二四代集

二四代集(内題2009年9月日入力 10月8日見直し 10月17日見直し了)

目録

第拾壱 恋一

第拾弐 恋二

第拾三 恋三

第拾四 恋四

第拾五 恋五

第拾六 雑上」(1オ)

 

第拾七 雑中

第拾八 雑下

第拾九 神祇

第二拾 釈教」(1ウ)

 

(白紙)」(2オ)

(白紙)」(2ウ)

 

 

巻第拾壱

     たいしらす            藤原実方朝臣

   詞          ありイ<朱>

0834 <>いかてかはおもひともしらすへきむろや嶋けふりならては

ほり院に百首うたける時初恋

俊頼朝臣

   千

0835 <>なにはえにうつもるゝ玉かしはあらはれてたに人をこひはや」(3オ)

家のうたあはせに忍恋のこゝろ

  後京極摂政

   新

0836 <>らすなよ雲ゐる嶺のはつしくれこの葉は下に色かはるとも

たいしらす            貫之

   古

0837 <>よしの川いはなみたかくゆく水のはやくそ人を思ひそめてし

藤原勝臣

   同                こくイ<青>

0838 <>しらなみあとなきかたにゆく舟もそたよりのしるへなりける

源重之」(3ウ)

 

   新

0839 <>つくは山はやましけ山しゝれとおもひいるにはさはらさりけり

よみ人しらす

   拾

0840 をとにきく人にこゝろをつくはねのみねと恋しき君にもあるかな

紀イ<朱>

貫之

   古

0841 世中はかくこそ有けれのめにみぬ人もこひしかりけり

もと

   同

0842 たよりにもあらぬおもひのあやしきはこゝろを人につくるなりけり

右近馬場のひをりの日ものみけるくるま」(4オ)

 

女のかほのほのかにえ侍けれはつかはしける

   業平朝臣

   古

0843 <>すもあらすもせぬ人の恋しくはあやなくけふやなかめくらさん

かへし              よみしらす

   同

0844 <>しるしらぬなにかあやなくわきていはんひのみこそしるへなりけれ

女につかはしける         清慎公

   拾

0845 <>あなこひしはつかに人をあはきえかへるともしらせてしかな

かへし              中納言更衣」(4ウ)

 

   同なかゝらしとイ<朱>

0846 しとおもふ心は水のあはそふる人のたのまれぬ哉

贈皇后宮にはしめてつかはしける

  後朱雀院御製

   後                           をイ<朱>

0847 <>ほのかにもしらせてしかなかすみ霞のうちにおもふ心は

をんなにつかはしける

       実方朝臣

   同

0848 <>かくとたにえやはいふきのさしも草さしもしらしなもゆる思を

たいしらす」(5オ)

 

             和泉式部

   同

0849 下きゆる雪くさのめつらしくわかおもふ人にみてし

たゝみね

   古                       かもイ<朱>

0850 春日野の雪まを分ておひ出くる草のはつかに見えし君

なりひらの朝臣

   新

0851 かすかのゝわか紫のすりころもしのふのみたれしられす

寂然法師

   千

0852 みちのくのしのふもちすりつゝ色にはいてしみたれもそする」(5ウ)

 

河原左大臣

   古                     むとおもふイ<青>

0853 <>みちのくのしのふもちすり誰ゆへにみたれにし我ならなくに

忍恋のこゝろをよませ給ける

    院御製

   新

0854 わか恋はしたはにもる時雨ぬるとも袖のいろいてめや

たいしらす            人麿

   同

0855 <>いそのかみふるのわさ田のにはいてすこゝろのうちにこひやわたらん

中納言朝忠」(6オ)

 

   同

0856 人伝にしらせてしかなかくれぬのみこもりにのみこひやわたらん

よみ人しらす

   古

0857 うきくさのうへはれるふちなれやふかきこゝろをしる人のなき

                        よしきイ<朱>

小野

   同

0858 <>わかこひはみかくれの草なれやしけさまされとしる人のなき

中納言家持

   新

0859 あし引の山のかけくさむすひ置てやわたらんあふよしをなみ

柿本イ<朱>

麿」(6ウ)

 

   同

0860 あし引の山もるいほくかひの下こかれつゝわかこふらくは

友則

   古

0861 <>の瀬になひく玉ものみかくれて人にしられぬこひもする哉

よみ人しらす

                 はイ<朱>       をイ<青>

0862 あしはふうきはうへこそつれなけれにえならすおもこゝろは

謙徳公

   

0863 かくれぬの下のこゝろそうらめしきいかにせよとてつれなかるらん

参議等」(7オ)

 

   撰                         とイ<朱>

0864 <>あつまちのさのゝふなはしかけてのみおもひわたるをしる人のなき

久恋といふこゝろよませ給ける

  院御製

   新

0865 おもひつゝへにけるとしのかひやなきあらましの夕くれの空

百首うたの中に忍恋        式子内親王

   同

0866 わすれてはうちなけかるゝゆふへかなわれのみしりてすくる月日を

   同

0867 わか恋はしる人もなしせく床のなみたもらすなつけのをまくら

題しらす             参議等」(7ウ)

 

   撰

0868 <>あさちふのをのゝしのはら忍ふれとあまりてとか人のこひしき

後法性寺入道前関白太政大臣家百首うたよみけ

とき忍恋            皇太后宮大夫俊成

   新

0869 ちらすなよしのゝはくさのかりにてもつゆかゝるへき袖のうへかは

題しらす             西行法師

   同

0870 おもひしる人ありのよなりせはつきせす身をはうらみさらまし

家に百首うたはよみけるとき

     入道前関白太政大臣」(8オ)

