2010年3月9日掲載
2010年3月9日更新

本系統「八代集抄」(大東急記念文庫本)

底本:『大東急記念文庫善本叢刊中古中世篇 和歌Ⅳ』(汲古書院 平成
1712月)

 

八代集抄春上

     ふるとしに春立ける日よめる

       在原元方

   <>

0001 <>としのうちはるにけりひとゝせを

<>こそとやいはんことしとやいはむ

立春のこゝろを

          壬生忠岑

拾遺<>

0002 <>はるたつといふはかりにやみよしの

<>もかすみてけさはみゆらん

読人不知」(1ウ)

 

   <>

0003 <>かすみゝ(ゝ=るやいつこみよしの

<>よしのゝやまに雪はふりつゝ

寛平御とき后宮の

    源当純

   <>

0004 <>かせにとくるこほりのひまことに

<>うちいつるやはるのはつはな

みこにおはしましけるとき人にわか

たまはせける御うた

  光孝天皇御製

   <>

0005 <>君かためはるのゝにわかなつむ」(2オ)

 

<>わかころもてに雪はふりつゝ

院百首に歟          権中納言国信

   <>

0006 <>かすかゝしたもえわたる草のうへに

<>つれなくゆる春のあはゆき

合に             後京極摂政

   <>

0007 <>そらはなをかすみもやらすかせさえて

<>ゆきけにくもる春のよの月

春のはしめの御

二条后御哥

   <>

0008 <>雪のうちにはるはきにけりうくひすの」(2ウ)

 

こほれるなみたいまやとくらん

たいしらす            よみ人しらす

   <>

0009 <>むめかえにきゐるうくひす春かけて

なけともいまたゆきりつゝ

哥合

   院御製

   <>

0010 <>鶯のなけともいまたふるゆき

すきしろきあふさかの山

俊綱朝臣家にて人をたつぬといふ

心を               藤原範永朝臣」(3

 

   <>

0011 <>たつねつるやとはかすみにうつもれて

谷のうくひす一声そする

贈太政大臣あひわかれのちある

所にてこゑをきゝて

    富小路右大臣母

   <>

0012 <>うくひすなくなるこゑはむかしにて

わかひとつのあらすもあるかな

題不知              中納言家持

<>

0013 <>はるのにあさるきゝすつまこひに

<>のかありかを人にしれつゝ」(3ウ)

 

                   よみ人しらす

   <>

0014 おりつれはそてこそにほむめのはな

ありとやこゝにうくひすのなく

堀河院百首

       前中納言匡房

   <>

0015 <>にほひもてわかはそわかんむめの

<>それともえぬはるのよの月

ひさしくまからさりけるところにて

むめの花をおり

   貫之」(4オ)

 

   <>

0016 <>人はいさこゝろもしらすふるさと

<>そむかしのゝほひける

式子内親王

   <>

0017 <>なかめつるけふはむかしになりぬとも

のきはむめはわれをわする

不知              西行法

   <>

0018 <>ふりつみしたかねのみゆきとけにけり

<>きよたきかはの水のしら

志貴」(4ウ)

 

0019 <>いはそゝくたるひのうへのさはらひの

<>もえいつる春になりにけるかな

千五百番合に

          宮内卿

   <>

0020 <>うすくこきへのみとりのわか草に

あとまてゆる雪のむらきえ

堀河院百首に           藤原基俊

   <>

0021 <>はるさめふりそめしよりかたをか

<>すそのゝはらそあさみとりなる

百首よみけるに」(5オ)

 

       殷富門院大輔

   <>

0022 <>はるかせのかすみふきとくたえまより

みたれてなひくあをやきのいと

千五百番合に

         藤原雅経朝臣

   <>

0023 <>白雲のたえまになひくあをやき

<>かつらき山にはるかせそふく

不知              能因法

   <>

0024 <>心あらん人にせはやくに

<>なにはのうらの春のけしきを」(5ウ)

 

不明不朧々月といふこゝろ

     大江千里

   <><>

0025 <>もせすくもりもはてぬ春のよの

<>おほろ月よにしくものそなき

後京極摂政家百首合に

        寂蓮法師

   <>

0026 <>いまはとてたのむのかりうちわひ

<>おほろ月よのあけほのゝそら

帰雁を              皇太后宮大夫俊成

   <>

0027 <>きく人そなみたおつるかへるかり」(6オ)

 

<>なきてゆくなるあけほのゝそら

 

   春謌下

   

