新勅撰和歌集

First updated 4/3/2007 (ver.1-1)
Last updated 4/3/2007 (ver.1-1)
渋谷栄一著(C)

穂久邇文庫本「新勅撰和歌集」整定本文
穂久邇文庫本「新勅撰和歌集」翻刻本文

解題
 「穂久邇文庫蔵伝為家筆、定家自筆識語本二帖は、冷泉家の旧蔵で、昭和三十一年に重要文化財の指定も受けている。
 『新勅撰集』としては最も貴重な伝本である。本文は岩波文庫本『新勅撰和歌集』に翻刻されている。
 二重桐箱入り。内箱の表中央に、「新勅撰<為家筆/奥書定家卿御筆>」の貼紙がある。
 上帖は縦二三・〇糎、横一四・五糎、下帖は縦二三・〇糎、横一五・〇糎の鳥の子・綴葉装の鎌倉時代の写本である。
 表紙は卵色の地に横七列に花兎文を織り出した金襴で、題簽・外題は存しない。見返しは金銀砂子・切箔・野毛で雲霞山水(墨流し)を描き、下段斜めに金色花更紗文を押す。裏表紙見返しは、中央に墨流しによる屈曲した水流を描く。下帖表紙見返しも同様。裏表紙見返しは、墨流しに金銀の菊花文を押している。
 上帖は墨付一五六丁、遊紙前後各一丁の計一御八丁で八折より成る(第一折は九枚十八丁、第二折から第八折までは、各十枚二十丁である)。
 下帖は、墨付一七九丁、遊紙前一丁、後五丁の計一八五丁で、十折より成る(第一折から第七折までは各各十枚二十丁、第八折は十一枚二十二丁、第九折は九枚十八丁、第十折は三枚六丁)。
 一面八行。和歌二行書きである。筆跡は、前田家蔵『大和物語』の為家筆の部分と相似する達筆である。下帖末尾には、定家の筆跡で、
  扶老眼一校、直付字誤訖。
  非器撰者明静。
の識語がある。明静はもちろん定家の法号である。」
(樋口芳麻呂『新勅撰和歌集』「解説」710頁)

目次
1.穂久邇文庫本「新勅撰和歌集」の仮名遣い
(1)《お》《ほ》《を》の非歴史的仮名遣い
(2)《は》《わ》の非歴史的仮名遣い
(3)《い》《ひ》《ゐ》の非歴史的仮名遣い
(4)《う》《ふ》《む》の非歴史的仮名遣い
(5)《え》《へ》《ゑ》の非歴史的仮名遣い
2.穂久邇文庫本「新勅撰和歌集」の本文訂正跡

1.穂久邇文庫本「新勅撰和歌集」の仮名遣い
  凡例
 1 動詞は終止形で掲出した。  2 【 】は歴史的仮名遣い ( )内は歌番号 詞は詞書 序は仮名序。
 3 *印は例外。→印は他にもあり。

(1)《お》《ほ》《を》の非歴史的仮名遣い

《お》
あお【青(あを)】(0493)
あおむ【青(あを)む】(0006詞)
*あをやき【青柳(あをやぎ)】(0023・0024・0025・0026・0027・0028・0029・0030)

お【尾(を)】(1040)
おかし【をかし】(1059詞)
おかむ【拝(をが)む】(1155詞) おき【荻(をぎ)】(0198・0222・0224・0910・1026・1066・1067・1068)
おきはら【荻原(をぎはら)】(0249)
おさまる【治(をさ)まる】(序・1167)
おさむ【治(をさ)む】(序・序・0541)
おし【惜(を)し】(0088・0096・0106・0261・0286・0302・0317・0427・0798・1047・1343・1365)
おしむ【惜(を)しむ】(0135・0259・0397・0439・0616・0791・1048)
おちかへる【若(を)ち返(かへ)る】(0179)
おののえ【斧(をの)の柄(え)】(0118)
おのへ【尾上(をのへ)】(0062・0064・0080・0100・0115・0207・0746・1093)
おはな【尾花(をばな)】(0775・0776)
おふのうみ【をふの海(うみ)】(0760)
おりく【折句(をりく)】(1372詞)
おりふし【折節(をりふし)】(序)
おる【折(を)る】(0032詞・0034・0086・0106・0156詞・0156・0243・0311・0312・0313・0314・0316・0378・1056詞)
*ゝ(お)る【折る】(0044詞・0084詞)
*したをれ【下折れ】(0434)

かたおか【片岡(かたをか)】(1340)
きおふ【競(きを)ふ】(1101)

さお【棹(さを)】(0021・0721)
→さほ

たおる【手折(たを)る】(0132・0239・0428・0592)
とお【十(とを)】(0578・1342)
とおす【通(とほ)す】(0757)

みお【みを(*地名)】(0413)
みお【水脈(みを)】(1321)
もよおし【催(もよほ)し】(1151詞)