 

   同

0871 <>ふるにこゝろのひまはなけれとも猶もるものはなみたなりけり

皇太后宮大夫俊成

   千

0872 <>ともしするは山かすその下つゆいるより袖はかくしるらん

   同

0873 <>いかゝせんむろの八やと哉こひのけふりを空にまかへ

たいしらす            よみ人しす

   同

0874 <>いかにせかきかはらにつむせりのねにのみなけとしる人のなき

                  <朱>

後京極摂政家百首うたよませけるに恋

うた               高松院右衛門佐」(8ウ)

 

   新

0875 よそなからあやしとたにもおもへかしこひせぬ人の袖の色かは

女につかはしける         清慎公

拾少                     るはイ<青>

0876 <>人しれぬおもひはとしもへにけれとのみしりてかひなかりけり

たいしらす            よみしらす

同少

0877 恋といへはおなし名にこそおもふらめいかてわかみを人にしらせん

大嘗会の御禊みはへりけるわらはをのち

たつねてつかはしける

       寛祐法師」(9オ)

 

同少

0878 <>あまたみしとよみそきもろ人の君しも物をおもはするかな

左大将朝光五せちまひゝめたてまつりけるかし

つきをみてつかはしける

      大納言公任

   新

0879 あまそらとよのあかりにみし人のなを俤のしこひしき

みくしけとのゝ別当につかはしけ

忍てみくしけとのゝへとうに相かたらふ

ときゝてちゝの左大臣のせいしはへ

りけれはイ<朱>>

権中納言

   撰                           かたらイ<青>

0880 <>いかにしてかくおもふてふことをたに人つてならて君にしらせん」(9ウ)

 

のうたとて           輔仁親王 無品親王ーーイ<青>

   千

0881 いかにせんおもひをひとにそめから色にいてしとおもふ心

女につかはしける         紀イ<朱>

貫之

拾少

0882 色なはうつるはかりそめてましおもふをしるひとのなき

      徳イ<朱>

天暦とき内裏うたあはせ

   忠見

同少

0883 恋すてふわか名はまたきたちにけり人しれすこそ思初しか

平兼盛」(10オ)

 

   同  つゝめともイ<朱>

0884 <>忍ふれといろいてにけりわかこひは物やおもふと人のとふまて

すとく院に百首うたけるときのうた

    左京大夫顕輔

   千

0885 <>おもへともいはての山にとしをへてくちやはてなん谷のむもれ

たいしらす            よみ人しらす

0886 あふことを松にてとしのへぬる哉身は住江おひぬものゆへ

百首うたたてまつりけるとき

    前大僧正慈円」(10ウ)

 

   新

0887 <>わかは松をしくれのそめかねてまくか原に風さなり

題しらす             よみ人しらす

   古                           もイ<朱>

0888 たねしあれはいはにも松は生にけりこひし恋はあはさらめやは

   同      よイ<朱>

0889 <>ゆふつくひさすやかへの松ののいつともわかぬこひもするかな

   同

0890 <>ゆふくれは雲のはたてに物そおもふあまつ空なる人をこふとて

   同

0891 かりこものおもひみたれてわかこふといもしるらめやひとしつけすは

   同

0892 <>つれもなき人をやねたくしらつゆのをくとは歎きぬとはしの

   同

0893 <>ちはやふるかものやしろのゆふたすきひとひも君をかけぬ日はなし」(11オ)

 

   同

0894 <>わかこひはむなしきそらにみちぬらしおもひやれともゆくかたもなし

   同

0895 するかなるたこのうらなみたゝぬ日はあれとも君をひは

   同

0896 いてひとなとかめそおほふねのゆたのたゆたに物おもふ

   同

0897 いせのうみにつりするあまのうけなれや心ひとつをさためかねつる

   同

0898 伊勢うみのあまのつりなはうちはへてくるしとのみや思ひわたら

                      躬恒

   撰

0899 いせのうみに塩やくあまの藤ころもなるとはすれとあはぬ君かな

             人にはイ<朱>

     返せぬ女のことかたにやるときゝ」(11ウ)

 

  道命法師

   後                            つなイ<青>

0900 <>たるゝわかのかたはつれなくてこと浦にこそけふりたちけれ

     たいしらす            道信朝臣

   新

0901 <>すまのあまのなみかけころもよそにのみきくはわか身になりにける哉

                      元方

   古

0902 あふことのなきさにしよるなれはうらみてのみそたちかへりける

                      坂上郎女

   拾

0903 しかのあまのつりにともせるいさりのほのかに人をるよしもかな」(12オ)

 

                      紀内親王

   撰

0904 <>くになにはたゝまくおしみこそすくもたくの下にこかるれ

     崇徳院に百首うたけるときのうた

    清輔朝臣

   千

0905 <>なにはめのすくもく火の下こかれうへはつれなきわかみなりけり

     たいしらす            貫之

     

0906 つのくになにはあしのめもはるにしけきわか恋人しるらめや

                      よみ人しらす」(12ウ)

 

   同

0907 つのなにはおもはす山しろのとはにあひみんことをのみこそ

                      

   新

0908 <>難波かたみしかきあしのふしのまもあはてこの世をしてよとや

     崇徳院に百首哥たてまつりけるとき

 清輔朝臣

   千

0909 あふことはいなさほそえのみをつくしふかきもなき世なりけり

     恋のうたとてよみはへりける

    花園左大臣」(13オ)