僧正遍昭

   <>

0028 <>いそのかみふるのやまへのさくらはな

<>うへけんときをしる人そなき

            貫之

   <>春上<>

0029 <>さくらはなさきにけらしもあしひき」(6ウ)

 

<>山のかひよりゆるしら雲

(+院家合に

          源俊頼朝臣

   <>

0030 <>やまさくらさきそめしよりひさかたの

<>雲井にゆるたきしらいと

前中納言匡房

   詞花<>

0031 <>しらとみゆるにしるしみよしのゝ

<>よしゝやまの花さかりかも

崇徳院に百首謌たてまつりける

      左京大夫顕輔」(7オ)

 

   <>

0032 <>かつらきやたかまのやまのさくら花

<>雲井のよそにてやすきなん

後二条関白家にて望山花といふこと

 前中納言匡房

   <>

0033 <>たかさこおのへのさくらさきにけり

<>とやまのかすみたゝすもあらなん

 

釈阿和所にて九十賀たま

せける時屏風に          院御製

   <>

0034 <>さくらさくとをやまとりのしたり」(7ウ)

 

<>なか/\しもあかぬいろかな

はなうたとてよめる       西行法師

   <>

0035 <>をしなへて花のさかりになりにけり

<>山のはことにかゝるしらくも   皇太后宮大夫俊成

   <>

0036 <>みよしのゝはなのさかりをけふみれは

<>こしのしらねにはるかせふく

崇徳院百首哥たてまつりける時   藤原清輔朝臣」(8オ)

 

   <>

0037 <>かきみむろやまははるてそ

はなのしゆふかけてえける

郷花といへるこゝろを      よみ人しらす

   <>

0038 <>ゝなみしかみやこはあれにしを

<>むかしなからの山さくらかな

雲林院のみこのもとにきたやまに

花みにまかりて          素性法師

   <>

0039 <>いさけふははるのやまへにましりなん」(8ウ)

 

<>くれなはなけの花のかけかは

題不知              よみ人しらす

0040 <>さくらかりあめはふりきぬおなしくは

<>ぬるともはなのかけにかくれん

百首に             式子内親王

   

0041 <>はかなくてすきにしかたをかそふれは

<>花にものおもふはるそへにける

不知              小野小町

   <>春下<墨>

0042 <>花のいろはうつりにけりないたつらに

身よにふるなかめせしまに」(9オ)

 

よみ人しらす

   <>春下<墨>

0043 <>はることにはなのさかりはありなめと

<>あひみむこといのちなりけり  赤人

   <>

0044 <>さめはいたくなふりそ桜花

<>またぬ人にちらまくも

後京極摂政家にて         皇太后宮大夫俊成

   <>

0045 <>またみんかたのみのさくらかり

<>はなゆきちる春のあけほの」(9ウ)

 

僧正遍昭におくりける       惟喬親王

   <>

0046 <>さくら花ちらはちらなちらすとて

<>ふるさと人のきてもなくに

花のちるをみて          友則

   <>春下<墨>

0047 <>ひさかたひかりのとけき春の

<>しつころなく花のちるら

五十首哥たてまつりける     宮内卿」(10オ)

 

   <>

0048 <>はなさそふひらのやまかせふきにけり

こきゆく舟のあとみゆるまて

   <>

0049 <>あふこすゑはなふくからに

<>あらしそかすむせきすきむら

百首哥たてまつ          二条院讃岐

   <>

0050 <>たかのあらしにちるはな

<>月にあまきるあけかたのそら

千五百番歌合に          参議定家」(10ウ)

 

   <>

0051 \<>さくらいろにはのはる風あともなし

<>とはそ人のゆきとたにみ

題不知              大納言経信

   <>

0052 <>やまふかすきのむらたち見えぬまて

<>おのへのかせにはなのちるかな  左京大夫顕輔

   <>

0053 <>ふもとまておのへのさくらちりこすは

たなひく雲とみてやすきまし      西行法師

   <>

0054 <>むとて花にもいたくなれぬれは」(11オ)

 

ちるわかれこそかなしかりけれ

のころを          後京極摂政

   <>

0055 \<>よしのやま花のふるさとあとたえて

<黒>むなしきえたに春ふく

堀河院百首            中納言国信

   <>

0056 <>よひねてつみてかへらんすみれ

<>をのゝしはふは露しけくとも

不知              貫之

   <>

0057 <>よしのかはきしやまふき」(11ウ)

 

