふ題を

0079 かそいろとたのむもしるしよはの雨に

こはきかはらのたけそまされる

鍛治井宮法印よ越うら

みて大はらにこもりゐたま

へるにしはすはかりにたて

まつる

0080 すみかまのけふりはかりそ(そ$は)たえすとも 

山さといかてさひしかるらん

花のさかりに人々まうけ(け$)て」(16ウ)

 

きてはなのしたにをりゐて

偏愛花といふ事をよむに

0081 わかやとのものとはいはしさくらはな 

かゝる月ひはあらしとそおもふ

     桜

0082 ちらさらはめなれやせまし山さくら 

こゝろのはなもときはならねは

灌仏

0083 よの中にけふそほとけのたちいてゝ 

あらはれたまふみつはくみける」(17オ)

 

郭云

0084 ほとゝきすさてしもやまし物ゆへに 

おもはせたりやさよふくるまて

七夕

0085 つきのふねひかりをさしていてぬめり

こやひこほしのあまのとわたり

重陽

0086 越なしくはこゝのへにさけきくのはな 

つきひのかすにかなふはかりに

歳暮

0087 はかなくてくれぬるとしをかそふれは 

わか身もすゑになりにけるかな」(17ウ)

 

晨明月

0088 みむろ山みねにあさひのうつろへは 

たつたのかはに月そのこれる

百瀬河

0089 なのみしてさしもあらし越もゝせかは 

ゆゝしきせをはわれそすきにし

     祝

0090 きみかよにくらふの山のいはねまつ 

いくたひはかりをひかはりなむ

長承元年十二月廿三日内裏」(18オ)

 

和哥題十五首

春雨

0091 そのいろとめにはみえぬを春雨の 

のへのみとり越いかてそむらん

帰雁

0092 ちきりけんほとすきぬとやいそくらん 

よるもすからにかへるかりかね

     梅

0093 かほらすはたれかしらましむめのはな 

しらつき山のゆきのあけほの」(18ウ)

 

夏夜

0094 まことにやあかしかぬらんなつのよを 

ひとりねさめの人にとはゝや

照射

0095 あつさゆみたかまと山にともすひは 

ほくしにかけているにやあるらん

瞿麦

0096 あさまたきおれふしにけりよもすから 

つゆをきあかすとこなつのはな

     霧

0097 よしの山なきなやきりのたちぬらん 

いもせの山のなかをへたつる」(19オ)

 

     虫

0098 こゑたかしすこしたちのけきり/\す 

さこそはくさのまくらなりとも

0099 ひともみぬかくれの越のにさくはきは 

これこそよるのにしきなりけれ

     霜

0100 かるのいけのいり江をめくるかもとりの 

うはけはたらにをけるあさしも

千鳥

0101 あはみちやのしまかさきのはまかせに 

ゆふなみちとりたちさはくなり」(19ウ)

 

落葉

0102 もみちはをよものあらしはさそへとも 

なをこのもとにかへるなりけり

初恋

0103 むかしより人まとふとはきゝしかと 

こひてふ山にけふよりそいる

忍恋

0104 あさましやちしまのすそのつくるなる 

とくきのやこそひまはもるなれ

会不逢恋」(20オ)

 

0105 ひとよとはいのらさりし越かひもなく 

こゝろさためぬうきしまのかみ

近衛院御時大甞会和哥

悠紀方 近江国

風俗和歌十首

従三位行左京大夫兼近江守大皇大后宮亮藤原朝臣

稲舂哥

0106 人こゝろやすのこほりときくなへに 

つけとつきせすはこふいねかな

神楽歌 三上山」(20ウ)

 

0107 ちはやふるみかきのはらのさかきはを 

かをかくはしみとめてこそとれ

辰日 参音声 高御倉山

0108 くもかゝるたかみくら山のほるひの 

はるかにみゆるきみかみよかな

同日 楽破 玉蔭井

0109 にこりなきたまかけのゐのそこき

よみすみよきよにもあひにけるかな

同日 楽急 長等山

0110 きみかよはなからの山のいはねまつ 

ちたひやちたひはなのさくまて」(21オ)

 

同日 退出音声 安良郷

0111 やすみしるわかおほきのみよにこそ 

いとゝやすらのさともとみぬれ

巳日 参音声 佐野船橋

0112 よものうみなみもをとせぬきみかよと 

よろこひわたるさのゝふなはし

同楽破  朝日郷

0113 いつしかとあさひのさと越たちいてゝ 

いそきもはこふみつきものかな

同日楽破 大富山」(21ウ)

 

0114 よろつよとおほとみ山そよはふなる

ひさしくきみをさかゆへしとか

同日 退出音声 秋富村

0115 きみかよはたのしかるらしつねよりも 

としへてみゆるあきとみのむら

御屏風六帖和哥十八首

甲帖 正二月

長峯山小松多生

0116 きみかよはなかみね山にふたはなる 

こまつのちたひをひかはるまて」(22オ)

 

見遣岡有摘若菜人

0117 はる/\とみやりのをかのわかなこそ 

ちとせのはるはつむへかりけれ

梅原梅花盛人翫之

0118 いつれをかわきてもをらむゝめはらは 

心にそまぬいろしみえねは

乙帖 三四月

青柳村樹尤多

0119 きみかよはたみのこゝろのひとかたに 

なひきてみゆるあをやきのむら」(22ウ)