 

   同

0910 たよりあらはあまのつりふねことつてん人をみるめにもとめ侘ぬと

                      殷富門院大輔

   新

0911 もらさはやおもふこゝろをさてのみはえそ山しろのゐのしからみ

     たいしらす            中納言兼輔

   同

0912 <>みかのはらわきてるゝいつみいつみきとてかこひしかるらん

                      坂上是則

   同

0913 そのはらやふせやにおふるはゝきゝのありとはえてあはぬ君哉

                      藤原高光」(13ウ)

 

   同

0914 <>としをへておもふこゝろのにそ空も便かせは吹ける

                      よ人しらす

   拾                     よらんイ<朱>

0915 玉江こくこもかりふねのさしはへてまもあらはあはとそ思ふ

                      人麿

   同万

0916 みくまのゝうらのはまゆふもゝへなるへとたゝにぬかも

                      よみ人しらす

   新

0917 うとのうとくのみや世をはへんのよる/\みてしかな

   同

0918 あつまちのはてなるひたち帯のかこともあはとそおもふ」(14オ)

 

                      友則

   古

0919 <>あつまちのさやの中山なか/\になにしか人をおもひそめけ

     女につかはしける         実方朝臣

   拾

0920 わかためはたなゐの水ぬるけれと猶かきやらんさてはすむやと

     かへしイ<朱>           よみ人しらす

   同

0921 かきやらはにこりもそするあさきせのみくつはたれかすませてもみん

     冷泉院みみや申しけるときさふらひける

房をかはしていひわたり侍ける比てならひし」(14ウ)

 

           にかきつけゝるイ<青>

けるところにまかりて物ける

 謙徳公

   新                  さきイ<青>

0922 つらけれとうらみとはたおもほえ猶行をたのむこゝろに

     かへし              よみ人しらす

   同   たイ<朱>               をやイ

0923 雨こそはのまはもらめますはおもはぬ人とみてやゝみなん

     さとはいつくそと問はへりけれは

  本院侍従

   同

0924 わかやとはそことも何かをしふへきいはてこそみめけり」(15オ)

 

     かへし              忠義公

   同

0925 わかおもひそらのけりとなりぬれは雲ゐなからも猶ねみん

                        これなりイ<朱>

     たいしらす            藤原惟成

   同

0926 かせふけはむろしまのゆふけふりこゝろの空に立にけるかな

     百首のうたたてまつりけるとき

   二条院讃岐

   

0927 みるめこそいりぬるいその草ならめ袖さへなみくちぬる

     恋のうたとてよみける」(15ウ)

 

                      俊頼朝臣

   同

0928 君ふとなるみのうらのはまひさきれてのみもをふる哉

                      藤原秀能

   同

0929 もしほやくあまの磯やのゆふけふりたつ名もくるし思きえなて

     後京極摂政家のうたあはせ

    家隆朝臣

   同

0930 <>ふしのけふりも猶そ立のほるうへなき物はおもひなりけり

                      参議定家」(16オ)

 

   同

0931 <>としもへぬいのるちきりははつせ山のへのかねのよそのゆふ

     権中納言俊忠家恋十首よみはへりけるに

祈恋のこゝろ

          俊頼朝臣

   千                 イニナシ<青>

0932 <>うかりける人をはつ瀬の山おろしよしかれとはいのらぬものを16ウ

 

(白紙)」(17オ)

(白紙)」(17ウ)

 

   巻第拾弐

    

     百首うためしけるとき

        崇徳院御製

   詞

0933 <>をはやみ岩にせかるゝたき河のわれても末にあはとそ思

     人のたつねわひてうせにたるかとおもひつると

いへりけれは           伊勢」(18オ)

 

   撰

0934 <>おもひたえすなかるゝ水のあはのうたかた人にあはてきえめや

     堀院に百首うたたてまつりける時不逢恋

     権中納言公実

   千

0935 <>おもひり人にとはゝやみなせ河むすはぬ水に袖はぬるやと

     後京極摂政家うたあはせ

     寂蓮法師

   新                     よイ<朱>

0936 ありとてもあはぬためしのとりくちたにはてねせゝのむもれ

     百首うたたてまつりけるとき」(18ウ)

 

    二条院さぬき

   同

0937 <>なみた川たきつこゝろのはやきをしからみかけてせく袖そなき

     家のうた合に 祈恋をイ<朱>    後京極摂政

   同

0938 いく夜われなみにしれてきふね河袖に玉ちる物おもふらん

     たいしらす            藤原親盛

   千

0939 おもひせくこゝろのうちのしからみもすなりぬる涙川哉

                      よみしらす

   古

0940 あふさかの関になかるゝいはし水いはてにおもひこそすれ」(19オ)

 

   同

0941 <>なみたなに水上をたつねけん物ときわかみなりけり

   拾少                          里イ

0942 こひわひぬねをたになか声たてゝいつこなるらんをとなしの

                      もとすけイ<朱>

                      元輔

   同

0943 をとなしのとそつになかれいつるいはふ人のなみたは

                      よみ人しらす

   同

0944 <>おほゐ川くたすいかたのみなれ竿みなれぬ人もこひしかりけり

                      人麿

   同万                     ころ哉イ<青>

0945 みす底におふる玉ものうちなひきをよせておもふこのころ」(19ウ)

 