そこのかけさへうつろひにけり

見王

<>

0058 <>かはつれくなひかはにかけみえて

<>いまさくらんやまふき

                 寂蓮法師

<>

0059 <>くれはるのみなとしらねとも

<>かすみにおつる宇治のしは

題しらす             よみ人しら

<朱>

0060 はるかすみ立別ゆくやまみち

花こそぬさとちりまかひけれ」(11オ)

 

三月尽の心を           貫之

<朱>

0061 <>かせふけはかたもさためすちる花

いつかたへ行はるとかはみむ      躬恒

   <>

0062 <>けふのみとはるおもはときたにも

たつことやすき花のかけかは

百首哥たてまつりけるとき     後京極摂政

<>

0063 <>明日よりはしかの花そのまれにたに

たれかはとはんはるのふるさと」(12ウ)

 

やよひつこもり雨ふりけるふちの

花をおり            業平朝臣

   <>

0064 <>ぬれつそしおりつる年のうち

<>はるはいく日もあらしとおもへは

         崇徳院御製

   <朱>

0065 <>花はに鳥はふる巣にかへなり

はるのとまりをしる人そなき

三月尽皇太后宮大夫俊成もとにつかはしける

 法印静賢」(13オ)

 

   <朱>

0066 \<>花はみなよものあらしにさそはれて

<>ひとりはるのけふはゆくらん」(13ウ)

 

    

     題不知              人麿

   <>

0067 <>わかやといつみふち波さきにけり

<>やまほときすいつかきなか

       持統天皇御製

<>

0068 <>はるすきて夏きにけらししろたへ

<>ころもほすてふあまのかく山

人しらす

撰拾<朱>

0069 <>ときわかすふれるゆきかとるまてに

かきねもたにさける卯花」(14オ)

 

相模

   <朱>

0070 <>みわたすは波のしからみかけてけり

<>うのはなさけるたまかはのさと  曾禰好忠

<>

0071 <>はなちりしにはこの葉もしけりあひて

<>あまてる月のかけそまれなる   よみしらす

<朱>

0072 <>ゆきかへるやそうち人のたまかつら

<>かけてそたのむあふひてふなを  大納言経信」(14ウ)

 

   <朱>

0073 <>たまかし庭もひろになりにけり

こやゆふして神まつるころ      曾禰好忠

   <朱>

0074 <>さかきとる月になれは神やま

<>ならのかしもとつはもなし

天暦の御時内裏歌合に       平兼盛

<朱>

0075 <>みやまいてゝよはにやきつるほとゝきす

<>あかつきかけてこゑのきこゆる

     山田早苗といふことを」(15オ)

大納言経信

<>

0076 <>さなへとる山のかけもりにけり

ひくしめなはに露そこほるゝ

所にて入道皇太后宮大夫俊成九

十賀給はせける屏風に       後京極摂政

<>

0077 <>をやまたひくしめなはうちはへて

くちやしぬらんさみたれころ

題不知              延喜御製

<朱> 

0078 <>あしひきの山ほとゝきすけふとてや」(15ウ)

 

<>あやめのくさのねにたてゝなく

  五十首歌人/\によけを

  のうたとてよみ侍ける

後京極摂政

<>

0079 <>うちしめりあやめそかほとゝきす

<>なくや五月のあめゆふくれ

よみ人しらす

<朱> 

0080 <>ほとゝきすなくや五月のみしか

<>ひとりしぬれはあかしかねつも

祭主輔親」(16オ)

 

<朱> 

0081 あしひきやまほとゝきすさとなれて

そかれ時になのりすらしも

  雨中木といふこゝろを       基俊

 <>

0082 \<>たまかしはしけりにけりな五月雨に

<>はもりの神のしめはふるまて

宇治関白太政大臣家合に     相模

   <朱>

0083 <>さみたれみつのみまきのまこも草

<>かりほすひまもあらしとそ思」(16ウ)

 

はなたち花をよめる

   <朱>

0084 <>五月雨そらなつかしくにほふかな

はなたち花かをやかくらん

百首の哥めしける        崇徳院御製

   <朱>

0085 <>さみたれにはなたち花にほふよ

月すむあきもさもあらあれ

中納言俊忠家歌合に        顕仲朝臣

   <朱>

0086 <>五月雨に水まさるらしさわた」(17オ)

 

まきのつきはしうきぬはかり

崇徳院百首に           皇太后宮大夫俊成

   <朱>

0087 <>さみたれはたくものけふりうちしめり

<>しほたれまさるすまうら

題しらす             参議定家

   <>

0088 <>たまほこみちゆき人のことつても

<>たえてほとふるさみたれのそら

夏歌とて             前大僧正慈円

   <>

0089 <>うかひ舟あはれとそみるものゝふ

<>やそうちゆふやみのそら」(17ウ)

