文化と歴史  教授 渋谷 栄一 担当    (土1限 9:00~10:30 1201教室)

平成9年度 講義概要 テーマ「日本のことばと文芸の歴史」

 国際化時代、情報化時代と言われる現代社会において、言語の果たす役割は極めて重要な鍵となっている。経済大国としての日本が、ここ数年来、世界の各地に日本語を広め、また諸外国からも日本語に対する関心が急激に高まりつつあるようである。
 その一方で、コンピュータ時代における情報ハイウエーあるいは国際的ネットワークが構築されつつある現在、日本人の言語である日本語という問題について、その有効性とまた限界性について考えてみる必要があるように思われる。
 いうまでもなく、日本語は日本人にとって日常の表現手段であるとともに、その最大限の表現世界の極致が広い意味での文学である。有史以来およそ2000年の間、日本語によって培われ築かれてきた日本の文化、日常の言語生活から言語藝術としての日本文学までを射程に入れて、それらの歴史を振り返り、一国の国語史及び文学史として理解するというのではなく、その中から、日本語及び日本文学が国際社会に対して果たせる役割は有りや否や。あるいは、人類の普遍的文化遺産として、日本語及び日本文学はどれほど貢献しうるか。こうした観点に立って、日本のことばと文芸の歴史を検証し、来るべき将来の日本と日本文化のあり方について考えていこう。

学習方法
 本講座では、まず第一に、現代の日本語と日本文学について、自分自身にとって、それらがどういうものであるか、問題意識をもっていただきたい。日本語は日常自ら使っている言語である。日本文学は広い意味で日本語による言語芸術である。  第二に、日本語によって培われ築かれてきた文化というものについて、やはり世界の文化との比較文化史的観点に立って考えてもらいたいと思う。物を見る目、考え方、というものを学んでほしい。

関連科目
 「文化と歴史」の他の講座

テキスト
 特に指定しない。

参考書
 小西甚一『日本文藝史』1~5 講談社
 加藤周一『日本文学史序説』上下 筑摩書房

その他
 前期、後期の定期試験及び出席点。場合によっては課題レポートを課すこともある。

年間スケジュール
前期
1(4/12)はじめに
2(4/19)序説 世界の中の日本語と日本文学
3(4/26)   日本語の現在について
4(5/10)   日本文学の現在について
5(5/17)   日本語と日本文化の可能性と限界性
6(5/24)   日本文学史の対象 日常の言語生活から言語芸術としての文芸まで
7(5/31)   日本文学史の目的と主題
8(6/7)   日本文学史の体系的理解のための方法
9(6/14)   日本文学史の時代区分
10(6/21)古代 文学以前 文学の生成母体 環境 条件
11(6/28)   文学の周辺 記録 文書類
12(7/5)   文学の誕生 近江奈良朝の漢詩文芸と文芸論書の登場
13(7/12)前期まとめ
後期
14(9/27)   作品論『万葉集』とその時代 感動とその言語表現
15(10/4)   仮名文字の発明と散文文芸 日本的美の様式と伝統の確立
16(10/11)   作品論『源氏物語』の達成 虚構物語と精神的高さ
17(10/18)中世 古代文芸への憧憬と崩壊 鴨長明と吉田兼好
18(10/25)   古代文芸の継承と再生 連歌師と三条西家の古典学
19(11/1)   作家論 西行 世阿弥 芭蕉 その芸術と人生 求道と言語芸術の極致
20(11/8)   文学の革命 知識人 大衆 出版の量的拡大化
21(11/15)近代 世界文学への改革 西洋と日本 日本の特殊性と普遍性
22(11/22)   現代文学の旗手 ジャーナリズムと評論文芸の系譜
23(11/29)現代 国際化 情報化時代と価値観の多様化の中での日本文学
24(12/6)   川端康成と大江健三郎の文学
25(12/13)   人類の普遍的文化遺産としての日本語と日本文学の課題
26(12/20)後期まとめ 日本語と日本文学との日本文化としての将来
27(1/17)総まとめ
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