   同

0946 <>おく山のいはかきのみこもりに恋やわたらんあふよしをなみ

                      よみ人しらす

   古

0947 あさな/\たつ川きりのそらにのみうきて思ひのある世也けり

   撰

0948 てわたらん中になかるゝはいはて物おもふなみた也けり

   拾                           なしイ<朱>

0949 こはた川こはたかいひしことのそなき名すゝかんたきつせも

                      人麿

   同

0950 <>なきのみたつの市とはさけともいさまた人をうるよしもなし

   同

0951 <>竹のにをきゐるつゆのまろひてぬるとはなしにたつわか名哉」(20オ)

 

     女につかはしける         貞元親王

   撰         名イ<朱>

0952 おほかたはなそやわかのおしからむかしのつまと人にかたらん

     かへし              おほつふね<後撰如此古今ニハ/元方作返哥>

   同

0953 人はいれは立名のおしけれはむかしも今もしらすとをいはん

                にイ<朱>

     きさらきはかり月あかき夜二条院にて人々

ものかたりなとし侍けるに周防内侍より

   をイ<朱>

て枕もなといふを聞て大納言忠家これ

まくらにとてかひなをさしいれて侍けれは」(20ウ)

 

                      周防内侍

   千

0954 春のよのゆめはかりなるたまくらにかひなくたゝ名こそけれ

     かへしイ<青>           大納言忠家

   同                     きイ<朱>

0955 ちきりありてはるのよふかき手枕をいかゝかひな夢になすへき

     石によするこひといふこゝろ

      二条院讃岐

   同

0956 <>わか袖はしほひえぬ沖のいしの人こそしらねかくまもなし

     たいしらす            俊恵法師」(21オ)

 

   同

0957 <>夜もすから物おもふ比は明やらぬねやさへつれなかりけり

                      よみしらす

   拾少

0958 おもひきやわかまつ人はよそなからたなはたつめのあふをみんとは

     すとく院に百首うたけるときのうた

    大炊御門右大臣

   新

0959 わか恋はちきのかたそきかたくのみ行あはてとしのつもりぬる哉

     題しらす             人麿

   拾万

0960 <>をとめ子か袖ふる山のみつかきの久しきよりてき」(21ウ)

 

     ほり院に百首うたたてまつりけるとき

    藤原基俊

   千

0961 <>このまよりひれふる袖をよそにみていかゝはすへき松さよ姫

     しらす             よみ人しらす

   古

0962 ゆく水にかすかくよりもはかなきはおもはぬ人をおもふなりけり

     つりとのゝ御子につかはしける

   陽成院御製

   撰                          けイ<青>

0963 つくはねのみねよりおつるみなの川こひそつもりて淵となりぬる」(22オ)

 

     崇徳院に百首うたたてまつりけるとき

      待賢門院堀

   千

0964 <>あら磯のいはにくたくるなれやつれなき人にかくる

                      紀貫之

0965 玉のをのたえてみしかき心もてとし月なかきこひもする

     たいしらす            重之

   詞

0966 <>かせをいたみいはうつのをのれのみくたけてをおもふころかな

                      曾禰好忠」(22ウ)

 

   新

0967 <>ゆらわたるふなかちをたえゆくゑもしらぬ恋の道かな

     百首うたたてまつりける時

     後京極摂政

   同

0968 <>かちをたえゆらみなとによるふねのたよりもしらぬしほかせ

                      式子内親王

   同

0969 <>しるへせよあとなきにこくふねゆくゑもしらぬやへしほ

     題しらす             清正

   同

0970 <>すまうらにあまのこりつむもしほ木のからくも下にもえわたる23オ

 

     五十首うたたてまつりけるとき寄雲恋

俊成卿女

   同

0971 したもえにおもひきえなんけむりたにあとなき雲のはてそしき

     後京極摂政家うたあはせ

     参議定家

   同

0972 なひかしなあまのもしほ火たき初てけふりは空にくゆりわふとも

     たいしらす            元方

   古

0973 <>たちかへりあはれとそおもふよそにても人にこゝろを沖つしらなみ」(23ウ)

 

                      えいかく法し 叡覚ーーイ<青>

   後     のした水イ

0974 このはちる山した水のうつもれてなかれもやらぬ物をこそ

                      馬内侍

   同

0975 いかなれはしらぬにおふるうきぬくるしや心人しれすのみ

     女につかはしける         謙徳公

   新

0976 <>かりころも袖に人めはつゝめともこほるゝものはなみた也にけり

     百首うたの中に          式子内親王

   同

0977 <>玉のをよたえなはたえねなからへはしのふることのよりもそする」(24オ)

 

                      きのイ<朱>

とものり

   古

0978 下にのみこふれはし玉のをのたえてみたれん人なとかめそ

                      よみ人しらす

   新                    きイ<朱>

0979 あふことのなみのしたくさみかくれてしつなくこそなかるれ

   古

0980 おほかたはわかなもみなとこき出なんをうみへたにみるめすくなし

                      さたふむ

   同

0981 まくらより又しる人もなき恋をなみたせきあへすらしつる哉

                      人麿」(24ウ)

 

   同

0982 かせふけうつきしの松なれやねにあらはれてぬへらなり

                      よみしらす

   拾少

0983 歎きあまりつに色にそ出ぬへきいはぬを人のらはこそあらめ

                      素性法師

   古

0984 をとにのみ菊のしら露よるはをきてひるはひにあへすけぬへし

     崇徳院に百首うたたてまつりけるとき

      左京大夫顕輔

   千

0985 <>たかさおのへの松をふくをとにのみやはきゝわたるへき」(25オ)