 

題不知              源重之

   <朱>

0090 <>なつかりのたま江のあしをみしたき

<>むれゐる鳥のたつそらそなき   貫之

   <>

0091 <>なつの臥かとすれは郭公

<>なく一声にあくるしゝめ    読人しらす

<朱>

0092 <>たひねしてつまこひすらし郭公

神なひやまにさよふけてなく      俊頼朝臣」(18オ

 

   <朱>

0093 \<>このさとも夕立しけりあさちふに

つゆのすからぬ草のは

   <朱>

0094 <>かを吹はすのうき葉に玉こえて

すゝしくなりくらしのこゑ     僧正遍昭

   <>

0095 <>はすのはのにこりにしまぬもて

<>なにかはつゆたまとあさむく  基俊

   <朱>

0096 <>なつよのまつほとすさ」(18ウ)

 

<>いはもるしみついくむすひしつ

納涼のこゝろを          源頼綱朝臣

   <朱>

0097 <>なつやまのならのそよくゆふくれは

ことしも秋のこゝちこそすれ      清輔朝臣

   <>

0098 <>のつからすゝしくもあるか夏ころも

<>夕立あめなこり    西行法師

   <>

0099 <>よられつるもせの草のかけろひて

すゝしくゝもる夕立のそら」(19オ)

 

   <>

0100 <>みちのへにしみつなかるゝやなきかけ

<>しはしとてこそたちとまりつれ

夏夜深養父琴ひきけるをきゝて  中納言兼輔

<朱>

0101 <>みしかふけゆくまゝにたかさこ

みねの松風ふくかとそきく

千五百哥たてまつりけるに     後京極摂政

   <>

0102 <>あきちかきけしきのもりなく蝉の

なみたの露やしたはそむらん」(19ウ)

 

題しらす             忠岑

   <>

0103 なつはつると秋のしらつゆ

いつれかまつはをかんとすらん

崇徳院百首に           皇太后宮大夫俊成

   <朱>

0104 いつとてもしくやはあらぬとし月を

みそき捨つる夏のくれかな      躬恒

   <>

0105 なつと秋とゆきかふそらのかよひちは

かたへすゝしきかせふくらん」(20オ)

 

    秋上

     あきたつ日よめる        藤原敏行朝臣

   <>秋上<墨>

0106 <>あきゝぬとめにはさやかに見えねとも

<>かせのをとにそおとろかれぬる

貫之

   <>秋上<墨>

0107 かはかせのすゝしくもあるかうちよする

とゝもにや秋はたつ

不知              読人しらす

   <>

0108 <>きのふこさなへとりしかいつのまに」(20ウ)

 

いなはそよきて秋かせのふく      家隆朝臣

   <>

0109 <>きのふにとはんとおもひしつのくに

<>こゝろしてはけ秋のはつかを  安貴王

<朱>

0110  <>ていくかもあらねとこのねぬる

<>あさけのかせたもとすゝしも21オ 

 

恵慶法師

<朱>

0111 やへむくらさしこもりにしよもきふにいかてか秋のわきてきつらん

題しらす             寂然法師

   同

0112 <>秋は来ぬ年も半に過ぬとや荻ふくかせのおとろかすらん

大蔵卿行宗

   同

0113 物ことに秋のけしきはしるけれと先身にしむは荻のうはかせ

 

崇徳院に百首歌奉ける時秋の歌

     皇太后宮大夫俊成

   <朱>

0114 <>荻の葉もちきりありてや秋かせの音信そむる妻とらん

       贈左大臣 長実」(21ウ)

 

   <朱>

0115 <>まく葛はふあたのおほのゝ白露を

<>ふきなはらひそのはつかせ   西行法師

   <>

0116 しなへてものをおもはぬ人にたに

こゝろをつくる秋のはつかせ

   <>

0117 <>あはれいかに草葉のつゆのこほるらん

<>秋かせたちぬみやきのゝはら

                 読人しらす

   <>秋上<墨>

0118 あきかせゆきにしひよりひはかたの

なまのかはらにたゝぬひはなし好忠22オ

 

寛平御時后宮に        躬恒

   <>秋上<墨>

0119  <>たなはたにかしつるいとうちはへて

<>としなかくこひやわたらん

七夕のこゝろを          読人しらす

   <>秋上<墨>

0120  <>たなはたのあまのわたるけふさへや

<>おちかた人のつれなかるらん   皇太后宮大夫俊成

   <>秋上<墨>

0121 <>なはたのとわたる舟のかちのはに」(22ウ)