《ほ》
かほる【薫(かを)る】(0031・0060・0315・1226)
さほ【棹(さを)】(0634・0763)
→さお
しほり【しをり】(0536・0600)
しほる【しをる】(0131・0537・0814・0915・1361)
しほれ【しをれ】(1342)

《を》
ころをひ【頃(ころ)ほひ】(0256詞・1033詞・1080詞・1145詞・1192詞・1219詞)

さをひめ【佐保姫(さほひめ)】(0018)
そをつ【濡(そぼ)つ】(0379)

とをさかる【遠(とほ)ざかる】(0623・1280)
とをさと【遠里(とほさと)】(0014)
とをし【遠(とほ)し】(0184・0194・0452・0490・0723・0755・1157・1175・1342)
とをやまかつ【遠山(とほやま)がつ】(0321)
とをやまとり【遠山鳥(とほやまどり)】(1107)

なを【猶(なほ)】(0178・0194・0278・0389・0513・0527・0532・0653・0931・0988・1128)
なをさり【なほざり】(0803・1068)

まとを【間遠(まどほ)】(0272)

をく【置(お)く】(0099・0156詞・0203・0213・0218・0226・0231・0240・0246・0265・0281・0284・0287・0288・0289・0296・0329・0332・0356・0368・0374・0379・0444・0477・0541・0549・0553・0565・0599・0747・0757・0781・0801・0804・0806・0807・0814・0817・0820・0903・0904・0906・0914・0985・1037・1040・1047・1056・1071・1134・1149・1158・1177・1192・1194詞・1196・1197・1197・1207・1238・1247・1255・1344・1347・1351)
をく【起(お)く】(1219・1347)
をくる【送(おく)る】(0307・0537詞・0602詞・0624詞・1311詞・1313詞)
をくる【遅(おく)る】(0728・0924・1056・1221・1253・1254)
をこす【遣(おこ)す】(1303)
をこたり【怠(おこた)り】(0744)
をこなふ【行(おこな)ふ】(序・0580・0594詞・1264詞)
をさふ【押(お)さふ】(0665)
をしあけかた【押(お)し明(あ)け方(がた)】(0969)
をしなへて【押(お)しなべて】(0027・0152・0486)
をしね【晩稲(おしね)】(0297)
をす【押(お)す】(0511)
*ゝ(を)す【押す】(0267)
をそし【遅(おそ)し】(0052・0227・1023・1092)
をと【音(おと)】(0195・0198・0199・0223・0292・0322・0371・0396・0651・0765・1021・1068・1172・1173・1175・1176・1180・1269)
をとつれ【訪(おと)づれ】(0418・0571)
をとなふ【訪(おと)なふ】(1074詞)
をとは【音羽(おとは)】(0081)
をのか【己(おの)が】(序・0176・0177・0794・1118)
をのつから【自(おの)づから】(0662・1248・1306・1342)
をのれ【己(おのれ)】(0795・0894・0985)
をもし【重(おも)し】(1211詞)
をよふ【及(およ)ぶ】(0634・0961)
をる【織(お)る】(0018・0230・0484・1143)
*おりはへ【織(お)り延(は)へ】(0140)
をろか【愚(おろ)か】(0750)

(2)《は》《わ》の非歴史的仮名遣い

《は》
あは【泡(あわ)】(0705)
*あわ【泡】(0717・0939)
かはく【乾(かわ)く】(0381・0772)
ことはり【道理(ことわり)】(0381・1144)
さはく【騒(さわ)ぐ】(0450・0635・0673・1301・1372)
よはし【弱(よわ)し】(0719・0933)

《わ》
あわひ【鮑(あはび)】(0872)
うわのそら【上(うは)の空(そら)】(0647)
さわ【沢(さは)】(1164・1165)

(3)《い》《ひ》《ゐ》の非歴史的仮名遣い

《い》
まいる【参(まゐ)る】(0156詞・0312詞・0453詞・0492詞・0546詞・0548詞・1071詞・1166詞・1167詞・1214詞・1222詞・1265詞)

《ゐ》
いゐむろ【飯室(いひむろ)】(1151詞)
かしゐ【香椎(かしひ)】(0494)
しゐしは【椎柴(しひしば)】(0432)
つゐに【遂(つひ)に】(0990)
ふけゐ【ふけひ】(0404)
よゐ【宵(よひ)】(0522・0967・1207)
*夜ひ【宵】(0955)

(4)《う》《ふ》《む》の非歴史的仮名遣い

《ふ》
うふ【植(う)う】(0460)
すふ【据(す)う】(0755・0757)

(5)《え》《へ》《ゑ》の非歴史的仮名遣い

《へ》
うへ【植(う)ゑ】(0058・0248・0378詞・0458・0466・1040・1047)
ゆへ【故(ゆゑ)】(0054・0112・0205・0286・0662・0739・0741・0867・0991・1020・1141・1145詞)

《ゑ》
ゆくゑ【行方(ゆくへ)】(0048・0992・1344)

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