 

                 けさうふみイ<青>

     ほり河のとき人々の艶書をめして

のうたよみのもとつかはしてかへしをめし

御らしけるなか

        祐子内親王家紀伊

   金

0986 <>をとにきく師のはまのあたはかけしや袖のぬれもこそすれ

     たいしらす            元方

   古

0987 <>をとは山をとにつゝあふ坂の関のこなたにとしをふる

                      よみ人しらす」(25ウ)

 

   同

0988 わか園のむめのほすゑにうくひすのぬへきこひもするかな

                      宮道高風

   撰

0989 春の池のたまもにあそふ鳰とりのあしのいとなきこひもするかな

                      よみしらす

   拾

0990 いつかともおもはぬ沢のあやめくさたゝつく/\とねこそなかるれ

   古

0991 <>ほとゝきすなくやさ月のあやめあやめもしらぬこひもするかな

   同

0992 あしの山ほとゝきすわかことや君にこひつゝいねかてにする

   同

0993 夏なれはやとにふすふるかやりひのいつまてわかみ下もえにせん」(26オ)

 

   撰 <朱>

0994 <>つゝめともかくれぬものなつむしの身よりあまれるおもひなりけり

     後京極摂政家うたあはせに夏恋のこゝろ

   寂蓮法師

   新

0995 <>おもひあれは袖にほたるをつゝみてもいはゝやものをとふ人はなし

     たいしらす            友則

   古

0996 <>ゆふされはほたるよりけにもゆれともひかりみねはやひとのつれなき

                      よみ人しらす

   撰        にイ<朱>

0997 <>うちはへてくらすうつせみのむなしきこひもわれはする哉26ウ

 

後京極摂政

   

0998 <>うつ蝉のなくねやよそにもりの露ほしあへぬ袖を人のとふまて

八条院高倉

   同

0999 つれもなき人のこゝろはうつせみのむなしき恋に身をやかへてん

大納言重光

   撰

1000 これをみよ人もとかめぬ恋すとてねをなく虫のなれる姿を

よみ人しらす

   古

1001 人しれすおもへはくるしくれなの末つむ花の色になん」(27オ)

 

   同

1002 <>あきのゝの花にましりさく花の色にやこひんあふよしをなみ

                      をのゝはるかせイ<朱>

小野春風

   

1003 <>花すゝきほにて恋は名をおしみゆふひものむすほゝれつゝ

中納言家持

   

1004 <>秋はきの枝もとをゝにをくつゆのけさきえぬともに出めや

貞数親王

1005 ひとしれす物おもふ比のわか袖は秋のくさ葉にとらさりけり

よみ人しらす」(27ウ)

 

   

1006 <>かせさむみ声よむしよりもいはて物おもふわれそまされる

友則

   古

1007 わかやとのきくのかきねにをくきえかへりてそこひしかりける

たゝみね

   同

1008 かきくらしふるしら雪の下きえにきえて物おもふころにも有哉

                      大中臣能宣イ<青>

よしのふ朝臣

   詞   るイ<青>        イニナシ<青>

1009 かきもりたくひの夜はもえひるはきえつゝ物をこそおもへ

ほりかはの院に百首うたける時忍恋のこゝ」(28オ)

 

を               俊頼朝臣

   千

1010 <>あさてほすあつまをとめのかやむしろしきひてもころ

            けさうふみイ<青>

      おなし御とき艶書のうたをめして女房のもと

      につかはしける中に

       権大納言公実

   同

1011 <>みつしほにをあらふみたれあしの君をそふうきしつみつゝ

いゑうたあはせし侍けるときのうた

       権大納言俊忠」(28ウ)

 

   同

1012 わか恋はあまのかるもにみたれつゝかく時なきなみしたくさ

たいしらす            よみ人しらす

   新                    のイ

1013 <>よそにのみ見てやゝみなんかつらきやたかまの山のみねのしらくも

千五百番合に          権大納言通具

   同

1014 わか恋はあふをかきりのたのみたにゆくゑもしらぬ空のうきくも

題しらす             みつね

   古                             にイ

1015 わかこひゆくゑもしらすはてもなしあふをかきりとおもふはかり

さかみ」(29オ)

 

   後                 てイ<朱>

1016 あふことのなきよりかねてつらけれはさもあらましにぬるゝそて

凡河内躬恒

   古

1017 たのめつゝあはてとしふる偽りにこりぬこゝろを人はしらな

皇太后宮大夫俊成

   新

1018 うき身をはわれいとふいとへたゝそをたに同し心とおもはん

殷富門院大輔

   同

1019 あすしらぬ命をそおもふをのつからあらはあふを待につけても

よみ人しらす」(29ウ)

 

   拾

1020 いかにしてしはしわすれむいのちたにあらはのありもこそすれ

   古

1021 <>かた糸をこなたかなたによりかけてあはすはなにを玉のをにせ

興風

   同

1022 しぬる命いきもやするとこゝろみに玉のをはかりあはといはなん

友則

   同

1023 いのちやはなにそはつゆのあた物をあふにしかへはおしからなくに

よみ人しらす

   同

1024 おもふにはしのふることそまけにける色にはいてしとおもひしもの」(30オ)

 