 

<>いくあきかきつ露のたまつさ

百首歌に             式子内親王

   <>

0122 <>なかむれはころもてすゝし久

あまかはらの秋の夕霧        大納言隆季

   <>

0123 たなはたあまつひれふく秋

やそふねつみふねいてらし     俊頼朝臣

   <朱>

0124 <>たれはたあまかはらいはさくら

<>かはしもはてすあけぬこの」(23オ)

 

女御

   <朱>

0125 <>わくらはにあまのかは浪よるなから

<>あくそらにはまかせすもかな

百首歌たてまつりける時      式子内親王

   <>

0126 <>なかめわひぬ秋よりほかやともかな

<>野にもにも月やすむらん

題しらす             千里

   <>秋上<墨>

0127 <>月みれはちゝものこそかなしけれ

<>わかひとつの秋にはあらねと」(23ウ)

 

忠岑

   <>秋上<墨>

0128 <>ひさかたの月のかつらも秋はな

<>もみちすれはやてりまさるらん

五十首歌たてまつりしに      後京極摂政

   <>

0129 <>ふるさとのもとあらのしはきさきしより

<>よな/\にはの月そうつろふ

権中納言俊忠かつらの家にて水上月

いふ心を            俊頼朝臣」(24オ)

 

   <朱>

0130  <>あすもこんのちのたまかは萩こえて

いろなる波に月やとりけり

秋歌中に             家隆朝臣

   <>

0131 \<>月たにもなくさめかたき秋のよの

心もしらぬまつのかせかな

五首哥たてさつわし        時後京極摂政

<>

0132   <>なかめつゝおもふもさひひさかたの

<>月のみやこのあけかたのそら

歌中に             院御製」(24ウ)

 

<>

0133 <>あきの露やたもとにいたくむすふらん

なかきあかすやとる月かけ

  家歌合に暁月の心を        二条院讃岐

<>

0134 <>おほかた秋のねさめつゆけくは

またたかそてもありあけの月

院百首に           俊頼朝臣

   <朱>

0135 <>こからしの雪ふきはらふたかねより

<>さえても月のすみのほるかな

崇徳院百首に           顕輔心」(25オ

 

<>

0136 <>あきかせにたなひく雲のたに間より

<>もれいつる月のかけのさやけさ

俊頼朝臣

   <朱>

0137 <>てる月のたひねのとこやしもとゆふ

<>かつき山の谷かはのみ

題不知              よみしらす

   <>秋上<墨>

0138 <>なきわたるかりのなみたやおちつらん

<>ものおもふやとはきうへつゆ

   <>

0139 <>か花ちるらんのゝ露しも

<>ぬれてをゆかんさよはふくとも」(25ウ)

天智天皇御製

   <>秋中<墨>

0140 <>あきののかりほのいのとまをあらみ

<>わかころもてつゆにぬれつゝ  中納言家持

<>

   <>さをしかのあさたつのへみ秋はきに

   <>たまとみるまてをける白露    麿

<朱>

0141 このころあかつき露わかやと

はきかしたはゝいろつきにけり

     崇徳院百首に           清輔朝臣」(26オ)

 

<>

0142 <>うすきりのかきのはなあさしめり

秋はゆふたれかいひけん

院百首に           大納言師頼

   <朱>

0143 <>露しけきあしたのはらみなへし

<>ひとえたをらん袖はぬるとも

不知              よみ人しらす

<>

0144  <>をくらやまふもとのへの花すゝき

<>ほのかにゆる秋の夕暮

百首に             式子内親王

<>

0145 <>花すゝきまたつゆふかしほにいてゝは」(26ウ)

 

<>なかめしとおもふ秋のさかりを  藤原為頼朝臣

<>

0146 <>おほつかないつこなるらんむし

<>たつねはくさの露やたれん

家隆朝臣

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0147 <>むしのもなかきあかぬふるさと

<>なおおもひそふまつかせそふく  式子内親王

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0148 <>あともなきにはあさちにむすほゝれ

<>つゆそこなるまつむしこゑ」(27オ)

 

菅贈太政大臣

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0149 <>くさはには玉とえつゝわひ人の

<>そてのなみたの夕暮     中納言家持

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0150 <>わかやとおはなすゑにしらつゆ

<>きし日よりそあきかせもふく  院御製

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0151 <>つゆはそてにものおもふころはさそな

かならすのならひならねと

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0152 <>のはらよりつゆのゆかりをたすねきて」(27ウ)


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