 

白雲山桜花盛開行客見之

0120 やへたてるしらくも山のさくらはな 

かほるはかりやしるしなるらん

山吹崎款冬開敷行人見之

0121 いはねともくちなしいろにしるきかな 

こやをとにきく山ふきのさき

丙帖 五六月

長沢池有採昌蒲人

0122 としことにた江すひくかなあやめくさ 

ねをなかさはのいけをたつねて」(23オ)

 

千蔵里殖田所甚多

0123 みわたせはちくらのさとにあまるまて 

かすもしられすとるさなへかな

常夏里毎人家瞿麦開

0124 やとことにうゑけるはなのかひありて 

さきみたれたるとこなつのはな

丁帖 七八月

石滝水如糸

0125 むかしよりなになかれたるいはかきの 

みつのしらいといくよへぬらん」(23ウ)

 

千草原色草花開敷

0126 いろ/\のちくさのはら越みわたせは

いくらはかりのにしきなるらん

玉井宿月

0127 くもりなくすむたまのゐにいとゝしく 

ひかりをそふるよはの月かなけ

戊帖 九十月

板倉山之田多積稲人見之

  

0128 いたくらの山田につめるいねをみて 

越さまれるよのほとをしるかな」(24オ)

 

会坂関運調物人馬多

0129 みつきものはこふよ越ろしおほかれは 

みちもさりあえすあふさかのせき

鏡山紅葉盛客見之

0130 身にそへてあかくそみゆるかゝみ山

 もみちのいろやふかくなるらん

鷹尾山付鷹狩人

0131 みかりするたかのをやまにたつきしや 

きみかちとせのひつきなるらん

益田社祭神所」(24ウ)

 

0132 すへらきをまもりますたのもりなれや 

あからかしはのあからめもせぬ(ぬ$す)

高宮里白雪尤深

0133 あさまたきふりさけみれは白妙の 

ゆきつもれるやたかみやのさと

康治元年十月三日

摂政殿舎利講之次にふみつく

らせ給て願成仏道の心を

被講に哥もあるへしとてめし」(25オ)

 

ありしかは参て

  

0134 いかてわれ心のつきをあらはして 

やみにまとへるひとをてらさん

人々来てうたよむに海辺

月を

0135 すみの江にやとれる月のむらくもは 

まつのしつえのかけにそありける

月照菊花といふ事を新院

のよませたまひしに」(25ウ)

 

0136 いくへとかまかきのきく越ゝもはまし 

こよひの月のなへてなりせは

ひ江にまいりて客宮の

御まへにてこれはしらやま

越はしますときゝしかはむか

し加賀守にて神拝にま

いれりし事おもひいてゝ

  

0137 としふとこしのしら山わすれすは 

かしらのゆきをあはれとはみよ

新院仁和寺殿にて人/\に」(26オ)

 

和哥よませさせたまふと

て中務大輔季家かこひ

しに松間紅葉といふ題を

0138 すみよしのまつのあひたのもみちにや 

つもりのあまはあきをしるらん

右衛門督家成卿東山にて

山家初雪といふ事をよみしに

0139 さよふけてかけひの水のとまりしに 

こゝろは江てきけさのはつゆき

夏月」(26ウ)

 

0140 なつひきのいとのみたれもかくれなく 

こやのしのやをてらす月かけ

新院にて野径眺望

0141 ますら越かあさふむのちをみわたせは 

くもゐはるかにかくるせこなは

九月十三夜九条殿にて

女院御方にて和哥あり

しにいたはることありて江

まいらぬを殿よりせめて」(27オ)

 

おほせらるれははう/\まい

りて月恋またもありかと

おほえす

0142 くれのあき月のすかたはたえねとも 

ひかりはそらにみちにけるかな

0143 人まねのこひにそをいはわすれぬる 

むかしの心いまたありけり

左大臣殿の中納言中将兼長

春日祭の上卿にくたりた」(27ウ)

 

まひしに前馬助範綱か

二郎子清綱をいみしく

したてゝしのふすりの

かりきぬなとをきせたりし△(△&お

△(△&も)ふところあるやうにみえ

しかは又日たれともなくて

範綱許にさしおかせし

  

0144 きのふみしゝのふのみたれたれならん 

心のほとそかきりしられぬ

越いのやまいひにそへて」(28オ)

 

よろつもおほえねとみ

なみおもてのはなさかりな

りときゝてれいのことなれは

人/\案内して花宴せしに

0145 いのちあれはおほくのあきになりぬれと 

ことしはかりのはなはみさりつ

このはなつねよりもめて

たかりしをわすれかたけ

れときのふのなこりにみた

りこゝちまさりてさし」(28ウ)

 

いつへくもおほえさりしか

は人してをりにやりて

みるにつけて

0146 かはかりのはなのにほひをゝきなから 

またもみさらむことそかなしき

このゝちやまひ越もくな

りて五月七日なむかくれ

はんへりにける」(29オ)

 

(白紙)」(29ウ)

 

    以大宮三位本令書留」(30オ)

 

(白紙)」(30ウ)

 

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