女四のみにつかはしける

     九条右大臣

   拾      へぬれとイ<朱>

1025 沢にのみとしふれあしたつのこゝろくもうへにのみこそ

題しらす             よみ人しらす

   古   はイ<朱>

0126 わかこひを人しるらめや敷たへまくらのみこそしらはしるらめ

   同

1027 人しれぬおもひやなそとあしのまちかけれともあふよしのなき

                        惟イ<青>

藤原

拾少

1028 ひとしれすおつなみたのつもりつゝ数かくはかりなりにける哉」(30ウ)

 

大伴百世

同少           世イ<青>

1029 恋しなんのちは何せんいけるのためこそ人は見まくほしけれ

後法性寺入道前関白太政大臣うたせに

のうた              皇太后宮大夫俊成

   千              にイ<朱>

1030 あふことをかへてとも待へきを世々をへたてむほとかなしき

たいしらす            よみしらす

   古

1031 むよにもはやなりなゝんめのまへにつれなき人をむかしと思は

   同

1032 おふともこふともあは物なれやゆふてもたゆくとくる下ひも」(31オ)

 

貫之

   同

1033 しきしまややまとにはあらぬかり衣ころもへすしてあふよしも

在原元方

   撰

1034 こひしとはさらにもいはし下ひものとけを人はそれとしらなん

権中納言俊忠家恋十首うたよみ侍

来不留恋のこゝろを

        俊頼朝臣

   金

1035 <>おもひくさにむすふしら露のたま/\きては手にもたまらす」(31ウ)

 

後白とき殿上合に臨期違約恋

いふこゝろ

          皇太后宮大夫俊成

   千

1036 <>おもひきやしちのはしかきかきつめてもゝ夜もおなねせんとは32オ

 

(白紙)」(32ウ)

(白紙)」(33オ)

(白紙)」(33ウ)

 

巻第拾参

     をんなにつかはしける

       大中臣能宣朝臣

拾少

1037 ことを待し月日のほとよりもけふの暮こそ久しかりけれ

こひうたとてよみはへりける

   八条院高倉」(34オ)

 

   新

1038 いかゝふく身にしむ色のかはる哉たのむるくれの松かせのこゑ

式子内親王

   同

1039 <>あふことをけふ松かえのたむけ草いくよしるゝ袖とかはしる

寄浦恋といふこゝろ

       二条院内侍三河

   千

1040 待かねてさ夜もふけうら風にたのの音のみそする

院に百首うた奉りけるとき初逢恋 

俊頼朝臣」(34ウ)

 

   新

1041         あしのやのしつはた帯のかたすひこゝろやすくもうちとくる哉

二条院の御ときあかつきかへりなんとする恋とい

 ことイ<朱>

ふこゝろを            二条院讃岐

   同

1042 明ぬれとまたきぬ/\になりやらて人の袖をもぬらしつるかな

後朝のこゝろを          後京極摂政

   同

**** またも来むあきをたのむの雁たにもなきてそかへる春の明ほの

     たいしらす            大納言国経

   古

1043 <>あけぬとていまはのつくからになといひしらぬおもひそふらん」(35オ)

 

女のもとより帰りてつかはしける  道信朝臣

   後

1044 かへるさの道やはかはるかはらねとくるにまふけさのあは

   同

1045 <>あけぬれはくるゝ物とはしりなから猶うらめしきあさほらけ

             よみ人しらす

拾少

1046 身をつめはつゆとおもふあかつきことにいかてをくらん

貫之

撰又拾

1047 <>あかつきのなからましかはしらつゆきてわひしき別せましや

源頼綱」(35ウ)

 

   後

1048 いにしへのひとさへけさはつらきかなれはなとかかへり初

藤原義孝

   同

1049 君かためおしからさりしいのちさへなかくもかなとおもひける

家に百首のうたよみ侍けるとき後朝恋のこゝろを 

後法性寺前関白太政大臣

   千

1050 かへりつるなこりをなかむれはなくさめかたきあり明の月

皇太后宮大夫俊成

   同

1051 わするなよ世々ちきりをすかはらやふしみのさとの有明のそら」(36オ)

 

崇徳院に百首うたけるとき

   待賢門院堀

   同

1052 なかゝらんこゝろもしらす髪のみたれてけさは物をこそおもへ

近江の更衣につかはしける     延喜御製

   新

1053 <>はかなくも明にけるかなあさつゆきてのゝちきえまさりける

かへし             更衣源周子

   同                          ならひイ<青>

1054 <>つゆきつるそらもおもほえすきえかへりつる心まとひに

みくしけ殿につかはしける    権中納言敦忠36ウ

 

   撰

1055 けふそへにくれさらめやはとおもへともたへぬは人のこゝろなりけり

たいしらす            西行法師

   新

1056 <>おもかけのわすらるましき哉なこりを人の月にとゝめて

花山院御製

   同

1057 <>あさほらけをきつる霜のきえかへり暮まつほとの袖をみせはや

源正清朝臣

   同

1058 <>こひしさにけふそたつぬるおく山の日かけのつゆに袖はぬれつゝ

たいしらす            道信朝臣」(37オ)

 

   後

1059 たまさかにゆきあふさかせきもりは夜をとさぬそしかりける

実方朝臣

   新

1060 明かたきふたうらによる浪ののみぬれて沖つしま

よみしらす

   古

1061 は玉のやみのうつゝはさたかなる夢にいくらもらさりけり

凡河内躬恒

   同

1062 なかしともおもひもはてぬむかしよりあふ人からの秋のよなれは

実方朝臣」(37ウ)

 

   新

1063 中/\に物おもひめてねぬるははかなき夢もえやはみえける

   同

1064 おきては袖のみぬれていとゝしく草の玉のかすやまさらん

なりひらの朝臣

   古

1065 おきもすねもせてよるをしては春のとてなかめくらしつ

つらゆき

拾少

1066 <>もゝ羽かきはねかくしきも我ことくあしたわひしきかすらし

恋十五首うた合に         参議定家

   新

1067         しろたへの袖のわかれにつゆおちて身にしむ色の秋かせそふく」(38オ)

 

女のもとにとまりて侍けるにひるは見くるしとて

いてはへらさりけれは

       道信朝臣

1068 ちかのうらなみよせちしてひるまなくてもくらしつる哉

題しらす             たゝみね

   古

1069 <>ありあけのつれなくえしわかれよりあかつきはかりうき物はなし

後法性寺入道前関白家合に

    皇嘉門院別当」(38ウ)

 

   千                           やイ   へきイ

1070 <>なには江のあしのかりねのひとよゆへ身をつくしてわたかな

題しらす             伊勢

   撰

1071 しゆめのおもひ出らるゝよひことにいはぬをしるはなみたなりけり

権中納言敦忠

拾少                   もイ<朱>

1072 みてののこゝろにくらふれはむかしはものを思はさりけり

千五百番歌合に          後京極摂政

   新  へるイ<青>

1073 身にそふるその面かけきえなゝんゆめなりけりとるはかりに

権大納言通光」(39オ)

 

   同

1074         <>なかめわひれとはなしに物そおもふ雲のはたてのゆふ暮

題しらす             二条院さぬき

   千

1075 <>とてかれしとこさむしろにやかてもちりのつもりぬる哉

さかみ

   後

1076 むるをたのむへきにはあらねとも待とはなくてまたれもやせん

   同

1077 なかめつゝことありかほにくらしてもかならすゆめえはこそあらめ

赤染衛門

   

1078 <>やすらはてねなまし物を夜更てかたふくまての月をみし哉」(39ウ)

 

よみしらす

   新                         ぬイ

1079 君こといひしことに過ぬれはまぬものゝこひつゝそ

   古                            たまイ<朱>

1080 <>さむしろに衣かたしきこよひもやわれを待らんうちはしひめ

人麿

拾少                        とかまたんイ<青>

1081 ゆふけとふうらにもよくありこよひたにこさらん君をいつかまつへき

参議定家

   新

1082 <黄>あちきなくつらきあらしの声もうしなと夕くれならひけむ

よみ人しらす」(40オ)

 

   古                   もイ

1083 から衣日もゆふくれになるときはかへす/\そひとはこひしき

   同                しらすイ<青>

1084 <>よひ/\にまくらさためんかたもなしいかにねしよかゆめにみえけ

西行法師

   新 めイ<朱>

1085 たのぬに君くやとまつよひのまのふけゆかてたゝ明なましかは

入道摂政門をたゝかせはへりけるをそくあけゝ

         三字ナシイ<朱>

れはわつらひぬといひてけれは

       右大将道綱母

拾少雑             をイ

1086 なけきつゝひとりぬるるまはいかに久しき物とかはしる」(40ウ)

 

敦道のみまうて来ける門をあけさりけれは

かへりはへりけるあした

         いつみ式部

後雑             もイ

1087 なかしとて明すやはあら秋のはまてかしまのと斗をたに

題しらす             参議定家

   新

1088 かへるさのものとや人のなかむらんまつ夜なからの有明の

よみ人しらす

   古

1089 <>とりゝのむもれきあらはれはいかにせんとかみ初けん」(41オ)

 

柿本麿

   拾

1090 杉いたもてふけるいたまのあはさらはいかにせとかわかね

よみ人しらす

   古

1091 いけにすむ名をゝし鳥の水をあさみかへるとすれとれにけり

   同

1092 むらとりの立にしわか名いまさらにことなしふともあらめや

儀同三司母

   新

1093 <>わすれしのゆく末まてはかたけれはけふをかきりとも哉

なりひら」(41ウ)

 

   同

1094 おもふにはしのふることそまけにけるあふにしかへはさもあらはあれ

中納言国信につかはしける

                     肥前イ

     前斎院新紀伊

   千

1095 <>あつまのあさ木の柱われなからいつふしなれて恋しかるらん

たいしらす            春道列樹

   古

1096 あつさ弓引けもとすゑわかによるこそれ恋の

貫之

   同

1097 手もふれて月日へにけるしらまゆみふしよるはいこそねられね」(42オ)

 

                        永イ<青>

藤原実朝臣

   金

1098 か月のおほろけならぬこひしさにわれてそいつる雲の上より

小大君

拾少

1099 ふらぬ夜のこゝろしらて大そらの雨をつらしとひける哉

崇徳院百首うたけるとき

   上西門院兵衛

   千

1100 なにに空たのめとてうらみけんたえたるくれありけり

たいしらす            よみ人しらす」(42ウ)

 

   古

1101 宮木野のもとあらのつゆもみ風を待こと君をこそまて

   同          いさよひイ        すイ<朱>

1102 君やんわやゆかんのやすらひにまき板ともさゝねにけり

   同

1103 月夜よしよゝしと人につけやらはこてふにゝたりすしもあらす

そせいほふし

   同

1104 <>いまといひしはかりになか月の有明の月を待いてつるかな

いつみしきふにつかはしける

    宰帥敦道親王

   新

1105         あきの有明の月のいるまてにやすらひかねて帰りにしかな」(43オ)

 

たいしらす            清少納言

   詞                    をイ<朱>

1106 よしさらはつらさはにならひけりめてこぬはたれへし

三条右大臣

   撰

1107 <>にしおはゝあふさか山のさねかつら人にしられてくるよしもかな

左京大夫道雅

   後

1108 あふさかあつまちとこそ聞しかとこゝろつくしの関にそありける

在原業平朝臣

   古

1109         ひとしれぬわかひちの関もりはよひ/\ことにうちもねなゝん」(43ウ)

 

左京大夫道雅

   後                       いのるイ<朱>

1110 さかき葉やゆふしてかけそのかみにをしかへしてもわたるころ哉

   同

1111 <>いまはたゝおもひたえなんと斗を人つてならていふよしもかな

   同                        とイ<朱>

1112 みちのくのをたえのはしや是ならんふみゝふますみ心まはす

よみ人しらす

   撰

1113 <>なき名そと人にはいひてありぬへしのとはゝいかゝこたへ

戒仙法師

   同                   あるイ<朱>

1114 あなこひゆきてやみましのくにゝいまてふうら初しま」(44オ)

 

惟喬親王

   同

1115 あふことのかたいとそとはしりなからのをはかり何によりけん

天徳四年内裏うたあはせ

     中納言朝忠

拾少

1116        ことのたえてしなくは中/\に人をもをもうらみさらまし

題しらす             よみ人しらす

   古

1117 あふたまのをはかり名のたつはよしのゝたきつせのこと

   新

1118 <>雲のゐるとを山とりのよそにてもありとしきけはわひつゝそぬる」(44ウ)

 

   同

1119 ひるはきてよるはわかるゝ山とりのかけみる時そねはなかれける

元良親王

   撰

1120 <>あふことは山とりのかりころもきてはかひなきねをのみそなく

柿本人麿

1121 <>あし引の山とりののしたりのなか/\ひとりかもねん

光孝天皇御製

   新

1122 <>なみたのみうきいつるあまのつりさすから恋つゝそぬる

奥風」(45オ)

 

   古                          ぬイ<朱>

1123 君こふるなみたとこにみちぬれはをつくしとそなりける

女につかはしける         敏行朝臣

   同

1124 つれ/\のなかめにまさるなみたのみぬれてあふよしもなし

かへし 女にかはりてイ<青>    在原業平朝臣

   同

1125 あさみこそ袖はひつらめなみた河身さへなかるときかはたのまん

女にかはりて

   同

1126 かす/\におもひおもはすとひかたみ身をしる雨はふりそれる

題しらす             よみ人しらす」(45ウ)

 

   同

1127 よるへなみ身をこそとをくへたてつれこゝろは君かかけとなりにき

   同

1128 花かたみめならふ人のあまたあれはられぬらん数ならぬ

光孝天皇御製

   新

1129 あはすしてふる比ほひのあまたあれははるけき空になかめをそする

元真

   同

1130 すみよしのわすれくさたねたえてなき世にあへるわれそしき

よみしらす

   同

1131 わかよはひおとろへゆけは白たへの袖のなれにし君をしそおもふ」(46オ)

 

   同

1132 玉くしけ明まくおしきあたらを衣かれてひとりかもねん

   同

1133 <>よとの松はつらくもあらなくにうらみてのみもかへるなみかな

   拾古雑

1134 いまさらにとふへき人もおもほえすやへ葎して門させりてへ

   同

1135 あし引の山のやますけやますのみねはこひしき君にもあるかな

石上乙麿

1136 あし引の山こえくれてやとからはいも立まちていねさらんかも

坂上郎女

         にあらねイ<朱>  おり/\イ<朱>

1137         いはねふみかさなる山はなけれともあはぬ日かすこひやわたらん」(46ウ)

 

在原業平朝臣

   古     にイ<青>           ぬるイ

1138 <>秋のゝのさゝ分しあさの袖よりもあはてそひちまさり

とものり

   同

1139 さゝのにをく霜よりもひとりぬるわか衣そさえまさりける

女につかはしける         延喜御製

   新

1140 霜さやくへの草葉にあらねなとか人めのかれまさるらん

かへし             よみ人しらす

   同

1141 あさちおふるへやかるらん山かつのかきほの草はいろもかはらす」(47オ)

 

たいしらす

   古               われそかすかくきみかこぬよはイ<青>

1142 あかつきしきのはねかき百はかきかこぬわれかすかく

   同

1143 こひしくはしたにをおもへむらさきのねすりのころも色にいつなゆめ

   同

1144 君か名もわかもたてしなにはなるみつともいふないはし

   同

1145 わすらるゝときしなけれはあしたつの思みたれをのみそなく

   同      うきイ<青>

1146 こりすまに又もなき名は立ぬへし人にくからぬ世にしすまへは

   新

1147 こひしさにしぬるを思出てとふ人あらはなしとこたへよ

うらむること侍てさらにまうてしとちか」(47ウ)

 

ことしてふつかはかりありつかはしけ

謙徳公

   同

1148 わかれては昨日けふこそへたてつれ千世しもへぬるこゝちこそすれ

かへし              恵子女王 贈皇后宮母

   同                         よイ

1149 きのふともけふともしらすいまはとてわかれほとの心まとひに

題しらす             よみ人しらす

   古

1150 あかてこそおもは中ははなれなめそをたに後の忘かたみに

   同                      まつイ<青>

1151 忘れなんとふこゝろのつくからにありしよりけにそかなしき」(48オ)


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